Games for Health Conference 2008参加のため、ボルチモアへ出張してきました。カンファレンスの参加のオフィシャルなレポートはシリアスゲームジャパンの方に少しずつまとめているので、こちらでは個人的な滞在記を簡単に。
ボルチモアへは、ステートカレッジの自宅から片道3時間のドライブ。今回の会場はグレードアップしてボルチモア・コンベンション・センターになった。宿泊は近くのマリオットホテル。ホテルの部屋をTim Holt氏とシェアすることになった。TimはHalf-life MODの世界では結構有名な人物で、最近までオレゴン州立大学の森林保護シミュレーションの開発に参加していたが、現在は独立コンサルタントとして活動を開始したところだそうだ。彼と何かプロジェクトを一緒にやりたい人には、話を持ちかけるのによいタイミングだろう。
会場のボルチモア・コンベンション・センター
ホテルでは、主催者のBen Sawyer氏と部屋が隣で、ビールをご馳走するから部屋で作業を手伝ってくれと言うので行ってみると、カンファレンスで行うゲームの準備のための封入作業だった。300数十名分の封入で、カードの仕分けなどがかなりの内職仕事だった。CMPが運営しているシリアスゲームサミットと違って、このカンファレンスはBenの会社で運営まで請けているため、このような細かい仕事も彼が面倒見る。特に会場内でのゲーム(ウィルス防疫をコンセプトとした数字と色の組み合わせのカードゲーム。カードにはスポンサーのHumanaの名前が入っていて、はやく上がった人には抽選でスポンサー特典を提供、というスポンサー対応の仕掛け)は今回初めての試みで、仕込みの作業がずれこんだらしい。こういう場合は外注とかそういう人手が使いにくく、勝手のわかったメンバーでやる方がよくなる。男4人でビールを飲み飲み夜なべの内職作業。部屋が隣で相部屋なのもこのための伏線だったのか、計られたと思いつつも、これもまあ、普通に客として参加するより楽しい世界でもある。
初日の冒頭、Benがこのコミュニティの発展の状況を解説。メインスポンサーのロバート・ウッド・ジョンソン財団からの資金提供も倍増し、PR活動や運営全般の予算に余裕ができたらしく、前回までは研究会的な雰囲気だったのが、フォーマルな国際会議的な雰囲気にグレードアップした印象。規模的にも、このGames for Health単体で、数年前のシリアスゲームサミットを上回る規模になった。
グレードアップの瑣末な例としては、参加者に配布されるバッグやバインダーが立派になって、おやつも豪華になった(どうでもよいのだが、おやつはアメリカンな激甘ブラウニーや特大チョコチップクッキーが山盛りになっていた(下記写真)、健康に気遣うカンファレンスとしてこれはどうなのかというところもあるのだが、まあそれはそれとして)。
豊富に並ぶ食後のデザート
顕著な例としては、大手ヘルスケアプロバイダーが参入して、来場者の顔ぶれも、そうした大手組織や病院などをクライアントに持つ弁護士や広告代理店の人々など、「一般の人々」が入ってくるようになってきた。ヘルスケア分野は動くお金の額も大きいので、周辺への波及も大きい。ゲームにシリアスな人々がこの数年で周りを動かすようになったことを示している。ヘルスケア分野では全米最大のロバート・ウッド・ジョンソン財団のこの分野への長期コミットメントが示されたことによるアナウンス効果も大きかったのだろう。
デモブースにはさまざまな健康促進や医療教育のためのシミュレーションやゲーム機器が並んでいた。Wii Fitは北米版発売前なので、日本版が展示されていて、その横ではWiiの参入で厳しい状況にあるXavixも展示されていた。学校のジムなどで利用する業務用のフィットネスゲームシステムや、最近Breakawayがライセンス取得して販売を開始したPulse!や、VirtualHeroesの3Dの医療教育シミュレーション、Forterraの救急訓練用の仮想世界システムなど、各社の製品デモでにぎわっていた。
Xavixのゲームを試すTim Holt氏
初日夜は、レセプションの後に主催者や関係者に近い人々総勢20名ほどで、近くのオシャレなスペイン料理レストランへ。ゲーム開発会社Realtime Associates社長で、この分野ではRe-Missionの開発者として知られるDavid Warhol氏や、ゲームデザインの原則をまとめる「The 400 Project」などで知られるゲームデザイナーのNoah Falstein氏らゲーム開発者や、多様な分野の研究者たちと同席した。こういう場ではカンファレンスのセッションとは全く違った話になるし、実はこちらの方がタメになることもあったりするのが面白い。酒の席ではフォーマルな場とは異なる立ち振る舞いや人となりが見られるところも興味深い。社長然とした人、研究者然とした人、仕切る人、仕切られる人、それぞれに個性が出る。なぜこの分野に関心を持ったのかという個人的なストーリーを聞ける機会でもある。
長くなってきたので、続きはまた。