午後、数ヶ所に仕事のメールを送った後、School of Information Science and Technology主催のフォーラムへ。プレステ2のスポーツ系ゲームなどをいくつも手がけたプロのゲームデザイナーのプレゼンに続いて、ISTの教授陣が加わってのパネルセッション。John Carrollというユーザビリティデザインの大御所と、若手のゲーム研究者二人。議論自体はそんなに盛り上がらなかったものの、話は面白かった。いつも思うが、とにかくこっちのプロデューサー系の仕事をする人たちは言語能力が高い。
ゲームデザイナーの思考のプロセスはインストラクショナルデザイナーのそれと方向はほぼ同じだが、基軸になるものが違う。ゲームデザイナーはまず”Fun”がきて、IDerは”Learning”がくる。それを軸にして、展開するところや、目的指向であるところは共通。教育系ゲームを研究する我々は、Funではなく、Engagementを軸に考える。教育以外の分野のデザインについて触れるのはいつも勉強になる。
最近感じるのは、自分はいわゆる教師、あるいは学校教育の関係の人たちよりも、エンジニアの方が発想が近いのだなということだ。教育系のカンファレンスに出るよりも、このセッションのような内容の方がよほど興味深い。また、自分は教えることは楽しいと思うが、すごく楽しいかというとそれほどでなくて、教えるよりも、ものごとの効率をよくしたり、効果を高める仕組みを作る方が断然楽しい。
教師とエンジニアといえば、同じ研究科にいても、教師あがりの人は細かい要件定義とか、詳細な仕事のつめが得意でない人が多く、オンライン教材開発などをチームでやる場合は情報系や工学系のバックグラウンドがある人への依存度が高くなりがちだ。テクノロジーを利用した教育が普及してきた今日において、インストラクショナルデザイナーたるもの、自分がエンジニアやプログラマーをやる必要はなくても、エンジニアやプログラマたちに自分たちのやろうとしていることを伝えられるだけのコミュニケーション力はつけておく必要があると思う。そうでないと、専門家としての市場価値はずいぶん下がってしまう。Face-to-Faceの研修のみ対応、というのでは守備範囲が狭まってしまうからだ。何を売りにするかは人それぞれでいいのだが、傾向としては、テクノロジーがらみのことを強みにしている人の方が有利なのは間違いない。
4/18(日) ネットゲーム
追い込み期に疲れて現実逃避モードになるのはしょっちゅうなのだが、毎回逃避する先は違う。今日はふと、ネットゲームをやってみようと思い立ち、前に登録したインフォシークゲームをのぞいて見た。ゲームをやる時には当然ユーザ認証があるのだが、ユーザー種別が3種類もあって、どれで登録したんだか覚えてない。しかも楽天IDに関連付け済とか言われて、楽天のサイトにとばされた。前の登録確認メールを探し回ったり、パスワード再発行したりして、ようやくログインできた。ログインしたと思ったら、実に閑散としていて、閑古鳥状態だった。まあ、日本時間は月曜の早朝だからこんなもんかと思って、ちょっとオセロで遊んで退散した。
ふとハンゲームというのもあったな、と思い出してWebサイトをのぞいて見た。するとこっちは2万人だかのユーザーが遊んでいて、にぎやかなものだった。オセロも200人以上が遊んでいる。マージャン、パチンコなんてのは2000人以上。おい、月曜の朝からなんでこんなに遊んでいるんだ、この人たちは何者だといぶかしく思いながらも、とりあえずユーザー登録してみた。これは簡単。住所とかなんとか余計な情報を取らないので、すぐに登録できて遊べるのがいい。とりあえずまたオセロ。っていうかルールを知らんゲームが多く、知っててもちょっと遊ぶには時間がかかりそうか、いまいち興味がないものがほとんどで、消去法でオセロ。自信があったのに、詰めが甘くあえなく負け。弱っ。パチンコもやってみたら、素人目には、最近のデジタル化されたパチンコ屋のをやっているのと変わらない。金もかけてないのに2000人も遊んでいるというのだから、これはたいしたものだ。
様子としては、チャットしながらやってる人たちもたまにいるけれど、基本的にはゲーセンで見知らぬ人が会話も交わさずただ対戦しているのと同じ感じ。自分もあまり話しかけられても難だなーと思いながら黙々とゲームしただけ。対戦成績700勝300敗みたいな人たちがたくさんいたが、この人たちはどこのゲーセンにもいた名人級の人々なのだろう。ネットだと場所に左右されずに強い人同士で切磋琢磨してたりするのだろうか。その境地まで達してないのでよくわからん。
楽天もハンゲームも友達が勤めているので、どちらに肩入れするわけでもないけれど、ユーザーの支持の差は明らかだった。たしか楽天はたいそうな金を払って、このサイトのネットゲーム会社を買収したんだったと思うが、このゲームサイトだけ見ると、あまり活用できてない様子だ。まあ、込み入った話は抜きにして、楽天もハンゲームもどっちもがんばれ。
体感系ゲーム
日本でEyeToyってどれくらいはやってるのだろうか。ヨーロッパでバカ売れ、アメリカでもまずまずらしいのだが、日本ではどんな様子なんだろう。ふとPSのサイトを見たら、後続ソフトがいくつか出るらしい。MLB2004がEyeToyカメラ対応っていうのは面白そう。EyeToyカメラのゲームは、これからいろいろ拡がりが出てきそうでよい。あと、カラオケレボリューションとか、しばいみちとか、素でやるのはちょっと恥ずかしそうだけど、みんなでやると楽しそうなゲームって、どういう風に遊ばれているのだろうか。そういえば、先月のゲーム開発者カンファレンスで、カラオケレボリューションの洋楽版みたいなのが出展されていて、来場者が遊んでいたが、一人でA-HAのTake On Meを熱唱しているGeekもいたが、興味があるけどちょっと自分でやるには恥ずかしくて遠慮している人たちが多かった。大学院のテクノロジーのクラスでEyeToyのデモをやった時も、みんなに遠慮された。でも後で台湾人のクラスメートが購入したと言っていた。なんだ、やっぱりやりたかったんじゃんか。
この手の体感ゲームは、古くはモグラたたきから、脈々と進化し続けている。そして技術が高度になるにつれて、娯楽用ゲームと訓練用シミュレータのようなものとの境界がなくなってきつつある。市販のゲームレベルの機能でも十分に、基礎訓練に有効な職種はいろいろあると思う。フライトシミュレータがパイロットの訓練に有効だという例はよく知られているが、それ以外にも今後出てくるだろう。面白い市場だと思うので、参入者がどんどん現れてくることを期待している。
4/15(木) ポスターセッション
午後、Dr. Peckからメールが入った。彼は日本語関連のAssistantをINSYSの教授が探しているという情報をくれたのだが、彼の記憶違いで、誰が探しているのかがわからない状態だった。何気なく、「Minitabのインターンの仕事のオファーがあったが、そのことか?」と聞いてみたら、その返事で「それそれ。その仕事、秋からAssistantshipのポジションになるかもしれないからそのつもりで」ということだった。こちらはそんなことも知らずに電話インタビューを受けていた。面倒だから断ろうかなんてことも一瞬頭をよぎったが、そんなことをしていたら、Assistantの話はおじゃんになっているところだった。物事は前向きに捉えて判断するものだとつくづく思った。
夕方、毎学期恒例の研究科のポスターセッションがあった。今回も出展はパスで見学のみにした。みんなあれこれ自分の研究成果や構想を紹介している。ビジネス学部の教授で、INSYSの授業で一緒だったGusも発表していた。彼は4年間で100万ドルのグラントを獲得し、研究プロジェクトを進めているところだ。イタリア系の気のいいおやじで、結構仲良くしてもらっている。機能入手したVirtual Leaderの話をすると、自分のプロジェクトでリーダーシップ教育もやっているぞ、それを使って研究するなら、おれのコースの学生を被験者に使っていいぞ、と申し出てくれた。彼のコースは大学1年の必修なので、これで十分な被験者確保ができたも同然。これはとてもありがたいオファーだ。今日はいい話続きだったのだが、帰宅時に、上着をどこかへ忘れていることに気づいて、探し回ったが見つからなかった。暖かくなったせいもあるが、自分が考え事に気が行き過ぎて、ぼんやりしている証でもある。
夕食後、くたびれて仮眠の後、サーバーの引越し作業に着手。Blog書きに利用しているMovable Typeの移行作業。これがエラーのためなかなか作業が進まない。明け方近くまでやってもらちが明かず、落胆のうちにくたびれて就寝。
4/14(水) Phone Interview
今朝は9時過ぎに起床。11時にインターンの採用インタビューの電話が入る予定なのでその前に予習。Minitabは統計ソフトの大手で、State Collegeに本部がある。日本語版のリリースに伴う準備で日本人のインターンが必要だということで、INSYSの教授経由で話が回ってきた。そんなに強く興味があるわけではないが、いい機会ではあるので応募した。インタビューは、選考というよりも、相手は雇う気満々で、よほどこちらがへぼでない限り雇うつもりなのが伝わってきた。採用されれば、日本から戻ってきてすぐに仕事が始まることになる。楽しい経験ができるとよいが。
夕方、いつもの日本語家庭教師をやって、ジムへ。筋トレとマシンランニングの後、プールで水泳。今日はサウナもジャグジーもやっていないので泳ぐしかない。まったく使えない。帰宅後は、翌日の授業でグループプロジェクトの発表があるので、資料の整理をし、課題の読書を進めた。
Favorite Music
毎学期、追い込みに入って疲れてくるとどうでもよいことをしたくなる。今日はMusic Matchで聞いている最近のPlay Listを紹介。ダウンロード販売で手に入らない曲ばかり。この内容で「それが入ってるならこれも聴け」とばかりに話に付き合える珍しい方はぜひコメントを。今まで完璧に音楽の趣味が合う人に出会ったことはありません。Greeから流れてきたりしないかな。さて、勉強に戻るか。。
パワーバラード系
1. “Nothern Lights” by TNT
2. “Wander” by Kamelot
3. “Headed for a Heartbreak” by Winger
4. “Love Leads The Way” by Hardline
5. “Rain Song” by Fair Warning
6. “Standing Alone” by Tyketto
7. “She’s Gone” by Steelheart
8. “Bleeding Heart” by Angra
9. “When Love And Hate Collide” by Def Leppard
10. “Just Take My Heart” by Mr. Big
11. “Going Home” by Artention
12. “One Life One Soul” by GOTTHARD
ミッドテンポ(~パワーバラード)系
1. “Hunting High And Low” by Stratovarius
2. “Forever Young” by Tyketto
3. “Battle for Your Heart” by Grand Illusion
4. “Burning Heart” by Fair Warining
5. “Breakaway” by Equinox
6. “Rain” by TNT
7. “Signs of Danger” by Pink Cream 69
8. “Illusions” by Letter X
9. “Another Day” by Dream Theater
10. “The Key” by Artension
11. “Gutter Ballet” by Savatage
12. “After The Love Has Gone” by TEN
スピード系
1. “Center of the Universe” by Kamelot
2. “Nova Era” by Angra
3. “San Sebastian” by Sonata Arctica
4. “Under a Glass Moon” by Dream Theater
5. “Eagle Fly Free” by Helloween
6. “Lust For Life” by Gamma Ray
7. “Emerald Sword” by Rhapsody
8. “Into the Blue” by Artension
9. “The Killing Hand” by Dream Theater
10. “Journey Through the Dark” by Blind Guardian
11. “Destiny Calls” by Nocturnal Rites
12. “Out of the Ashes” by Symphony X
ゲーム脳と熟練脳
前にゲーム脳騒動について書いたが、先月のゲーム開発者カンファレンスで、日本人がこの問題について紹介したらしく、研究者のメーリングリストでも話題になった。かいつまんでどういう研究なのかを紹介したところ、大いに反応があって、今も議論が続いている。ゲーム脳の兆候として、何も考えずに反射だけで操作できる状態で長時間ゲームすることで、ベータ波の低下が生じる、ということが問題視されている、という点を説明したところ、「何も考えずに反応できる」というのは、重要なスキルなのではないか、という指摘があった。車の運転であれ、判断業務であれ、どんなスキルにおいても、適切に即時判断ができるようになることが熟達するということであり、むしろポジティブに捉えるべきことではないかということである。確かにその通りで、熟達者の脳がどんな状態になっているかを調べれば、ゲーム脳は危ないというだけではない結論につながる可能性がある。
認知科学の分野では、Automaticity(自動性)という概念があって、これは熟練した状態になると、脳のプロセス処理が自動化されて短縮されるというものである。必要十分な学習ができるとこの状態に達するのだが、いったんこの状態に達すると、これ以上の学習は起こらない。ゲーム脳が脳によくないのだとすれば、学習のない状態で長時間脳を放置することにあるのであって、単純なパズルゲームやシューティングゲームなんかだとそれが起こりやすい、ということなのだろう。それなら、ゲームそのものに問題があるというよりは、長時間やらせてしまう家庭環境に問題があるのであって、親や教師が恥ずべき問題である。ゲーム脳の研究は、研究者のゲームに対する偏見から始まっているようなので、そうした問題には余り目が行ってない。誰か対抗して、類似の研究をポジティブな観点からやろうという研究者は現れないだろうか。ゲーム世代の脳生理学者、医学者たちに期待。
Serious Games Japan 始動
教育用途のシミュレーション&ゲーム研究者をサポートするSerious Games Initiativeというプロジェクトがある。先月、サンノゼのゲーム開発者カンファレンスの中でSerious Games Summitという会合を開催し、私もこれに参加した。ここのリーダーのBen Sawyerとメールのやり取りをしていて、日本でも我々のコミュニティを広めたいという話になった。喜んで手伝うよと申し出たら、早速メーリングリストを立ち上げてくれた。近日公開なので、教育用途のシミュレーション&ゲーム研究に興味がある人にはぜひ参加してもらいたい。これから段階的にウェブの立ち上げ、リリース送付など、活動促進を行なっていく予定。
この話に前後して、Simulation and Future of Learningの著者のClarkが、次回作の草稿を送ってくれた。この次回作もこの分野の研究を発展させるのに大きく貢献する内容だ。彼はコンサル出身らしく、ロジックを一から組み立ててシミュレーションゲームと既存のメディアを比較分析できる。いい作品なのでぜひ日本でも出してくれと頼んでおいた。今年はこの研究分野を日本でも認知させるための活動をあれこれやっていくことになりそうだ。
サーベイリサーチデザイン
プログラムの同僚からが、今度中学校教員対象に実施するという調査のオンライン調査票の評価を頼まれた。NASAかどこかから、かなりのグラントをもらっている結構大掛かりなプロジェクトで、子どもの科学教育のオンライン教材とコミュニティを開発しているそうだ。指示に沿ってWeb上の調査票に答えていくものなのだが、これが被験者の負担がすさまじい。参加申込をして、プレ調査に答えて、受け持ちの子どもたちの親から参加承諾書をもらって郵送し、サンプルレッスンを2コマやって、事後調査に答えて、子どもたちにも調査票に回答させる、というもの。これで謝礼は開発された教材を自由に使えます、というだけ。質問もややこしいのが190問。マジですか?と言いたくなるような調査デザイン。いかに全米に中学教員は山ほどいるといっても、こんな負荷の大きい調査にボランティアで付き合ってくれる教員が果たしてどれだけいるのか。アメリカの学校教員というのはそんなに熱心で協力的なのか?このプロジェクトの指導教授もどんなつもりでこんなのやらせているのか、理解に苦しむ。Web上の指示はわかりやすいか評価してくれ、という依頼だったのだが、こんなのは指示の問題ではなくて、調査の構造に大きな問題がある、と答えたが、その同僚からは、そんなことを言われてもどうしようもないといった顔をされた。
このサーベイリサーチデザインの前提として誤っていることがいくつかある。
「サーベイリサーチ被験者に対する5つの誤解」
1. 被験者は研究に対して好意的で、熱心に参加してくれる
2. 被験者は自分たちの研究を自分たちと同じように重要だと思っている
3. 被験者は研究内容に関する知識と関心を持っている
4. 被験者はスマートで、聞いたことはすぐに答えられる
5. 被験者は見知らぬ研究者のことをすぐに信頼してくれる
5つとも、大きな誤解であり、こういう前提を持って研究をやるのは研究者の欺瞞でしかない。日本でも役所や国から金をもらって実施するシンクタンクの調査などで、よく設計のお粗末な大規模調査をやっているのを目にしたが、アメリカでも似たようなことはやられているのだということがよくわかった。というか、そういうお粗末大規模調査はこっちに来てからの方がよく見かける。大規模調査は金がかかるのだから、もっと丁寧に設計してほしいものだ。調査票レイアウトとかワーディングのテクニックがあっても、「私たちの研究はとても重要なのだから、被験者は参加して当然」という傲慢な姿勢では絶対にいい研究はできない。残念ながら、そういうことはアメリカの大学でもあまり教えられていないらしい。
3/24-25 San Jose観光~帰り道
エキスポも3時間ほどで周り疲れてしまい、もう十分だと思ったので、残りの時間はSan Jose観光にあてた。よい気候の中、20分ほど歩くと日本街に着いた。桜が咲いており、寺があって日系人が行き交っている。スーパーDobashiに入って、State Collegeではなかなかいいのが売ってない干ししいたけやインスタント味噌汁などを購入。うちの近所で買うよりもだいぶ安い。その後、日本食レストランTsugaruに入って、刺身とてんぷらと塩さばのセットを食べた。夕暮れ時のSan Joseの街を歩いてホテルに戻り、空港へ向かった。3時間ほど空港で時間をつぶし、11時前にシカゴへ向けて出発。機内では映画スクール・オブ・ロックをやっていた。Music of Heartのロック版で、爆笑しつつもちょっとホロリとさせられるいい映画だった。現代の学校教育への風刺が利いていてよい。
早朝4時過ぎにシカゴへ到着。眠いので待合ロビーのいすで寝て待って、7時の便でColombusへ。ひたすら爆睡。さらに10時の便でPittsburgh、12時の便に乗ってState Collegeには1時に到着。無事にかえったはよいものの、3時半から授業があるのでその準備に追われた。
今回のカンファレンス参加で、この分野の人たちとネットワークができたことと、これから何をやっていけばよいかがわかってきたのは収穫だった。