シリアスゲームのMLに投稿されたニュースが面白かったのでご紹介。
Pub urinal computer games launched (News.com.au)
http://www.news.com.au/story/0,23599,23727859-13762,00.html
リンク先のビデオ映像を見ていただくのが早いのだが、簡単に言うと、公衆トイレで用を足しながらプレイするコンピュータゲーム。ベルギーのブリュッセルで開発されたそうだ。
仕組みは、公衆トイレの男性用小便器の前に立ったときの目の高さの位置にディスプレイが埋め込まれていて、そこにゲーム画面が表示される。便器の内側の左右にセンサーを埋め込んだ的を張り付けていて、その的を目がけて発射すると、目の前のゲームが連動して動作し、射撃ゲームや、スキーゲームをプレイできる。便器は二つ設置されていて、隣の人と対戦できる。屋外のお祭りの会場のようなところで設置されていて、ベルギービールをたっぷり飲んだ酔客たちがトイレでも娯楽を楽しめるようになっている。
ブリュッセルの二人のエンジニアが酒を飲みながら思いついたゲームアイデアを形にしたそうだ。誰しも仲間と飲みながら話をしていて素面ではとても思いつかないような「素晴らしいアイデア」を思いつくことはあると思うが、ほとんどの人は実行には移さない。だが、このエンジニアたちは単に酒席の与太話に終わらせず、見事にアイデアを実現した。いかにもジョーク好きな酒飲みエンジニアが考えそうなしょーもないアイデアな感じもするが、この実行力は称賛に値する。
一般に、男性用のトイレの周辺を清潔に保つための工夫はさまざま施されるが、これはむしろ逆の発想、というか何も考えてなさそう。酔客にそんなところで競わせたら、どんなことになるかは推してしかるべしという感じで、あまり詳細は想像したくない。このニュースでは女性は利用できないじゃないの、という話をしていたのだが、そこはさすがこんなものを開発したエンジニアたち、用意周到に女性用の紙で作った特製アダプターのようなものを用意したそうだ。利用したがる方も用意する方もやめとけという感じだが。
このゲーム、ロイターで報道されたため、世界中のニュースブログで一斉に取り上げられている。だがよく見ると、実は昨年夏にはすでに前のバージョンが開発されていたようで、Engadgetで取り上げられていて、ゲームエキスポ会場のトイレに設置されたゲームが警察から使用禁止のお達しが出たということも報じられている(ソースは同じくEngadget)。
くだらないと一蹴することは簡単だが、実はこのゲームにはいろいろな示唆が含まれている。このゲームの革新性は入力インターフェイスのデザインのユニークさにあって、その意味ではWiiリモートやバランスボードと同じ土俵にいる(ホントか?)。それにゲームのコンテンツは、ここではシューティングゲームやスキーゲーム、レーシングゲームが出ているが、入力方法とゲームのルールの組み合わせでゲームの内容自体はいかようにも工夫できる。それはWii Fitのミニゲームの多様さをみれば、同じ動きでいかに多様なゲームになるかがイメージできるだろう。必ずしも頭ごなしにお巡りさんがやってきて禁止してしまうような性質のものではなく、アイデア次第ではさまざまな用途に応用が可能だ。企画トレーニングの良いネタになると思う。
投稿者「tfuji」のアーカイブ
コナミの新作音ゲー「Rock Revolution」
コナミが新作音ゲー「Rock Revolution」を先週発表したそうで、海外のゲーム情報系サイトでは一斉にこのニュースを報じている(Kotaku ほか、この週末にみんな一斉にという感じ)。リリースされている情報によれば、大ヒット中のActivisionの「Guitar Hero」シリーズとEAの「Rock Band」に対抗した競合タイトルになる様子。
XBOX360、PS3、Wii、DS向けに秋に発売予定とのことで、ドラム、ギター、ベースの3つのパートをプレイできるようになっている(DS用だけヴォーカルも対応なのだそうだ)。「Guitar Hero」も次回作はドラムなどの他の楽器も追加になるということなので、これでバンド演奏ゲームは3つになる。コナミはすでにギタドラその他のタイトルで開発を重ねてきていて、むしろこの音楽ゲーム市場の先駆者なのだが、上記2タイトルがこのカテゴリーの中で新たにコンシューマ機向けのニッチ市場を作ってしまったので、そこでは後発という位置づけになっている。
DS向けが出るというのと、ヴォーカル抜きなのがとりあえずはEAの「Rock Band」との違いだが、他にもドラムパッドが消音パッドを使っていて叩き心地がよいとか、初心者向けにはフットペダル無しのプレイモードを用意しているとかいくつか他社先行タイトルを研究した上で、プレイしやすさを高めているところがうかがえる。「Rock Band」がどんな感じなのかは、下記のレビューでかなり詳しく紹介されている。これを読むと、Rock Bandにいくつか弱点があって、Rock Revolutionはその弱点に対応した形で開発されているのだなというのが伺える(ちなみに開発会社は、英国のZoe Modeだそうだ。この会社は、Singstarなどの音楽ゲームやEyeToy向けタイトルを開発している)。
Game Dudeの「大人のための海外ゲームレポート」(Impress GameWatch)
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20071221/kaigai14.htm
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20071227/kaigai15.htm
下記のデモ画面を見た感じでは、従来のギタドラのように真上から落ちてくるスタイルで、3Dっぽいインターフェースに慣れた先行タイトルのプレイヤーにはちょっと馴染むのに時間がかかるかも。それに、海外のゲームブログのいくつかであがっている懸念の声は、すでにデカいRock Bandのセットを買ってしまった人々は果たしてこちらにスイッチするだろうかというところ。
それはたしかにそうだが、まだまだこの市場は広いと思う。Rock Bandで手が出てない購買層には、ドラムパッドが安っぽくて音がうるさいのが気になっている人も少なからずいるだろうし、そういう人には消音ドラムがアピールするかもしれない。
それに、このRock Revolutionは、何よりも収録曲に強みがある(というか個人的にひかれてるだけか?)。Rock Bandの収録曲は、悪くないけど微妙な選曲かなぁという感じもしていたが、このコナミのタイトルには、Dream Theater、Skid Row、Whitesnake、Iron Maiden、Pantera、Ratt、モトリー、スコーピオンズなどなど、とてもプレイしてみたくなりそうなバンドの曲がたくさん収録されている。(下記リスト参照)。
実は最近、PS2版のRock Bandが出てWal-martとか行くと高く積み上げられているので、うっかり衝動買いの一歩手前だったのだが、一緒にプレイする仲間はいないし、帰国も近づいているし、こんなデカイものを日本の自宅に送ったら家の者になんと言われるかわかったものではないし、といった諸事情でなんとか買わずに踏みとどまってきた。でもこれで、コナミのタイトルなら日本でも出るだろうから、安心してRock Bandをスルーしたまま帰国できる(そもそも家ではプレイできないだろうという問題は残るが)。
現時点で公表されているらしい曲目リストは次の通り。それとデモ画面もYoutubeにさっそくのっていたのでどうぞ(いい曲入ってるでしょ>メタルファンの皆さま)。
Games for Health こぼれ話
Games for Health Conference 2008参加のため、ボルチモアへ出張してきました。カンファレンスの参加のオフィシャルなレポートはシリアスゲームジャパンの方に少しずつまとめているので、こちらでは個人的な滞在記を簡単に。
ボルチモアへは、ステートカレッジの自宅から片道3時間のドライブ。今回の会場はグレードアップしてボルチモア・コンベンション・センターになった。宿泊は近くのマリオットホテル。ホテルの部屋をTim Holt氏とシェアすることになった。TimはHalf-life MODの世界では結構有名な人物で、最近までオレゴン州立大学の森林保護シミュレーションの開発に参加していたが、現在は独立コンサルタントとして活動を開始したところだそうだ。彼と何かプロジェクトを一緒にやりたい人には、話を持ちかけるのによいタイミングだろう。
会場のボルチモア・コンベンション・センター
ホテルでは、主催者のBen Sawyer氏と部屋が隣で、ビールをご馳走するから部屋で作業を手伝ってくれと言うので行ってみると、カンファレンスで行うゲームの準備のための封入作業だった。300数十名分の封入で、カードの仕分けなどがかなりの内職仕事だった。CMPが運営しているシリアスゲームサミットと違って、このカンファレンスはBenの会社で運営まで請けているため、このような細かい仕事も彼が面倒見る。特に会場内でのゲーム(ウィルス防疫をコンセプトとした数字と色の組み合わせのカードゲーム。カードにはスポンサーのHumanaの名前が入っていて、はやく上がった人には抽選でスポンサー特典を提供、というスポンサー対応の仕掛け)は今回初めての試みで、仕込みの作業がずれこんだらしい。こういう場合は外注とかそういう人手が使いにくく、勝手のわかったメンバーでやる方がよくなる。男4人でビールを飲み飲み夜なべの内職作業。部屋が隣で相部屋なのもこのための伏線だったのか、計られたと思いつつも、これもまあ、普通に客として参加するより楽しい世界でもある。
初日の冒頭、Benがこのコミュニティの発展の状況を解説。メインスポンサーのロバート・ウッド・ジョンソン財団からの資金提供も倍増し、PR活動や運営全般の予算に余裕ができたらしく、前回までは研究会的な雰囲気だったのが、フォーマルな国際会議的な雰囲気にグレードアップした印象。規模的にも、このGames for Health単体で、数年前のシリアスゲームサミットを上回る規模になった。
グレードアップの瑣末な例としては、参加者に配布されるバッグやバインダーが立派になって、おやつも豪華になった(どうでもよいのだが、おやつはアメリカンな激甘ブラウニーや特大チョコチップクッキーが山盛りになっていた(下記写真)、健康に気遣うカンファレンスとしてこれはどうなのかというところもあるのだが、まあそれはそれとして)。
豊富に並ぶ食後のデザート
顕著な例としては、大手ヘルスケアプロバイダーが参入して、来場者の顔ぶれも、そうした大手組織や病院などをクライアントに持つ弁護士や広告代理店の人々など、「一般の人々」が入ってくるようになってきた。ヘルスケア分野は動くお金の額も大きいので、周辺への波及も大きい。ゲームにシリアスな人々がこの数年で周りを動かすようになったことを示している。ヘルスケア分野では全米最大のロバート・ウッド・ジョンソン財団のこの分野への長期コミットメントが示されたことによるアナウンス効果も大きかったのだろう。
デモブースにはさまざまな健康促進や医療教育のためのシミュレーションやゲーム機器が並んでいた。Wii Fitは北米版発売前なので、日本版が展示されていて、その横ではWiiの参入で厳しい状況にあるXavixも展示されていた。学校のジムなどで利用する業務用のフィットネスゲームシステムや、最近Breakawayがライセンス取得して販売を開始したPulse!や、VirtualHeroesの3Dの医療教育シミュレーション、Forterraの救急訓練用の仮想世界システムなど、各社の製品デモでにぎわっていた。
Xavixのゲームを試すTim Holt氏
初日夜は、レセプションの後に主催者や関係者に近い人々総勢20名ほどで、近くのオシャレなスペイン料理レストランへ。ゲーム開発会社Realtime Associates社長で、この分野ではRe-Missionの開発者として知られるDavid Warhol氏や、ゲームデザインの原則をまとめる「The 400 Project」などで知られるゲームデザイナーのNoah Falstein氏らゲーム開発者や、多様な分野の研究者たちと同席した。こういう場ではカンファレンスのセッションとは全く違った話になるし、実はこちらの方がタメになることもあったりするのが面白い。酒の席ではフォーマルな場とは異なる立ち振る舞いや人となりが見られるところも興味深い。社長然とした人、研究者然とした人、仕切る人、仕切られる人、それぞれに個性が出る。なぜこの分野に関心を持ったのかという個人的なストーリーを聞ける機会でもある。
長くなってきたので、続きはまた。
Wax on, Wax off
夕食時にテレビで、「The Karate Kid」(邦題:ベストキッド)をやっていたので見た。
この映画は1984年公開、主人公の少年が、空手で鍛えた不良グループにいじめを受けているところを近所の日本人、Mr. ミヤギに助けられ、空手を教わり、空手トーナメントに出場して・・・というお話。ジャッキー・チェンの初期の作品のプロットでアメリカの青春ドラマに仕立てたような感じ。日本でもまあまあ有名だが、アメリカではかなりヒットしたようで、テレビでもしょっちゅう再放送している。カラテといえばみんなまずこの映画が思い当たるような作品だ。
主人公が空手を習い始めるくだりのシーンで、Mr. ミヤギの有名な「Wax on, wax off」というセリフがでてくる。修行の手始めにMr. ミヤギが車のワックスがけを命じて、主人公がブツクサ文句を言いながら作業を始める(見たい人はYouTubeのKarate Kid Lesson 1 (Wax on Wax off)を参照)。その後、床のヤスリがけや塀のペンキ塗りなどの雑用ばかりさせられて、空手の練習が一向に始まらない。主人公がうんざりして辞めようとするところを、Mr. ミヤギが仕方なしにこれまでの雑用が空手の基礎訓練だったことを理解させるというくだりが続く(そのシーンはYouTubeでこちら)。
有名なシーンなので知っている人には今さらなのだけど、学習に関心のある人には何かと示唆の多いところがある。学習における基礎の重要さや、徒弟関係における修行の中での学習の埋め込まれ具合を端的に描写している。
空手に限らずどんな習い事も、初学者には何が基礎かもどこまでやればよいかもわからないし、目指すスキルの習得に何を鍛えればよいかもわからない。とりあえず空手の練習っぽいことをやるのが早いのだろうし、その方がカッコいいくらいにしか考えていない。なので主人公はワックスがけもただの雑用と思って適当にやろうとするのだが、それだと期待される力が身につかないので、そこは師匠がきちんと指導する。この指導が大事で、ここが抜けていると基礎練が形骸化するところだ。
仮に最初からその動作がなぜ重要なのかを教えるのがよいとしても、この映画のMr. ミヤギのように普通は師匠というのはあまり丁寧に説明してくれない。それが教育方法論的にどうであっても、「知るか、面倒くせぇ」という反応なのが普通だ。弟子は黙って辛抱して修行するもので、ごちゃごちゃ言わせない。基礎が身についてきたと思ったら、最後に成果を見せて褒める。そして次のステップへ進む。根性無しや屁理屈こねて手を抜く奴には教えない。なので、師匠はどんな弟子でも教えられるわけではなく、そのスタイルに合う弟子しかその師匠の元では伸びていかない。そういう点では、修行の場での指導と学校的な指導とはだいぶ前提が異なるし、教室で教える教師と徒弟関係の中の師匠は、文化的にそもそもの教えるスタンスが異なる面がある。
と、こんな風に学者はくどくどと理屈っぽく説明して、結局わかってもらえなかったりするのだが、映画で見れば同じことを「あー要は、Wax on Wax off ね」とパッと理解させることができるところがよいところだ。だからと行って映画ばかり見ていればいいのかというと、そういうわけでもなくて、そうやって理解した人も、そこからもう少し掘り下げて、もっとよく理解して応用したい時には、理屈っぽく考えないといけないし、そのときには、こうしてくどくどと説明する内容が効果を発揮するわけで、理屈っぽい学者の存在意義もそこにあるというわけだ。
「バーチャル遊園地」の閉鎖
仮想世界「セカンドライフ」の後に続いて、最近次々と仮想世界サービスのリリースが発表されている。その一方で今月、大手企業が運営する二つの仮想世界のサービス終了が発表された。
一つは、昨日発表された大手ゲーム会社のEAが運営する「EA LAND」。もう一つは、4月上旬に発表されたディズニーの「Virtual Magic Kingdom」。
EA-Land “Experiment” to Close Down; Ends Cycle of The Sims Online (Virtual Worlds News)
http://www.virtualworldsnews.com/2008/04/ea-land-experim.html
Disney’s Virtual Magic Kingdom to Close Doors (Virtual Worlds News)
http://www.virtualworldsnews.com/2008/04/disneys-virtual.html
日本のニュースサイトでも紹介されている。
EA-Land、早くも8/1にサービス終了… (The Second Times)
http://www.secondtimes.net/news/world/20080430_ealand.html
ディズニーの「Virtual Magic Kingdom」が5月21日に“閉園” (4gamers)
http://www.4gamer.net/games/042/G004287/20080410008/
EA LANDは以前にサービス終了した「シムズ・オンライン」を拡張して今年新たにオープンしたサービスだが、わずか半年での閉鎖となる。MMOを含めて考えると、仮想世界サービスの終了は珍しいものではなく、ここ数年、数々のサービスが出てきては消えている。最初はどれも華々しく登場するのだが、終わりは静かに消えて行って、あれ、これも終わってたのか、という感じでいつの間にか退場していく。
MMOや仮想世界(どちらもアバターを着飾って仮想空間を探索するという点は同じで、ゲームメインがMMO、ゲーム以外の活動がメインなのが仮想世界という程度の違い)のサービスは、ゲームのような見た目ではあっても、パッケージ売り切りのビジネスとは様子がだいぶ異なる。リアル世界の感覚でいえば、遊園地やゲーセンのような感じに近い。ディズニーのVirtual Magic Kingdomはまさにそういう感じでやっているわけで、アトラクションが賞味期限が来たら取り壊してリニューアルする感じで一つの仮想世界サービスを終了させて、ディズニーオンラインで提供しているToontownとか、他のサービスに利用客を流す動きなのだろうと思う。EAも他にいろいろな商品があるわけで、今いち伸び悩んだサービスを続けるよりは、早くたたんで他にリソースを投入すべきという考えも働くだろう。普通のゲームのように、売り出したらおしまいというわけではなく、運営コストが引き続きかかるので、当初の期待通りに人が集まらなければ、ビジネスを圧迫し続けることになる。なので運営企業としては閉鎖という判断はあながち悪いことではなく、調子が悪ければ早く手を打つのも一つの経営判断となる。
閉鎖にあたり、リアルの遊園地であれば、土地や設備の処分にも相当のコストがかかるが、バーチャルのサービスはその辺の撤収コストがかからない。だがその分、利用客からの反応が全く変わる。リアルの遊園地であれば、ファンが閉鎖反対の署名をしたりもするが、最後にはみんなに惜しまれてさようなら、という感じで終えられるのかもしれないが、バーチャル遊園地はそうはいかない。ユーザーの作ったアバターや溜め込んだ資産などのデータは、そのサービスが閉じてしまうと消えてしまうため、ユーザーの投入したコストや労力も一緒に消えてしまうことが問題になる。
上記二つのサービスでも、ファンがやめないでくれと署名運動を起こしているが、その性質はリアルのものとはやや異なる。「苦労して作ったキャラをどうしてくれるんだ、このやろう。」という怒りや嘆きがこもっている。コアなユーザーほど、その世界では相当に裕福な豪商だったり、英雄だったりするわけだから、サービス閉鎖による被害は大きくなる。サービスの衰退期に入れば、多くのユーザーは飽きて去っていくので大部分はそれでやり過ごせるのだが、上記のような大手のケースだと、まだユーザーもかなりコミットした状態でいきなりの閉鎖宣告ということなのだろうから、熱心なユーザーほど反発も大きいのだろう。この問題、コミュニティサービスのマネジメントという点では、面白い研究テーマだろう。
「マンガで学習」文化の輸出
大学の図書館に行くついでに、本屋に立ち寄って教育書のコーナーにマンガを見つけた。
今回見つけたのは、テスト対策教育サービス大手のKaplanの「マンガで学ぶSAT/ACT対策ボキャブラリー」のシリーズ。日本であればたいして珍しい話でもないが、これはアメリカの本屋で売っている学習マンガの話である。
Amazon.co.jp ウィジェット
これらの学習マンガは、Tokyopopという出版社からの既刊本のアレンジ再発版のようで、フキダシに出てくる単語の中で覚えるべきものに下線が引いてあって、横に意味や用法の解説がついている。マンガのストーリーを楽しみながらボキャブラリー学習ができるというもの。
マンガ自体はすでにアメリカでも定着しており、「ドラゴンボール」のような人気マンガはどこの本屋でも売っているくらいだし、「デスノート」も日本での単行本発売からそれほど時間が経たないうちに英語版が出ていた。このマンガ学習本や、DSの脳トレ北米版のようなものが出ている状況を見るに、単にマンガ文化だけでなく、日本の学習文化もアメリカに伝播してきているのかもしれない。
「シリアスゲームの現状調査報告書」
シリアスゲームジャパンの方で紹介しましたが、念のためにこちらからもリンク貼っておきます。
財団法人デジタルコンテンツ協会の実施した「シリアスゲームの現状調査」の調査報告書が同協会のウェブサイトで公開されました。下記のページからどなたでもPDFファイルの報告書をダウンロードできます。
シリアスゲームジャパンの方に簡単な内容紹介など書いてますので、まずこちらからご覧ください。
https://anotherway.jp/seriousgamesjapan/archives/001063.html
これだけしっかりまとまった報告書が一般公開されたことはとても意義あることだと思います。ちなみに、「欧米のシリアスゲームの現状」の章のGDCレポートのパートを除いた分を藤本が担当しました。手前味噌ですが、欧州のシリアスゲームの現状についてここまで詳しくまとめたものは今まで出てないので、この点でもお得な報告書になっています。
Bad Gift Emporium: 脱力プレゼント投稿サイト
妻からWebby Awardsというウェブサイトを教えてもらった。一般ユーザーが人気ウェブサイトに投票して、部門ごとにその年のベストウェブサイトを選ぶ形式で、1997年から続いている。ネット業界の人には常識なのかも知れないが、今回教えてもらって初めて見た。CNNのAnderson Cooper360ブログもノミネートされていて、妻(Anderson Cooperファン)がわざわざ教えてくれたのは、このブログに投票しろという趣旨だった。(ちゃんと投票しましたよ。>妻)
12th Annual Webby Awards Nominees
http://www.webbyawards.com/webbys/current.php?season=12
70部門くらいあって、各部門ごとに5つずつ候補がノミネートされていて、FrickrやAppleなどの有名サイトは複数の部門に重複しているが、それらを除いても結構な数のウェブサイトが紹介されている。ウェブデザインやネットサービスをやっている人には参考になるサイトも多そうだ。
このなかで目を引いたのは、Weird部門のBad Gift Emporiumというウェブサイト。クリスマスや旅行のお土産などでもらったうれしくないトホホなプレゼントを投稿して、それがアルバム風に掲載されている。Emosium(大規模小売店、市場)という名前がついているように、そのプレゼントをほしい人に譲ることもできるよようになっている。
写真だけ見ても何だかわからないのだが、クリックするとその品名と投稿者のコメントが読める。クリスマスプレゼントの投稿が多く、楽しみにして開けたプレゼントが変な置き物や意味不明の物体で脱力した様子が語られている。たしかにクリスマスに「スティーブン・セガールのエナジードリンク」とか「ケチャップ」とかもらってもうれしくない。親戚のオバさんの旅行土産でもらったものにもなかなか脱力ものの品物が並んでいる。VOWを読んでいるような感じで脱力して笑って楽しめる。息抜きにどうぞ。
American Idol特番のHeart
「American Idol」 のチャリティ特番「American Idol Gives Back」を先週やっていた。有名スターが大勢ゲストで出てきて、寄付を呼びかける番組だったのだが、ロックバンドのHeartもゲストとして出てきて、「Barracuda」を演奏した。ヴォーカルのAnn Willsonのハリのあるパワフルな歌声は健在で、さすがというところなのだが、それよりもずいぶん巨大化しているのに驚いた。若い頃とシルエットがあまりにも違っていて、出てきた時はミートローフかと思った。
ちなみに、昔はこんな感じだったのだが。
Heart – Barracuda (1977)
妹のナンシーの方も、さすがに50代半ばになるのでそれなりに老けてきてはいるものの、シルエット的にはそんなに変わってない。でも二人ともこの年齢ででこんだけロックしてればたいしたもの。どうでもよいが、よく見たら姉のアンの方はうちのオカンと同い歳だった。人に歴史あり、というところですな。
ブロガー・コンスティペイション
習慣的にブログを続けていると、ある時急に書けなくなる時期を経験する。そういう人は多いらしく、有名ブロガーでもスランプについて語っているのをよく見かける。物書きのスランプ状態の「ライターズ・ブロック」という言葉を使う人もいるのだが、そこで語られているスランプの感覚とは違う症状な気がしていた。
自分の場合どういう感じで書けなくなる症状が生じるのか考えてみると、緊急度が高くて時間のとられる仕事に直面している時、「ブログに費やす時間があるくらいなら、その仕事をやるべき」という感覚が働く時が多い。15分くらいで軽く書けるネタがあればよいのだが、書きたいことを書いていると発想が広がってつい長くなるし、自分の納得する形でまとめようとすると時間が取られて15分では終わらない。なんだかんだで一回更新あたり30分から1時間はかかる。
そういう状況下でも、書きたいネタは日々思いつく。というか、そういう時ほど書きたいことが思いつく。ブログが自分にとっては「試験前の掃除」のような位置づけで、逃避行動として機能している面があるからだと思う。以前はそういうものを思いつくままに書いていたが、そうするといろいろと支障があるので、最近はメモだけ書いて放置するようにしている。
すると、ブログのネタストックは貯まる。だがそれが逆効果になる時もある。いざ書くときになって、「これを書くなら、こっちを先に書いた方がいい」みたいなことを考え出す。すると結構その空き時間には収まらないネタだったり、頭を使わずに気軽に書きたい気分なのに、それでは書けない重たいネタだったりする。そしていろいろと書いているうちに発想が広がって結局いまいちまとまらずに消化不良になったりする。つまり、書きたいネタはあってもそれがうまくアウトプットにつながらない状態になっている。
この症状は「ライターズ・ブロック」などという品のよい表現では十分に形容できてなくて、汚い感じで申し訳ないが、むしろ「便秘」に近い状態だと思うようになった。似たような描写で「産みの苦しみ」という言い方もできるが、そんなたいそうなものを日々生産している訳でもなく、もっと日常的に出すものが溜まる感じだ(別にブログに書いているものがウ○コレベルだとか、そういうアウトプットの質の話ではなくて)。日常的に摂取したものが溜まる感じと出す感じを形容すると、これが一番近い。ネタを入れる量に比して出す量が十分でなく、体内に溜まった状態で居心地が悪い。出すものを出さないと気分が悪い。そういう感じ。
おそらく毎度しっかり書きたいタイプのブロガーに共有できる感覚なのではないかなと思って、ちょっと検索してみたら、「Blogger constipation(ブロガー・コンスティペイション)」という言葉を使っているブロガーがいた。constipationとは、「便秘、不活発」という意味で、まさにそういう身体の不活性な感覚をアナロジーとして形容している。
ブログが書けない症状というのは人それぞれあって、摂取するネタの質や日々の生活習慣などのさまざまな要素が影響していると思う。これはリアルなコンスティペイションに共通するところが多そうで、この二つのコンスティペイションをアナロジーとして考えていけば、書けないブロガーの症状を改善するのに参考になるアイデアが出てくるんじゃないだろうか。