近況などのお知らせ

気がつくともうすぐ9月ですね。お盆休みは溜まっていた査読を済ませたり、やろうと思っていて進んでいなかったデータ集計をしたり、夏休みの宿題のようなことをしているうちに過ぎて行きました。

大学での本務が変わったため、これまで担当していた日々の運営業務的な仕事は減ったのですが、その分大学院の入試など新たにやることが増えて、忙しさはさして変わらずというところです。

まず、直近のいくつか登壇や研究発表の予定などお知らせします。

1.ゲーミファイネットワーク第7回勉強会(8/29)
8月29日に開催される日本デジタルゲーム学会ゲーム教育SIG主催の勉強会で「教育分野のゲーミフィケーション研究の現在」というテーマでお話しします。

日時 8月29日(木)19:30~21:30(20:30~懇親会)
会場 ヴァル研究所(JR高円寺駅 北口から徒歩約3分)https://www.val.co.jp/company/access/
主催: 日本デジタルゲーム学会ゲーム教育SIG 参加申込:
https://peatix.com/event/1098399

2.日本教育工学会 2019年秋季全国大会(9/7-8)
今年のJSET全国大会は9月7-8日に名古屋で開催されます。5-6月に実施したオンラインコース「教育のゲーミフィケーション」の結果についてポスター発表しますので、参加される方はお立ち寄りください。

ゲーミフィケーションを取り入れた大規模公開オンライン講座(MOOC)の設計と開発
藤本 徹,荒 優,山内 祐平(東京大学) 9月8日(日) 12:30〜13:40 
会場:2F(2階会議室224) http://www.jset.gr.jp/taikai35/

3.朝日教育会議:東京工芸大学「ゲームが社会を解決する Game as Solutions」(9/21)
津田大介さん、東大の廣瀬通孝先生、東京工芸大学の岩谷徹先生の講演の後のパネルディスカッションでパネリストとして登壇します。東京工芸大学の遠藤雅伸先生も入られて、私以外は大変豪華メンバーのパネルで「世界はゲームで満ちてくる」をテーマに議論します。

日時:9/21(土) 13:00~16:00
会場:イイノホール(東京・霞が関)
詳細・参加申込: http://manabu.asahi.com/aef2019/tokyokougei.html


<最近の活動報告>
最近書いた論文のうち、JSETの特集号に投稿していたレビュー論文が採録されました。もう少ししたらオンライン公開されます。

藤本徹, 荒優, 山内祐平 (in press) 大規模公開オンライン講座(MOOC)へのゲーミフィケーション導入に関する研究の動向. 日本教育工学会誌 43(3).

少し前ですが、海外の研究者と共同執筆で最近の教育工学政策の比較研究をした論文がTechTrendsに掲載されました。こちらはオンライン公開されています。

Mao, J., Ifenthaler, D., Fujimoto, T., Garavaglia, and A., Rossi, P. G. (2019) National Policies and Educational Technology: a Synopsis of Trends and Perspectives from Five Countries. TechTrends. 63(3): 284-293. doi:10.1007/s11528-019-00396-0
論文PDF: https://rdcu.be/byQFj

あとは研究発表やパネル登壇などさかのぼってご報告します。先日、立命館大学で開催されたDiGRA International Conferenceで3件の発表をしました。

Fujimoto, T., Ikejiri, R., and Fukuyama, Y. (2019) Bridging Meaningful Play and Playful Learning – Supporting the Design Process of Gamification in Education. Proceedings of the 2019 DiGRA International Conference. Ritsumeikan University, Kyoto, Japan.

Fujimoto, T. (2019) The design and development process of an online course to support gamification design. the 2019 DiGRA International Conference Workshop. Ritsumeikan University, Kyoto, Japan. 18-19. Aug. 6, 2019.

SAKAI, H. and Fujimoto, T (2019) The Effects of Mental Health Education Games and Their Effects on the Prevention of Employee Stress. the 2019 DiGRA International Conference Workshop. Ritsumeikan University, Kyoto, Japan. 28-31. Aug. 6, 2019.

8月2日にCANVASさん主催で開催されたポケモンPRイベント「夏休み、子どもとデジタルゲームの上手な付き合い方」にパネルディスカッションに登壇しました。いくつもメディアの取材が入って、多くのメディアで記事掲載して頂きましたので一部ご紹介します。
https://resemom.jp/article/2019/08/19/52011.html
https://dual.nikkei.com/atcl/column/17/101200003/081300295/
https://news.mynavi.jp/article/20190806872467/
https://www.sankeibiz.jp/business/news/190809/prl1908091513115-n1.htm
https://www.4gamer.net/games/999/G999905/20190802127/

7月には日本イーラーニングコンソシアム主催のセミナーで、最近のゲーミフィケーション研究の動向についてお話しさせて頂きました。

藤本徹 (2019) 教育分野のゲーミフィケーション研究の現在. 日本イーラーニングコンソシアム月例カンファレンス. 日経BP社. 2019年7月22日

6月には北海道大学人材育成本部の吉原拓也先生が担当されている大学院生向け科目「キャリアマネジメントセミナー」で「発想法: 研究と社会をつなぐ創発思考」というテーマでゲスト講義させて頂きました。

藤本徹 (2019) 発想法: 研究と社会をつなぐ創発思考. 北海道大学キャリアマネジメントセミナーゲスト講義. 北海道大学. 2019年6月24日

今年度後半は、研究の一環でオンラインコースの配信やゲーミフィケーション教材を使った授業やワークショップの機会を増やしていく予定です。ワークショップやゲーム学習を導入したい授業への出張も、都合がつく限りご希望にお応えして行きたいと思います。ご興味ございましたらご一報ください。

藤本の研究指導をご希望の方へ

私が兼担教員として所属する東京大学大学院 学際情報学府文人コースの入試説明会が今週土曜に開催されます。開催日が近付いてきましたのでお知らせします。

来年度入学生より、私の研究室で大学院生を毎年2名程度受け入れて研究指導できますので、大学院進学にご関心のある方は入試説明会にご参加ください(大学院生として私の研究指導を受けるためには、まず大学院入試を通過する必要があります)。

この日は午前中に文人コースの入試説明会があり、午後に学府全体の入試説明会があります。午前の説明会後の懇談の時間と、午後の各研究室ブース展示と研究紹介コーナーの時間に教員と個別にお話しできる時間が設定されていますので、お越し頂ければ研究テーマなどの個別の質問にお応えできます。


東京大学大学院 学際情報学府・文人コース入試説明会

文人コース(文化・人間情報学コース)夏季入試説明会
日時:2019年6月8日(土)10:00-12:00
場所:東京大学本郷キャンパス・情報学環福武ホール地下2階ラーニングシアター
http://bit.ly/2KqNRmD

学際情報学府入試説明会
日時:2019年6月8日(土)13:30-16:30
場所:東京大学本郷キャンパス・情報学環福武ホール地下2階ラーニングシアター
http://bit.ly/2WnCi6Y

藤本 徹の教員プロフィール
http://www.iii.u-tokyo.ac.jp/faculty/fujimoto_toru

今年の誕生日の近況

今日で46歳になりました。メッセージくださった皆さまありがとうございます。誕生日を迎えたタイミングは、終電近い空いた電車の中で、Opethを聴きながらインスタでよその家のネコがごめん寝している画像をたくさんみて癒されていました(#ごめん寝とか#ネコをフォローしてるせい)。

今月はもっぱら、オンラインコース「教育のゲーミフィケーション」の開発と運営に研究時間を全投入していて、コース運営は最後の山場に差し掛かっています。連休を全投入してコンテンツ制作を終えるつもりで臨んだのですが、大学の業務もなかなか重い仕事が続いていることもあって予定通りには全く収束できずに結局、各週の公開予定日の前日に何とかセットアップを終えるというペースで進行しています。取り入れたいアイデアのうち実装できなかったものも多く、だいぶ絞り込んでようやくコースとして落ち着きました。

このコースは、個人的に10年前に博論研究のコンテンツ開発をしていた時に実現できなかったことや、その後非常勤で「シリアスゲーム論」の授業を担当した時に開発したクエスト学習の手法の未完成だった部分を改良できた感はあるので良かったです。一方で、今の自分のやり方でのベストはここまでかなという限界も感じつつ、自分の仕事の型のようなものを見直す必要性を再認識しました。やっているうちに次のテーマも見えてきたので、無理しただけの成果はありました。受講してくださっている皆さまに感謝しつつ、まずはとにかくこのコースの研究を一区切りさせて、落ち着く時間を取って先のことを考えようと思いつつ、今日の残りの数時間を過ごしています。

その他の近況や面白い話はまた機会を改めて。引き続きよろしくお願いいたします。

オンラインコース「教育のゲーミフィケーション」受講者募集のお知らせ

昨年度から時間をかけて準備していた公開オンラインコース「教育のゲーミフィケーション:プレイフル/ゲームフルな学習デザイン方法論」の受講者募集を開始しました。

このコースでは、教育にゲーミフィケーションを取り入れるためのゲームデザインの概要や事例を学び、ゲームを教育に取り入れる方法や、実際にゲーム教材やゲーム要素を取り入れた学習活動の計画を立てるための基本的な知識を身に付けることができます。

毎回の講義ビデオの視聴と、教育現場のさまざまな問題状況でゲーミフィケーションデザインのクエスト課題に取り組む内容で、実践的な知識を学べるように構成しています。修了基準をクリアした方へコース修了証を発行します。

あまり勉強っぽくなく楽しんで学べるように、通常のMOOCとは異なる仕掛けを用意しました。このテーマに関心のある方は経験の有無に関わらず、どなたでも無料で受講できます。受講ご希望の方は、下記の受講登録フォームからお申し込みください。

【↓受講登録はこちらのフォームから↓】
https://forms.gle/eoSiDF9vyd8J6kX57

このコースで学べること:
このコースを受講することで、次のようなことを学べます。
* 教育技法や学習理論についての基礎的な知識
* 学びの場のデザイン方法についての基礎的な知識
* ゲームやゲームデザインについての基礎的な知識
* ゲームと学びの接点に目を向ける考え方
* 教育分野のゲーミフィケーションの事例やデザイン方法
* 教育分野のゲーミフィケーションの実践方法

コースアウトライン:
レベル1:ゲームと学びの接点に目を向ける
レベル2:教室のゲーミフィケーション
レベル3:学校のゲーミフィケーション
レベル4:ファイナルチャレンジ(総合演習)

受講に要する時間:
標準的な学習時間として週2-3時間を想定していますが、経験や知識の差によって必要時間は異なるところがあります。

受講に必要な環境:
このコースは、MOOCプラットフォームのedX edge(エデックス・エッジ)で配信します。ネットに繋がったパソコンまたはスマートフォンのブラウザ環境があれば受講できます。
開講期間:2019年5月10日から開講(全4回)
受講登録締切:5月7日(火)
※受講に関する詳細は、登録締切後にご連絡します。
主な対象者(受講をお勧めしたい方):
ゲームやゲーミフィケーションの手法を導入したい教育者、教材開発者、教育の場でゲームデザインの経験を生かしたいゲーム開発者。教育経験やゲーム開発経験があると理解が進みますが、前提知識がなくても受講できます。

受講料:無料です!

受講方法:
東京大学が提供するコースページ上で学習します(受講方法の詳細は、コースページ公開後にご登録頂いたメールアドレスにお送りします)。

講師:藤本 徹(東京大学 大学総合教育研究センター 講師)

このコースについて:
このコースは、東京大学の研究者グループ(研究プロジェクト責任者:藤本 徹)がオンラインコースの学習効果に関する研究のために提供するものです(2017年度JSPS 科研費17H00824(研究代表者:山内祐平)、2018年度JSPS科研費18K02855(研究代表者:藤本徹)の助成を受けて実施しています)。
授業で収集された学習履歴データは、個人情報が特定されない形で慎重に取り扱い、論文や研究発表などのための研究用途で統計的に処理して使用します。授業への参加は研究データの提供に同意されたこととして取り扱います。
【↓受講登録はこちらのフォームから↓】
https://forms.gle/eoSiDF9vyd8J6kX57

異動のご報告

本日4月1日付で、東京大学 大学総合教育研究センター 教育課程・方法開発部門 講師に着任しました。同じ研究センター内で部門が変わり、特任が取れて任期無しのポストへの異動です。

職位はそのままスライドで、担当プロジェクトはそのまま継続するので、身辺にはさほど変化もないのですが、一つ大きな変化としては、今年度から大学院情報学環の兼担になり、研究室への学生の受け入れができるようになります。

今年の入試から関わって、来年度から自分の研究室で学生を指導するようになりますので、実際に動き出すのは少し先ですが、これでようやく、私の専門のゲーム学習、オンライン教育の分野で研究したい方への受け皿が一つできるようになります。これは長年の目標だったので、小さく一歩前進です。次のステップとして、新しい研究プロジェクトを立ち上げながら、ゲーム学習とオンライン教育の分野で活動する若手研究者の雇用の受け皿を作れるように精進したいと思います。

大学での仕事は楽しいことばかりではなく、ミクロにもマクロにもこの大学を取り巻く環境には問題も多くて、日本の高等教育の向かっている先について日々考えさせられます。それでも、気が付けば米国留学から帰国してもう10年ほど経ち、日本の高等教育の改善に貢献できるような仕事がしたい、と留学する前に漠然と思っていたことが、今の仕事で実現できていることをありがたく思いつつ新年度の初日を迎えています。

ということで、皆さま、引き続きよろしくお願いいたします。

2019年を迎えて

新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
年始の休みは最小限のことだけやって休養優先で過ごしました。帰省もせずに自宅で過ごした分、例年よりも休めた感があります。

昨年の冒頭に書いたことを見返してみたら、次のようなことを書いていました。

「自分の性分として、自分でなくてもよいことや自分がやらない方がうまく回りそうなことは、出しゃばってやりたくないし、さっさと他の人に渡したいと思って生きてきましたが、他にできる人がいないことや行きがかり上引き受けたことが積み上がってきて、大事なことに力を尽くせず残念な思いをすることが増えてきました。」

これが1年ずっと続いてたなという感じです。大事にしたいことに舵を切って前に進む一年には程遠い感じでした。自分が出張らなくても良い仕事はどんどんできる人に手渡してきましたが、さらに拾われないボールが足元に転がってくるので、拾って投げ返すうちに1年が過ぎてたような。私のそばで一緒にボールを拾って投げ返すのを手伝ってくれた人たちには本当に感謝してます。後で思えば拾わなくても良いボールやそこまで時間をかけずに手早く片付けるべきこともあったので、そんな反省材料を活かして今年を良い一年にしたいです。

2019年の前半は、仕掛りの研究を進めることを最優先にしつつ、引き出しの奥の方に放り込んだままホコリを被ったような状態で放置していた関心事を引っ張り出して、アイデアを練ったり研究に仕立てたりする時間や、しばらく使わずに錆びついたスキルを磨き直すための時間を増やして過ごしたいと思います。これまでも体調管理に気をつけて無理な状態にならないように仕事をだいぶ絞ってきましたが、手を動かしてものを作る時間や教える機会を増やしたいので、絞りきれてないところは更に絞りつつ、時間の使い方の拙いところも見直して、ワークスタイルの改革を続けたいと思います。

これまで目標として掲げてきたゲーム学習分野の研究拠点を立ち上げるための活動についても、昨年は組織的な事情で後回しにしていましたが、今年は仕切り直して土台を作る活動に取り組みたいと思います。手始めに、しばらくお休みしていたLudix Labの活動を再始動させます。公開研究会の開催と、藤本ゼミ的な活動を立ち上げる計画を準備中です。

この何年か厳しい時期が続きましたが、今年は気持ちを切り替えて、成果を出して発信するサイクルを以前よりも加速させるべく日々の活動に取り組みたいと思います。

2018年の振り返り

2018年も終わろうとしています。今年は実家に帰省せず、休みに持ち越した原稿や書類の作成をしながら、今後の研究構想を立てる時間を取りつつ静かな年末を過ごしています。

今年は年初から何とも問題の多い年で、悩みながら問題対処に明け暮れるうちに1年過ぎたような感があります。理不尽なことやうまくいかないことも多々ありましたが、自分のできることは力を尽くしてやってこれた気はしています。

自宅の大掃除も済んでさっぱりしたところで、例年通り、今年一年で書いた原稿や発表を整理しました。主なものは国際論文誌の論文1本、昨年書いて今年出版されたレビュー論文1本、国際論文誌に投稿中の共著論文が1本、あとは国内学会発表や共著の発表などというところです。昨年から仕掛りのジャーナル論文のうち1本出版できたのは良かったですが、残り2本がさらに持ち越しになっているのが反省点です。

今年の後半に取り組んだ経産省「未来の教室」実証事業の委託で行った実践研究が年明けからアウトプット作業に入るのと、現在進めている科研費の研究プロジェクト2本の開発を進めているので、来年それぞれ成果を出せればというところです。年始の休みは程よく休養を取りつつ、読めてなかった本や論文を読んで穏やかに過ごしたいと思います。

今年も多くの皆さまにお世話になりました。どうぞ良いお年をお迎えください。

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変容を起こすゲームデザイン解説書「The Transformational Framework」

9月にETC Pressから出版されたSabrina Culyba著「The Transformational Framework」がとても良い文献ですので紹介します。本書は多くのシリアスゲーム開発を手掛けたゲーム開発会社Schell Games(カーネギーメロン大学ETC教授でゲームデザイナーのJesse Schell氏が設立)でゲームデザイナーとして活動する著者が、同社のこれまでに蓄積してきた開発ノウハウを体系的に整理した解説書です。

教育/学習ゲーム、研修ゲーム、教育シミュレーション、シリアスゲーム、アプライドゲーム、ゲーミフィケーション、ゲームズ・フォー・ヘルス、ゲームズ・フォー・チェンジなど、さまざまな呼び方で広がってきた、娯楽を超えた用途や効果のためのゲームのことを「トランスフォーメーショナルゲーム」(変容を起こすゲーム)と総称して、そのデザインフレームワークとして8つの要素に整理して解説しています。

・上位目的:そのゲームの目指す変容
・オーディエンスとコンテクスト:そのゲームの対象者と利用される状況
・プレイヤーの変容:そのゲームを通して生じる変容
・障壁:なぜその変容が起きにくいのか
・領域概念:変容を起こすためにゲームが扱う知識
・専門知識源:ゲームに取り入れる知識をどこで手に入れるか
・先行事例:関連する先行事例から学ぶ
・効果測定:ゲームが起こした変容の測り方

ゲーム開発の基礎知識から、企画段階の心得的な留意点、ターゲットの絞り込み方、扱う知識の選び方、領域専門家との付き合い方、先行事例の調べ方や効果測定の方法の選び方など、シリアスゲームや学習ゲームの開発において役に立つ実用的なアドバイスが豊富に盛り込まれています。

これまでにも同様の開発ガイドブック的な文献は出てますが、「シリアスゲーム開発の参考書のおすすめはないでしょうか」と聞かれた時に、ちょうどよく勧められる文献は多くありませんでした。本書は、この分野の開発に着手したい方からそういう質問が来た時に、まずこれを読んでください、と力強くお勧めできます。

本書のPDF版は無料でダウンロードできますので、シリアスゲームやゲーミフィケーションデザインを扱う授業で参考文献にしたり、本書で輪読会をやってみんなで議論したり、ゲームジャム参加前の予習文献にしたりと、さまざまな用途で活用できると思います。

11/25 追記:”transformational” の訳語を教育学分野の定訳に合わせて”変容”に修正しました。

投稿中のMOOC研究論文がEducational Media Internationalに採録されました

edX Global Forum参加のための出張でボストンに来ています。こちらはすっかり冬模様で、日暮れも早く、今日の最高気温は2度とのことです。投稿中の論文の修正や月末から始まる高校での授業実践の準備など、あれこれ急ぎの仕事が重なってきているので、会議に出席しながら空き時間に進めつつ滞在する感じです。

今週、ひとつ嬉しい知らせがありました。東大がCourseraで開講中のMOOC「Studying at Japanese Universities」についての論文が国際論文誌のEducational Media Internationalに採録されました。

この論文では、日本留学に関心のある世界の学習者が留学実現のための準備を進めながらお互いに学び合えるコミュニティとして開発したコースの意義やデザインの特色を説明して、開講当初の成果について考察しました。

現在、最終稿の校正対応しているところで、完了後速やかにオンライン公開されるとのことです。(11/28 追記:公開されました)

Fujimoto, T., Takahama. A., Ara. Y., Isshiki, Y., Nakaya, K., & Yamauchi, Y. (2018). Designing a MOOC as an Online Community to Encourage International Students to Study Abroad. Educational Media International. DOI: 10.1080/09523987.2018.1547545

 

「貧すれば鈍する」ということ

この2年ほど、日々の業務に疲弊して、精神的リソースが枯渇したような状態が続いていることもあって、週末はなるべく予定を入れずに休養優先で過ごすことが増えた。こちらが休みかどうかに関係なく、査読の依頼とか、何かの締切のリマインドは遠慮なく入ってくるので仕事はしているのだけど、仕事している感じにならない程度の量にとどめている。

そういう日曜の午後、何もする気がせず何となくテレビをつけたら、プロゴルフの試合をやっていたので何となく見ていた。トッププロゴルファーの見事なプレイの脇で、クラブを磨いて手渡した先からすぐにバンカーをならして、すぐにグリーンに上がってピンを持ち、ホールアウトしたらプレイヤーと言葉をかわすキャディの姿に目が止まる。それにプロトーナメントを行うゴルフ場は、丁寧に整備されており、ゴルフ場の支配人や運営スタッフもレベルの高い仕事をしていることが想像できる。スポーツにさほど興味のない私だが、ゴルフは子どもの頃に多少かじった経験があり、高校時代は田舎のゴルフ場でキャディのバイトもやった。なのでスポーツのアナロジーで考える時、プレイヤーとしての感覚で考えるにはゴルフが一番イメージしやすい。

物事をアナロジーで考える私の習性は、もはや職業病の域にあり、こうして週末のゴルフ番組をぼんやり見ていても、今の自分の仕事の文脈がこのゴルフの世界に浮かび上がってくる。今の私の仕事上の役割は、プロゴルファーとキャディやゴルフ場の他の仕事の関係として見ていくとどうなのか、そういう事を考えているうちにテレビの方は目で追っているだけになってくる。

プロプレイヤーは、トッププロであれば国際メジャー大会に出て勝ち星を上げ、スポンサー契約を取り、プロのプレイヤーとして成果が出ることにフォーカスして日々の活動を組み立てていく。トップでない普通のプロでも、国内試合で良い成績を上げるべく腕を磨き、来年のシード権を取り、所属クラブでレッスンプロとしてアマチュアの指導をしたりしながらも、プレイヤーとしての活動が中心の生活を送る。

それではそういう文脈における私はどういう立場か。大学の研究者として、研究や教育で業績を積み上げていくことが期待されており、それが評価の中心だという点において、プロスポーツ選手のように「プレイヤー」としての役割が期待されているはずなのだが、どうも違う状況にいる。

時間を作って練習ラウンドしていると、ゴルフ場のオーナーや支配人から「練習する暇があるなら運営の仕事を手伝ってくれ」とばかりに、運営スタッフの雇用やシフト管理のような仕事を任され、他のプロがラウンドするのに人手が足りないからとキャディの仕事も手伝い、支配人が不在がちで荒れたゴルフ場のメンテ作業をやり、自分のプレイヤーとしての活動は、日が暮れてみんなが帰ってからやることになる。がんばって海外遠征を増やそうにも、ゴルフ場の仕事が手薄になることに不満を持たれる。資金不足だからスポンサー契約をとってこいとオーナーが言うので、新規の契約を取ってきても、内部で煩雑な手続きを嫌がられて仕事が進まず、成果が出なくてかえってスポンサーに迷惑をかけるような、誰も報われない、さえない状況が続く。傍目から見れば、名門ゴルフクラブで仕事もらってるんだからまだマシでしょ、世の中もっと大変なんだよね、と内部の事情には微妙な同情くらいしか集めない。

プレイヤーとしての活動が後回しになり、9割方がキャディやら支配人やらの仕事で時間を取られていても、続けていれば要領を得て、それなりに効率よくこなせるようになる。そうすると、こっちもお願いとばかりに、さらに問題の多い仕事が回ってくる。やる人がいなくて組織が傾いても困るので、不承不承対応する。するとまたさらにやり手のいない仕事が回ってくる。かくして、プレイヤーとして自分の腕を磨く以前の状況が続き、たまに打ちっぱなしで玉を打つだけのアマチュアプレイヤーのような状態で、プロとして精彩を欠いた状態が定常化した。

言うまでもなく、プレイヤーの仕事以外にもゴルフ場には仕事があり、それらがプレイヤーの仕事に比べて価値が低いということではない。トッププロがしのぎを削る試合で勝てるパフォーマンスを発揮するには、優れたキャディがきちんと仕事を果たすことが不可欠となる。プレイヤー本人の実力や努力が必要でも、それだけで勝てるものではなく、キャディや裏方の仕事がきちんと果たされないと、プレイヤーは成果につながるパフォーマンスができない。キャディにはキャディとしての専門性があり、トップの世界のキャディが持つ価値はもっと評価されてよいが、それは別の問題である。

ここでの問題は、大学の研究者としての私の仕事はプレイヤーとして評価され、キャディや支配人の代わりにどれだけ仕事をしたかとか、組織を立て直すことに貢献したかで評価される立場ではないことだ。大学の研究者としての評価は、どれだけ良いスコアを出して、いくつ勝ち星をあげるか、賞金ランク上位に入ってシード権を取れるかという、プレイヤーとしての立場で評価される。たとえ組織のために働くことが求められても、試合に出る準備ができない、ゴルフ場が荒れていて練習にならない、プロ契約が結べない、道具が揃わないなどのさまざまな事情に翻弄されて、プレイヤーとして勝てない状況に陥っていても、最終的にはプレイヤー個人として評価される。

もちろん、レッスンプロとして評価されて生きる道もあり、プレイヤーの他にもゴルフ場には多くの仕事とさまざまな生き方がある。誰しもどこかのタイミングで、自分の生き方を選択しなければならない時が来る。私自身もそういう段階にいるのかもしれないが、未だプレイヤーとしてやりきっていない以上、とにかくプロとして練習時間も取れないこの拙い状況を立て直す必要がある。

ここしばらく、前向きなアイデアが出なくて枯渇した状態で、支配人業務が忙しくて回らないからと出場試合の数を減らすようなさえない状態だったが、このあり方が根本的にダメで、これを続けていたら私の選手生命はこのまま終わる。どこかのゴルフ場の支配人の仕事くらいはできるかもしれないが、そこを目指してプレイヤーになったわけではない。錆びついた腕はこれから磨き直す必要があるが、少なくともこういう危機的な状況に気づいて、前向きに捉え直せる程度には回復してきたのかと思う。