日本教育工学会全国大会@東北大学での発表予定

明日9月28日から東北大学で開催される日本教育工学会 第34回全国大会参加のために仙台へ向かっています。

今年は東大でMOOC開発を担当している荒さんの発表と、担当しているPAGEプロジェクト特任研究員の下山田さんの発表に連名で参加しています。

それと毎年恒例で第4号目の発行になった「SIGレポート2018」の会場配布を行いますので、大会参加される方はSIGブースへお立ち寄りください(PDF版も公開しました。こちらからダウンロードしてご覧ください> https://goo.gl/e1R75g )。私は「学習ゲームデザイン・導入支援ツールの開発」を執筆しました。現在開発中のゲーム学習導入支援ツールについての論文です。最終日の30日のSIG-05「ゲーム学習・オープンエデュケーション」のSIGセッションでゲーム要素を取り入れた授業デザイン体験ミニワークショップを行います。オープンエデュケーション、ゲーム学習それぞれ体験ワークを用意してお待ちしてますので、是非SIGセッションの方もお越しください。


日本教育工学会 会場:東北大学 川内キャンパス
第34回全国大会 2018年9月28日(金)~30日(日)

教育評価 (2) 9 月 30 日(日)9:00 ~ 11:00 会場:講義棟 B 棟 B204
3a-B204-01 複雑な構造の MOOC における学習軌跡の可視化手法の提案, 荒 優,藤本 徹,山内 祐平(東京大学) 789-790.

International Session(3) 9/28 (Fri.) 14:00 ~ 15:20 Place: Lecture Rooms A: A101
I1p-A101-04 Implementation and evaluation of blended workshops on EMI, SHIMOYAMADA, Sho.,KINOSHITA, Shin.,NAKAZAWA, Akiko. FUJIMOTO, Toru.(The University of Tokyo), 943-944.

教育評価 (2) 9 月 30 日(日)9:00 ~ 11:00 会場:講義棟 B 棟 B204
SIG-05: ゲーム学習・オープンエデュケーション
9月30日(日) 14:10〜16:10 会場:講義棟A棟 A102
コーディネーター:重田 勝介(北海道大学),池尻 良平(東京大学),福山 佑樹(明星大学),藤本 徹(東京大学),永嶋 知紘(カーネギーメロン大学),石井 雄隆(早稲田大学)

藤本徹(2018)学習ゲームデザイン・導入支援ツールの開発. 日本教育工学会 SIG-05レポート2018. 3-7.

SIG-05レポート2018
https://goo.gl/e1R75g

e-Learning World 2009 感想(2)

 e-Learning World の二日目は午後から、東京大学の中原先生と早稲田大学の向後先生のセッションに参加してきました。前半の中原先生セッションは「企業人材育成の最前線:人が育つ職場づくり」というテーマで、会場に入ってみるとテーブルが講義形式から6人ひと組の島になったワークショップ形式。進行は途中で小刻みに小作業を入れながらワークプレイスラーニングのトピックを説明するという進め方。聞いているだけの時間は10分もなくて、インタラクションが豊富で、最後にはレゴを使った作業まで入れてしまうという展開で、普段東大で開催されているLearning Barのショーケース的な感じなのかなという印象でもあり、90分でこれだけ盛り込んで時間の経過を忘れるような楽しいセッションは、さすがという印象でした。
 中原先生には3年前にBEATセミナーでお招きいただいてご一緒したことがあったのですが、その時のプロデュース手腕を目の当たりにして、この人は将来、「教育学界の大物興行師」になって名を残すだろうなんていうコメントをしたこともありましたが、もはや中原プロデュースのLearning Bar は毎回抽選になるほどの人気ぶりで、将来どころか数年のうちにブレイクして、新たな学びの場のスタイルを切り拓いているところは感心するばかりです。
 後半の向後先生のセッションは、「成人教育学に学ぶeラーニングの可能性」というテーマで、成人の学習傾向や特徴からEラーニングを捉え直すという内容でした。中原先生がワークショップでにぎやかにやった後はさぞやりにくいことと思いましたが、向後先生の話術と重要な論点をすっきり整理した解説で何の支障もなく、前半とは異なる趣きで楽しいセッションとなりました。
 実用指向性、経験の蓄積、自己決定性、というキーワードから展開して、子どもを教える時とは異なり、成人の発達と学習の習熟の差に配慮して教えることの重要性などの話題を、Eラーニングの設計を絡めて語られていました。早稲田大学人間科学部のeスクールがもうだいぶ長い実績を持っており、これまでeスクールで指導してこられた向後先生のご経験に基づいた話が参考になりました。オンライン掲示板を単に導入するだけだとうまくいかなくて、どう使うべきかというような話は実践してみないと何が問題なのかがわかりにくいところで、その辺りの話はこれまで以上に関心を持ちました。
 セッションの後、向後先生に同行してExpoの方を少し見学してきました。前回このExpoを見学したのはたしか2002年だったか、まだITバブル冷めやらぬころのExpoのにぎやかな雰囲気だった気がします。今回は当時と比べて随分スペースも縮小されて、出展数も参加者数もおとなしい感じでした。これくらいの方が落ち着いて見て回るには良いかもしれません。出展企業や団体のだいぶ顔ぶれも変わったような印象です。Eラーニングの重要度は変わらないわけですし、少し前の状況が過熱気味だったと考えれば、これから着実に実力を蓄えてきた企業(や大学)が伸びていくのであれば、それはそれでよいことなのではないかと思います。
 所用で残念ながら3日目は参加できなかったのですが、しばらくぶりのe-Learning World参加はなかなか得るところがありました。

e-Learning World 2009 感想(1)

 しばらくネットから離れた生活をしていたことなどあって、実に今更なタイミングですが、とてもためになる機会だったので、8月5~7日に開催されたe-Learning World 2009 Expo & Conference の感想を。
 今回はカンファレンスの方を中心に参加しました。初日午後は熊本大学鈴木先生と根本先生のセッション。前半は根本先生によるグリーンブック3(Instructional-Design Theories And Models: Building a Common Knowledge Base)の読みどころ解説。グリーンブックはインストラクショナルデザインの理論や設計アプローチを網羅的に論じた大著。前の2作は、その時点での最新の理論やトピックを取り上げた多様な論文に編者の解説で統一感を持たせているという作りでしたが、3冊目となる本作ではもう一段階踏み込んだ編集になっていて、ID分野をより統合的に論じて、共通言語を共有しようという意図で編集されています。個人的に、本書は手に入れてからなかなか読む時間が取れずにいたので、レビューするのによい機会でした。
 全18章400ページ以上にわたる密度の濃い論文集で、抄読会のような形でじっくり一章ずつ読んでも一度ではなかなか消化するのは大変なので、90分のセッションで解説するのは至難の業。読んだ内容をよくわかってないとうまく説明できないし、どういう説明をするのかなと思っていたら、そこはさすがインディアナ大に留学して編者のライゲルースから直接教えを受けた根本先生、この本の持つ意味を踏まえながら、全体の構造をよく整理して解説してました。
  
 後半は鈴木先生の「IDの美学的検討」をテーマとしたセッション。パリッシュの「IDの美学第一原理」の論文を題材に、これまでのIDへの批判や発展の経緯に触れながら、インストラクショナルデザインに美学的な要素を取り入れて考えた場合の枠組の解説がありました。学習者を学習の主人公として捉えて、学習者の経験を物語として見つめ直すことが重要な論点として挙げられてました。学びやすさやワクワクするような学習経験をどう提供するかという視点は、現在のeラーニング講座開発で抜け落ちているところがあって、鈴木先生のレイヤーモデルの話も合わせて、今後さらに議論を深めていく必要があるテーマだと思います。
 質疑応答の時に質問したのですが、美学第一原理というのがIDの淡白さやデザイナーの評論家的姿勢が形成されてきたことへの批判を関心として出てきたという経緯がある一方で、提示されている分析視点や枠組だけが独り歩きすると、評論家的な姿勢を強めるものとなってしまって逆効果になるのではないかなという印象を持ちました。むしろIDが美的に優れた製品を生み出せない要因は、作り手が美的観点を意識してないからではなく、作り手が美的に優れたものをアウトプットするための基礎的なスキルを持っていないことの方が大きい気がしています。
 映画でも絵画でも、芸術作品というのは理屈を知るだけでは美的に洗練されたものは出せないし、スポーツでも芸術的に美しいパフォーマンスが生み出せるのはその土台となる基礎スキルがあってのことです。そのため各分野のパフォーマーたちは日々スキルを磨いて繰り返し練習しています。プロとしての熟達までに10年1万時間、という話もあるように、どの分野でも才能ある人が地道に息の長い鍛錬を経て、ようやく美的に優れたものが生み出されるというのが実際のところでしょう。
 なのでこの問題は美的観点を話題とすることと同時に、IDの専門家が熟達するまでのトレーニングパスが整備されていないことにも目を向ける必要があると思います。鈴木先生はまさにその問題を痛感しておられて熊大の大学院プログラムを整備しているところですから、わざわざ指摘せずとも進んでいる話ですが、ID専門家養成には、素振りやキャッチボールに当たるような基本動作の習得訓練のための個々のスキル訓練メニューをまだまだ充実させる必要があると思います。
 今回の美学的検討の話は、この観点からの気づきも多いので、議論の切り口としてはもちろん大いにありです。その上で、美的に優れたアウトプットを出せる人材をどう生み出していくかという観点から、必要な算段を打っていくことが必要だという思いを新たにしました。
 この二つのセッションの重要な点は、IDの知識基盤が時代に合わせて変化していることを国内で議論する俎上に載せた、ということでしょう。以前から、IDに対してID嫌いの研究者の間で根強く存在する「教え込み批判」というのがあります。教え込みを是とする学習観で教育する側が教えたい知識を教え込むための理論やテクニックに偏重している、それにIDの開発過程が冗長で実用的でない、というような批判がかなり前から行われてきました。eラーニングが教育業界で注目された10年くらい前にはこういう批判が結構強かったように思います(最近では批判そのものをあまり耳にしなくなりましたが、これは逆にID自体のプレゼンスの問題がちょっと気になるところではありますが)。
 しかし、グリーンブックの変遷だけを見ても、IDの理論やバックにある思想や学習への視点は常に変化していて、ID批判やこれまでの実践上の課題に対応しながら発展していることがわかるし、美学的観点からの見直しという考え方も、IDの自己革新を模索する一つの事例だと言えると思います。
 長くなってきたので、二日目の話は次回へ。

アンラーニングの難しさ

 大学で授業を担当していて、毎回学びについて気づきがある。こちらが不慣れなおかげでうまくいっていないこともあれば、一人の教員が週に1度、ある程度の人数(今回は40数人)を教室に集めて一度に教えるという形式そのものに起因する問題もある。教える側の不慣れさから生じる問題は、多分に慣れていけば解消するが、授業の形式からくる問題は、実に悩ましいところがあって、昔から議論されている教育方法上の問題を一つ一つおさらいしている感がある。

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ゲーム開発におけるデザイナーの仕事

 前回のデザインの話にちょうど関連して面白いインタビュー記事があった。シムシティやザ・シムズなどの多くの人気ゲームを手がけたクリエイター、ウィル・ライト氏の新作「SPORE」に関するインタビュー。
7年がかりで,ついに完成した「SPORE」。プロデューサー,Will Wright氏のインタビューを掲載 (4Gamer.net)
http://www.4gamer.net/games/020/G002026/20080814032/

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インストラクショナルデザインの「デザイン」について考える(2)

前回からの続き)
 そのため、設計スキルだけを磨いてもインストラクショナルデザイナーはその力を発揮する機会は少ない。自ら教師としての指導スキルを磨くか、エンジニアとして開発スキルを磨くか、優れたチームを率いるためのプロデューススキルを磨くか、指導、開発、プロデュースいずれかのスキルをセットで持たないと、現場ではインストラクショナルデザイナーとして活躍することは難しい。いくらレッスンプランやそれらをまとめたコースプラン、さらに複数のコースを体系化してカリキュラムプランを上手に書けたとしても、結局のところはそれが実際にどれほど優れているかを示す手段を持たなければ、インストラクショナルデザイナーは自らの存在意義を示すことができない。

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インストラクショナルデザインの「デザイン」について考える(1)

 しばらく自分の研究のことばかり考えていて離れてしまっていたので、インストラクショナルデザインについて、久しぶりに少し掘り下げて考えてみた。
 ファッションのデザインをする人をファッションデザイナー、インテリアのデザインをする人をインテリアデザイナーと呼ぶのと同じように、インストラクション(とその周辺)のデザインを行う人をインストラクショナルデザイナーと呼ぶ。だが他の分野のデザイナーの「デザイナー」と、インストラクショナルデザイナーには、デザインの意味するニュアンスもデザイナー自身の関心も異なっているところがある。

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ペンステートのバーバラ・グラボウスキ教授来日

 インストラクショナルデザインネタは久々ですが、ペンステートの教授システム学専攻の教授がもうすぐ来日して、東京、大阪、熊本で講演を行うそうなのでご案内します。ちょっとした来日講演ツアーになってます。熊本大学の鈴木先生がアレンジされていて、お二人ともInternational Board of Standards for Training, Performance and Instruction (ibstpi)の代表理事として活動しています。
 グラボウスキ教授は、ペンステートの当専攻で長年にわたってインストラクショナルデザインの研究者と実践者を育ててきて、本人も筋金入りのインストラクショナルデザイナーです。個人的には彼女の講演を聞く機会はなかったですが、ペンステートで開講されている彼女の授業は、インストラクショナルデザイナーがデザインした授業のお手本で、彼女の卓越したファシリテーションスキルが加わることで授業がとても密度の濃い学習空間に変わります。同じ教室と時間を使ってもこれほど違う授業ができるのかと感心させられることばかりでした。
 今回の講演は、インストラクショナルデザインのスキル体系などに関心のある方にはよい機会になると思います。

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熊本大学ご一行様来訪

 今週はこのペンシルバニアの田舎街まで、はるばる日本から来客があった。日本のインストラクショナルデザイン研究の第一人者の鈴木克明教授はじめ、熊本大学教授システム学専攻の研究者の皆さんがペンステートのインストラクショナルシステムズプログラムを訪ねてきてくださった。
 2年前の専攻の開設直前にも一度来ていただいていて、今回は2回目になる。今回は同専攻が2年経って修士プログラムが一巡した段階で、さらにオンラインで博士課程もこの4月から開設されるということで、こちらの教員や院生たちも興味を持って訪問団を迎えた。熊本大学での取り組みを紹介してもらうセッションを行い、当プログラムの教員や大学のコースマネジメントシステム、オンライン大学の担当部署のマネージャーなど、さまざまな人たちと3日間で10数件のミーティングが行われた。
 当プログラムの教員にはほぼ全員会っていただいて、従来のインストラクショナルデザイナー教育のなかで最近の学習科学の研究をどう位置づけて扱っているのか、オンライン教育における教育の質の問題などのテーマで密度の濃いディスカッションが行われた。特に学習科学の話は、ちょうど前に書いたように、うちのプログラムでも関心の高まっているタイミングだったのでホットな話題だった。
 日本からのはるばるの訪問ということを聞いて、普段はなかなか会う機会の作れない著名な教授にも会うことができた。HRD分野ではたいへんに著名で、ワークプレイスラーニングやパフォーマンスマネジメント、タレントマネジメントといった日本でも関心が高まっているテーマではよく引用される、Dr. William Rothwell を訪問して最近の著作や中国の外資系企業での研修などの話を聞かせてもらった。ありがたみがわからないとは恐ろしいもので、この6年近くの間、いつもうろうろしている同じフロアにこんな著名な研究者がいるとは知らなかった。彼の研究室は最近引退したDr. Frank Dwyerの部屋に移っていたので、前よりも勝手のわかるアクセスしやすいところに彼はいたのだが、全くその恩恵を得ていなかったことを痛感した。彼の話も留学してすぐの頃に聞いていれば、その後の進路もだいぶ違うものになっていたかもしれないなと考えさせられた。ペンステートは、教育学分野でも充実したプログラムをそろえていると評価されていて(ランキング一覧、教育工学分野は主要なランキングで扱われてないのでうちのプログラムは残念ながら載ってない)、この大学の研究者人材の豊富さにあらためて舌を巻く思いがした。
 それにもう一人、遠隔教育分野で世界的な研究者として知られるDr. Michael Mooreにも面会できた。彼とは何度か会ったことがあるのだが、やはり日本でオンライン教育を実践されている人たちとの話ということだと聞ける話が違うので楽しかった。彼に限らず、研究者たちの話は普段とは違うところがあり、今まで授業やプロジェクトで接してきたこととは違う側面で話が聞けた。これは教育学でいうところのヒドゥンカリキュラムのようなもので、そういう意味では案内した僕自身が相当によい経験ができた。もっと早くに聞きたかったなという話もあるが、早ければその重要さを理解できなかったかも知れないし、もっと後に聞けばもっと違ったありがたみがあるのかもしれないし、なかなか難しい。結論としては、そういうよい機会を継続的に提供できる環境を作れば、タイミングの問題は重要度が下がるので、よい経験ができる機会を増やす方向で考えるのがよいのだろう。そういう意味ではペンステートがその環境が提供されているのは間違いない。
 ペンステートの各オンラインプログラムでも、博士課程のカリキュラムはこれからそろそろ動き出そうかというところなので、熊本大学はその面では先を行くことになる。また数年後にその成果を持ってこちらの研究者たちと話ができる日が来れば、さらに楽しいことになるだろう。
 熊本大学ご一行は、この後の目的地へ出発され、現在取り組まれている大学院改革支援プログラム(特色GP)のプロジェクトで、カリキュラムや教育情報システムの国際共同開発を進めるとのこと。日本では他のどこもやっていない取り組みで、こちらもどんな展開になるのかとても楽しみだ。

新任教員選考ウィーク

 ペンステートのインストラクショナル・システムズプログラムでは、最近新しい教員を公募していて、今週は最終選考に残った3人の候補者のインタビューとプレゼンテーションがそれぞれ行われた。
 各候補者は、選考委員の教員、学部長、カレッジ長、など主だった人々と面接や会食を重ねつつ、自分の研究について発表する機会を持つ。その発表は大学院生も聴講でき、各自の発表への感想や候補者への印象をアンケートでコメントできる。選考委員はそれらのコメントも選考の判断材料として利用する。選考委員たちは一連の選考過程から得たデータをもとに選考結果を出し、カレッジ長へ推薦を行う。そして選ばれた候補者にオファーが出されてその候補者が受ければ、晴れて採用となる。
 ペンステートのインストラクショナルシステムズプログラムは、全米のこの分野の大学院プログラムの中でもトッププログラムの一つとして認識されていることもあり、最終選考に残った3人の候補者の経歴はそうそうたるもの。みんなトップスクールや、教育工学分野では著名なプロジェクトで働いた経歴を持っている。このうち誰を採用しても当たりという感じなのだが、それぞれに強みや研究の関心が違っている。あとはプログラムの経営判断の問題で、候補者の能力の優劣よりもむしろ、プログラムがどういう方向で発展したいかによって誰を選ぶべきかが決まるだろう。
 今回の教員採用も含め、ペンステートのインストラクショナルシステムズプログラムは、教員の顔ぶれの入れ替わりとともにプログラムの個性が変化しつつある。まず、6年前に学習科学系と目される2名の若手教員を採用した。学部長を務めていたDr. Kyle Peckがカレッジ副学長に出世して経営サイドに回り、昨年は長年活躍してきたDr. Frank Dwyerの引退とともに、ミネソタ大からDr. Simon Hooperが加入した。そして今回再び、学習科学寄りの研究者を採用することになる。(プログラムの教員の顔ぶれ
 現在のプログラムを支える女性教員たちは、MerrillやReigeluthやHannafinやJonassenといった、教育工学分野の重鎮たちから直接指導を受けたり、ともに仕事をしたりしてきた人々だ。それにJonassenは2000年ごろにミズーリ大へ転出するまでペンステートの教員だった。そのような人脈の中で、ペンステートのインストラクショナルシステムズは、AECT(全米教育工学会)を中心に活動する教育工学分野の研究者の主流の流れに位置していて、トラディショナルな教育工学教育の拠点ともいえるプログラムだった。
 この動きを理解する一つの背景として、アメリカの教育工学分野の近年の動向がある。この分野の大学院プログラムは、学習科学として位置づけられている近年の研究の流れをどう扱うかというところが一つのテーマになっている。研究資金の流れなどの政治的な話も絡んでくるので、教育機関の経営の舵取りの問題としては結構重要な問題になる。Learning Sciencesプログラムとして新たに立ち上げる大学もいくつか出てきていたり、インディアナ大のように既存のISDのプログラムとは別枠でプログラムを作る動きもある。だがこれも数校単位の話で、そもそも研究者の数が限られているので、大半のところは同じプログラム名で関わる教員の属人性でそのプログラムの持つカラーが決まる。
 ペンステートではこの研究分野の変化に対して、学習科学系の教員を採用することで、融合の方向で進んでいる。この辺りは各大学のプログラム長や学部長レベルの経営判断の問題で、社会的情勢変化をどう読み、政治的な(というか多分に研究者同士のエゴ)問題をどう消化していくかといった、舵取りに関わる研究者には研究者としての見識はもとより、経営的な能力や人間的な度量が試される。その点、ペンステートのこのプログラムに関しては、明確な意志とこの分野のトッププログラムである自覚を持って舵取りを進めているところが随所にうかがえる。おそらく大学院生レベルには見えてこないところでいろいろと問題もあるのだと思うが、少なくとも見えているところはとても気持ちよく、安心して見ていられる。
補足:
学習科学とISDの関係については以前に少し書いていたのを思い出した。
http://www.anotherway.jp/archives/000609.html
 これを書いたのは、2年前の修了試験準備の頃。この試験のシステムも今では変わり、テスト対策の詰め込み勉強をしなくてもよくなった代わりに、明確な研究テーマ無しには試験を受けられなくなった。どちらのシステムにも一長一短があり、それぞれに厳しさがある。個人的には旧システムの短所の影響を受ける真っ只中だったりする。あぁ。