8月は少しお休みしていましたが、新学期も始まることですし、そろそろ通常営業にて活動再開したいと思います。
当サイトコンテンツ「今週のりん」「シリアスゲームジャパン」「生涯学習通信風の便り」いずれも更新してますのでご覧ください。
ビデオ教材とカリスマ講師
午後は教育ビデオ制作の授業で、いろんな教則ビデオやオンライン教材などを見て議論した。赤ちゃん手話のビデオは、手話を一生懸命やっている身振りがやたらかわいい赤ちゃんが大量に登場していた。このビデオに出てくる母親も赤ちゃんもとにかく幸せそうである。みんな赤ちゃん手話をやることで幸せになることを望んでいるのだから、この幸せ感を伝えるのがこのビデオの重要な目的となっているのだ。ビデオはこういう感情を伝えるのに適したメディアだ。手間をかけずにこの良さを活かすには、出演者にパワーがないといけない。
ここで少し省察モードに入って昔の話になる。私は大学を出て最初に予備校経営の会社に勤めていた。その会社では、教え方が上手くてテンションがある講師を高年俸で雇い、彼らの気合を活かして映像教材を制作し、全国の塾に衛星配信して利益を上げていた。制作技術的にはシンプル、ローコストオペレーションでの大量制作を旨としていた。第一線の講師は皆カリスマ講師で、下手な講師に対面授業で教わるよりも、個別ブースで彼らのビデオを見て学習した方が成績があがるというのがこの予備校のシステムの売りだった。遠隔教育では少数の優れた講師がいればその他大勢の講師はいらない、という遠隔教育初期に語られていた理想をこの予備校のシステムはある意味実現していた。
今、私は学習効果をあげるためのビデオの制作テクニックをいろいろ学んでいるが、結局のところ、そうした一流講師の技とテンションを制作技術だけでカバーできるノウハウは存在しない。テキストと音と絵の組み合わせをいかに工夫したところで、カリスマが学習者に与えるモチベーションを超えるものは作れていないのが現状だ。そして制作に力を入れれば入れるほどとコストがかかるので、いい講師をつかまえてくる方に力を入れたほうが安上がりだ、という考え方は賢明である。実際、前述の会社はその判断に基づいて、いい講師を確保することにエネルギーを注ぎ、制作は必要最低限のコストで回していた。
だが、制作にも工夫のしどころというのがきっとあって、それをつかめば、カリスマ講師のような存在に頼らなくても、標準的な講師でもいいコンテンツが作れるはずだし、そうすべきだ、というのが大学出たての当時の私の信念であり、それを追求するようにして私のその後のキャリアは展開されてきた。
私の関心はもともとビデオ教材にはたいしてなくて、今までにない新しい教育コンテンツを作ろうという漠然としたものだったのだが、今は教育用ゲームというテーマを見つけ、今までにない教育用ゲームを開発しよう、という形でより焦点が定まり、努力する道筋も見えてきた。まだ力量不足で苦労することは多いが、あと3年以内には、一つこれまでの集大成となる成果を世に送り出したい。
Survivorの爆笑スタバCM
ロッキー3のテーマソング「Eye of the tiger」を歌っているサバイバーがスタバの缶コーヒーテレビCMに登場して、この曲の替え歌を歌っているのがかなり笑える。こういうのは力いっぱい歌うハードロックの曲だから面白い。日本でも昔、クリスタルキングがこんな感じのことをやってたか。
大学がe-bayで不要品処分
久々に高等教育関係のニュースから。
ペンステートが発行してるニュースメルマガで、ペンステートがネットオークションのイーベイ(日本からは撤退)で大学の備品でいらなくなったものをオークションにかけて売り払っているというニュースがあった。2003年には93,000ドル(約1000万円)の売上があったそうだ。この売上は手数料を引いて、その備品を所有していた学部や部門にバックされるとのこと。ペンステートはここ3年ほど、州の予算削減のため、経費削減を続けていて、これはその一環で実施されたそうだ。日本の大学でもやれるのでは?
ニュースの原文はこちら。
ビデオ教材に途中で飽きてしまう理由
ビデオ制作コースで学んでいるおかげで、最近ビデオ教材を見る機会が多い。今度最終課題で、統計ソフト入門のようなビデオ教材を作ろうと思っているので、統計のビデオをインターン先から借りて来てうちで見ていた。とても完成度の高いビデオ教材だと思ったのだが、どうしても20分もしないうちに飽きてしまう。先日授業中に観たビデオも面白いと思っていたが途中で飽きてしまった。そういえばe-learningの教材もよくできているものでも途中で飽きてしまう。何で飽きるのか、と考えるうちに一つの共通点が思い浮かんだ。どれも画面に出てこないナレーターが、はじめから同じ調子でナレーションしているのである。どんなにナレーターの声がよくても流暢でも関係なくて、このスタイルのビデオは15分ほどで飽きてしまう。ニュース番組のキャスターが複数人いたり、コメンテーターがいたりするのは、視聴者に飽きさせないためのテレビ業界のノウハウの一つなのだ。ビデオ教材だとこのセオリーが若干変わっていて、一人の声でずっと読みが入る形のものが多く見られる。これでかっこよさとか仕上がり具合がよくなるかもしれないが、そのせいでビデオは単調になってしまう。ここはビデオ教材の肝になるのだから、原稿や構成に変化をもたせる必要がある。傍から見ればありきたりで、たいしたことではないが、私にとっては一歩前進ができた重要な発見である。
7/8(木) How Toビデオ
今日はビデオ制作コースの課題の2分間How Toビデオ制作の提出日だった。今回はあまり手間をかけないようにと思い、こういうテーマでは日本人留学生定番の「折紙の折り方」。定番の鶴は案外手順が多くて2分で収まらないので、今回はもっと簡単なアヒルにした。企画から小道具の仕込み、編集までで所要時間はおよそ6時間ほど。最初にしては効率は悪くない。何より今回は、i-movieやWindows Movie Makerを使うと編集が手軽で、音やタイトル入れも簡単なのに感銘を受けた。
今回制作したビデオはこちら(7.3MB)
Serious Games Japanウェブ更新
週末を利用して、Serious Games のニューズレター日本語版をアップ。ニュース見出しの訳はなかなか難しい。MLも10人ほどメンバーが集まり、英語版MLでも健闘を称えてもらった。
—-
S.N.A.G.G.E.D. Issue 1.4 – シリアスゲームズ関連ニュースクリッピングサービス日本語版
May 16, 2004 (日本語訳2004年7月4日)
目次
—————-
エデュケーションアーケード@E3
・ カンファレンスレポート(ウォータークーラーゲームズ)
・ エデュケーションアーケードBlog(by Ben Sawyer)
・ ワイヤードニュース: ゲームで遊んで、生徒がよくなる?
・ エンターテイメントに教育をもぐりこませる
・ 教育的ビデオゲームが学習促進認定シールによって奨励される
ゲームズ・フォー・ヘルス
・ ちょっとしたセラピーのためのゲーム?
・ マクギル大学が自尊心向上のためのゲームをテスト
・ 外科手術ビデオゲーム
・ コンピュータゲームで自閉症に対峙
・ ゲームで栄養について教える
・ 人間の脳をマシンインターフェース化する可能性
アメリカズアーミー@E3
・ 米陸軍はビデオゲームで戦争捕虜の扱いを教育できる
・ クオンタム3DがE3で装着式訓練システムをデモ
・ 米陸軍がビデオゲームでの新兵募集を奨励
その他関連ニュース
・ 子どもたちが学びを大いに楽しめるようにする
・ ビデオゲームスキルが人生の強みとなる
ゲームと書籍紹介
続きはSerious Game Japan Webサイトで読めます。
6/30(水) 研究プロジェクト
昼過ぎまでインターンの仕事。夕方、Dr. Peckのプロジェクトコースの第1回ミーティング。このコースについては前にも何度か書いたが、教員がリーダーとして立ち上げたプロジェクトに院生が参加する形式のコースになっていて、ドクターコースでは12単位(通常4学期分)も必修になっている。自分のアドバイザーのプロジェクトに参加するのが通常だが、自分のアドバイザーと研究分野が合わない人などへの配慮で、他の教員のプロジェクトに参加してもよいことになっている。Dr. Peckのプロジェクトには6人の院生が参加する。教員だけアメリカ人で、あとは中国人と台湾人と韓国人と日本人のアジア多国籍プロジェクトである。
プロジェクトのネタは3つあって、一つ目は先学期から続いている、ゲームを使った教育の学習効果を研究するプロジェクト。二つ目は近くの都市の低所得地域の小学校で、生徒一人ずつノートパソコンを使える環境(One to one computingというキーワードで学校教育情報化のコンセプトとして最近盛り上がりつつある)にして、学力向上を成功させた事例を研究するプロジェクト。そして三つ目はPenn Stateに本部があるアメリカ遠隔教育学会の研究プロジェクトに採用されるための研究計画を立てるプロジェクトである。いずれも研究資金の金額が大きめのプロジェクトになる見込みがあり、Dr. Peckのところにはこういう話が集まってくるようだ。
うちのプログラムの教員は教育系の中でも金を集めてくる力のある人が多く、それぞれの持ち味でプロジェクトのスタイルも違ってくる。金を取ってくるところは自分でやって、かなり研究計画を固めた段階で仕事を院生に振る教員もいる。このタイプの教員の方が、タスクが明確で仕事しやすいと感じる院生もいるようだが、私は自分と関心の違う人が立てたプロジェクトは肌に合わないことが多いのでそういうところには参加しない傾向にある。
かたや、Dr. Peckのようにアイデア出しのところから院生に関わらせる教員もいる。そういうスタイルだと自分の仕事としてプロジェクトを組み立てやすいので私にも参加しやすい。特にDr. Peckはプロジェクト資金の源流近くにいる人で、かつ研究関心も私と近いので、興味を持てるネタをふってくれることが多い。私はなぜかこういう親方系のボスに縁があるようだ。自分が程よく興味を持てる仕事にこと欠かないのでありがたいことである。
教育用ゲーム関連情報
私が世話人をやっているSerious Games JapanのWebサイトに教育用ゲーム関連情報を掲載。本家Serious Gamesで発行しているニュースレターの日本語版。参照しているネタ元まで訳せないのは残念だが、こういう情報がもっと日本語で流通するようになると、この分野への関心も高まってくるんじゃないかと思う。翻訳は骨が折れる作業だが、記事はどれも読んでて面白かった。
6/24(木) ソフトウェアローカライゼーション
Minitab日本語版開発プロジェクトのミーティングに出席。ソフトの翻訳は外注でやっているのだが、細かい修正やマネジメントの意思決定はアメリカ人だけでやっている。今日は日本のコアユーザーから届いた試用後のフィードバックをどう扱うかという話だった。会社には日本語がわかるのは私ともう一人プログラマの日本人がいるだけで、他の人は読み書きも全くできない。なので、複数の改善要望の中でどれが重要で優先順位が高いかなど、判断はかなり困難である。しかしあと少しでリリースというところまでこの体制でたどり着いている。自分が知らない言語のソフトを作ることを考えると、翻訳自体は誰かがやってくれるにしても、面倒な仕事が多いのは容易に想像がつくので感心させられる。特にこのMinitabは、品質管理手法のシックスシグマに使うソフトなので、その品質が低いのではお話にならない。そのため品質管理部門でスタッフがチームになって綿密なテストをやっている。どのタイミングでテストを終えて次の段階に進むか、またどの作業を優先的に進めるかといったことはプロジェクトリーダーが判断を下す。ソフトウェア開発の現場自体、今まで見たことのなかった世界であるうえ、ソフトウェアのローカライゼーションの過程は全く未知の世界だった。こんな風にやってるのかぁといちいち感心することばかりである。