オーランド初日

 AECT(全米教育工学会)参加のため、フロリダ州はオーランドへ向けて早朝に出発。ルームメートの中国人夫婦とピッツバーグ空港へ移動。ピッツバーグは行ったことあるし迷わないだろうと高をくくっていたら、途中で反対方向へ行ってしまったらしく、気づいた時には120マイル彼方のメリーランドの街にいた。せっかく早くにうちを出た甲斐も無く、フライトを逃してしまった。4時間後の次の便に乗れたので事なきを得たが、結局到着は夜中の2時半。初日にはオーランドに入れずじまい。翌日発表が2本あるのに、やれやれという感じでホテルでテレビをつけたらラストサムライをやっていて、うっかり最後まで観てしまった。寝たのは朝4時半。今までで一番でかい学会発表なのにやる気あんのか、という状況。とりあえず寝た。

Learning by doing

 シリアスゲームワークショップ「コンピュータゲームで英語を学ぶ」も二週目に入り、参加者の皆さんとのやり取りも順調に続いている。参加者の方々が熱心に取り組んでいただいているおかげもあり、自分としては期待以上の手ごたえを感じている。学習の場をデザインする専門性を磨くには、実際にやってみるのが一番力がつくということをあらためて実感した。
 インターネットラジオステーション「ライフロングメタル」も2回目の更新を行なった。選曲時にそのバンドの出身地を確認したり、ラジオのシステムの機能を使いこなせるようになったり、いろいろと学ぶことが多い。アメリカと日本だけでなく、ノルウェーやスウェーデン、ブラジルやペルーにまでリスナーがいる。聴取時間も述べ100時間を超えた。アメリカの片田舎にいる日本人がかけているスカンジナビアンメタルやジャーマンメタルの曲を、その本場の国の人々がわざわざ聴いてくれているというのは、なんとも素敵な経験である。
 肝心の論文とか学会発表の準備がはかどらなくて、自分の好きでやっていることばかりはかどっているのは、ややマネジメント上の問題はあるが、やはり何事も実践を絡めていかないといけないなということを実感している。大学院に身をおいていると、読書で吸収することが中心になって、実践といっても教室でのディスカッションや小プロジェクト程度の日々が続く。学習の場をデザインする勉強をしていて、理屈の勉強ばかりでデザインする回数は多くはない。デザインの練習だけでなく、デザインしたものを実際に導入するところまでやった方が、断然身につくものが多い。IDの講座で、評価の部分が弱くなりがちなのは、本気で導入のところをやらせてないからである。形成的評価も総括的評価も、理論の表面をなぞっただけでおしまい、ということになりがちだ。分野は違うが、高校日本史で、原始時代や中世はしっかり教えるのに、近現代は駆け足で終わらせがちなのに似ている。理屈に沿って教えるとそうなる。実践を通して教えれば、実践の中で一番重要なことから学ぶことができるし、理論の吸収もよい。教室や単位数という学校的な枠組は、実践には障壁となる面が大きい。IDも実践重視で教えれば、早いサイクルで形成的評価までたどり着いた方が、タスク分析や学習者分析の質が上がるし、インターフェースの調整の手間も減るということが身にしみてよくわかる。教室でテキストに沿って、分析フェーズから丁寧に教えていくと、事前の分析から手順を追ってきちんと進めるのが大事です、みたいな話になって、時代遅れのウォーターフォールなインストラクショナルデザイナーばかりが育ってしまう。熟練デザイナーはADDIEのようなIDモデルをメタ知識化していて、いちいち参照して手順どおりに進めていたりはしない。その熟練の域に近づくためには、デザインの数をこなしながら足りない知識を補足していくトレーニングをどこかに織り込んでいなければならない。座学で知識を得てから、演習科目や教育実習をやったのでは、演習の頃には座学で学んだことなど忘れてしまっていて、学び直すことになって効率が悪い。何を教えるにしても、学んだことをきちんと使いこなせるようにすることを考えれば、実践の機会は不可欠であるし、それができているところはまだ少ない。

ゲームで英語を学ぶ

 先日シリアスゲームジャパンで告知した「シリアスゲームワークショップ:コンピュータゲームで英語を学ぶ」も、参加希望をいただいて、来週より実施の運びとなった。約6週間の間に何をやるか、いろいろとアイデアを練っているところで、参加者の皆さん以上に、私の方もどんなことになるかとても楽しみにしている。

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インストラクショナルデザイナーに向いてる人

 インストラクショナルデザイン(ID)という名称も少しずつ一般に普及してきて、そのうちIDをご指名で勉強したい分野として志す人も少しずつ増えてくることと期待している。IDの理論を学ぼうとも学ばずとも、インストラクションを設計して、学ぶ仕組みを作る人はインストラクショナルデザイナーである。これは前にも書いた
 では、インストラクショナルデザイナーに向いてる人はどういう人か。間違いなく、勉強が好きではない(嫌いな)人、あるいは楽をして勉強することばかり考えている人に適性の高い職種だ、と私は思う。基本的にインストラクショナルデザイナーとは、何か学ばないといけないことがあったら、それを教える人ではなくて、効率的効果的に学ぶ方法を考えて仕掛けを作る人のことである。効率的とは、習得スピード向上や手間の軽減のことで、効果的とは、同じことを学んで、より深く学べるとか、余計に力がつくということを意味する。なので乱暴に言えば、「手間をかけずに、よりよく学ぶ」ということを追求するのがインストラクショナルデザイナーの仕事の重要な側面である。手間をかけずに学ぶには、手間をかけずに学ぶことを常日頃から考えている人の方が、感度は鋭いはずなので、その点において適性がある。インストラクショナルデザイナーの努力のしどころは、「無駄な努力をせずにすませる方法」を考えることである。これは「努力をしない人」とは違う。無駄な努力をせずに済ませることを考える人は、楽をするためにはある程度の手間が必要だということを知っていて、必要な手間は惜しまない。その点が努力をしない人との違いである。

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ドラえもんの人生ゲームと作り手の想像力

 ちょっと前の話になるけど、先月東京に滞在している間に、有楽町のビックカメラのおもちゃコーナーに立ち寄った。日本に帰る度におもちゃ屋に寄って、どんなのが流行りなのかを見るようにしているのだが、今回はずいぶんフィギュア系のおもちゃの凝ったものが増えた気がした。あまり金が無かったので買わなかったが、幕末の有名シーンのフィギュアが気に入った。別のコーナーでは、子どもが父親とムシキングで遊んでいた。最近の子どもは複雑なルールとすごい情報量の遊びを楽しんでいるのだなと感心する。
 ボードゲームのコーナーでは、ドラえもんの人生ゲームを売っていた。これは面白そうだと眺めていたら、ゴールのところがひっかかった。億万長者のゴールの方が、しずちゃんと結婚でハッピーエンドとなっているのだが、ゴーストタウンがジャイ子と結婚になっていて、うれしそうなジャイ子の顔と、泣きわめくのび太が並んでいた。ドラえもんのストーリー的にはそういうつくりになるのかもしれないが、ジャイ子と結婚するのが、人生ゲームの最後の大負けのゴーストタウンとは。なんとなくジャイ子がかわいそうでいたたまれない気分になった。ゴーストタウン行きというのは、ものすごい人生の敗北者的なインパクトで、子ども心にうわー負けたーという気分にさせられるものであって、ここではジャイ子と結婚したのび太の将来の、会社丸焼けと破産にした方が趣旨に合ってるし、何もジャイ子をそんなにおとしめなくても。というか、そもそもハッピーエンドの方もしずちゃんと結婚というだけなので、オリジナルの人生ゲームの深みが抜けてしまっていて、全くダメである。人生ゲームの趣旨をまるでわかっていない。
 

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メタルラジオ局始めました

 かねてより構想中だったプライベートメタルラジオ局を昨晩ついに立ち上げた。
Lifelong Metal
http://www.live365.com/stations/anotherwayrock
#利用にはLive365のユーザー登録(無料)が必要です。
#メタルを聴かない普通の方にはやや濃い目の選曲になっているので、ご試聴の際は、ウェブサイトでスケジュールをチェックして、ハードロックゾーンの時間帯に聴いていただくと、ソフト目の曲が中心の選曲になってます。
 利用しているのは、Live365というネットラジオサービス。低料金で誰でもネットラジオを開設できるサービスで、サービスの売りは著作権処理の業務を一括代行してくれること。日本のJASRACとは契約していないそうなので、日本の曲はかけられないがもともと邦楽はそんなに聴かないので個人的にはこれで十分。
 選曲して、音源データを準備して、アップロードして、スケジューリングして、という作業をやっていたら半日かかってしまった。でも今やっておかないともうできるタイミングは冬休みとかになってしまうので、とりあえず勢いで始めてみた。途中、インターン先のマネージャから急きょ呼び出しがかかって、(自分のミス絡みだったので仕方ないけど)仕事させられる羽目になったが、それでもめげずに立ち上げまで作業をやりきった。モチベーションの力である。
 昔からメタルDJを一度やってみたかったので、つたない喋りを収録して、DJ付きの番組も作ってみた(笑)。かみまくって何度も取り直したけど、繰り返しているうちに曲紹介はワンテイクで取れるようになった。やはり何事も練習である。疲れたけどすごく楽しかった。やはり仕事ばっかりしていてはだめで、こういう楽しいこともやった方がいいなとあらためて思った。

マンガ紀行

 今回は、日本で仕事以外にくつろぐ時間はほとんどとれずにそそくさと帰ってこざるをえなかったのだが、マンガもまあ読んだし、ニンテンドーDSも買ってきた。飛行機の行きは新書の「ドラえもん学」を時には笑いを、時には涙をこらえながら読破した。やっぱドラえもんは素晴らしい、ということで。
 帰りはマンガ「デスノート」を買い込んで長い乗り継ぎ時間中もずっと読んでいた。デスノートは、マンガ喫茶で読み始めたのだが、台詞の長さと話の複雑さもあって、読むスピードが遅く、一冊あたり1時間弱かかっていた。そうすると、少年誌の単行本は価格が安めなこともあって、実は買って読んだ方が安くつくことに気づいた。そこで駅前の本屋で残りの全巻を購入して、道々読むことにした。マンガ喫茶は量をこなせるマンガを読むときに有効なのだなと学んだ。デスノートはかなり面白かった。ルール設定の複雑さで、崩壊するかと思いきや、ストーリー展開のうまさでカバーして、読者を引き込む作品に仕上がっている。超人的な主人公の思考プロセスをかなり詳しく描写しているので、その思考を追うことで、直接的ではないにせよ、間接的には読者の思考力や論理力強化につながるのではないかと思った。24やザ・プラクティスを見て、アメリカのTVドラマがすごいなと感じたように、今回このデスノートやプルートウを読んで、日本のマンガのすごさを感じた。日本では脳を鍛えるのが流行っているようだが、鍛えて脳を活性化した後には、よいマンガを読んで、中身を充実させることをおすすめしたい。いいマンガを読むと頭がよくなる、というのを誰か普及させてほしいものである。
 ところで、ニンテンドーDSで話題の「川島教授の脳を鍛えるDSトレーニング」を試してみた。これが人気なのは、プレイ感のよさにあると思った。ペン入力の反応がよくて、トレーニングのテンポもよく、イライラさせられない。初心者にやさしいシンプルなつくりになっているので、敷居も高くない。コンセプトだけでなくて、それを支えるソフトとしての完成度の高さがあってのこの人気なのだなと理解した。注目の脳年齢は、かなりがんばって31歳。ほぼ年齢並み。30過ぎてゲームやってへビィメタル聴いてても、脳の方は大丈夫ということで。

いまだ時差調整中

 10日間のジャパンツアーを終えて帰宅してから一週間経つが、まだ微妙に時差ぼけが抜けず、夕飯の前に寝てしまって、そのまま早朝というかまだ夜中の時間帯に目が覚めて、そのまま一日活動してはまたくたびれて早寝、というパターンが続いている。とりあえず授業も二週目に入っていて、授業への対応で時間をとられる。大学院生活も4年目に突入しており、そろそろ授業はもういいやという気がしてきた。
 今回の日本での仕事は、池に石を投げ込むようなもので、日本ではまだ取り組まれてない研究をやってますよ、と数年後に日本で本格活動をする前のショーケースの意味合いが強かった。投じた石の波紋は思ったよりも大きかったようで、あちこちからよい反応があったのはうれしかった。
#今回の仕事の一部は次のサイトで紹介されているのでご参照ください。
CEDEC 2005リポート:“ゲームは有害だ”と言うだけでは社会的にも停滞感が生まれてしまう
 次の一歩として目指すは、翻訳と書き下ろし本を一冊ずつ仕上げて、取り組んでいる研究分野への認知のすそ野を拡げることである。冬休みは来期の博士課程の修了テストの準備と並行して、本の執筆に時間を割くことにしたい。ペンシルバニアの冬はどうせ寒すぎで外にも出たくないので、こういう引きこもっての仕事にはとても向いている。

仕事の報酬は仕事

 CEDECでの仕事も終わり、残りの日程は、友人宅に泊めてもらった。一週間もホテル生活をしていると気も休まらず、仕事へのモチベーションが下がるが、あたたかく迎えてくれて、いろいろ楽しい話ができると、気力も回復して、元気よく仕事ができるのでほんとにありがたかった。講演で今回の仕事は終わりで、後は買い物と帰ってからの準備に時間が使えるなと思っていたのだが、日本にいるうちに詳しく話が聞きたいとか、個別にディスカッションしたいといったリクエストで、企業数社との打ち合わせが入った。講演がパッとしなかったらこういう話にはならないわけで、そういう意味では今回は上手くいったということなのだろう。まさに仕事の報酬は仕事だなと思った。

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CEDEC二日目

 初日のセッションで仕事のヤマも越え、気が抜けて疲れが出た。よく考えたら、日本に着いた日からずっと睡眠時間4,5時間だったのに気付いた。そりゃ疲れもするさ。前日で名刺がそこを尽いて、夜のパーティに名刺なしで出るのはちょっと厳しかったので、早朝キンコーズへ行って、スピード名刺を作成。待ち時間があったのでここぞとばかりにマンガ喫茶へ行って、マンガを読み漁った。しかし何冊も読めずに中途半端で消化不良。
 名刺も確保したところで会場へ。セッションも適当にのぞいてみつつ、あまり気合が入らないのでほどほどにして、カフェテリアで大学院の授業の課題などやっていた。実は今週から授業が始まり、すでに事前課題も出ているのだが、そういうのもほったらかしでこちらに来ているので、さすがに着手しないとまずくなった。学会誌に投稿しようと思っていた論文は締め切りまでにあがらず、残念ながら今回は投稿見送りにしてしまった。

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