東大セッション終了

 今回の帰国の一つ目の仕事、東京大学BEATセミナーのセッションは、無事に終了しました。開始前の打ち合わせから懇親会まで、とても楽しみました。中原先生、山内先生をはじめ関係者の皆さま、お世話になりました。来場者の皆さま、暑い中をご参加いただいてありがとうございました。
今回の藤本講演資料を下記に掲載してますので、どうぞご利用ください。
「シリアスゲーム:コンセプト、事例とその展開」資料ダウンロード(PDF)
https://anotherway.jp/seriousgamesjapan/archives/BeatSeminar080506-Fujimoto.pdf
 宿に戻ると気が抜けて、メール読みながら意識が無くなるような状態ながらも、なんとか資料の即日配布は死守しました。資料中の「シリアスゲームリスト」は、近日中にWiki化するなどして、みんなで情報を蓄積できるような体制にしたいと思います。(何かWiki系のツールで便利なものをご存知でしたらお知らせください。)
 セッションは、参加者の皆さんの熱心さと、中原さんのセッション構成の工夫のおかげで、楽しさ倍増という感じでした。いつも好評のBEATセミナーのよさを初体験できました。
 私の話し手としての力不足のところもあって、説明足らずなところも多々あったかと思います。その辺りは今後も日々改善していきます。自分のパフォーマンスに課題を残しつつも、やり取りの中で、自分でもこれまで気づかなかった変化や、手ごたえのようなものを感じた面もあったので、それらを手がかりに演者としてのレベルを上げていこうと思います。参加いただいた皆さん、セッションのご感想ご意見、どんなことでもフィードバックメールをいただけるとうれしいです。
 来週は熊本でもう一仕事、その後実家で別府の温泉に入って休養して、盆明けに一週間ほど東京に滞在しています。食事の時間あたりはだいぶ予定が詰まってきてしまいましたが、お茶や打ち合わせに手頃な時間はまだ若干空きがありますので、何か打ち合わせ等ご希望の方いらっしゃいましたらご連絡ください。

帰国準備中

 明後日の朝に帰国の途に着くので、今日の昼間はあれこれと雑用をしつつ過ごした。家賃を払ったり、郵便を出したり、書類を揃えたり、洗濯したり。外は摂氏で35度くらいまで気温が上がっていて、とても暑い。ちょっと出て歩いただけで汗が吹き出る。そして屋内はどこも寒いくらいにエアコンが効いている。出たり入ったりしているうちに、非常に体力を消耗した。
 雑用は量が多いだけなので、やればすぐ片付く。でも肝心なのは、この帰国で一番大事な講演資料。ただ今、作成中です。
 アイデアのピースは十分な量が頭の中にあるのだけど、問題はそれを一つのストーリーに落とし込めるか。いざ作業してみると、当てにしていたアイデアのピースが、実はすぐには使えなくて、少し資料をフォローしないと使えないものが結構ある。毎度のことだけども、ここでいつも詰まる。楽に説明できるレベルのことは、公開している資料を読めば済む程度のものなので、その程度ではお客さんも満足しないし、こちらとしてもやっていてつまらない。となると、新たなネタ作りが必要になってくる。
 自分の頭にある知識を引き出す作業のつもりでやっていると、その知識と今回の講演のストーリーとかみ合わせの悪い部分がでてきてストレスになる。そのストレスは、今ある知識の形と、アウトプットのコンテクストが合ってないことから生じている。そのストレスの中で作業するのがイヤになって、そのうちに講演資料のコンテクストだけに焦点を当てて考えるようになる。しばらくやっていると、この講演向けの形でアウトプットが出始める。すると作業はだんだんストレスが減って楽しくなってくる。
 すでにある知識で楽をしようとすると、創造作業自体にストレスが多くて楽しくないのだが、覚悟を決めてしっかり考えようとすると、さっきとやっている作業は変わらないのに、アウトプットの出方の流れが変わる。ここまでのプロセスは、いつも経験する生みの苦しみで、納得いくものを作るときには、何か必ず似たような苦労を経ている。やはりきちんと考え抜かないとダメだなと毎度ながら思う。
 この辺の思考のプロセスには、Jim Geeあたりが主張している、「知識は全てコンテクスチュアルなもので、一般的な知識というのは存在しないか、使えないものだ」というのが関係していると思う。
 そんなわけで、さっきから資料作りははかどり始めたのだが(そもそももっと早く準備始めてろ、という話もあるが)、今回のチャレンジは、同じネタで二ヶ所で話をするというところにある。
 お客さんの層は近い上に、両方に参加する人は何人もいないだろう。それに共通部分は変に奇をてらわずに、一番いい説明をすることに徹した方が間違いがない。なので、そんなに気にする必要はないにしても、何か変化をつけたくなる。ここはむしろ話し手としての自分のチャレンジになる。最初のセッションでの反応を見て調整するチャンスもあったりするが、実際には、大事なところは同じような話をして、あとは持ち時間の違いや、自分の中での二つの場の位置づけの違いをもとに、話の掘り下げ方や引っ張り方を変える感じに落ち着くと思う。
 いずれにしても、暑い中をわざわざ来場してくださる皆さんのために、暑い中でもわざわざ来てよかったと思ってもらえるようなセッションにしたいと思います。お楽しみに!

インターン最終日

 博士論文研究に集中するため、大学の近くにある統計ソフトウェア会社、ミニタブ社でこれまで続けていたインターンも、この夏までで辞めることにしていた。昨日がその最後の勤務日だった。
 2年前の夏に、日本語版の開発を手伝うためにインターンとして働くことになり、最初はその夏だけの話だったのだが、秋以降もうちの研究科とのプロジェクトという形をとって引き続きお世話になった。気がついたら2年が過ぎていて、ここまでの留学生活の半分はこの会社に通っていたことになる。
 最初からずっと品質管理部で働いていて、当初関わっていた日本語版がリリースされた後も、英語版の次のバージョンのテストをずっとやっていて、最近はフランス版の品質テストのプロジェクトで仕事をしていた。
 この仕事をやってきて、ソフトウェア開発の品質管理業務の流れをじっくり見れたことは収穫だった。半年やそこらの期間、見習いのように働いていても、じっくりと腹に落ちることというのはそれほど多くないものだが、2年もその場にいれば、「門前の小僧が経を読む」ようになることもいろいろと出てくるものである。
  だが、品質管理に関すること以上に、この会社のコーポレートカルチャーに触れてきたことで、とても勉強になることが多かった。というのも、この会社は、一般的なソフトウェア会社のイメージとは全くかけ離れた環境を持っていて、その文化のあちこちに、考えさせられるところがいろいろと含まれていたからだ。

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新しい仕事場

 土日に二日連続で、うちと近所の友だちのうちの引越し作業をやったら、日曜の夕方には疲労と共に、上半身中の筋肉が鈍い痛みを発してたいへんだった。でも移動前の部屋の掃除も、新しい部屋の荷物の整理もほぼ終わって、自分の引越しはこれで片がついた。
 新しいベッドルームは、前と比べて約1.5倍の広さで、部屋でパターの練習ができるくらいに床が見える。いつものEyeToyキネティックで手足を振り回しても、本棚に手をぶつけなくてすむようになった。腹筋や何かも、ベッドと本棚の谷間で小さくなってやらなくてもよくなった。
 仕事机も大き目のものに変えたので、机上の面積が2倍近くになった。おかげでずいぶん仕事がしやすい。前は、机の面が足りない分を、コーヒーテーブルなんかを使って間に合わせていたので、どうしても姿勢が悪くなって身体に無理がかかっていたのだが、そういう悩みからも解消された。ここまで「仕事をしたくなる環境」を得られたのは初めてだ。来年の今頃までは、部屋にこもって仕事をする時間も多いので、この変化はとてもありがたい。余計なものを買ってきて部屋を狭くせずに、このゆとりの空間を大事にしようと思う。

ミニ引越し

 ここしばらくはお引越しな日々が続いている。
 ルームメイトが1ベッドルームの部屋に移って、広い方の部屋が空いたので、今のベッドルームからそちらへ移動した。荷物はたいしたことないので、移動自体は一日ですんだ。インターネット接続は、今までルームメイトのをシェアしていたので、新たにケーブルインターネットのモデムを買ってきて手続きをした。案外スムーズに行って、ネットの使えない時間はほとんどなかった。
 あとは、前の部屋の掃除をすれば、自分の引越しは完了。来週末には新しいルームメイトが入ってくるのと、友だちの引越しを何軒か手伝う予定が入っているので、そんなことに追われながら、日本に行く前の時間は過ぎていく。

講演のお知らせ(第二弾)

 熊本大学にお招きいただいて、8月9日(水)に開催される「熊本大学eラーニング連続セミナー」にて、シリアスゲームの講演をします。
 このセミナーでは、より「eラーニング、インストラクショナルデザインとシリアスゲーム」に焦点を当てた形で、話をしてみたいと思っています。
 熊本周辺にいらっしゃるシリアスゲームに関心をお持ちの方、どうぞ奮ってご参加ください。
(なお、先日お知らせした、東京大学でのセッションはすでに満員で募集〆切とのことです。その代わりにご参加ください、とお勧めするにはやや遠いですが。)
——–以下、熊本大学eラーニング連続セミナーWebサイトより転載
熊本大学は、特色GPの2年連続採択等、積極的にeラーニングを実践してまいりました。
それらの取り組みの一環として、国内外の著名なeラーニングに関する専門家をお招きして連続セミナーを開催しています。
今回はゲームと教育の関係について取り上げます。
ニンテンドーDSの「大人のトレーニング」の大ヒットに見られるように「ゲームで学ぶ」ことが注目を浴びています。そこで、アメリカで教育用ゲームやインストラクショナル・デザインの研究をされている藤本徹氏をお招きし、ゲーム、教育や学習そしてeラーニングの関係についてご講演いただきます。
第9回セミナー
シリアスゲーム:デジタルゲーム技術を利用した教育課題への取り組み
開催日時:  2006年8月9日(水) 17:00~19:00
場 所:  総合情報基盤センター 3階 実習室
当日参加も可能ですが、できるだけ事前にご登録をお願いします。
(参加申込はこちら:
http://el-lects.kumamoto-u.ac.jp/index.html
講演者:藤本 徹 氏
ペンシルバニア州立大学インストラクショナルシステムズプログラム博士課程
「シリアスゲームジャパン」コーディネーター
教育用ゲームの開発や研究は、以前から取り組まれてきたテーマであるが、ここ数年で急速に、欧米の教育工学者、教授システム学者たちの間で注目度の高いテーマとなってきている。その中心概念となっているのは「シリアスゲーム」という考え方であり、従来のエデュテインメントやゲーミング研究の取り組みを超えた形で、研究・実践が展開されている。その学習環境の捉え方や問題へのアプローチの仕方、開発プロジェクトの組み方は、インストラクショナルデザイナー、eラーニング講座開発者への示唆となる要素が多い。本講演では、シリアスゲームの概念的な解説と、開発事例の紹介を行ないながら、教授システム学の視点から、シリアスゲームプロジェクトの取り組みを考察し、 eラーニング講座デザインのヒントにするための議論を行なう。

マンガとアニメの一週間

 ここしばらく、友だちから借りたマンガとアニメのおかげで、とても豊かな時間を過ごしていた。マンガの方は「スラムダンク」全31巻で、アニメの方は「鋼の錬金術師」全51話。疲れた時間や寝る前に数話ずつ進んで、ようやく全部見終わった。面白くてつい、予定よりも余計に見てしまった。
 「スラムダンク」は、91年頃から出始めていたようなので、ちょうど自分が高校の頃に連載していたことになるが、当時はヤンキーもバスケもあんま好みでなかったので、スルーして読んでなかった。15年ほど経った今になって読んでみた。連載してた当時は、傍目から何となく見ていて、てっきり「キャプテン翼」みたいにずっと成長していたり、「キャプテン」のように同じ野球部でメンバーが入れ替わって話が続いてるような手法をとっているのかと思っていたが、ちゃんと読んでみると、主人公が入学してから夏休みまでの話だったというのは意外だった。以前はバスケの知識がほとんどなかったので楽しめなかったが、今年はNBAをたっぷり見て、このバスケのルールとか動きにある程度親しんでいたので、このマンガの面白さを味わえた。いいメッセージのたくさんこもった、読んで元気になれるマンガだと思う。
 「鋼の錬金術師」は、子ども向けテレビアニメの風でいて、我々が子どもの頃に見ていたアニメや特撮ものとは、全くストーリーの作りが違う。話の根底に流れるテーマは複雑で深遠で、子ども向けアニメとしてこれを作るというのは相当にすごいことをしていると思う。これを見た子どもたちは、何を感じているのか、それにこういうストーリーを作れる人たちというのは、どういうものを見て学び、何を考えながらストーリーを構成しているのだろうか、とても興味を持った。
 この二つの作品とも、各国語に訳されて輸出され、世界でも人気を博しているそうだ。ゲームと並んで、アニメとマンガは日本が世界に誇る文化だとされて、これらのおかげで日本に関心を持つ人も多い。
 もちろん、日本のアニメもマンガもゲームも、すべてがすべてレベルが高いわけではなく、大ヒット作となるものはごく一部で、まあまあのものや、どうしようもないものも山ほどある。しかしいいものだけを作り出すということは起こりえないのであって、有象無象が山ほどあるところに意味がある。まずはある程度の量がないと、質のあるものは生まれてこない。雑誌やゲームコンソールのように、コンテンツが普及するための流通の枠組があることで、コンテンツ制作者が身を立てやすくなり、人材やリソースが流れてくるようになる。その産業としての厚みを作ることの重要性を見逃してはいけないなと思う。
 教育分野でもコンテンツを充実させようと思ったら、その流通させるための枠組が必要だし、作家的な人々が参加しやすい場を作っていく必要がある。プロジェクトの数をこなしながら、層の厚みを出していって、リソースが入り込んでくるような流れを作らないといけない。
 現状の層の薄さを起点に考えると、そうした流れを作るにはまず、「これはいける」とみんなが期待できるケースを生み出すことが必要で、それは、平凡な研究の積み重ねからはまず生まれない。かといって、単なる思いつきではそんなものは生まれない。
 どの業界や領域においても、変化を起こせるコンテンツを生むのは、結局のところ個の力を軸とした小集団の力である。制度的、組織的支援は、それそのものがコンテンツを生み出すのではなく、あくまでそうした支援を受けた個人やチームが優れたコンテンツを生み出す。
 アニメやマンガとは業界は違うが、これから私自身が進めていく研究や実践というのは、そうした変化を起こすコンテンツを生み出すことに向かうべきであって、その流れに合わないどうでもいいものに付き合い続けられるほど、人生の時間は長くない。試行錯誤しつつ、まずは妥協のないものを一つ作りあげたい。

芝生の専門家

 今夜は、ピッツバーグで大リーグのオールスター戦をやっていた。それにちなんで、ペンステートのニュースサイトで、農学部の芝生科学プログラムの卒業生が、この試合が行なわれるPNCパーク球場の芝生管理をしているという記事が出ていた。
Turfgrass science graduate helping to prepare PNC Park for All-Star Game
http://live.psu.edu/story/18527
 ペンステートは、もともとは地域の農業振興のために国策で設置された州立大学なので、農学部は大学の強みの一つで、農業や食品科学系のプログラムが強い。芝生管理と、アイスクリームの専門家を育てるプログラムはよく話に出てくる。
 この記事の主役の卒業生は23歳で、まだ卒業して1年ほどしか経っていないが、在学中からペンステートのフットボールスタジアムやこのPNCパークでインターンとして現場経験を積んだ。卒業してすぐに、この球場のフィールド管理のアシスタントマネージャーとして就職したそうだが、彼はインターンの間にそのポジションに必要な経験ができたという確信を持ったと言う。
 街はオールスターでにぎやかだし、球場も芝生を星型に刈ったりするオールスター仕様の作業があるにせよ、彼にしてみれば「オールスターと言っても、いつもやっている準備をするだけ」だそうだ。専門家然とした態度が伝わってきそうなコメントだ。

Friday Night Freedom

 この夏は平日も週末もないような生活をしているが、人に雇われての勤めが終わるという意味では、金曜日は一週間の終わりの開放感がある。
 日本で働いていた頃は、金曜の夜でも10時や11時まで働くことが多かったので、この金曜の開放感を感じる時間は、ほんの何時間かだけだった。飲みに行くかレンタルビデオを一本借りて見ればもうおしまい。土曜は土曜で気分が違うので、金曜の夜のありがたみを享受することは少なかった。飲み屋でよくやっている5時から7時のハッピーアワーなんてまったく縁がない生活をしていた。
 それが今は、仕事は5時に終わり、外は9時頃まで明るい。夕方から寝る時まで、自由な時間はたっぷりある。そこにめがけて、事前に予定を入れておくのも一案だが、そうすると自分の中ではそこは「空いていない時間」なので、同じ楽しい時間であっても、まったく何の予定も入っていない空いた時間とはまた気分が違う。先週の金曜の夜は、そんな何の予定も入っていない100%自由な時間だった。
 早めの夕飯を食べた後も、まだ外は明るい。映画でも行こうか、積んでて手のついてないゲームでもやろうか、そんな元気があるなら読もうと思って読んでない研究用の本でも読んだ方がいいんじゃないか、でもそれじゃ休みにならないし、どうしようか。今から友だちに連絡してもあれだしな。何か一人で楽しめる面白いことないかな、せっかくの時間だから、なんか能動的なことやりたいような、でもやっぱりだらっと受身なことやりたいような・・。という感じで、いろいろ考えていてもなかなか決まらない。決まらないまま、何もしないうちに時間は過ぎていく。
 思い余ってとりあえずテレビをつけてみると、「24」の再放送をやっていて、なんとなくそれを見始めた。思った以上に疲れていたようで、ゴロゴロしているうちに、そのまま寝てしまって、目が覚めたら夜中の2時を過ぎてて、まだ眠いので布団かぶって引き続き寝た。結局、何をするということもなく、楽しい金曜の夜はそれで終わってしまった。
 自由な時間があって、あれもできるしこれもできるが、どれにしようか、とボヤボヤ考えている時間は楽しい。でもその自由な時間が手に入ってから何をやろうか考え始めても、その時点でできることの選択肢は限られてしまっている。残された選択肢にしても、これをやれるなら、こっちができる、でもそれはそんなにやりたくない、と「やりたいことリスト」にあるはずの選択肢が、お互いを打ち消しあって、結局どれにも決まらない。決まらないままでいると、楽しかった悩みが、時間が過ぎていくにつれて嫌な感じになっていく。
 週末のたった数時間のことなので、うまく使えなくてもまあいいやという気もするが、これは自分のキャリアや人生の時間、といったスケールでも同じ状況なんじゃないかという気がした。まだ若いし、いろんなことができる、あんなこともこんなこともやってみたい、これをやるにはまずあれをやらないといけない、でもあれをやるのはしんどいからどうしようか・・と考えながら、とりあえず目の前のことをこなしているうちに、やっぱり時間は過ぎていってしまって、ふと気がつくともう最初の頃に考えていたような選択肢は消えている、ということが起きる。
 まあ、「人生至るところに青山あり」というやつで、何かを思い立った時がいつでもスタートラインになるし、最初に自分がいいと思っていたことは、後になってみればそうでもなかった、ということはよくある。なのであせる必要もないのだけど、自分がしっかりしてさえいれば手が届きそうなことを、みすみす逃すようなことが起きるのはやや寂しい気がする。かといって、計画でガチガチにし過ぎて「無駄な時間を費やす贅沢」がないのも、つまらないし、逆に計画がなさ過ぎて、いつまでたっても時間の遣い方が下手くそなのも、なんだかさえない。
 翌日の土曜日、そんなことを考えつつ昼飯を食べていた。その日も特に予定が入ってなかったこともあって、このまま週末が無為に過ぎていくのはマズイ、まずは外に出よう、と思って、とりあえず買い物に出た。
 すると、このようなさえない週末を送っているのを、天のお星さまが見ていて情けなく思ったのか、運のめぐり合わせがちょうどそういう流れだったのかは知らないが、スーパーで3人の別々の友だちに偶然出会って、食事やら何やらの翌週の予定が次々と入った。うちに帰ると、これまた遊びの誘いとか、日本に帰った時の飲みの誘いとかのメールが数件入っていた。子どもが生まれたというめでたい知らせまで入っていた。
 不思議なこともあるものだと思いつつも、こうやって受動的に予定が入るのを手をこまねいてばかりではダメで、何か自分からも仕掛けるべきだなと反省しつつ、土曜の夜も静かに過ぎていった。

ロックスター:スーパーノヴァ

 今週から新たに、大物ロックバンドのリードシンガーを目指すオーディション番組Rockstar: Super Nova が始まり、この夏のお気に入りテレビ番組に加わった。
 昨年は、80年代の超人気バンドINXSが再結成されて、そのボーカルに若手を抜擢するためのオーディションだった。今年はさらにすごい。元モトリークルーのトミー・リーがドラム、ベースが元メタリカのジェイソン・ニューステッド、ギターが元ガンズ&ローゼスのギルビー・クラークという豪華な顔ぶれで結成された新バンド「スーパーノヴァ」のリードシンガーの座を目指して、最終選考に残った15人の若手シンガー達が毎週パフォーマンスを繰り広げ、視聴者投票で一人ずつ脱落していき、残った一人がリードシンガーに選ばれるというもの。リードシンガーに選ばれた優勝者は、今年末発売予定のアルバムと、その後のワールドツアーに参加できる。
 プロデューサーは「サバイバー」「アパレンティス」などのリアリティショーを手がけてきたマーク・バーネット。彼の手にかかれば、バンドのオーディションがテレビ番組のコンテンツとしての価値を放ち出す。「サバイバー」以降、さまざまなリアリティショー番組がフォロワーとして登場したが、やはりこの分野の先駆者が繰り出す番組には、他のプロデューサーにはないスパイスが感じられる。
 そして、番組の副題に「トミー・リー・プロジェクト」とついているように、バンドのメインはトミー・リー。昨年放映された「トミー・リー大学へ行く」というリアリティショーでも、カッコよいロックオヤジぶりが話題となっていた。彼だけでなく、他のメンバーも豪華なのだが、そこはさすがトミー・リー、エロいオーラが出まくっていて、見るものの目を離さない。
 挑戦者達も、かなりレベルが高い。「アメリカン・アイドル」や他の同種のオーディション番組が、一次予選から見せることで、素人の面白さの部分も番組の演出に含めているのに対して、この番組は最終選考のところからのスタートしている。2万以上の応募者の中でここまで勝ち残ったシンガー達は、なかなかの実力の持ち主達である。
 特に女性シンガーのStorm(Storm Large というすごい本名)はオーラがある上にバランスが取れており、Dilanaは、個性的なハスキーヴォイスで、パフォーマンスのキレ具合がすさまじい。この二人のロック姐さんがかなり上位まで残るのは間違いなく、優勝できなくてもすぐにいいディールを獲得できそうないいパフォーマーたちだ。
 男性シンガーの方は、ルックスがよくても歌唱力がいまいちとか、歌が上手くても、フロントマンとしては線が細い感じのが多い。その中でも、声がよくてバランスのとれた感じのTobyとルックスがやや微妙ながらも歌はなかなかでパフォーマンスがキレていたLukasの二人が一歩抜け出ていた感じ。
 そもそもこの番組も、出てくる挑戦者達に実力がなければ魅力も半減なわけで、その点はアメリカの市場の大きさと、パフォーマーの層の厚さの上に成り立つ番組だと思う。素材がよければ、そのまま見せても間が持つのであって、そこはヘンな演出や加工は必要ない。素材の見極め方は、プロデュースの重要なスキルであって、その点マーク・バーネットは、素材の活かしどころと味付けどころの見極めの上手さが、番組の持ち味となっている印象を受ける。彼のもとで働いたりすると、いろいろ面白いことが学べるんだろうなと思う。