2/21(土) プロのデザイナーとのやり取り

 今日も風邪で休息。課題の読書をしていたら、この間メールインタビューしたClark Aldrichからメールが届いた。君のウェブサイトのゴールステートメントを楽しく読んだよ、とのコメントだった。お礼もかねて、アマゾンのサイトで彼の著書へのレビューを書いた。日本語訳(ちょっと加筆修正)は次のような感じ。
シミュレーションによる教育研究の大いなる一歩
 この彼の著書”Simulations and the Future of Learning is becoming”は、私の周りのゲーム&シミュレーションによる教育に関心のある研究者たちの間で必読本になりつつある。ゲーム&シミュレーションを教育に利用する研究は、今注目されつつある研究テーマだが、新しいテーマということもあり、いい文献がない。そのため研究を進めるのになかなか苦労している。そんな時に著者は、自身が開発したリーダーシップ教育シミュレーション「ヴァーチャルリーダー」(ベストイーラーニングプロダクトオブザイヤーを受賞)の開発プロセスを気前よく披露してくれた。この本は後にこの研究分野の発展を推し進めた作品として評されるだろう。
 この本は、この分野の研究者やデザイナーたちに多くの知見を与えてくれる。ソフトウェアとしてのシミュレーションモデルやインターフェースデザインの開発過程はもとより、リーダーシップ理論とモデルの開発過程も詳しく紹介されている。彼は既存の専門家や理論をあてにするのでなく、それらをゼロから構築している。その過程を丹念に示すことを通して彼は、本当のイノベーションは、地道な論理思考の積み重ねとプロジェクトメンバーのたゆまぬ努力によって起こされるものだということを示している。この本は、言ってみれば革新的なプロジェクトの成功の裏で開発者がどんな苦労をしたかを綴ったものだが、それを出版することで、読者に新たな学習機会と、読んで楽しめる物語を提供できるということを著者は示してくれている。
 著者の彼には結構感謝され、その後メールのやり取りが2往復ほど発生した。なけなしの知識を総動員して彼のレベルに合わせて話をしようとするが、そうすると彼はさらに高いレベルで話を展開してくる。まるで何かのスポーツの初心者が達人に手合わせをしてもらっているような状態である。さすがに本物の専門家は聞きかじりの知識をそのまま使うようなことはせずに、自分の頭で消化して、自分の言葉にしたものをぶつけてくる。しかも彼は直球。一球一球が重い。こういう真剣なやりとりが人を育てるのだろう。いい人に出会えたものだ。