この新書は、産学連携プロデューサーとして活躍する妹尾堅一郎氏が、秋葉原再開発の産学連携事業の立ち上げからこれまでの成果をまとめた著作。
慶應大学の「丸の内シティキャンパス」や東京大学の「知財マネジメントスクール」、日本弁理士会の「知財ビジネスアカデミー」など、ビジネスと学術をつなぐ先端的な学びの場をプロデュースしてきた妹尾氏が、「秋葉原再開発における産学連携」というテーマをその手腕でどう料理してきたか、本人の振り返りを通して事細かに語られている。産学連携に携わる研究者や産業人はもちろんのこと、どんな分野でもプロデュースを志向する人には得るところの多い、多くの知見に満ちた一冊。
(「アキバをプロデュース 再開発プロジェクト5年間の軌跡」目次より)
第1章 変貌をとげる「アキバ」
第2章 秋葉原とアキバ テクノとオタクの街の特徴
第3章 秋葉原クロスフィールド構想
第4章 アキバテクノタウン構想
第5章 安心して楽しめる街づくりへ
従来の都市再開発や産学連携がなぜうまく行かないかを示しながら、秋葉原という地域の特性を活かした再開発をどう進めてきたか、そのプロセスにおけるコンセプトの着想や実現までの苦労が活き活きと語られている。かなり込み入ったことも書かれているのに痛快で気軽に読めるのは、著者の文才や編集者の腕前によるところなのだろう。
優れたプロデューサーというのは、コンセプトを簡潔に示すキャッチフレーズを作るのがうまい。この本から、著者が学術とビジネスのちょうど交わるポイントを的確にかつ簡潔な言葉で表しながら、多様な関係者が関わるプロジェクトの舵を取っていた様子が伺える。
下記の記事には、本書で語られている内容の一部が紹介されている。こういう話に興味を持つ人であれば、本書は間違いなくオススメ。
クロスフィールド仕掛人は、この人!──妹尾堅一郎が語る「アキバをプロデュース」(ASCII.jp)
http://ascii.jp/elem/000/000/085/85802/
「アキバは現代の高野山」――“アキバプロデューサー”妹尾堅一郎が語る(ITmedia)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0803/13/news051.html
妹尾氏の著作では、大学院入試準備のための必携の一冊としてロングセラーを続けている「研究計画書の考え方―大学院を目指す人のために」も研究計画の構想の考え方を学ぶにはとてもよい本なのでオススメしたい。