ゲームで英語を学ぶ

 先日シリアスゲームジャパンで告知した「シリアスゲームワークショップ:コンピュータゲームで英語を学ぶ」も、参加希望をいただいて、来週より実施の運びとなった。約6週間の間に何をやるか、いろいろとアイデアを練っているところで、参加者の皆さん以上に、私の方もどんなことになるかとても楽しみにしている。


 教育は実践の学問であって、実践の学問はAをやればBという結果が返ってくる、というような科学的、工学的なものではなく、現場での微妙なさじ加減によって結果が左右される性質のものである。定式化された方法に沿ってやれば同じ成果が出せるということはなく、同じ教材で同じ人間が教えていても、毎回結果は変わってくる。関係する変数が多すぎて、まったく同じ状況を再現することは困難である。それは音楽や演劇などのパフォーマンスアートと同じであり、職人が作る工芸品と同じである。サイエンスかアートかと問われれば、アートの領域が深く関与する学問である。コンピュータを用いた自動教材であればそのブレは抑えられるが、今度は人が関与することでもたらされる深みが実現できなくなるし、そこにもインターフェースの作り方やフィードバックのタイミングなど、定量化できていない、作り手の持つ微妙なさじ加減のアートによって質は全く変わってくる。教育工学と呼んではいても、完全に工学的に扱えるものではなく、教える現場、開発現場での微妙なさじ加減の調整の腕をどう磨くか、ということが一番の課題になってくる。
(そのようなことを考えていたら、ちょうど早稲田大の向後先生がこの辺の問題意識で論文を書いておられるのを発見した。旧来の工学発想では教育全体を支える教育工学にはなりえないという指摘と、ワークショップ研究の考察をされていた。すばらしい。)
 ということで、今回のワークショップは、私にとっては教育工学者としての実践の場であり、教育のさじ加減を学び鍛える場である。オンラインでゲームを使うだけでも、英会話学校のようにン十万もかけなくても、その十分の一の予算でしっかり英語を学べるということを実証する場でもある。授業の課題や研究や10月の2本の学会発表の合間をぬっての活動になるので、厳しい局面が続きそうだが、どんな成果が得られるかとても楽しみだ。
(#このエントリーを書いてる今現在、残席1席のみなのでお申込はお早めに!)