ASTD出展企業の気休めマーケティング

 明日はASTDの国際会議に参加するためにサンディエゴへ向かう。ASTDは初参加。一度は参加してみたいと思いつつ出ないまま帰国かなと思っていたら、ちょうどよくお誘いをいただいて参加することになった。
 開催一週間前くらいから、エキスポ出展企業からのDMが大量に送られるようになった。毎日10通くらい受け取ってポストがすぐにいっぱいになる。LMSの会社やROIがどうしたとかビジネスコミュニケーションをどうするとか、いろんな教育研修会社の案内で、いずれもブース出してるから来てね、というメッセージ。どれもこれも見かけのデザインばかり凝って中身のメッセージは大して工夫していない。WiiやiPodや何やらかにやら、抽選で差し上げますからぜひブースに立ち寄ってくださいというプレゼントで釣るようなDMも多い。
 名簿集めのためなのかもしれないが、果たしてWiiに釣られてくるような人がその企業の見込み客として適しているのだろうか。開催日前の関心の高い時を狙ってDM攻撃というのは、教育業界では昔ながらの伝統のDM手法で、きちんしたノウハウを持ってやらないと効果が出ない。こういう適当なDMは機能しないというのはとっくにわかっていて、もうほかの手法に置き換わっているのかと思ったら、ASTDの出展企業(の一部)はみんな一生懸命やっている。こういう企業は、隣のブースでパーミッションマーケティング(ちょっと古いが)やマーケティングコミュニケーションの講座を売ってたら、受講した方がいいかもしれない。
 DMのコストが安いからといって、こういう何の工夫もないDMを送るのは逆効果になるというのを考えないのだろうか。ポッドキャスティング講座やってる会社がiPod配ってるとか、その程度であってもその会社の製品に関連したプレゼントやキャンペーンの一環ならわかる。でもその会社の製品とは何の関係もないプレゼントで印象付けても「あぁ、Wiiで釣ってた会社ね」とか、いい印象はまず持たれない。これでブースで何か通行客をひきつける仕掛けをしているならまだよいが、こういう工夫のないDMを送る会社はそこまで気が回らない。抽選でWiiあげるから登録してね、と名刺を入れる箱を持ってうろうろしているだけだったりする。ただ集めただけの名簿など、ヒット率の低い質の悪い名簿にしかならない。
 そんなことはわざわざMBAとかマーケティング講座とか受けなくても、普通に客として接する立場になって想像できれば、あまり意味のない販促活動だということを普通の感覚で判断できる性質のものだろう。それでもやっているというのは、もうずっと長年やっている惰性からくるものか、何かやらないと不安だからという提供者側の事情からくるものが案外多いのではないか。DMを送られる相手のことを考えてのことではなく、送る側の自分たちの気休めのために送っている。気休めマーケティングとでも言うほかない。
 ほかの同じような会社のDMに埋もれてしまうようなDMを送っても、販促予算の無駄遣いでしかない。その予算でちょっと気の利いた製品デモか何か製作するか、説明員を増やすなどした方がよほど費用対効果は高いだろう。ゴミ箱に直行するようなDMをいちいち見てわざわざ訪ねてくるような暇な来訪者は、どうせぶらぶら展示会場を回っているのだから、前を通りかかった時に捕まえる方がよほど効率があがる。それにその方が質のよい見込み客に当たる確率も、その会社の製品について知ってもらえる度合いも上がるだろう。そういう意味では、よくあるような気の利かないノベルティグッズもいらない。そのノベルティの販促内での位置づけが明確ならともかく、それらもたいていは提供者側の何か手軽に効果的な販促をやった気になりたいという気休めでしかない。
 そんなわけで、若干事前の期待値を下げられつつのASTD参加になってきた。こんなことを書いていると、ぜんぜん期待していないように見えるかもしれないが、実は結構楽しみにしている。米国のトレーニング業界の最新事情を見てきて、何か面白いことを吸収してきたい。