ゲームデザインとISD

 午後、数ヶ所に仕事のメールを送った後、School of Information Science and Technology主催のフォーラムへ。プレステ2のスポーツ系ゲームなどをいくつも手がけたプロのゲームデザイナーのプレゼンに続いて、ISTの教授陣が加わってのパネルセッション。John Carrollというユーザビリティデザインの大御所と、若手のゲーム研究者二人。議論自体はそんなに盛り上がらなかったものの、話は面白かった。いつも思うが、とにかくこっちのプロデューサー系の仕事をする人たちは言語能力が高い。
 ゲームデザイナーの思考のプロセスはインストラクショナルデザイナーのそれと方向はほぼ同じだが、基軸になるものが違う。ゲームデザイナーはまず”Fun”がきて、IDerは”Learning”がくる。それを軸にして、展開するところや、目的指向であるところは共通。教育系ゲームを研究する我々は、Funではなく、Engagementを軸に考える。教育以外の分野のデザインについて触れるのはいつも勉強になる。
 最近感じるのは、自分はいわゆる教師、あるいは学校教育の関係の人たちよりも、エンジニアの方が発想が近いのだなということだ。教育系のカンファレンスに出るよりも、このセッションのような内容の方がよほど興味深い。また、自分は教えることは楽しいと思うが、すごく楽しいかというとそれほどでなくて、教えるよりも、ものごとの効率をよくしたり、効果を高める仕組みを作る方が断然楽しい。
 教師とエンジニアといえば、同じ研究科にいても、教師あがりの人は細かい要件定義とか、詳細な仕事のつめが得意でない人が多く、オンライン教材開発などをチームでやる場合は情報系や工学系のバックグラウンドがある人への依存度が高くなりがちだ。テクノロジーを利用した教育が普及してきた今日において、インストラクショナルデザイナーたるもの、自分がエンジニアやプログラマーをやる必要はなくても、エンジニアやプログラマたちに自分たちのやろうとしていることを伝えられるだけのコミュニケーション力はつけておく必要があると思う。そうでないと、専門家としての市場価値はずいぶん下がってしまう。Face-to-Faceの研修のみ対応、というのでは守備範囲が狭まってしまうからだ。何を売りにするかは人それぞれでいいのだが、傾向としては、テクノロジーがらみのことを強みにしている人の方が有利なのは間違いない。