先週から春学期が始まり、一週間のサイクルがあっという間に過ぎていった。インターン先の職場へは週2日終日出勤。残りの3日で4つの授業をとっている。
まず、週3日50分の授業があるのはゲームデザインの授業。トルコ人女性のDr. Magy Seif El-Nasrがインストラクターである。この授業は学部生の専門科目なので、当然他のクラスメートはほとんどが学部生。でもまだ千学期のオブジェクト指向のクラスよりはずいぶん雰囲気はよい。ペンステートのインストラクショナルシステムズプログラムは技術系があまり強くないため、教育工学を勉強しているとはいえ、本格的に技術系の授業をとろうという院生はほとんどいない。そんな中で私は学部生の授業をわざわざとってまでしてゲームデザインを学ぼうというマイナーな存在なので、Magyも暖かく見守ってくれているようである。
次に、先学期とった定性的研究デザインの続編となる授業をとっている。インストラクターは3人の幼児の母親でINSYSのプログラム長のAli Carr-Chellman。Reigeluthの直弟子で、ISDから派生した教育システム変革研究の分野でその名が知られている。授業も切れ味よいトークでテンポよく進む。TAは私の友人Joshがやっていて、気の聞いた喋りができる彼とAliはよいコンビである。
水曜の夜は「インストラクショナルデザインの理論とモデル」という授業で、INSYSプログラムのゲートキーパーと呼ばれたりして、院生の間ではその厳しさが知られているDr. Barbara Grabowskiがインストラクター。期待していた通り、見事としかいいようのない授業の進め方だ。アイスブレイクを兼ねて、各自の名前をクラスメートに覚えさせるための簡単なインストラクションをデザインしなさい、という課題がだされ、ペアに分かれて考えさせ、発表させ、評価の視点を与え、省察させる。このプロセスがこの授業で学ぶことだよ、ほらADDIEでしょ、とまとめ、シラバスを配布する。そこでもまたこまごま説明するのでなく、各自に読ませて、要点を書き込ませるように設定されたワークシートを使う。そして学生達と掛け合いながらシラバスの要点を説明する。最初の授業はたいていシラバスの説明だけで早く切り上げるものだが、Barbaraは3時間きっちり使った。彼女の授業は、彼女がちょっと魔女っぽい風貌なのもあってか、どことなくハリーポッターに出てくるホグワーツ学校の授業風景を思い起こさせる。そのうち魔法の唱え方でも教えてくれそうな勢いで、インストラクショナルデザインの魅力を存分に伝えてくれる。ハリーポッターの授業風景は、学校教育のよい雰囲気を描写している印象を受けるが、Barbaraの授業は、いいレクチャーには他の方法で置き換えができないよさがあるということを思い出させてくれた。
そしてもう一つはDr. Brian Smithの研究プロジェクト実習。彼はノースウエスタン大でRoger Schankに学び、テクノロジーを用いた教育についてユニークな研究を重ねてきている。ペンステートではコンピュータゲームを使った教育についてもっとも専門的に知見を深めている研究者である。彼のトークはスタンドアップコメディ調でかなり面白い。また、ドラムを叩かせるとセミプロ並という芸達者な研究者である。このプロジェクトでは教育用ゲームの研究とデザインをする。シリアスゲーム研究に直結した研究ができるのでありがたい。