ASTD国際会議の感想: タレントマネジメントと人材部門の求心力

 サンディエゴで開催されたASTDの年次国際会議に参加してきた。
 1万人以上の集まる巨大なイベントで、アジアからの参加者も数多く、日本人参加者も話に聞いて想像していたよりも多い印象だった。(会場の様子や各セッションの内容については、東京大学の中原先生がブログにライブレポートを書いておられる。4日間もセッションを続けて聞いているだけでも疲れるのに、聞きながらすぐにいくつも記事をまとめるというのはとてもたいへんなこと。この分野に関心のある人には有益な情報が満載なので読んでみてください。)

続きを読む

ASTD出展企業の気休めマーケティング

 明日はASTDの国際会議に参加するためにサンディエゴへ向かう。ASTDは初参加。一度は参加してみたいと思いつつ出ないまま帰国かなと思っていたら、ちょうどよくお誘いをいただいて参加することになった。
 開催一週間前くらいから、エキスポ出展企業からのDMが大量に送られるようになった。毎日10通くらい受け取ってポストがすぐにいっぱいになる。LMSの会社やROIがどうしたとかビジネスコミュニケーションをどうするとか、いろんな教育研修会社の案内で、いずれもブース出してるから来てね、というメッセージ。どれもこれも見かけのデザインばかり凝って中身のメッセージは大して工夫していない。WiiやiPodや何やらかにやら、抽選で差し上げますからぜひブースに立ち寄ってくださいというプレゼントで釣るようなDMも多い。
 名簿集めのためなのかもしれないが、果たしてWiiに釣られてくるような人がその企業の見込み客として適しているのだろうか。開催日前の関心の高い時を狙ってDM攻撃というのは、教育業界では昔ながらの伝統のDM手法で、きちんしたノウハウを持ってやらないと効果が出ない。こういう適当なDMは機能しないというのはとっくにわかっていて、もうほかの手法に置き換わっているのかと思ったら、ASTDの出展企業(の一部)はみんな一生懸命やっている。こういう企業は、隣のブースでパーミッションマーケティング(ちょっと古いが)やマーケティングコミュニケーションの講座を売ってたら、受講した方がいいかもしれない。
 DMのコストが安いからといって、こういう何の工夫もないDMを送るのは逆効果になるというのを考えないのだろうか。ポッドキャスティング講座やってる会社がiPod配ってるとか、その程度であってもその会社の製品に関連したプレゼントやキャンペーンの一環ならわかる。でもその会社の製品とは何の関係もないプレゼントで印象付けても「あぁ、Wiiで釣ってた会社ね」とか、いい印象はまず持たれない。これでブースで何か通行客をひきつける仕掛けをしているならまだよいが、こういう工夫のないDMを送る会社はそこまで気が回らない。抽選でWiiあげるから登録してね、と名刺を入れる箱を持ってうろうろしているだけだったりする。ただ集めただけの名簿など、ヒット率の低い質の悪い名簿にしかならない。
 そんなことはわざわざMBAとかマーケティング講座とか受けなくても、普通に客として接する立場になって想像できれば、あまり意味のない販促活動だということを普通の感覚で判断できる性質のものだろう。それでもやっているというのは、もうずっと長年やっている惰性からくるものか、何かやらないと不安だからという提供者側の事情からくるものが案外多いのではないか。DMを送られる相手のことを考えてのことではなく、送る側の自分たちの気休めのために送っている。気休めマーケティングとでも言うほかない。
 ほかの同じような会社のDMに埋もれてしまうようなDMを送っても、販促予算の無駄遣いでしかない。その予算でちょっと気の利いた製品デモか何か製作するか、説明員を増やすなどした方がよほど費用対効果は高いだろう。ゴミ箱に直行するようなDMをいちいち見てわざわざ訪ねてくるような暇な来訪者は、どうせぶらぶら展示会場を回っているのだから、前を通りかかった時に捕まえる方がよほど効率があがる。それにその方が質のよい見込み客に当たる確率も、その会社の製品について知ってもらえる度合いも上がるだろう。そういう意味では、よくあるような気の利かないノベルティグッズもいらない。そのノベルティの販促内での位置づけが明確ならともかく、それらもたいていは提供者側の何か手軽に効果的な販促をやった気になりたいという気休めでしかない。
 そんなわけで、若干事前の期待値を下げられつつのASTD参加になってきた。こんなことを書いていると、ぜんぜん期待していないように見えるかもしれないが、実は結構楽しみにしている。米国のトレーニング業界の最新事情を見てきて、何か面白いことを吸収してきたい。

Games for Health こぼれ話

 Games for Health Conference 2008参加のため、ボルチモアへ出張してきました。カンファレンスの参加のオフィシャルなレポートはシリアスゲームジャパンの方に少しずつまとめているので、こちらでは個人的な滞在記を簡単に。
 ボルチモアへは、ステートカレッジの自宅から片道3時間のドライブ。今回の会場はグレードアップしてボルチモア・コンベンション・センターになった。宿泊は近くのマリオットホテル。ホテルの部屋をTim Holt氏とシェアすることになった。TimはHalf-life MODの世界では結構有名な人物で、最近までオレゴン州立大学の森林保護シミュレーションの開発に参加していたが、現在は独立コンサルタントとして活動を開始したところだそうだ。彼と何かプロジェクトを一緒にやりたい人には、話を持ちかけるのによいタイミングだろう。
IMGP0368-2.JPG
会場のボルチモア・コンベンション・センター
 ホテルでは、主催者のBen Sawyer氏と部屋が隣で、ビールをご馳走するから部屋で作業を手伝ってくれと言うので行ってみると、カンファレンスで行うゲームの準備のための封入作業だった。300数十名分の封入で、カードの仕分けなどがかなりの内職仕事だった。CMPが運営しているシリアスゲームサミットと違って、このカンファレンスはBenの会社で運営まで請けているため、このような細かい仕事も彼が面倒見る。特に会場内でのゲーム(ウィルス防疫をコンセプトとした数字と色の組み合わせのカードゲーム。カードにはスポンサーのHumanaの名前が入っていて、はやく上がった人には抽選でスポンサー特典を提供、というスポンサー対応の仕掛け)は今回初めての試みで、仕込みの作業がずれこんだらしい。こういう場合は外注とかそういう人手が使いにくく、勝手のわかったメンバーでやる方がよくなる。男4人でビールを飲み飲み夜なべの内職作業。部屋が隣で相部屋なのもこのための伏線だったのか、計られたと思いつつも、これもまあ、普通に客として参加するより楽しい世界でもある。
 初日の冒頭、Benがこのコミュニティの発展の状況を解説。メインスポンサーのロバート・ウッド・ジョンソン財団からの資金提供も倍増し、PR活動や運営全般の予算に余裕ができたらしく、前回までは研究会的な雰囲気だったのが、フォーマルな国際会議的な雰囲気にグレードアップした印象。規模的にも、このGames for Health単体で、数年前のシリアスゲームサミットを上回る規模になった。
 グレードアップの瑣末な例としては、参加者に配布されるバッグやバインダーが立派になって、おやつも豪華になった(どうでもよいのだが、おやつはアメリカンな激甘ブラウニーや特大チョコチップクッキーが山盛りになっていた(下記写真)、健康に気遣うカンファレンスとしてこれはどうなのかというところもあるのだが、まあそれはそれとして)。
IMGP0358-2.jpg
豊富に並ぶ食後のデザート
 顕著な例としては、大手ヘルスケアプロバイダーが参入して、来場者の顔ぶれも、そうした大手組織や病院などをクライアントに持つ弁護士や広告代理店の人々など、「一般の人々」が入ってくるようになってきた。ヘルスケア分野は動くお金の額も大きいので、周辺への波及も大きい。ゲームにシリアスな人々がこの数年で周りを動かすようになったことを示している。ヘルスケア分野では全米最大のロバート・ウッド・ジョンソン財団のこの分野への長期コミットメントが示されたことによるアナウンス効果も大きかったのだろう。
 デモブースにはさまざまな健康促進や医療教育のためのシミュレーションやゲーム機器が並んでいた。Wii Fitは北米版発売前なので、日本版が展示されていて、その横ではWiiの参入で厳しい状況にあるXavixも展示されていた。学校のジムなどで利用する業務用のフィットネスゲームシステムや、最近Breakawayがライセンス取得して販売を開始したPulse!や、VirtualHeroesの3Dの医療教育シミュレーション、Forterraの救急訓練用の仮想世界システムなど、各社の製品デモでにぎわっていた。
IMGP0342-2.jpg
Xavixのゲームを試すTim Holt氏
 初日夜は、レセプションの後に主催者や関係者に近い人々総勢20名ほどで、近くのオシャレなスペイン料理レストランへ。ゲーム開発会社Realtime Associates社長で、この分野ではRe-Missionの開発者として知られるDavid Warhol氏や、ゲームデザインの原則をまとめる「The 400 Project」などで知られるゲームデザイナーのNoah Falstein氏らゲーム開発者や、多様な分野の研究者たちと同席した。こういう場ではカンファレンスのセッションとは全く違った話になるし、実はこちらの方がタメになることもあったりするのが面白い。酒の席ではフォーマルな場とは異なる立ち振る舞いや人となりが見られるところも興味深い。社長然とした人、研究者然とした人、仕切る人、仕切られる人、それぞれに個性が出る。なぜこの分野に関心を持ったのかという個人的なストーリーを聞ける機会でもある。
 長くなってきたので、続きはまた。

Wax on, Wax off

 夕食時にテレビで、「The Karate Kid」(邦題:ベストキッド)をやっていたので見た。
 この映画は1984年公開、主人公の少年が、空手で鍛えた不良グループにいじめを受けているところを近所の日本人、Mr. ミヤギに助けられ、空手を教わり、空手トーナメントに出場して・・・というお話。ジャッキー・チェンの初期の作品のプロットでアメリカの青春ドラマに仕立てたような感じ。日本でもまあまあ有名だが、アメリカではかなりヒットしたようで、テレビでもしょっちゅう再放送している。カラテといえばみんなまずこの映画が思い当たるような作品だ。
 主人公が空手を習い始めるくだりのシーンで、Mr. ミヤギの有名な「Wax on, wax off」というセリフがでてくる。修行の手始めにMr. ミヤギが車のワックスがけを命じて、主人公がブツクサ文句を言いながら作業を始める(見たい人はYouTubeのKarate Kid Lesson 1 (Wax on Wax off)を参照)。その後、床のヤスリがけや塀のペンキ塗りなどの雑用ばかりさせられて、空手の練習が一向に始まらない。主人公がうんざりして辞めようとするところを、Mr. ミヤギが仕方なしにこれまでの雑用が空手の基礎訓練だったことを理解させるというくだりが続く(そのシーンはYouTubeでこちら)。
 有名なシーンなので知っている人には今さらなのだけど、学習に関心のある人には何かと示唆の多いところがある。学習における基礎の重要さや、徒弟関係における修行の中での学習の埋め込まれ具合を端的に描写している。
 空手に限らずどんな習い事も、初学者には何が基礎かもどこまでやればよいかもわからないし、目指すスキルの習得に何を鍛えればよいかもわからない。とりあえず空手の練習っぽいことをやるのが早いのだろうし、その方がカッコいいくらいにしか考えていない。なので主人公はワックスがけもただの雑用と思って適当にやろうとするのだが、それだと期待される力が身につかないので、そこは師匠がきちんと指導する。この指導が大事で、ここが抜けていると基礎練が形骸化するところだ。
 仮に最初からその動作がなぜ重要なのかを教えるのがよいとしても、この映画のMr. ミヤギのように普通は師匠というのはあまり丁寧に説明してくれない。それが教育方法論的にどうであっても、「知るか、面倒くせぇ」という反応なのが普通だ。弟子は黙って辛抱して修行するもので、ごちゃごちゃ言わせない。基礎が身についてきたと思ったら、最後に成果を見せて褒める。そして次のステップへ進む。根性無しや屁理屈こねて手を抜く奴には教えない。なので、師匠はどんな弟子でも教えられるわけではなく、そのスタイルに合う弟子しかその師匠の元では伸びていかない。そういう点では、修行の場での指導と学校的な指導とはだいぶ前提が異なるし、教室で教える教師と徒弟関係の中の師匠は、文化的にそもそもの教えるスタンスが異なる面がある。
 と、こんな風に学者はくどくどと理屈っぽく説明して、結局わかってもらえなかったりするのだが、映画で見れば同じことを「あー要は、Wax on Wax off ね」とパッと理解させることができるところがよいところだ。だからと行って映画ばかり見ていればいいのかというと、そういうわけでもなくて、そうやって理解した人も、そこからもう少し掘り下げて、もっとよく理解して応用したい時には、理屈っぽく考えないといけないし、そのときには、こうしてくどくどと説明する内容が効果を発揮するわけで、理屈っぽい学者の存在意義もそこにあるというわけだ。

Bad Gift Emporium: 脱力プレゼント投稿サイト

 妻からWebby Awardsというウェブサイトを教えてもらった。一般ユーザーが人気ウェブサイトに投票して、部門ごとにその年のベストウェブサイトを選ぶ形式で、1997年から続いている。ネット業界の人には常識なのかも知れないが、今回教えてもらって初めて見た。CNNのAnderson Cooper360ブログもノミネートされていて、妻(Anderson Cooperファン)がわざわざ教えてくれたのは、このブログに投票しろという趣旨だった。(ちゃんと投票しましたよ。>妻)
12th Annual Webby Awards Nominees
http://www.webbyawards.com/webbys/current.php?season=12
 70部門くらいあって、各部門ごとに5つずつ候補がノミネートされていて、FrickrやAppleなどの有名サイトは複数の部門に重複しているが、それらを除いても結構な数のウェブサイトが紹介されている。ウェブデザインやネットサービスをやっている人には参考になるサイトも多そうだ。
 このなかで目を引いたのは、Weird部門のBad Gift Emporiumというウェブサイト。クリスマスや旅行のお土産などでもらったうれしくないトホホなプレゼントを投稿して、それがアルバム風に掲載されている。Emosium(大規模小売店、市場)という名前がついているように、そのプレゼントをほしい人に譲ることもできるよようになっている。
 写真だけ見ても何だかわからないのだが、クリックするとその品名と投稿者のコメントが読める。クリスマスプレゼントの投稿が多く、楽しみにして開けたプレゼントが変な置き物や意味不明の物体で脱力した様子が語られている。たしかにクリスマスに「スティーブン・セガールのエナジードリンク」とか「ケチャップ」とかもらってもうれしくない。親戚のオバさんの旅行土産でもらったものにもなかなか脱力ものの品物が並んでいる。VOWを読んでいるような感じで脱力して笑って楽しめる。息抜きにどうぞ。

American Idol特番のHeart

 「American Idol」 のチャリティ特番「American Idol Gives Back」を先週やっていた。有名スターが大勢ゲストで出てきて、寄付を呼びかける番組だったのだが、ロックバンドのHeartもゲストとして出てきて、「Barracuda」を演奏した。ヴォーカルのAnn Willsonのハリのあるパワフルな歌声は健在で、さすがというところなのだが、それよりもずいぶん巨大化しているのに驚いた。若い頃とシルエットがあまりにも違っていて、出てきた時はミートローフかと思った。

 ちなみに、昔はこんな感じだったのだが。
Heart – Barracuda (1977)
 妹のナンシーの方も、さすがに50代半ばになるのでそれなりに老けてきてはいるものの、シルエット的にはそんなに変わってない。でも二人ともこの年齢ででこんだけロックしてればたいしたもの。どうでもよいが、よく見たら姉のアンの方はうちのオカンと同い歳だった。人に歴史あり、というところですな。

ブロガー・コンスティペイション

 習慣的にブログを続けていると、ある時急に書けなくなる時期を経験する。そういう人は多いらしく、有名ブロガーでもスランプについて語っているのをよく見かける。物書きのスランプ状態の「ライターズ・ブロック」という言葉を使う人もいるのだが、そこで語られているスランプの感覚とは違う症状な気がしていた。
 自分の場合どういう感じで書けなくなる症状が生じるのか考えてみると、緊急度が高くて時間のとられる仕事に直面している時、「ブログに費やす時間があるくらいなら、その仕事をやるべき」という感覚が働く時が多い。15分くらいで軽く書けるネタがあればよいのだが、書きたいことを書いていると発想が広がってつい長くなるし、自分の納得する形でまとめようとすると時間が取られて15分では終わらない。なんだかんだで一回更新あたり30分から1時間はかかる。
 そういう状況下でも、書きたいネタは日々思いつく。というか、そういう時ほど書きたいことが思いつく。ブログが自分にとっては「試験前の掃除」のような位置づけで、逃避行動として機能している面があるからだと思う。以前はそういうものを思いつくままに書いていたが、そうするといろいろと支障があるので、最近はメモだけ書いて放置するようにしている。
 すると、ブログのネタストックは貯まる。だがそれが逆効果になる時もある。いざ書くときになって、「これを書くなら、こっちを先に書いた方がいい」みたいなことを考え出す。すると結構その空き時間には収まらないネタだったり、頭を使わずに気軽に書きたい気分なのに、それでは書けない重たいネタだったりする。そしていろいろと書いているうちに発想が広がって結局いまいちまとまらずに消化不良になったりする。つまり、書きたいネタはあってもそれがうまくアウトプットにつながらない状態になっている。
 この症状は「ライターズ・ブロック」などという品のよい表現では十分に形容できてなくて、汚い感じで申し訳ないが、むしろ「便秘」に近い状態だと思うようになった。似たような描写で「産みの苦しみ」という言い方もできるが、そんなたいそうなものを日々生産している訳でもなく、もっと日常的に出すものが溜まる感じだ(別にブログに書いているものがウ○コレベルだとか、そういうアウトプットの質の話ではなくて)。日常的に摂取したものが溜まる感じと出す感じを形容すると、これが一番近い。ネタを入れる量に比して出す量が十分でなく、体内に溜まった状態で居心地が悪い。出すものを出さないと気分が悪い。そういう感じ。
 おそらく毎度しっかり書きたいタイプのブロガーに共有できる感覚なのではないかなと思って、ちょっと検索してみたら、「Blogger constipation(ブロガー・コンスティペイション)」という言葉を使っているブロガーがいた。constipationとは、「便秘、不活発」という意味で、まさにそういう身体の不活性な感覚をアナロジーとして形容している。
 ブログが書けない症状というのは人それぞれあって、摂取するネタの質や日々の生活習慣などのさまざまな要素が影響していると思う。これはリアルなコンスティペイションに共通するところが多そうで、この二つのコンスティペイションをアナロジーとして考えていけば、書けないブロガーの症状を改善するのに参考になるアイデアが出てくるんじゃないだろうか。

渡米~活動再開

 ステートカレッジの自宅に戻り、活動を再開。冷蔵庫が空だったので買出しに行き、12時間寝て移動の疲れを取って、ようやく頭が機能し始めた感じ。ついてないことや思うように行かないこともあるけれど、そういうことに引っ張られず、やるべきことを地道にやるのが近道だと信じて前に進もうと思う。

明日から渡米

 明日から再びアメリカへしばらく出かけてきます。今度は夏に本格的に帰国する予定で準備を進めております。
 今回も日本にいる間にいくつか原稿を書きました。
 まず、「テレビゲーム産業白書2008」に「欧米と日本のシリアスゲームの動向」と題した論文を寄稿しました。シリアスゲームの定義についての考え方、ニンテンドーDSの学習・実用系ソフトの販売データから読み取れる傾向など論じています。高い本なので、仕事でないと買えない感じですが、もし手にする機会がありましたらどうぞご覧ください。
 財団法人デジタルコンテンツ協会の実施した「シリアスゲームの現状調査」の報告書でも、欧米のシリアスゲームの動向について書いています。こちらは、米国と欧州のシリアスゲームの動向を対比して、それぞれの特徴について論じています。この報告書は、教育分野、ゲーム業界の著名人へのインタビューなど、かなり読み応えのある内容になっています。報告書は同協会の会員の方や関係機関などに配布されるそうで、一般公開されるのかどうかを確認できていませんが、公開されたらまたご紹介します。
 それと、秋頃出版予定の教育系の学術書にもシリアスゲームネタで1章書きました。こちらもお知らせできるようになったら詳細をご紹介します。
 今回は博士論文研究のための活動にかなり時間を割いて、どうにか終わらせるメドが立ちました。論文とは直接関係のない活動を並行して進めながらの研究活動は遅々として進まず、やはりもう少しやりやすい研究をまとまった時間を集中してやるべきだったかなと反省しつつ、ここまで来てしまったからにはあとは何とか乗り越えるしかないなというところ。学位取得というのは、いろいろと制約が多い中で研究をやりきることに意味があるのだろうとつくづく思います。早く帰国後の活動に移りたいと気がせいているところでありますが、最後のもうひと踏ん張りでなんとか片づけてきたいと思います。

学習会議@NHKに参加

 百式ブログで有名な田口元さんプロデュースの「学習会議@NHK」に参加してきた。
 ブロガーと学習ってどんな感じの内容なのかな、とイメージがわかないままに、教育番組の制作の話が聞けるというので参加してきたが、参加してみて納得。ブロガーと協力企業の双方のニーズの落としどころをリンクさせた、コラボ×プロモセッションだった。
 冒頭の趣旨説明、4月から始まるNHKのテレビ中国語講座「テレビで中国語」の制作者の方による番組紹介と制作の話、番組出演者のタレントさんが出てきての中国語ミニレッスン、参加者ディスカッションと共有、懇親会と、約2時間半の間にギュッと詰まった、密度の濃いイベントだった。途中に2回休憩やグループ作業を入れても、きちんと仕切れば短い時間でこれだけできるのだなと感心した。田口さんの仕切りもNHKエデュケーショナルの関係者の方のサポートも細やかに気が利いていて、楽しんでいるうちになんだかあっと言う間に終わった感じの、参加していてとても気持ちのよいイベントだった。
 議論の題材となったNHKの「テレビで中国語」制作の話として、中国語学習を普及させる際に障壁となる課題と、その対策としてどのような制作上の工夫を盛り込んだかをご紹介いただいた。
1. 発音の難しさ=>ラップ音楽にのせて発音練習するおまけコーナー
2. 文法の難しさ=>文法の構造をビジュアル表現
3. ネガティブな対中感情=>文化紹介コーナーの充実
4. 話す機会の少なさ=>書き込み式テキスト、NHKの語学学習サイト「ゴガクル」で練習教材の提供
5. 飽きやすさ=>小池栄子を起用して中国語学習してもらう
 いずれも、テレビというメディアの制約、少人数のスタッフで大量のボリュームを制作しなければいけないという制約の中で、経験ある制作者の方たちが最大限に知恵を絞って考えているという感じで、実行可能な範囲で最大限のチャレンジ、かつソツなくまとめられている感じなのがさすがプロ。
 ただ、気をつけないといけないのは、楽しませるための要素は冗長になりやすく、時間あたりの学習密度が薄くなりがちだということだろう。番組自体は見ていないので評価できないが、今回拝見したラップ音楽のコーナーの学習の密度は薄い感じだった。25分という限られた枠内で、視聴者を楽しませてひきつける工夫をしつつも、学習のチャレンジの度合いをキープしておく必要がある。そのため、学習密度の薄い時間は極力減らす必要がある。
 あと、テレビの語学講座では、学習ペースの遅い人を置いていかないように配慮しつつ、進行をゆっくりめにして、学習の負荷を下げて丁寧に進める感じにしているのかなと思うが、熱心な人、ペースの速い人向けのコンテンツを増やす方向で考えてみてもよいかなと思う。たとえば、番組のスキットだけでなく、出演者の会話すべての中国語と日本語の対訳をウェブサイトに載せるとか。聞き落としたところの確認もできるし、関心を持ったフレーズを中国語で見直すことができる。出演者の間で交わされる生の会話がコンテクストとして提供されるので、スキットの対訳とは違った学習効果が期待できる。この手の対応はおそらく手間のかかることだと実現が難しいと思うが、洗い出していけば実行可能で効果の高いものがいくつか出てくると思う。
 私も一応、教育メディアの研究者の端くれなので、教材制作のアイデアを出し始めるときりがなく、やりだすといつまでたっても書き終わらない。なのでまた機会があればいずれ書きたい。
 今回参加したブロガーの皆さんはさすがのもので、写真やイベントログもきっちり素材集めをされていた様子で、まるで取材のよう。どんな記事を書いているのかとても楽しみだなと思っていたら、もうすでに皆さん詳しいレポートをあげているし、田口さんは裏側のタネあかし的な話を披露してくださっている。
『学習会議@NHK』ではどんな準備をしていたのか?(&参加ブログへのリンク集)
http://www.ideaxidea.com/archives/2008/03/nhk.html
 会の詳細レポートは、参加ブロガーさんたちがまとめてくださってるのでそちらを参照いただいた方がよさそう(たとえば同じグループだったdeltamさんの記事)。
 皆さんそれぞれ、熱気ある雰囲気がレポートされているが、ミニレッスンで登場したローラ・チャンのことになるとやたらに熱を帯びているところも、場の雰囲気を伝えている。(自分も含め)参加した男性陣の反応たるや、みんなローラ・チャンを見るために一年間視聴継続してしまいそうな勢いだった。皆さんのために、こちらからも撮った写真を一枚投入、と思ったのだが、デジカメの接続ケーブルが見当たらなくて今日は断念。また明日にでも。
 この会の参加条件として、ブログでフィードバックすることとのことだった。それで参加ブロガーは、みんな同じ時間を共有した後に各自で課題に取り組んでいるわけだけども、その取り組みの姿勢というか、ブロガー魂のようなものを学ばせていただいた。記録を取る際の基本動作が違う。全体会議でグループで議論していた時も、自分が一人で考えても思いつかないようなアイデアがたくさん出ていて、コラボレーションの醍醐味を味わえた。それにイベント後のブログを通して学べることが多い。コンテクストを共有しているおかげで同じことを聞いても得るものが多い。まさにオンラインとオフラインを組み合わせた集合知で、ブレンデッドラーニングもこういうブレンドなら大歓迎だ。
 ブロガーという層は、アクティブなユーザー層であり、自分でメディアを持っているという点で、今回の企画に意味があったのだと思う。参加した企業側からすれば、フォーカスグループをやってユーザーデータを集めながら、新製品のプロモーションも手伝ってもらえるというお得感がある。こういう仕掛けはネットというメディアやブロガーという存在をよく理解してないとできないわけで、そこはさすが田口さんというところ。おかげさまでいろいろとよい経験ができました。参加ブロガーの皆さん、ありがとうございました。