セレブ版アプレンティス

 アメリカの不動産王、ドナルド・トランプの弟子の座を目指して争うリアリティショー「アプレンティス(The Apprentice)」の新シリーズが始まった。今回は「セレブリティ・アプレンティス(Celebrity Apprentice)」と題して、ピークを過ぎヒマそうな感じの各界の著名人が挑戦者となって、ルールはいつものように二つのチームに分かれて毎週の課題に取り組み、負けたチームから一人ずつ脱落していく。
 セレブリティというだけあって、挑戦者は結構有名な人たちが集まっている。ボクシングヘビー級チャンピオンのレノックス・ルイス、オリンピック金メダリストのナディア・コマネチあたりは日本でも知られているところだし、ほかにも人気俳優、女優、人気カントリー歌手、アルティメットファイティングのレスラー、スーパーモデル、プレイメイト、など、その分野のファンであれば知っていそうな人たちが参加している。
 そして、このメンバーの中でなんと言っても最強なのが、ロックバンドKissのジーン・シモンズ。超有名ロックバンドのフロントマンとしてだけでなく、マーケティングの天才としても知られる彼は、この番組でも強烈な個性と偉才を放っている。
 2004年に開始して大人気を博し、トランプの決めゼリフ「You’re fired(お前はクビだ)」が流行語になるほど話題になったこの番組も、毎回あれこれと違った要素を取り入れながらもマンネリ化が進んで視聴率も下がる一方だった。7シーズン目となった今回、これまでは一般参加型だったのをタレントに切り替えた。この手のリアリティショー系の番組では、シーズンを重ねて人気が落ちたり、もともとの企画が弱かったりするときによく取られる手法だ。
 興味深いのは、単に賞金目当てやギャラをはずんでセレブを寄せ集めるのでなく、セレブたちがそれぞれ自分の協力しているチャリティ活動のプロモーションを兼ねているところにある。第1週目はチャリティでホットドッグをたくさん売ってお金を集めるというもので、集めたお金(69000ドル)は勝利したチームのリーダー(スティーブン・ボールドウィン)が協力している乳がん研究財団に寄付された。
 セレブたちにとっては、自分のギャラやテレビへの露出目当てだけでこのような番組に出るのは抵抗があっても、チャリティであればそれが大義名分となって敷居が下がる。この番組自体がインフォマーシャルとして機能していて、スポンサーにとって旨みの多い番組になっていることは前にも書いたが、今回は出演者を集める時にもチャリティという一つの補助線を引くことで参加者の彩りを増すことに成功している。この工夫がなければ、(もうすでにかなりB級なんだが)さらに落ち目のセレブばかりが集まってさらにB級臭くなって見るに耐えない番組になって今期で打ち切り、あるいは企画段階でボツになっていたことだろう。
 この番組は見て面白いだけでなく、プロデュース面での工夫に見るべきところが多い。視聴率的には厳しくなってもまだ番組が続くのは、そうした強みによるところもあるのだろう。テレビのプロデューサーにはもちろん、何かプロデュース的な仕事をしている人には学ぶところの多い番組だと思う。
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