米携帯電話各社のTVCM比較

 日本でもそうだが、米大手携帯電話各社は巨額の広告予算をかけて大量にTVコマーシャルをうっている。普段は紹介するほどのものはないのだが、スプリント・ネクステルの最新のシリーズがかなり面白いので、大手各社のCMを見比べてみようと思った。ちなみに、面白CMはたくさんYouTubeにのってて、こういうことをしていると、ついついハマってしまって仕事の邪魔になるので危険。
 まずはスプリント・ネクステルの「もしも」シリーズから、「もしもローディーが世界を仕切っていたら」。同社が最近始めたシリーズで、携帯会社だけでなくて、今流れてるTVCMの中で見ても一番面白いと思う。ローディというのはバンドのツアースタッフのこと。
Nextel – What if roadies ran the world?

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新シーズンの「Heroes」「Prison Break」「Terminator: The Sarah Connor Chronicles」

  9月のこの時期のTVは、米ネットワーク各局の主要TVドラマが開始されてにぎやかになる。全部はカバーしてない(できない)が、とりあえずは「ヒーローズ」、「プリズン・ブレイク」、「ターミネーター・サラ・コナー・クロニクルズ」をチェックした。
 ネタばれは嫌だと思うので中身について細かい話はここではやめておくが、いずれも新たな展開を取り入れて、初回はとてもよい滑り出しといったところ。いずれも開始前に再放送やスペシャル番組を投入して、固定ファンの維持や新規視聴者の獲得にものすごく気を使っている様子が伺えた。

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「MANSWERS」にみる日本のコンテンツ産業の活路

 今シーズンから、ケーブルTV局のSpikeTVで始まった「マンサーズ(MANSWERS)」という深夜番組がある。
 この番組は、日本で言うところの情報バラエティ番組で、世の男性が好奇心を持ちそうな疑問の答えを提供するというコンセプトの番組。30分番組で、一つの疑問につき3分程度のビデオクリップで答えを示しながら、テンポよく展開する構成になっている。たとえば、つぎのような疑問が取り上げられている。

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Design Star: 内装デザイナーのオーディション番組

 アメリカのテレビ番組の特徴的なところの一つは、家のリフォームや日曜大工の番組が人気があるというところ。古い不便な家を1週間で丸ごと建て替えてプレゼントする「Extreme Makeover: Home edition」という番組は、この手の番組では一番人気で、視聴率も安定して上位にランクされている。HGTV (Home & Garden Television)というケーブルチャンネルは、その名の通り家や庭の手入れやリフォームの番組ばかりやっているチャンネルで、このようなチャンネルが存在すること自体がさすが日曜大工率の高いアメリカというところ。

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I Survived a Japanese Game Show 人気番組に

 先日ご紹介したリアリティショー「I Survived a Japanese Game Show」、どうやら視聴率はかなり好調なようで、初回は裏でやっていた人気の料理人修行リアリティーショー「Hell’s Kitchen」を上回ったそうだ。
 番組ウェブサイトでやっているオンデマンド放送は日本からは多分見れなかったと思うのだけど、たぶん写真のページなら見れると思うので、番組がどんな感じか見てみたい方はこちらからどうぞ。ネットでちょっと調べたら、いろんなファンサイトやブログでこの番組が話題沸騰中の様子。日本でも話題になってきているようで、海外テレビ情報やニュースサイトでいくつか紹介されている。

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新番組「I Survived a Japanese Game Show」

 日本のバラエティゲームショーを元ネタにした番組「Wipe Out」と、「I Survived a Japanese Game Show」がABCで今週から始まった。
 「Wipe Out」の方は、日本の「SASUKE」のリメイク的な番組。SASUKEは「Ninja Warrior」という名前でケーブルの深夜枠にそのまま放送されていて人気だったそうだ。YouTubeでも話題になっていたとのこと。一般からの参加者12人が日本ではおなじみのいろんなゲームにチャレンジして、優勝者は5万ドルもらえる。
 火曜の夜8時からこういうのをやるのもどうかと思うが、それでもWipe Outの方はまだ普通にゲームショーな感じ。その後の9時からやっている「I Survived a Japanese Game Show」の方はもっとすごくて、日本を舞台にしたリアリティショー形式で、設定にひねりを加えた変な構成の番組。
 12人のアメリカ人参加者が、よくあるリアリティショーに出るつもりでいきなり日本に送りこまれ、「フレンドパーク」風の架空の番組「本気で」に出演しているという設定でチャレンジが始まり、毎週一人ずつ脱落して、最後に残った人が25万ドルもらえるそうだ。
 番組自体はひじょうにくだらないのだが、番組の演出のがちゃがちゃな日本語や参加者のリアクション加減が面白くてつい見てしまった。くだらなさのなかに、ところどころ「ロスト・イン・トランスレーション」的な異文化の出会いやステレオタイプを逆手に取って皮肉ったジョークがちりばめられていて、思った以上に見所が多かった。
 リアリティショーのフォーマット自体がマンネリ化しつつある中で、こういう路線で来たのかなという感じ。舞台に日本が選ばれているあたりは、最近のアメリカの日本ブームの影響か。

太田総理とみちぶしんとアウトリーチ

 日テレの「太田光の私が総理大臣になったら・・・秘書田中。」で、太田総理のマニフェスト「ガソリン税を撤廃します」をテーマに、道路特定財源問題を議論していた。
 TVタックルのたけしと同様、爆笑問題が言っているから聞く耳を持つ、そのテーマについて考えてみようという気になる視聴者は結構いるのかもしれない。同じテーマをサンデープロジェクトでやっていても見ないけど、この番組ならみるという人もいるだろう。他のメディアでは届かない人たちでもこの番組だから届く、という効果が大きければ、この番組の持つ、情報提供メディアとしての機能や、その社会問題について考えるきっかけを与えるアウトリーチプログラムとしての役割は大きいということになる。今のテレビ番組はつまらないつまらないと批判されるが、よく見ていくといい番組もあるし、テレビのメディアとしての力はバカにしたものではない。
 この「太田総理」のあと、テレ朝の「ニュースステーション」を見ていたら、同じく道路特定財源の無駄遣いの問題が取り上げられていて、マッサージチェアやカラオケセットのほかに、「みちぶしん」という道路開発をテーマにしたミュージカルのスポンサー予算も道路特定財源から出ていたと報じられていた。
 「みちぶしん」という作品がどういう経緯で作られたのかは知らないが、スポンサーシップのなかで考えた場合、テレビ番組であれ舞台パフォーマンスであれ、スポンサー側が考え方や趣旨に賛同できるものに資金を提供するのが当然であり、何の関連もない分野に中立的な立場で協力するというのはチャリティー以外では成立しない。
 通常の方法で道路開発の意義を説明したのでは届かない層に向けて、形を変えて情報や学習機会を提供するという考え方は、アウトリーチの取り組みの一つである。道路特定財源から出したことの是非や、ミュージカルというアプローチが適切だったかは別として、公的な機関がミュージカルのスポンサーになること自体を否定したのでは、アウトリーチプログラム自体が立ち行かなくなってしまう。
 このような形でマスメディアの批判のやり玉にあがってしまうと、今後の同じ様な取り組みがやりにくくなるし、こういう理屈で難癖が付けられるということになると、間接的には産学官連携の取り組みにも被害が及ぶ。度が過ぎたことになると、テレビ局も公的なスポンサーが取りにくくなって結果として困るだろう。マッサージチェアを買うのとミュージカルに金を出すのとは性質がまるで異なり、批判の方向も異なることを考える必要がある。
 そもそも、このような無駄遣いが起きているのは、官庁の単年度主義の予算運用のルールに問題があるのであって、そこを批判せずに現象面だけ取り上げても意味がない。各部門でとった予算が年度末に余って、その使い道としてとりあえず適当なものに使うというようなことは、国交省でなくても自治体でも国の予算をもらった研究機関でもどこでも起こっている。
 たとえば、年間数千万のプロジェクトを複数年で予算をとったとしても、年間の予算は単年度で使い切らなければいけないし、さらにたちの悪いことに、初年度は後半から予算執行になることもあるし、補正予算で年明けに予算が下りたりした場合には、年明けからしか予算が使えなくなったりすることもある。そうなると、実質数か月で年間予算を消化しなければならない。予算は持ち越せないため、すべて使い切ろうとして必要もない設備や資料をぜいたくに買って帳尻を合わせることになる。大規模プロジェクトほどその金額が大きくなっていき、非効率な予算消化があちこちで行われる。無駄なことこの上ない。
 しかし、誰も無駄遣いしたくてそんな無駄遣いをしているのではなく、ひとえに運用ルールに問題があるからそうなっているだけだ。取れた予算を節約して大事に使える方向にルールを変えないと、他でも同じような問題がまた起きる。道路特定財源の無駄遣いという個別の現象としてとらえるのでなく、行政面の非効率な制度の問題としてとらえないと、今度はほかの省庁で問題が起きて、また締め上げるルールを制定して、という繰り返しになるだけだ。そうしていくうちに、動きがとりづらいだけの社会になって、誰も幸せにはならない。

無敵ジーン・シモンズ

 アメリカの不動産王、ドナルド・トランプの弟子の座を目指して争うリアリティショー「アプレンティス(The Apprentice)」の新シリーズが始まったことは先日書いた(先日のエントリー)。
 ロックバンドKissのジーン・シモンズがその異才ぶりを発揮して、他の挑戦者が考え付かないアプローチで自分のチームを連勝に導いていた。彼の挙動が低迷気味のこの番組を盛り上げる要素になってきていたのだが、ジーンは3週目にしてあっさりクビになってしまった。少し前の話だが、忘れないうちに少し感想をメモ書きしておく。

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TVドラマ版ターミネーター

 1月から新たなTVドラマシリーズとして「Terminator: The Sarah Connor Chronicles(FOX)」が始まった。映画版の2と3の間で、サラ・コナーがまだ生きている頃のストーリーが描かれている。カリフォルニア州知事に出世したシュワルツェネッガーは出てこず、他の俳優たちも総入れ替え。このシリーズにジョン・コナーを守りに送り込まれたターミネーターは少女型で、シュワルツェネッガー型よりもバージョンアップしているという設定。
 例年同じ枠でやっていた人気ドラマ「24」が、脚本家協会のストや主演のサザーランドの逮捕などの影響で放送延期になっているが、このドラマがちょうど埋め合わせている格好になっている。24は行き着く暇もなくシリアスな展開がずっと続くが、こちらは24と比べれば、その点が若干スローダウンしている。また、映画版本作は爆破やカーチェイスなどのアクションに頼るところが多かったが、テレビ版はストーリー展開重視でアクションは抑え目になっている。ターミネーターと人間のコミュニケーションギャップにまつわるコミカルなシーンは健在で、笑えるやり取りはむしろ映画版よりも増えている。
 この手のオリジナル作品からのスピンオフやリメイクは、ヒット作の果実を最収穫するためによくとられる手法だが、ストーリーや設定がきちんと練りこまれていないと単なる便乗や「原作レイプだ」と批判されるような作品となってしまう。本作品についてはその点ストーリーがよく練りこまれていて、うまくオリジナルの設定やテイストを活かしながら新たなオリジナル作品を生んでいると言ってよい仕上がりになっている。
 人気のあるオリジナルにしてもよいところと悪いところがあるし、時代が過ぎて技術が進化すれば、以前よりも表現の幅が広がっていることもある。よいところをうまく活かしながらいかに新たな要素を組み込んで行くかというところをよく考えないと、単なる焼き直しに終わってしまう。オリジナルの解釈が甘いままに余計な手を加えると、ファンからは余計なことしてくれるなと非難の声が上がる。スピンオフやリメイクは、オリジナルの威を借りることができる分、別の難しさが増すというところだ。
 この「Terminator: The Sarah Connor Chronicles」に関しては、その辺りがうまく消化されている印象だ。映画版を見ている人は、ストーリーや演出面でオリジナルのよさがどう消化されて反映されているかを演拾いながらみるのも面白い。続編だからとたかをくくらずに見てほしいオススメの作品だ。

セレブ版アプレンティス

 アメリカの不動産王、ドナルド・トランプの弟子の座を目指して争うリアリティショー「アプレンティス(The Apprentice)」の新シリーズが始まった。今回は「セレブリティ・アプレンティス(Celebrity Apprentice)」と題して、ピークを過ぎヒマそうな感じの各界の著名人が挑戦者となって、ルールはいつものように二つのチームに分かれて毎週の課題に取り組み、負けたチームから一人ずつ脱落していく。
 セレブリティというだけあって、挑戦者は結構有名な人たちが集まっている。ボクシングヘビー級チャンピオンのレノックス・ルイス、オリンピック金メダリストのナディア・コマネチあたりは日本でも知られているところだし、ほかにも人気俳優、女優、人気カントリー歌手、アルティメットファイティングのレスラー、スーパーモデル、プレイメイト、など、その分野のファンであれば知っていそうな人たちが参加している。
 そして、このメンバーの中でなんと言っても最強なのが、ロックバンドKissのジーン・シモンズ。超有名ロックバンドのフロントマンとしてだけでなく、マーケティングの天才としても知られる彼は、この番組でも強烈な個性と偉才を放っている。
 2004年に開始して大人気を博し、トランプの決めゼリフ「You’re fired(お前はクビだ)」が流行語になるほど話題になったこの番組も、毎回あれこれと違った要素を取り入れながらもマンネリ化が進んで視聴率も下がる一方だった。7シーズン目となった今回、これまでは一般参加型だったのをタレントに切り替えた。この手のリアリティショー系の番組では、シーズンを重ねて人気が落ちたり、もともとの企画が弱かったりするときによく取られる手法だ。
 興味深いのは、単に賞金目当てやギャラをはずんでセレブを寄せ集めるのでなく、セレブたちがそれぞれ自分の協力しているチャリティ活動のプロモーションを兼ねているところにある。第1週目はチャリティでホットドッグをたくさん売ってお金を集めるというもので、集めたお金(69000ドル)は勝利したチームのリーダー(スティーブン・ボールドウィン)が協力している乳がん研究財団に寄付された。
 セレブたちにとっては、自分のギャラやテレビへの露出目当てだけでこのような番組に出るのは抵抗があっても、チャリティであればそれが大義名分となって敷居が下がる。この番組自体がインフォマーシャルとして機能していて、スポンサーにとって旨みの多い番組になっていることは前にも書いたが、今回は出演者を集める時にもチャリティという一つの補助線を引くことで参加者の彩りを増すことに成功している。この工夫がなければ、(もうすでにかなりB級なんだが)さらに落ち目のセレブばかりが集まってさらにB級臭くなって見るに耐えない番組になって今期で打ち切り、あるいは企画段階でボツになっていたことだろう。
 この番組は見て面白いだけでなく、プロデュース面での工夫に見るべきところが多い。視聴率的には厳しくなってもまだ番組が続くのは、そうした強みによるところもあるのだろう。テレビのプロデューサーにはもちろん、何かプロデュース的な仕事をしている人には学ぶところの多い番組だと思う。
◆以前の関連エントリー
The Apprentice LA
アプレンティスの仕掛けの上手さ
大卒VS高卒