今朝は9時過ぎに起床。11時にインターンの採用インタビューの電話が入る予定なのでその前に予習。Minitabは統計ソフトの大手で、State Collegeに本部がある。日本語版のリリースに伴う準備で日本人のインターンが必要だということで、INSYSの教授経由で話が回ってきた。そんなに強く興味があるわけではないが、いい機会ではあるので応募した。インタビューは、選考というよりも、相手は雇う気満々で、よほどこちらがへぼでない限り雇うつもりなのが伝わってきた。採用されれば、日本から戻ってきてすぐに仕事が始まることになる。楽しい経験ができるとよいが。
夕方、いつもの日本語家庭教師をやって、ジムへ。筋トレとマシンランニングの後、プールで水泳。今日はサウナもジャグジーもやっていないので泳ぐしかない。まったく使えない。帰宅後は、翌日の授業でグループプロジェクトの発表があるので、資料の整理をし、課題の読書を進めた。
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3/24-25 San Jose観光~帰り道
エキスポも3時間ほどで周り疲れてしまい、もう十分だと思ったので、残りの時間はSan Jose観光にあてた。よい気候の中、20分ほど歩くと日本街に着いた。桜が咲いており、寺があって日系人が行き交っている。スーパーDobashiに入って、State Collegeではなかなかいいのが売ってない干ししいたけやインスタント味噌汁などを購入。うちの近所で買うよりもだいぶ安い。その後、日本食レストランTsugaruに入って、刺身とてんぷらと塩さばのセットを食べた。夕暮れ時のSan Joseの街を歩いてホテルに戻り、空港へ向かった。3時間ほど空港で時間をつぶし、11時前にシカゴへ向けて出発。機内では映画スクール・オブ・ロックをやっていた。Music of Heartのロック版で、爆笑しつつもちょっとホロリとさせられるいい映画だった。現代の学校教育への風刺が利いていてよい。
早朝4時過ぎにシカゴへ到着。眠いので待合ロビーのいすで寝て待って、7時の便でColombusへ。ひたすら爆睡。さらに10時の便でPittsburgh、12時の便に乗ってState Collegeには1時に到着。無事にかえったはよいものの、3時半から授業があるのでその準備に追われた。
今回のカンファレンス参加で、この分野の人たちとネットワークができたことと、これから何をやっていけばよいかがわかってきたのは収穫だった。
3/24(水) Game Developers Conference Expo
今日はカンファレンス3日目、エキスポが今日から始まる。9時過ぎに会場に行くと、エキスポは11時半からだった。ワイヤレスネット接続が使えるというので利用しようと思ったらこれがなかなかつながらない。ibookを使っている連中は何の支障もなくつながっているのに、安物のワイヤレスカードを使っている自分は、電波の状態のよいところを求めてさまよう難民状態である。どうにかメールだけ読んだところでとりあえず天気のよい会場の外へ出た。近くを散歩し、エキスポが始まるころを見計らって会場へ。エキスポ自体は日本でやっているのと様子はあまり変わらない。大手メーカーのデモ展示のゲームに列ができている。日本人のグループもよく見かけた。彼らはどういうセッションに出ているのだろう。このカンファレンスでは彼らが主役で、こちらはマイナーな存在である。会場内のブースでは、3Dエンジンや開発ツールの紹介プレゼンをあちこちでやっていた。私は開発者ではないので詳しいことはさっぱりわからないが、ビジネスの構造は対して変わらないので起こっていることの類推は可能だ。会場の端の方では、キャリアコーナーがあって、大手から中小まで数十の会社が採用活動を行なっていた。大学生らしい若者たちが熱心に出展者の話を聴いている。そういえばホテルのトイレで会った気さくな黒人学生は、就職活動に来たと言っていた。彼らにとっては大事な就職活動機会なのだろう。この辺はあまり用がないので、隣のコーナーに移動すると、AOLがスポンサーのゲームコンテストをやっていた。戦略シミュレーションタイプのゲームからパズルゲームまで出展され、来場者が気に入ったゲームに投票する形式のコンテストだ。自分の好きな戦略シミュレーションゲームを中心に見た。南北戦争のシミュレーションゲームのデモが空いていたのでプレイしていると、開発者が声をかけてきた。史実に沿ってかなり凝った作りなのだが、3人で開発したそうだ。3Dエンジンは出来合いのものを使っているので、開発コストはだいぶ抑えられたのだそうだ。よくよく聞くと、彼はPenn StateのIST出身だった。ゲームの操作性などにやや難ありかなと思いつつも、かなり遊べるし、Penn State卒業生ということで彼に一票入れてあげた。
3/23(火)Serious games summit Day 2
6時過ぎ起床。3時間の時差がちょうどよいことを再確認。9時過ぎにカンファレンス会場へ。遅くに行くと、もう朝飯がほとんど残っていない。ドーナツとコーヒーで軽く朝食を済ませ、開式を待つ。隣に座った体格のよいおじさんに話しかけたら、シリコンバレーのゲーム会社の社長だった。開発中のRPGを紹介してくれた。いまいちよくわからなかったが、コンセプトが新しいらしい。その隣に座っていたおじさんも教育ゲーム会社の社長だった。スペイン語学習ソフトなど出しているそうだ。反対側にいたのは、テキサスの大学のゲームデザイン教育プログラムのディレクター。向かいに座っていた若者はペンステートのISTからだった。二人とも喜びつつ情報交換。
セッションは、ウィスコンシン大の研究者二人のプレゼンでスタート。年配の教授と、Ph.D.取りたての若い研究者で、いいコンビという印象。若い方はKurt Squireといって、市販のゲームを教育の場に活用する研究ではおそらく第一人者だろう。彼の博士論文では社会科教育でCivilization III使ったらどんな学びが生じるか、というもの。プレゼンはスピード感があって、これから成功していくのは間違いないといった印象だ。「ゲームでよく遊んでいる今の子どもたちは、ラムズフェルド(国防長官)よりも戦争をわかっている」というジョークはかなり受けていた。また、ある市長の「シムシティをやったことのない都市デザイナーのデザインした都市には住みたくないが、シムシティしかしていないデザイナーの都市にも住みたくない」というコメントの引用も当を得ていた。彼の研究をフォローすれば、かなり研究がはかどりそうだ。
次のセッションは、ゲーム開発者らによる、Design Rules of Serious Gamesというテーマのパネル。この分野のゲーム開発を進めていく上でのデザインノウハウやクライアントとの連携のコツなどが議論された。次に、軍が推進するゲームプロジェクトの関係者によるパネル。America’s Armyの開発プロジェクト責任者の大佐が、このゲームが新兵募集にいかに効果的だったかということを数字を挙げて紹介していた。
昼食時、みんなネットワーキングに熱心な中、ひとりぽつんと食事を取っているひげ面の青年がいたので、彼と食事をとることにした。彼の名はEric、大学で働くプログラマーで、このセッションは自分のボスの領域だからと、セッションはまあまあだと言っている。いい機会なので、プログラマーにとって、いいプロジェクトマネジャーはどんな人かとか、ゲームの研究をやるのにどれくらい開発のことがわかっているべきかとかいろいろ質問した。彼はニコニコとして、わかりやすい言葉を選んで説明する。ネットスケープが200人のプロジェクトでブラウザ開発していたのに対して、マイクロソフトは優秀な30人でIEを作った。一人の優秀なプログラマの生産性は平均なプログラマの10~15倍で、給料はせいぜい5倍くらいだから、優秀なプログラマでプロジェクトを構成することがいかに大事かは明らかだろう?と、例を挙げて説明してくれた。また、彼の親父さんが経営していたソフトウェア会社は大手が買収されて、MBAホルダの経営者が引き継いだのだが、その経営者はそれまでのプログラマを首にして、コストの低いインドに開発拠点を移したそうだ。するとノウハウが移管されていないので、あっという間にその会社は傾いて、首にしたプログラマを高額で雇いなおした、とか、彼の話は一つのセッションに値するくらいに話が面白かった。
その後のセッションは、デジタルゲームベースドラーニングの著者で、教育ゲーム会社の社長をやっているMark Prenskyをモデレータに、Serious Gamesの取り組みをいかに普及させるかというテーマでのパネル。休憩時間にMarkに話しかけたら、私が日本人と見るや「そうですか、これはどうもどうも」と返してきた。奥さんが日本人で、片言の日本語がしゃべれるそうだ。彼の著書も奥さんが翻訳中だそうだ。自分の研究に彼のプロダクトを使いたいという申し出と、日本関連の仕事への協力を約束して、うまくつながりをつけることができた。
次はBen SawyerによるSerious Games Funding 101と題した、プロジェクト立ち上げノウハウに関するプレゼン。グラントリサーチの常識的な話が多かったのだが、彼の熱意がこもっているので聴いていてエンパワーメントされた。こういう話は、知識として知っているだけではダメで、彼のように気合を持ってやれるかどうかという性質のものだ。彼のプレゼンの後、MITのEducation Arcadeプロジェクトの教授が登壇して、5月にE3でやるカンファレンスの紹介。そっちのカンファレンスも、Sim Cityや、Civilizationのデザイナーのようなビッグネームがパネルをやるそうで、楽しみである。今回来ている参加者はみんな来るんじゃないかという勢いである。
最後のセッションは会場全体でのディスカッション。さっきのEricが、教育関連の開発をやるときはSCORMという規格があって、その対策をしないと後で面倒になるから、興味があれば話をしよう、と申し出ていた。Benが、SCORMは重要なテーマだと自分も認識しているからその申し出はありがたい、とフォローしていた。ディスカッションに続いて、Ernest AdamsによるSummation。この二日間で議論された内容をうまく引用しつつ、このサミットがいかに実り多いものであったかを解説し締めくくった。
セッションの終了後、Benをつかまえて、Serious Gamesの日本での普及を申し出ると、ぜひ頼むと言いつつ、日本人で参加している人が他にもいるので協力するといいと言っている。誰だろうと思いながら名刺交換すると、彼は何だ君だったのかと合点がいった様子で、その日本人とは私のことだった。彼は以前に私が日本事情をメーリングリストへ投稿したのを覚えていて、その調子で日本のことを紹介してくれ、と励まされた。とりあえずこのコミュニティにはまだ日本人はいないらしい。来年の今頃には、さて100人くらい仲間を増やせるだろうか。
3/22(月) Serious games summit Day 1
6時ごろ起床。早起きのようだが、ペンシルバニアだと9時ごろ。昨日やりかけの課題をもう少し進めた。出かけようとエレベータに向うと、ラウンジで朝食サービスをやっている。ホテルの会員は無料なのだそうだ。今回たまたまここのホテルチェーンのサイトが一番安かったので会員になったのだが、思わぬ厚遇。でもカンファレンスで朝飯が出るので今日は果物だけつまんで会場へ向った。会場は早くもGeekであふれかえっていて、秋葉原へ来たような雰囲気。日本人もかなり来ている様子。でもなんか話しかけづらい。ドーナツなどつまみつつ、コーヒーを飲んで開始時間が来るのを待った。
今回参加したSerious Games サミットというのは、エンターテイメント目的以外のゲーム&シミュレーションの普及を目指す人たちの会合。この分野の主要な研究者が顔をそろえている。ゲーム開発者、研究者、スポンサー、ユーザーそれぞれから出てきている。大学関係者の割合が多い。この分野の一番のスポンサーは米軍で、軍関係のプロジェクトの人たちも結構来ている。大学生とかはあまりいない様子で、この会場だけ平均年齢がずいぶん高い。会場の前半分が円卓席になっていたのでそちらに陣取った。隣に座ったいい面構えの若者と目が合って、挨拶した。彼の名はWilliam。コロンビア大でインストラクショナルテクノロジーを学ぶ大学院生。こちらと似たような立場である。このコミュニティのアクティブメンバーらしく、いろんな人を知っている。彼もビッグネームのそろったこのセッションに期待があふれている様子だ。会話が弾むほど英語ができないのが残念。
ホストでこのコミュニティ主宰者のBen Sawyerが壇上に立ち、挨拶とSerious Gamesの現状についてのブリーフィング。彼は大学経営シミュレーションVirtual U開発プロジェクトのリーダーで、そのプロジェクトを通していろいろなノウハウを身につけてきたようだ。彼はもともとリーダー気質なのだと思うが、ここまでの成功の積み上げからくる自信と、さらにこのイベントを成功させようという強い意志がにじみ出ていた。
会場は200人以上入っていて満員御礼。予想以上に盛り上がっている。ゲーム開発者カンファンレンス内で実施したのも功を奏したのだろう。近くにオフィスを構えているというゲーム開発者も何人か見かけた。午前のセッションは医療福祉系の財団、米政府法務省など、Serious Gamesを開発したクライアント側がパネルになってのディスカッション。Serious gamesで何をやろうとしたか、プロジェクトの様子はどうだったか、将来のプロジェクトではパートナーたちに何を求めるかなどの議論が行なわれた。昼食をはさんでの午後いちのセッションは、分科会方式でテーマごとにテーブルを囲んでのグループディスカッション。私は「今後の研究課題検討」グループに参加。インストラクショナルデザイン系、認知科学系、ゲームデザイン系の大学教授たちと、数人のゲーム開発者がいた。心理的影響、身体的影響、学習効果測定などのテーマ出しを行なって、それぞれについて議論した。
休憩時間中に、日本人が二人、話しかけてきた。一人はゲーム関係のライターの人で、もう一人は東大の院生だった。いずれも興味本位でちょっと顔を出してきたという感じ。それ以外に日本人は見かけなかった。本格的にこの分野で研究しようという人にもっと出てきてもらいたい。ゲーム大国日本がこの分野の盛り上がりを共有できないのは残念だ。
休憩を挟んで、事例発表。消防士訓練、ロンドンタクシー運転手の語学訓練、恐怖症治療、ホームデザイン啓蒙、軍の作戦遂行訓練、テロ対策、ハワードディーンの選挙運動といった、数々のゲーム&シミュレーションが紹介され、いずれもかなりの成果を挙げている。ゲームが組織の問題解決ツールとして有効であるということが示された。そのあと、マイクロソフトのゲーム部門のGMだった人がAge of Empireやフライトシミュレータなどの数々の成功作の開発に関する話と、マイクロソフトのユーザーテストの特徴など。Age of Empireは私がこの分野に目を向けた最初のきっかけみたいなものだったので、その開発者である彼の話を聴けたのにはかなりしびれた。
Benのまとめで今日のセッションは終了。盛りだくさんで疲れた。何人かの開発者や研究者の知り合いができた。ホテルに戻ると、またラウンジで今度は夕食サービスをやっている。酒まで出ている。まじでタダなのかと聞くと、この階の客はみんなタダで利用できますよと、気さくなフィリピン人の女性従業員がニコニコと答える。今日はあまり客がいないらしく、好きなだけ部屋に持っていけという。赤ワインとハイネケン、リブにサンドウィッチをいただいた。夕飯はこれで十分だ。ありがたい。まだ引っ張っている授業の課題を進めつつ夕食をとった。ネット接続ができたので、メールを読んだら、課題の出ている授業の講師から、金曜まで延期のオファーが出ている。ありがたい。安心したところで、別のホテルでカンファレンスの参加者が集まっているというのでのぞいてみた。豪華なホテルのラウンジが、Geekの溜まり場になっている。残念ながら、ちょっと時間が遅かったため、Serious gamesの人たちはもうあまり見かけなかった。帰り道にシーフードレストランがあったので、牡蠣を食べに立ち寄った。さすがIT成金の多いシリコンバレー、レストランはやや高め。違った6種類の産地の生牡蠣サンプラーと、白ワインを頼んだ。牡蠣は産地で味が微妙に違う。身の大きさはずいぶん違う。というかそれは個体差もあるか。満足してホテルに戻った。気候がよくて外を歩くのが心地よかった。
3/21(日) San Joseへ
10時前の飛行機に間に合うように、8時ごろ起床し、旅行の支度をして空港へ。State College~Pittsburgh~Dayton~Chicago~San Joseと、空港の職員から「ずいぶん変なルートで行くのね」と言われるような3回乗り換えのルートをたどった。途中、雪のために遅れが出たので3時間ほど待たされた。約15時間後にカリフォルニア州San Joseへ到着。ホテルはダウンタウンのど真ん中、コンベンションセンターの斜め前の便利なところにあった。着いてみて、ここはシリコンバレーなのかと気づいた。シリコンバレーとSan Joseは、自分の頭には日本語で記憶されていたためか、英語ではつながってなかったらしい。
夕飯をまだ済ませてないので何か食べようと思って外に出たが、日曜の10時過ぎではどこもやっていない。仕方なしに売店でペットボトルの水とマフィンを買って食べた。ホテルの部屋からDSLネット接続ができるようになっているのだが、どうもつながらない。今日はあきらめて、火曜提出の課題を少し進めて寝た。
3/2(火) アシスタント業務
ここ最近、アシスタント業務が忙しい。給料分かっちり働かされている。仕事をもらっている認定プログラムは、大学のアウトリーチオフィスが管轄で、うちのINSYSプログラムからはコース提供をしていて、うちのプログラム側の運営担当が一人いるということで、大学院生のポジションが一つ用意されている。あれこれ判断業務が発生しているのだが、アウトリーチオフィスの方は、INSYS側に気を使っているのか、運営の細かいところには口出ししてこない。こちらの判断業務をするべきスーパーバイザーの教授は実務にはまったく関知してない。なので、自分のポジションは管理者不在に近い状態なのだ。小うるさい教授がボスで、給料分以上にこき使われているアシスタントが結構いる中で、自分のポジションはありがたいものだ。でも自分がマネジメント側だったら、このポジションは業務内容を見直しするだろう。立ち上げ当初はいろいろアシスタントも骨を折ったようだが、今は放っておいてもお客さんが来て、非常勤の講師たちが教えて、収入が入るシステムが出来上がっている。アシスタントの業務はそれほど発生しない。
実は、他にも似たような認定プログラムがあって、内容がバッティングして無駄があるという問題点がある。それを最近、関係する教授陣で見直しを始めた。そうするとまたこちらの仕事が増えるのだが、忙しい分には問題ない。暇で給料分働いてなくて、仕事から何も学ぶことのない状態の方がよほど居心地が悪い。とりあえず5月までで契約期間が終わるが、それまでには前のアシスタントがまったく整備してなくて雑なままの文書類を整備するなどして、運営効率を上げることに貢献して終わろうかと思う。
2/21(土) プロのデザイナーとのやり取り
今日も風邪で休息。課題の読書をしていたら、この間メールインタビューしたClark Aldrichからメールが届いた。君のウェブサイトのゴールステートメントを楽しく読んだよ、とのコメントだった。お礼もかねて、アマゾンのサイトで彼の著書へのレビューを書いた。日本語訳(ちょっと加筆修正)は次のような感じ。
シミュレーションによる教育研究の大いなる一歩
この彼の著書”Simulations and the Future of Learning is becoming”は、私の周りのゲーム&シミュレーションによる教育に関心のある研究者たちの間で必読本になりつつある。ゲーム&シミュレーションを教育に利用する研究は、今注目されつつある研究テーマだが、新しいテーマということもあり、いい文献がない。そのため研究を進めるのになかなか苦労している。そんな時に著者は、自身が開発したリーダーシップ教育シミュレーション「ヴァーチャルリーダー」(ベストイーラーニングプロダクトオブザイヤーを受賞)の開発プロセスを気前よく披露してくれた。この本は後にこの研究分野の発展を推し進めた作品として評されるだろう。
この本は、この分野の研究者やデザイナーたちに多くの知見を与えてくれる。ソフトウェアとしてのシミュレーションモデルやインターフェースデザインの開発過程はもとより、リーダーシップ理論とモデルの開発過程も詳しく紹介されている。彼は既存の専門家や理論をあてにするのでなく、それらをゼロから構築している。その過程を丹念に示すことを通して彼は、本当のイノベーションは、地道な論理思考の積み重ねとプロジェクトメンバーのたゆまぬ努力によって起こされるものだということを示している。この本は、言ってみれば革新的なプロジェクトの成功の裏で開発者がどんな苦労をしたかを綴ったものだが、それを出版することで、読者に新たな学習機会と、読んで楽しめる物語を提供できるということを著者は示してくれている。
著者の彼には結構感謝され、その後メールのやり取りが2往復ほど発生した。なけなしの知識を総動員して彼のレベルに合わせて話をしようとするが、そうすると彼はさらに高いレベルで話を展開してくる。まるで何かのスポーツの初心者が達人に手合わせをしてもらっているような状態である。さすがに本物の専門家は聞きかじりの知識をそのまま使うようなことはせずに、自分の頭で消化して、自分の言葉にしたものをぶつけてくる。しかも彼は直球。一球一球が重い。こういう真剣なやりとりが人を育てるのだろう。いい人に出会えたものだ。
2/16(月) 研究計画
今日はリサーチデザインのクラス。簡単なトピックを書いて持ち寄って、Dr. Dwyerに個別コメントをもらう。少人数のクラスなので、こういう個別指導的な授業が可能。学ぶことも多いのでとてもよい。ABD(All but Dissertation)の院生もいるのだが、今頃リサーチデザインの授業を取り直しているだけあって、持ってくるものもいまいちぱっとしない。こういう院生の指導は、アドバイザーの教員もモチベーションが出ないだろうなと思う。他のクラスメートたちは、まだ博士課程を始めたばかりの人も多く、今テーマを探し中といった感じ。
かくいう自分のは「テーマは面白いが、構想がでかすぎ」とのこと。ゲーム&シミュレーションは注目度が高いテーマだが、持っていたネタだと、大勢で手分けしてやらないといけないレベルだし、独立変数を定義するのが大変だぞ、などとあれこれと指導を受けた。いちいちごもっともで、勉強になった。研究の構想がでかくなりがちなのは、はじめから小さな構想ではモチベーションがあがらないのもあるのと、学部時代に受けた教育のせいでもある。
昔、SFCの学生は身の程を考えずにでかいテーマを追求しようとすると指摘されるのを耳にした。それはたぶんに、SFCでの大局的な視野を身につける教育が成功しつつも、それを具体的なリサーチに落とし込む教育が機能してなかったということの表れだと思う。この点は学生のせいというよりも、教育をデザインした側の製造責任に関わる話だろうと思う。とはいえ、ちまちましたリサーチ作法よりは、大局観をもてる学生を育てることを優先することはむしろよいことだと思う。リサーチ作法なんぞは学部生の大半はそんなものは不要で、必要になれば大学院で学べる。構想がでかすぎる分には絞り込めばいいので問題ないが、リサーチ作法は知っているけど、研究テーマを見つけられないという状況は、はるかに悲惨だ。
ところで、研究計画を立てるのは自分の得意分野である。自分じゃやりたくないけど、面白そうでしょ?という研究計画ならいくらでも書ける。もっとも、そういうものを書く場合でも、いざ自分がやらないといけなくなった場合のために、自分がやりたくなるようなネタは必ず仕込む。このスキルは今までの社会人経験によって身に付いた。大学を出てからずっと企画系の仕事をやってきたので、企画書、提案書の類は山のように書いてきた。アルバイトで、大学院入試教科書の研究計画書サンプルを書いたこともある。会社勤めのころはボスにガミガミ言われながら徹夜で資料をまとめたりしていたが、今となってはそういうものが糧となって今の自分を支えているのだなとつくづく思う。若い時にがみがみ言って鍛えてくれる上司は貴重だ。しかも自分の場合は、会社の経営者と直で仕事してきたことがさらにプラスになっている。彼らは普通のサラリーマン管理職とはシビアさが違う。ガミガミも本気である。今、大学の教員と仕事をしていて、英語がへたでも彼らの関心を得ることができるのは、経営者たちと仕事をした経験から、上の人間の立場でものを考える力が付いているおかげだろう。
研究計画の方は、文献レビューを交えつつ、トピックを絞り込む作業を開始。文献読みのスピードが遅いので手間がかかる。
2/9(月) 博士論文
今日のリサーチデザインの授業の宿題で、ISD分野の博士論文を一つ読んで、要約を書いて持ってきなさいというのが出ていたので、図書館へ。ほんとはオンラインにのっているもので済ませようと思ったのだが、2000年の分からしかなくて、ちょうどいいのがなかった。図書館の博士論文コーナーに初めて足を運んだ。飾り気のない製本をされた博士論文が書架にならんでおり、数年後に自分のがここに並ぶことを想像して、しっかり勉強せにゃいかんという気になった。
リサーチデザインの授業の講師のDr. Dwyerは、ISD分野がいつまでたっても科学の領域としての理論基盤を構築できないことを危惧しており、自分の研究室でISD分野の理論基盤整備に貢献するような、いわゆる基礎研究の成果を地道に蓄積してきている。彼の多くの教え子たちは、同じ素材(心臓の構造と機能に関するインストラクション)で、さまざまな教授アプローチによる実験研究を行なって、そのテーマで博士論文を書いているそうだ。そんな彼の授業は7割方はゆっくりとした語り口での講義なのだが、言うことにいちいち含蓄があって、一言一句聞き逃せない。その含蓄は、ISD分野を発展させていきたいという研究者としての良心と信念が積み上げてきたものなのだろう。彼は基本的には行動主義の流れを汲む伝統的なID者の立場で、きちんと実証されていない構成主義の理論にはきわめて懐疑的である。しかし彼の姿勢は実証的なだけで、頑迷なものではない。効果があるというならきちんと実証して見せなさい、という立場である。実際、彼の教え子のうち4人はReigeluthのElaboration理論の実証をしようとしたが、結果は有意差なしだったそうだ。講義の中で、ぼくの研究関心であるゲーム&シミュレーションにもことあるごとに言及してくれるが、まだ学習効果が実証されていないということだった。何とかしてこのテーマで学習効果を実証したい。このコースの最後に研究プロポーザルをまとめるので、その時に彼が納得してくれるようなものをぜひ出したい。