もう今年を振り返る時期になってきました。今年もいろんなことがあったのをしみじみ感じます。振り返る題材として、各種執筆や発表などの活動成果を整理しました。他にも業務上の活動やインフォーマルな勉強会なども結構ありますが、オフィシャルな活動は以下のような感じです。
こういうCVのアップデート作業はためてしまうと面倒だし、できる研究者の方たちはみんなマメにアップデートしてるみたいなので、せめてこの部分くらいは見習って、マメに更新できるように心がけたいと思います(昨年も似たようなことを心がけた気がしますが)。
年末はじっくりリフレクションして、来年に向けて鋭気を養いたいと思います。
—
学位論文:
Fujimoto, T. (2010). Story-Based Pedagogical Agents: A Scaffolding Design Approach for the Process of Historical Inquiry in a Web-Based Self-Learning Environment, unpublished doctoral dissertation. The Pennsylvania State University, USA.(博士論文)
書籍:
藤本徹(2010)「学びと遊びの融合:シリアスゲーム」、山内祐平編著「デジタル教材の教育学」第6章、東京大学出版会、東京
藤本徹(2010)「シリアスゲーム」、デジタルゲームの教科書制作委員会著「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」第14章、ソフトバンククリエイティブ、東京
報告書等:
藤本徹(2010)「海外におけるシリアスゲームの進展とゲーム機を活用した集合学習」、「情報化時代の教育メディアガイド 2010~2011年度版」、日本教育工学振興会
Fujimoto, T (2010). The Great Debate: Is gaming an effective training tool?, FutureGov Asia Pacific magazine, Vol.7.5, p16-17.
学会発表:
藤本徹(2010. 12)シリアスゲームを題材としたゲーム開発者教育の取り組み、日本デジタルゲーム学会第1回年次大会、芝浦工業大学、2010年12月18日
藤本徹、Smith, B.K.(2010. 9)物語を介した歴史探究学習の効果を高める学習支援方法の研究, 第25回日本教育工学会全国大会, 金城学院大学
藤本徹(2010. 9)「大学」をテーマにシリアスゲームをデザインする, 第25回日本教育工学会全国大会, 金城学院大学
藤本徹(2010. 8)近年のデジタルゲーム利用教育研究の動向と成果に関する考察、 PCカンファレンス2010、東北大学
その他招待講演等:
藤本徹(2010. 12)シリアスゲーム最前線:シリアスゲームの拡張と新たな展開、福岡市・九州大学シリアスゲームセミナ-、東京ミッドタウン、2010年12月16日
藤本徹(2010. 11)「シリアスゲームデザインワークショップ:「大学」をテーマにシリアスゲームをデザインする」、「学習環境デザイン」(担当:尾澤重知准教授)ゲストレクチャー、早稲田大学人間科学部、2010年11月16日
藤本徹(2010. 9)シリアスゲームの可能性, Presented at CEDEC 2010『ゲームのお仕事』業界研究フェア, パシフィコ横浜
Fujimoto, T. (2010. 3). New Routes to Market for Japanese Games Companies. presented at Serious Games Conference 2010. Suntec Convention Centre, Singapore. 03/03/2010.
教育経験:
東京工芸大学芸術学部ゲーム学科「シリアスゲーム論」担当
慶應義塾大学環境情報学部「環境情報学部の創造」副担当
IPBA 知財ビジネスアカデミー(日本弁理士会主催)「知財関連の研修・授業の講師育成講座(基礎)【ワークショップ】<知財マネジメント編>」副担当
投稿者「tfuji」のアーカイブ
ゲーミフィケーションについて
DiGRA Japanの大会が終わってひと段落したので、シリアスゲームジャパンに「ゲーミフィケーション」の話題で記事書きました。こちらでも多少補足を。
海外サイトで “serious games” についての記事は日に1件あるかないかというところなのだけど、”gamification” についての記事は毎日数件ヒットする。リンクだけ放り込んだEvernoteの切れはしがたまってきて、チェックが追い付かなくなっているような状況にある。
ゲーミフィケーションは、考え方としてはゲームデザインの要素を社会的な活動に取り入れるものなので、シリアスゲームの延長線上にあるものの、シリアスゲームは従来のゲーム産業に近いところで取り組みが進んできたので、あくまでメディアとしての「ゲーム」の枠の中で考えられてきた側面がある。ゲーミフィケーションは、開発対象がゲームそのものである必要がないため、さらに適用範囲が広く、対象とするすそ野が広いと言える。昨今、ソーシャルゲームが新興勢力となって隆盛し、従来のゲーム産業の枠組みを変えつつある流れと同様に、ゲーミフィケーションがシリアスゲームのメディアの枠を拡張する動きとなっているという解釈ができる。
ゲーミフィケーションの手法自体は、個別にはあまり目新しくはないものが多いのだが、これからノウハウ開発が進んでいけば面白い展開になる期待はできる。ただ、やや懸念されるのは、以前の「セカンドライフ」ブームにやや似た動きをしている感がやや見られるところだ。セカンドライフの時も広く関心を集めたが、焦点が拡散してしまい、コンセプト先行で技術面での未成熟さや活動が期待においつかないまま推移したこともあって、残念ながらすぐに盛り下がってしまった。ゲーミフィケーションもノウハウ開発が追い付いていかないままに騒いでいると、「優れたゲーミフィケーション」が出ないうちに「ダメなゲーミフィケーション」が市場を覆ってしまってすぐにしぼんでしまうだろう。それに4Gamerの奥谷さんも指摘しているように、皆が同じようなことをやりだしたら目新しさがなくなってしまって付加価値がなくなってしまうことも考えられる。
最近のシリアスゲーム動向もボリュームが増えすぎて十分キャッチアップしきれてないというのに、さらに新たな展開が出てきて、この動きの速さには参ってしまうのだけども、日本の我々も遅れを取らないようにやれることはやって行こうと思う。
これまで集めた資料が豊富にあるので引き続きそれらを読み解きつつ、もう少し知見を深めたらまた解説します。
講演と学会発表予定
ブログになかなか手がつかないうちに年末が近づいてきましたが、来週出番が二つあるのでお知らせします。
一つ目は、12月16日に福岡市・九州大学芸術工学研究院主催の「シリアスゲームセミナー」で、最近の海外のシリアスゲームの動向について講演してきます。シリアスゲームのビジネスモデルについて議論するので、今回はいつものシリアスゲーム入門編の話はすっ飛ばして、米国のゲーミフィケーションの動きや各分野での研究成果など、もっと最近の新しい展開についての話題に絞って提供します。このセミナー、すでに満席とのことなのでご興味のある方には申し訳ないのですが、またこのような話をする機会もあると思いますので、ぜひ次の機会に。
二つ目は、12月19日、20日に芝浦工業大学芝浦キャンパスで開催される、日本デジタルゲーム学会の年次大会です。「シリアスゲームを題材としたゲーム開発者教育の取り組み」と題して、最近の教育活動について発表します。シリアスゲーム関連の発表でひとセッション組めたのは嬉しいです。あと、ゲストエディターとして関わった学会誌「デジタルゲーム学研究」の最新号も大会に合わせて発刊されるのでこちらもご覧ください。
シリアスゲームジャパンにも概要紹介しましたので、ご覧ください。
今月のシリアスゲーム関連イベント
http://seriousgames.jp/2010/12/post-112.html
米国でコアなしトイレットペーパー(ようやく)発売
先週CNNで、米国の大手メーカーのキンバリー・クラークが「コアなし(Tubeless)トイレットペーパー」を発売するというニュースを伝えていた。
USA Todayの記事:Kimberly-Clark rolls out tube-free Scott toilet paper
http://usat.ly/cCl4L9
メーカー側が言うには、これが米国のトイレットペーパー業界の「イノベーション」なのだそうだ。そう言われればば、たしかに留学中にはコアなしロールは一度も見たことがなかったが、これは日本で言うところの「コアノン」トイレットペーパーで、すでに生協が80年代半ばに家庭用ロールとして展開している(ソース)。それ以来、日本ではかなり普及している製品で、何がイノベーションなのかわからない。アメリカが環境にやさしい取り組みを進めていると言っても、この程度のこともまだこれからの話だとすれば、日本に比べればずいぶんスタートラインは後ろの方にあるように思える。
この件が象徴しているように、米国の国内市場を少し見てみると、日本の取り組みに比べれば驚くほどに遅れていることがいろいろと目につく。健康志向もここ数年の話で、最近ではノンシュガーのグリーンティも普通に見かけるが、僕が留学してすぐの2000年代前半は、スーパーで甘くない飲み物を見つけるのは大変だった。
大きな市場を自国に持っている国というのは非常に内向きで、市場の変化が非常に遅い。ちょっと他国のマーケットを調べに行けばすぐに気付きそうなことだけども、そうではないのだろうか。そういう努力をしなくても儲かるところはわざわざやらないのだろうし、環境志向の流れになってきてようやく腰を上げたというところだろうか。市場を牛耳っている大企業を動かすには、外圧や世論のプレッシャーで事業環境を変化させることが必要で、それはどこの国でも同じことなのだろう。
Kinect発売へのシリアスゲーム研究者の反応
すごく久しぶりのブログ更新。あまりに久しぶりで、ブログ登録作業のルーチンを思い出すのに少し手間取ったほど。リハビリも兼ねて、今回は軽めのネタで。
先日、11月4日にマイクロソフトのXbox360用の新型モーションセンサー「Kinect(キネクト)」が北米で発売された。発売イベントでかなり盛り上がっている様子が紹介されている。下記はその様子を伝えるYouTube映像。
Kinect Delight – Inside Xbox
フリートークラジオでシリアスゲームを語る
今週放送分の「デジタルゲームの教科書」フリートークラジオで、「シリアスゲームの今を語る」と題して藤本がゲストで出てきて話します。
今週木曜、8月19日22時より放送です。
ライブ放送中、twitterで質問も受け付けています。
「デジタルゲームの教科書」フリートークラジオ:第7回「シリアスゲームの今を語る」(8/19)
http://www.s-dogs.jp/dgame/Event/radio01.html
近況など
最近ブログ更新の頻度が著しく落ちているのだけど、その理由として自分の活動にブログのネタに適さない仕事が増えてきたことがある。あと、自分の自由になる時間が著しく減ったこともある。クライアントありきの仕事の話はどこまで書いていいか考えだしたりすると手が止まるので書いてない。
本務の仕事は面白いのだけど、自分の研究テーマとさほど合致していない度合いが高いので、なかなか自分の研究が進まず悩ましいところがある。なので研究のことは書けるほどたいして進んでないという事情もある。
それになぜだか知らないが、国内外の学会誌の査読の依頼が重なって、ここしばらくは毎週末何がしかの査読をやっていた。査読もひっそりやる性質のものだからツイッターでぼやくくらいのことしかできず、それもブログから遠のいた理由の一つ。
それと担当授業が週2コマあったので、これも結構時間を取られる。SFCの方は学部長授業の副担当なので細かい話は専任の先生にお任せしっぱなしだったのだが、それでもなんだかんだと時間を取られた。
そんな授業も先週でようやく終わり、あとは工芸大の方の採点を提出すれば晴れて今期はお役御免、となる。査読も山を越えて後は引き受けている特集の原稿を仕上げればどうにか落ち着きそうなところ。後期は授業を担当していないので、少し研究に時間を充てたいところ。
というところで、今週はようやくブログでも書くかという気になった次第。以下は近々の出没予定などお知らせしたいと思います。
1.今週末に東北大学で開催されるCIEC(コンピュータ利用協議会)のPCカンファレンスで1本発表してきます。タイトルは「近年のデジタルゲーム利用教育研究の動向と成果に関する考察」、最終日8月9日午前の発表です。シリアスゲームの研究動向を少し整理、考察した(した、と過去形では言いきれない感が多分にありますが)ところを発表します。
http://gakkai.univcoop.or.jp/pcc/2010/index.html
2.次に8月31日~9月2日に開催されるCEDECの学生向け「『ゲームのお仕事』業界研究フェア 2010」で「シリアスゲームの可能性」と題して講演します。9月2日(木)午後です。
http://cedec.cesa.or.jp/oshigoto/2010/program/sessions/O10_O7015.html
ちなみに、CEDECでは同じく9月2日にMITメディアラボの石井裕教授が基調講演されるとのことで、とても楽しみです。発表公募もすごい数集まったとかですごい賑やかそうです。
http://cedec.cesa.or.jp/oshigoto/2010/
3.9月のJSET(日本教育工学会)の全国大会ではワークショップ枠で、「W04 「大学」をテーマにシリアスゲームをデザインする」と題してワークショップを主催します。実際にガシガシとワークしていただくような構成にしようと計画しています。
http://www.jset.gr.jp/taikai26/program/program_06.php
何やら、ワークショップのみの一般参加無料だとのことですので、大会参加者の皆さんはもとより、お近くの大学好きなシリアスゲーム作りたい方(そんな人いるか知りませんが)はぜひご参加ください。それと口頭発表の方も、昨年発表した博論研究のその後の展開についてエントリーしたので、そちらも通れば発表してきます。
あと、こういうことを人目に触れるところで書いていいのか微妙なんですが、関連して一つご報告を。
先日、JSETで研究奨励賞の候補者にノミネートされたと通知が来てひそかに小躍りして喜んでたんですが、受賞連絡通知の予定期限を過ぎたので残念ながら落選したみたいです(これまでこの学会で何も功徳を積んでなかったのでそもそも望むべくもないですが)。拙い発表にも関わらずご支援くださった皆さま、ありがとうございました。心から感謝しています。
というのも、僕のように学部卒~会社勤め~博士留学~帰国して国内メインで活動、というパスを辿った研究者って、国内研究者全体の割合から見ればそんなに多くないと思いますが、そういうパスを辿ったせいか単に自分のせいなのか、これまで国内の学会にいくつか参加しても何となくそのコミュニティに居場所がない感じがして、やや疎外感のようなものを感じるところがありました。正直、やっぱ海外でやった方がいいかな、とか思うことは今もたまにあります。なので、今回ノミネートの知らせをいただいた時、何となくコミュニティに迎えてもらって居場所ができたような気がして、個人的にとても嬉しかったです。さらに精進して、今度は奨励賞いただけるように頑張ろうと思います。
4.その後は少し先ですが、DiGRA Japan(日本デジタルゲーム学会)の大会が12月18~19日に東京工業大学の田町キャンパスで開催されます。大学の授業でシリアスゲームを題材とした教育実践について発表エントリーしたのと、そちらはいつのまにか実行委員会に組み入れられていたりしたので、こちらにも出没します。
http://www.digrajapan.org/modules/news/article.php?storyid=317
という感じで、たまにそこここに出没しつつ、前述したように夏以降は授業の負荷が減る枠で、論文書いて、研究プロジェクトの企画を立てて、自分のアジェンダで前進したいところです。ただ、本務の仕事に空いた分の枠をすぐに食われそうな感もあるので、引き続き難しい状況に耐えつつ、地道にわずかな時間をやりくりして研究を続けるしかなさそうです。
でもこういう時こそ、いざフリーハンドを与えられた時に持て余してしまって活躍できないようなさえない状態にならないよう、耐えながら足りない力を養う時期なのだろうと観念して精進します。当ブログは相変わらず更新ペースは落ち気味で推移しそうですが、お引き立てのほどよろしくお願いします。
教育ゲームデザイン研究の進展
欧米、特に米国の教育工学分野にはGame-based learningを研究している研究者が結構な数いて、教育用途のゲームのデザイン枠組の研究を行っている。つい先日送られてきたTechtrends(AECTの学会誌)の最新号にも論文が出ていた。
Preparing Instructional Designers for Game-Based Learning: Part 1
Atsusi Hirumi, Bob Appelman, Lloyd Rieber, Richard Van Eck
http://bit.ly/aLABXE
教育現場で利用される教育ゲームや、シリアスゲーム(従来の教育以外の分野で利用されるゲームも含んだより広い用途のゲーム)について、ここ1~2年で取り組まれている研究の数がかなりのボリュームに及んでいるようで、分厚い論文集がいくつも刊行されている。
最近海外で刊行されたシリアスゲーム関連書 2009-2010(1)
http://seriousgames.jp/2010/06/20101.html
国内で同様の研究も数々行われているのだけども、海外のこれらの研究成果をレビューしたうえで取り組まれているものはそんなに多くないような印象を受ける。その印象があたっているかどうかは国内の研究をもう少しきっちり調べてみて確認したい。
今見えている研究課題がいくつかあるのだけど、あれもこれも独りではやりきれないので、少しチームで研究する体制をとりたいなと思うんだけども、今の本務の仕事との兼ね合いや何やらでいろいろと難しいところがあるのが悩ましい。
37歳になりました
はからずして毎年、年初と誕生日は自分の状態を振り返る時間になっている。今年は幸い何も予定のない週末に重なったので、しばらくぶりに少しゆっくりリフレクションの時間をとることができた。
今年の前半で、延々と7年半にも及んだ留学生活もようやく幕を引くことができ、4月から本格的に帰国後の人生が始まった。いろいろあったし、振り返れば後悔や反省することだらけだけど、とにかく自分の目指したところまでやりきれてよかった。それで良くも悪くもいろんなことが水に流せて、どうでもよくなることが案外あるのだと知った。論文がまとまらない昨年後半が一番しんどかったし、修正していた今年の年初も相当厳しかったけど、あれもこれも終わってみれば全部どうでもよくなった。
つらかったことだけ水に流せればいいのだけど、それと一緒にがんばる意欲も流れていってしまった感じもする。本来はこれから学会誌向けに論文書いたりとか、もっとがんばった方がいいことはたくさんある。けれどあまりに消耗したせいか、自分を起点にして何かを始める意欲がわいてこない。2カ月ほど経って、だいぶ前向きな意欲が戻ってきたので、モチベーションが復活するのは時間の問題だと思う。今はただ、授業の準備や仕事の〆切に追われつつも、博士論文という重荷のない穏やかな日々を、楽しく静かに送っている。
国内での活動は、いろいろ考えて悩んだ末に、留学を始めるときに送り出してくれた師匠のところにいったん戻ってお世話になることにした。これまでの人生でも、大事な岐路に立って悩んでいると、あるタイミングですっと道が開けるように物事が決まってきたところがある。今回もそんな感じで、決まってみればもともとそっちに進んでいたような不思議な感じがしている。
ここ数年、研究や執筆、プロジェクトなど自分のミッションのために直接的に時間を使える生活を送ってきた。4月からは組織に属して、人のミッションのために自分の時間の大部分を使う毎日を送ることになった。自分の性分として、人のミッションと自分のミッションの方向性が異なるところでは働く意欲がわかず、大きな組織に属するのに向いてないところがある。今回も、小さな組織に属するいろんな不便があっても、自分のミッションに近く、自由度の高いところを優先して選んだ。
組織に属さないフリーランスな生き方と、組織に属した組織人としての生き方、どちらがよいかと言ったらそれはその側面だけでは測れないところがある。組織に属してなくても自分の望まない何かに従属して生きざるを得ない状況というのは案外多いし、組織に属しているからといって、束縛だらけで何もできないということはない。どちらにも制約はあるし、自分の力量や工夫次第で制約でなくなることは多い。(人を雇ってたりしたら話は違うけど)結局のところ、職業人としての自分個人のスタンスは、提示された仕事をベストの体制で請けることの方が大事で、フリーでやるか組織の一員としてやるかというのはどうでもいい形式的な話だったということに気づいた。
そうこうするうちに、いつの間にか30代も後半の終わりの方に近づいていて、自分の人生の捉え方も変わりつつある。「将来」というのは若い頃には遠い未来の話だったけども、実はもうその将来を生きているのではないか、という捉え方もできる年齢になってきた。果たして自分はこういう将来像を描いていたのかと考えると、まだ道半ばであって、今の自分が考えている「将来」がさらに先に続いている感じがする。多分もう少し歳をとれば、この捉え方もまた変わっていくのだろう。若い頃にああすればこうすれば、と後悔する気持ちは湧いてこないわけではないけど、チャンスはあったのにできなかったのも他でもない自分自身だ。たぶん、後悔する暇があったら、その分これからをどうしたいのか考えた方がよい人生を送れるだろう。
でもあまりしゃかりきになって、過度にポジティブで前向きにやるのは疲れる。少しスローダウンしたい時には休み休みやりたい。うまく行く時もあれば、行かない時もある。できる人と比べるとへこむこともあるし、もっとやらないとと自分を焚きつけすぎることもある。そういうところは以前と変わらないし、自分の基準を変えない限りはいつまでたっても満たされることはないだろう。体力や気力もいつも万全とはいかないし、いろんな波はある。なんかそういうことをちょっと受け入れられるようになったかな、というのが37歳になっての今の心境。これからもがんばります。ごきげんよう。
「デジタルゲームの教科書」刊行
「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」が来週から発売開始されます。アマゾンでは先行予約中です。
執筆参加した人間が言うとやや手前みそですが、ゲーム業界の基礎知識や最新トレンドがしっかり詰まっていて、ゲーム業界に関心のある人全般にお勧めできる内容です。前述の「デジタル教材の教育学」ともども、ぜひご一読ください。
—-
『デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド』
著者: デジタルゲームの教科書制作委員会
スーパーバイザー: 松井悠 / 新清士 / 小山友介 / 池谷勇人 / 記野直子/ 中村彰憲 / 佐藤カフジ / 岩間達也 / 徳岡正肇 / 小野憲史 / 中田さとし/ 藤本徹 / 鴫原盛之 / 七邊信重 / 三宅陽一郎 / 八重尾昌輝 / 大前広樹/ 藤原正仁
ゲーム業界はどのように形成され、どのような状態にあり、そしてどこへ向かうのか。デジタルゲームの過去、現在、そして来るべき未来を俯瞰。ゲームの産業、カルチャー、そしてテクノロジーにまつわる24テーマを、各分野のオーソリティが鋭く論じます。ゲーム業界に関わる人、そして業界を志す人のための必読書です。
A5判 536ページ
ISBN: 978-4-7973-5882-7
定価: 2,380円(本体)+税
目次:
第1部:ゲーム産業の基本構造
第1章:ゲーム産業の全体像
第2章:ゲームが消費者に届くまで
第3章:ゲームとゲーム産業の歴史
第2部:世界のゲームシーン
第4章:転換期を迎える国内ゲーム市場
第5章:北米ゲーム市場
第6章:アジア圏のゲームシーン(韓国・台湾・中国・東南アジア)
第3部:ゲーム業界のトレンドシーン
第7章:ネットワークゲームの技術
第8章:PCゲームとオンラインゲームの潮流
第9章:アイテム課金制による無料オンラインPCゲーム
第10章:ソーシャルゲーム
第11章:携帯ゲーム(iPhone、Androidなどの携帯ゲームアプリの現在とその可能性)
第12章:日本タイトルの海外へのローカライズ
第13章:海外産のゲームの日本展開における課題(ユーザー数世界No.1のMMOが日本で運営されない理由)
第14章:シリアスゲーム
第15章:デジタルゲームを競技として捉える「e-sports」
第16章:アーケードゲーム業界の歴史と現況
第17章:ゲーム業界に広がるインディペンデントの流れ
第18章:ノベルゲーム(デジタルゲームを使用した1つの表現)
第19章:ボードゲームからデジタルゲームを捉える
第20章:ARG(Alternate RealityGame)現実の世界を舞台とする代替現実ゲーム
第4部:ゲーム開発の技術と人材
第21章:ミドルウェア
第22章:プロシージャル技術
第23章:デジタルゲームAI
第24章:ゲーム開発者のキャリア形成