e-Learning World 2009 感想(2)

 e-Learning World の二日目は午後から、東京大学の中原先生と早稲田大学の向後先生のセッションに参加してきました。前半の中原先生セッションは「企業人材育成の最前線:人が育つ職場づくり」というテーマで、会場に入ってみるとテーブルが講義形式から6人ひと組の島になったワークショップ形式。進行は途中で小刻みに小作業を入れながらワークプレイスラーニングのトピックを説明するという進め方。聞いているだけの時間は10分もなくて、インタラクションが豊富で、最後にはレゴを使った作業まで入れてしまうという展開で、普段東大で開催されているLearning Barのショーケース的な感じなのかなという印象でもあり、90分でこれだけ盛り込んで時間の経過を忘れるような楽しいセッションは、さすがという印象でした。
 中原先生には3年前にBEATセミナーでお招きいただいてご一緒したことがあったのですが、その時のプロデュース手腕を目の当たりにして、この人は将来、「教育学界の大物興行師」になって名を残すだろうなんていうコメントをしたこともありましたが、もはや中原プロデュースのLearning Bar は毎回抽選になるほどの人気ぶりで、将来どころか数年のうちにブレイクして、新たな学びの場のスタイルを切り拓いているところは感心するばかりです。
 後半の向後先生のセッションは、「成人教育学に学ぶeラーニングの可能性」というテーマで、成人の学習傾向や特徴からEラーニングを捉え直すという内容でした。中原先生がワークショップでにぎやかにやった後はさぞやりにくいことと思いましたが、向後先生の話術と重要な論点をすっきり整理した解説で何の支障もなく、前半とは異なる趣きで楽しいセッションとなりました。
 実用指向性、経験の蓄積、自己決定性、というキーワードから展開して、子どもを教える時とは異なり、成人の発達と学習の習熟の差に配慮して教えることの重要性などの話題を、Eラーニングの設計を絡めて語られていました。早稲田大学人間科学部のeスクールがもうだいぶ長い実績を持っており、これまでeスクールで指導してこられた向後先生のご経験に基づいた話が参考になりました。オンライン掲示板を単に導入するだけだとうまくいかなくて、どう使うべきかというような話は実践してみないと何が問題なのかがわかりにくいところで、その辺りの話はこれまで以上に関心を持ちました。
 セッションの後、向後先生に同行してExpoの方を少し見学してきました。前回このExpoを見学したのはたしか2002年だったか、まだITバブル冷めやらぬころのExpoのにぎやかな雰囲気だった気がします。今回は当時と比べて随分スペースも縮小されて、出展数も参加者数もおとなしい感じでした。これくらいの方が落ち着いて見て回るには良いかもしれません。出展企業や団体のだいぶ顔ぶれも変わったような印象です。Eラーニングの重要度は変わらないわけですし、少し前の状況が過熱気味だったと考えれば、これから着実に実力を蓄えてきた企業(や大学)が伸びていくのであれば、それはそれでよいことなのではないかと思います。
 所用で残念ながら3日目は参加できなかったのですが、しばらくぶりのe-Learning World参加はなかなか得るところがありました。