教師のスパーク(2)

 前回のエントリーについて、質問をいただいた。質問の内容は、ここで出てきた二人の熟練教師はどんな質問フレーズをよく使っているか?というものだ。一番よく使っていたのは、受講者がわかりにくい言葉や抽象的な言葉を使った場合にそれを具体的に説明させる質問。それ以外は、特に質問の仕方に特徴があるというわけではなく、彼女たちのうまさは、熟練から来るゆとりによって感じる点が多いように思われた。

続きを読む

大卒VS高卒

 ドナルドトランプの弟子の座を争うリアリティショー(視聴者参加型のドキュメント仕立ての番組)、The Apprenticeの3シーズン目が始まった。18人が二つのチームに分かれて、広告や販売やマーケティングなど、毎週違う課題で競って勝敗を決め、負けたチームの一番ダメな人が一人ずつ首にされていくという設定である。前回までは男女別のチームだったが、だいぶパターンができてしまったので、今回はブックスマート(学識のある人)対ストリートスマート(生きる知恵のある人)の対決という設定。一方は大卒エリート、もう一方は高卒のたたき上げに分かれて毎週勝負する。この高卒チームの合計年収は大卒チームのよりも3倍多いのだそうだ。ドナルドトランプが不動産屋で、勝利の後に任せされるビジネスも不動産業とあってか、18人のうちの半分近くは不動産関係の仕事を持っている。その次に多いのが弁護士や検察官といった法律系の人だ。
  番組は2週目に入り、1週目は高卒チームが勝利、2週目は大卒チームが勝利した。いずれも視聴者が期待しているような展開で進んでいた。これまでのところは、3シーズン目でマンネリ化しそうなところを違った面白さを取り入れてなかなかうまくやっている。

続きを読む

教師のスパーク

 今学期の授業はいずれも面白い。特にAliの定性的研究デザインの授業とBarbaraのID理論とモデルの授業は、いい教師の授業をライブで受けるよさが味わえる。二人とも、専門分野の知識に裏打ちされた授業の構成で、レクチャーのスキルも学生とのやり取りも熟練している。3時間の授業の中で盛り上がりがピークになる時の彼女たちの迫力はすさまじい。Aliはマシンガンのような早口で、重要な論点を圧倒的な情報量で、かつポイントを外さずに話し続ける。Barbaraはファシリテーションが冴え渡り、議論で出てきたネタをふんだんに使って、クラスを理解へと導く。

続きを読む

1/24(月) 地ビール仕込み

 ここ毎日、ステートカレッジは寒い。授業が終わって帰り道、飲みかけの水のペットボトルが置き忘れられて、中身が完全に凍っているのを見て一瞬ぎょっとした。寒い寒いと思っていてもあまり具体的にどれくらい寒いかを考えないように生活しているところを、いきなり客観的データを突きつけられたためだろう。そうか冷凍庫の中並みに寒いのかとあらためて思い知らされて寒さが増した。客観的データのパワーを思わぬところで見せ付けられた。自然科学の客観的データはこんな風に目に見えてパワフルでも、教育工学の客観的データは概してあんましパワーないよな、とか取り留めなく考えながら歩いた。そんな寒さなので、たまに気温が0度くらいまで戻ると、何だ今日は暖っけーなと思ってしまう。人間の適応力というのは大変なものである。

続きを読む

アンケート調査のコミュニケーション

 日本でEラーニングの研究をしているグループから、アンケート調査の回答依頼メールが回ってきた。前から何度かメーリングリストなんかで依頼が回っていたのだが、どうも回収状況が芳しくないようで、今回は担当者からのかなり悲痛な様子での依頼だった。前に来ていた依頼内容から、この調査はちょっと厳しい結果に終わりそうだなという印象を受けていたが、案の定の事態に陥っている様子だ。アジア各国での同時調査らしく、条件を同じにするために調査票は英語のものをそのまま使っていたそうだが、回答が集まらないらしく、翻訳して再度の依頼となったらしい。あまりに気の毒なので協力しようと思って調査票のWebサイトをのぞいてみたら、一問目の居住国を聞く設問で、アジア諸国しか選択肢がなかったため、私は対象者でないことがわかって断念した。

続きを読む

1/21(金) ペンシルバニアの冬

 早いもので1月ももう下旬に入った。月日の経つのは早い早いとずっと思っているのだからそろそろそういうもんだと思って、頭がそれに慣れればよいものなのに、なぜかいつも時間の過ぎる早さを感じる。これは子どもの頃の時間の流れ方が常に基準になっているからなのか。
 今年の冬は雪も少なくて、ずいぶん暖かいなと思っていたら、ここ二週間ほどはやたら寒い。5センチほどだが雪も積もっている。氷点下が続くので、あまり雪も解けない。車の窓が凍り付いて開かなくて、駐車場のチケットを取るのに難渋する。これでこそ、ここペンシルバニア州ステートカレッジの冬だなという気候がようやく訪れた。

続きを読む

いろいろCD買い込んで来た

 帰国の折に、聴かなくなっていたCDを40枚ほど処分するとともに、数枚新たにCDを買い込んで来た。ただいま聴き込み中。だんだん早くてヘビーな曲が合わない体質になってきたが、メロディックなやつは相変わらずよい。
 帰国すると必ず立ち寄るディスクユニオン御茶ノ水へビィメタル館は相変わらず楽しかった。二階に上がるとハードロックが流れてて、三階に行くとデスメタル、四階は古めのスラッシュとかがかかってる。メタルはもういいや、と思いつつこの店に行くと、なんか新しいのを探してみたくなる気にさせてくれる。

続きを読む

あるID留学生の一日

先日、岩手県立大の鈴木研で出しているIDマガジンへ寄稿した原稿をご紹介。

「あるID留学生の一日」
(岩手県立大学鈴木研究室IDマガジン第8号所収)
 8時半起床。キャンパス内のアパートに住んでいるので朝はいつもゆっくり目だが、週3回は朝からソフトウェア会社でインターンの仕事が入っている。コーヒーとドーナツを胃に流し込みつつ車を走らせ、キャンパスから10分ほどのところにあるオフィスへ。仕事内容は、同社主力製品である統計パッケージの日本語版開発のサポート業務。雑務も多いが、大学のアシスタントとして雇われているので、授業料免除とちょっとした月給がでる。自費留学だと年間300万円以上かかってしまうが、大学でアシスタント(リサーチアシスタントやティーチングアシスタントなど仕事内容はさまざま)の口を確保できれば、元手が乏しくても気合で何とかやっていくことはできる。

続きを読む