少し前に日本版のWiiとWii Fitを一緒に買った。アメリカではたしか5月発売で、まだWii Fitは売ってないので、Wii Fitは今回初めてプレイした。
パッケージとしてよくできていて、操作に変な混乱やストレスがない。まず製品としての完成度が高い。これがまさに、新さんの連載記事で解説されているような任天堂クオリティなのだなと思う。
ゲームデザインの工夫の観点から見ても面白い。重さとバランスを認識するバランスボードのシンプルな機能とゲームのグラフィックの組み合わせで、これだけ多様なゲームが作れるところに感心させられる。このツールでゲームを考えろと言われても、「座禅」ゲームはなかなか思いつかないだろう。ほかにどんなゲームができるかを考えると、ゲームアイデアを考えるよいトレーニングになると思う。
うちでは、もっぱら妻が利用していて(今も後ろで夢中になってやっている)、僕自身はたまに身体があまりにも鈍ったときの気晴らしか、体重量りついでに軽く遊ぶ程度で利用している。このソフトへの反応を外で聞いても、女性の方がハマっているようで、テイストや仕掛け的には女性の方にアピールしているようだ。ゲームとしては個人的にそこまでハマってないのだが、身体を動かすきっかけとしては重宝している。
Wiiが従来のゲーマー層(最近自分はWiiのターゲット層ではないことを意識させられるようになった)ではなく、ノンゲーマーやカジュアルゲーマー層をターゲットにしていて、Wii Fitもその路線で成功していることがわかる。Wii Fitを前にした我が家の一コマもそんな感じである。発売前の評判では、デカイとか周辺機器は売れないとか言われる向きはあったものの、即座に100万本以上売れてしまった。
どのような分野でも、イノベーションに対する下馬評というのは、あてにならないもので、WiiやこのWii Fitはそのようなイノベーションになっているのだろうと思う。たんに目新しいものを作れば売れるというわけではなく、よい製品の開発とそのよさが認知されるためのプロモーションに手を抜かないこともそのイノベーションの一部になっていることを見落としてはいけない。
Wii Fitは、ゲームとしては本格的なゲームタイトルと比べると見劣りがするし、運動としても本格的にジムで運動するほどにはならない。なのでコアゲーマーにも、激しく運動したい人にも物足りない。だが、このソフトのターゲットは、その間にいるどちらでもない人々だ。時間のかかる本格ゲームをじっくりやるほどの気合いはないけど程よく楽しみたい、ジムに行くほどではないけど、運動するきっかけがほしい、という層がユーザーとなっている。セールスを見ればその層がいかに厚いかということだろう。
ゲームもフィットネスも、まだ満たしきれていないユーザーニーズが広がっていて、そこにアピールする製品を投入すれば新たな市場が形成される。それも一朝一夕にできるものではなく、能力の高い人々がチームになってギリギリのところで試行錯誤を重ねてようやく生み出されている。次のインタビュー記事にそのような開発の苦労が紹介されている。
社長が訊くWii Fit
http://wii.com/jp/articles/wii-fit/crv/vol1/
このWii Fitで家族のコミュニケーションが生まれ、身体のバランスへの意識が生まれる。体重管理や身体機能改善の補助として機能する。健康のための導入的ツールとしては、これ以上のものはないのではないか。だがあくまで導入や補助として考えるほうがよくて、これですべてを満たそうとしない方がよいだろう。本格的に運動したくなれば、広いスペースと専用の設備のあるジムに行く方がよい。すべての運動ニーズに答えようとするのでなく、どの範囲のニーズにこたえるべきかをはっきり意識して作られたものだということが、上の記事からもわかる。あれもこれもやろうとゴテゴテ盛り込むのでなく、目的をシンプルに設定して、設定した範囲のなかでいかによいものにするかを掘り下げて考えるというところに強さがあるように思う。