2/9(月) 博士論文

 今日のリサーチデザインの授業の宿題で、ISD分野の博士論文を一つ読んで、要約を書いて持ってきなさいというのが出ていたので、図書館へ。ほんとはオンラインにのっているもので済ませようと思ったのだが、2000年の分からしかなくて、ちょうどいいのがなかった。図書館の博士論文コーナーに初めて足を運んだ。飾り気のない製本をされた博士論文が書架にならんでおり、数年後に自分のがここに並ぶことを想像して、しっかり勉強せにゃいかんという気になった。
 リサーチデザインの授業の講師のDr. Dwyerは、ISD分野がいつまでたっても科学の領域としての理論基盤を構築できないことを危惧しており、自分の研究室でISD分野の理論基盤整備に貢献するような、いわゆる基礎研究の成果を地道に蓄積してきている。彼の多くの教え子たちは、同じ素材(心臓の構造と機能に関するインストラクション)で、さまざまな教授アプローチによる実験研究を行なって、そのテーマで博士論文を書いているそうだ。そんな彼の授業は7割方はゆっくりとした語り口での講義なのだが、言うことにいちいち含蓄があって、一言一句聞き逃せない。その含蓄は、ISD分野を発展させていきたいという研究者としての良心と信念が積み上げてきたものなのだろう。彼は基本的には行動主義の流れを汲む伝統的なID者の立場で、きちんと実証されていない構成主義の理論にはきわめて懐疑的である。しかし彼の姿勢は実証的なだけで、頑迷なものではない。効果があるというならきちんと実証して見せなさい、という立場である。実際、彼の教え子のうち4人はReigeluthのElaboration理論の実証をしようとしたが、結果は有意差なしだったそうだ。講義の中で、ぼくの研究関心であるゲーム&シミュレーションにもことあるごとに言及してくれるが、まだ学習効果が実証されていないということだった。何とかしてこのテーマで学習効果を実証したい。このコースの最後に研究プロポーザルをまとめるので、その時に彼が納得してくれるようなものをぜひ出したい。