異動のご報告

本日4月1日付で、東京大学 大学総合教育研究センター 教育課程・方法開発部門 講師に着任しました。同じ研究センター内で部門が変わり、特任が取れて任期無しのポストへの異動です。

職位はそのままスライドで、担当プロジェクトはそのまま継続するので、身辺にはさほど変化もないのですが、一つ大きな変化としては、今年度から大学院情報学環の兼担になり、研究室への学生の受け入れができるようになります。

今年の入試から関わって、来年度から自分の研究室で学生を指導するようになりますので、実際に動き出すのは少し先ですが、これでようやく、私の専門のゲーム学習、オンライン教育の分野で研究したい方への受け皿が一つできるようになります。これは長年の目標だったので、小さく一歩前進です。次のステップとして、新しい研究プロジェクトを立ち上げながら、ゲーム学習とオンライン教育の分野で活動する若手研究者の雇用の受け皿を作れるように精進したいと思います。

大学での仕事は楽しいことばかりではなく、ミクロにもマクロにもこの大学を取り巻く環境には問題も多くて、日本の高等教育の向かっている先について日々考えさせられます。それでも、気が付けば米国留学から帰国してもう10年ほど経ち、日本の高等教育の改善に貢献できるような仕事がしたい、と留学する前に漠然と思っていたことが、今の仕事で実現できていることをありがたく思いつつ新年度の初日を迎えています。

ということで、皆さま、引き続きよろしくお願いいたします。

2019年を迎えて

新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
年始の休みは最小限のことだけやって休養優先で過ごしました。帰省もせずに自宅で過ごした分、例年よりも休めた感があります。

昨年の冒頭に書いたことを見返してみたら、次のようなことを書いていました。

「自分の性分として、自分でなくてもよいことや自分がやらない方がうまく回りそうなことは、出しゃばってやりたくないし、さっさと他の人に渡したいと思って生きてきましたが、他にできる人がいないことや行きがかり上引き受けたことが積み上がってきて、大事なことに力を尽くせず残念な思いをすることが増えてきました。」

これが1年ずっと続いてたなという感じです。大事にしたいことに舵を切って前に進む一年には程遠い感じでした。自分が出張らなくても良い仕事はどんどんできる人に手渡してきましたが、さらに拾われないボールが足元に転がってくるので、拾って投げ返すうちに1年が過ぎてたような。私のそばで一緒にボールを拾って投げ返すのを手伝ってくれた人たちには本当に感謝してます。後で思えば拾わなくても良いボールやそこまで時間をかけずに手早く片付けるべきこともあったので、そんな反省材料を活かして今年を良い一年にしたいです。

2019年の前半は、仕掛りの研究を進めることを最優先にしつつ、引き出しの奥の方に放り込んだままホコリを被ったような状態で放置していた関心事を引っ張り出して、アイデアを練ったり研究に仕立てたりする時間や、しばらく使わずに錆びついたスキルを磨き直すための時間を増やして過ごしたいと思います。これまでも体調管理に気をつけて無理な状態にならないように仕事をだいぶ絞ってきましたが、手を動かしてものを作る時間や教える機会を増やしたいので、絞りきれてないところは更に絞りつつ、時間の使い方の拙いところも見直して、ワークスタイルの改革を続けたいと思います。

これまで目標として掲げてきたゲーム学習分野の研究拠点を立ち上げるための活動についても、昨年は組織的な事情で後回しにしていましたが、今年は仕切り直して土台を作る活動に取り組みたいと思います。手始めに、しばらくお休みしていたLudix Labの活動を再始動させます。公開研究会の開催と、藤本ゼミ的な活動を立ち上げる計画を準備中です。

この何年か厳しい時期が続きましたが、今年は気持ちを切り替えて、成果を出して発信するサイクルを以前よりも加速させるべく日々の活動に取り組みたいと思います。

2018年の振り返り

2018年も終わろうとしています。今年は実家に帰省せず、休みに持ち越した原稿や書類の作成をしながら、今後の研究構想を立てる時間を取りつつ静かな年末を過ごしています。

今年は年初から何とも問題の多い年で、悩みながら問題対処に明け暮れるうちに1年過ぎたような感があります。理不尽なことやうまくいかないことも多々ありましたが、自分のできることは力を尽くしてやってこれた気はしています。

自宅の大掃除も済んでさっぱりしたところで、例年通り、今年一年で書いた原稿や発表を整理しました。主なものは国際論文誌の論文1本、昨年書いて今年出版されたレビュー論文1本、国際論文誌に投稿中の共著論文が1本、あとは国内学会発表や共著の発表などというところです。昨年から仕掛りのジャーナル論文のうち1本出版できたのは良かったですが、残り2本がさらに持ち越しになっているのが反省点です。

今年の後半に取り組んだ経産省「未来の教室」実証事業の委託で行った実践研究が年明けからアウトプット作業に入るのと、現在進めている科研費の研究プロジェクト2本の開発を進めているので、来年それぞれ成果を出せればというところです。年始の休みは程よく休養を取りつつ、読めてなかった本や論文を読んで穏やかに過ごしたいと思います。

今年も多くの皆さまにお世話になりました。どうぞ良いお年をお迎えください。

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変容を起こすゲームデザイン解説書「The Transformational Framework」

9月にETC Pressから出版されたSabrina Culyba著「The Transformational Framework」がとても良い文献ですので紹介します。本書は多くのシリアスゲーム開発を手掛けたゲーム開発会社Schell Games(カーネギーメロン大学ETC教授でゲームデザイナーのJesse Schell氏が設立)でゲームデザイナーとして活動する著者が、同社のこれまでに蓄積してきた開発ノウハウを体系的に整理した解説書です。

教育/学習ゲーム、研修ゲーム、教育シミュレーション、シリアスゲーム、アプライドゲーム、ゲーミフィケーション、ゲームズ・フォー・ヘルス、ゲームズ・フォー・チェンジなど、さまざまな呼び方で広がってきた、娯楽を超えた用途や効果のためのゲームのことを「トランスフォーメーショナルゲーム」(変容を起こすゲーム)と総称して、そのデザインフレームワークとして8つの要素に整理して解説しています。

・上位目的:そのゲームの目指す変容
・オーディエンスとコンテクスト:そのゲームの対象者と利用される状況
・プレイヤーの変容:そのゲームを通して生じる変容
・障壁:なぜその変容が起きにくいのか
・領域概念:変容を起こすためにゲームが扱う知識
・専門知識源:ゲームに取り入れる知識をどこで手に入れるか
・先行事例:関連する先行事例から学ぶ
・効果測定:ゲームが起こした変容の測り方

ゲーム開発の基礎知識から、企画段階の心得的な留意点、ターゲットの絞り込み方、扱う知識の選び方、領域専門家との付き合い方、先行事例の調べ方や効果測定の方法の選び方など、シリアスゲームや学習ゲームの開発において役に立つ実用的なアドバイスが豊富に盛り込まれています。

これまでにも同様の開発ガイドブック的な文献は出てますが、「シリアスゲーム開発の参考書のおすすめはないでしょうか」と聞かれた時に、ちょうどよく勧められる文献は多くありませんでした。本書は、この分野の開発に着手したい方からそういう質問が来た時に、まずこれを読んでください、と力強くお勧めできます。

本書のPDF版は無料でダウンロードできますので、シリアスゲームやゲーミフィケーションデザインを扱う授業で参考文献にしたり、本書で輪読会をやってみんなで議論したり、ゲームジャム参加前の予習文献にしたりと、さまざまな用途で活用できると思います。

11/25 追記:”transformational” の訳語を教育学分野の定訳に合わせて”変容”に修正しました。

投稿中のMOOC研究論文がEducational Media Internationalに採録されました

edX Global Forum参加のための出張でボストンに来ています。こちらはすっかり冬模様で、日暮れも早く、今日の最高気温は2度とのことです。投稿中の論文の修正や月末から始まる高校での授業実践の準備など、あれこれ急ぎの仕事が重なってきているので、会議に出席しながら空き時間に進めつつ滞在する感じです。

今週、ひとつ嬉しい知らせがありました。東大がCourseraで開講中のMOOC「Studying at Japanese Universities」についての論文が国際論文誌のEducational Media Internationalに採録されました。

この論文では、日本留学に関心のある世界の学習者が留学実現のための準備を進めながらお互いに学び合えるコミュニティとして開発したコースの意義やデザインの特色を説明して、開講当初の成果について考察しました。

現在、最終稿の校正対応しているところで、完了後速やかにオンライン公開されるとのことです。(11/28 追記:公開されました)

Fujimoto, T., Takahama. A., Ara. Y., Isshiki, Y., Nakaya, K., & Yamauchi, Y. (2018). Designing a MOOC as an Online Community to Encourage International Students to Study Abroad. Educational Media International. DOI: 10.1080/09523987.2018.1547545

 

「貧すれば鈍する」ということ

この2年ほど、日々の業務に疲弊して、精神的リソースが枯渇したような状態が続いていることもあって、週末はなるべく予定を入れずに休養優先で過ごすことが増えた。こちらが休みかどうかに関係なく、査読の依頼とか、何かの締切のリマインドは遠慮なく入ってくるので仕事はしているのだけど、仕事している感じにならない程度の量にとどめている。

そういう日曜の午後、何もする気がせず何となくテレビをつけたら、プロゴルフの試合をやっていたので何となく見ていた。トッププロゴルファーの見事なプレイの脇で、クラブを磨いて手渡した先からすぐにバンカーをならして、すぐにグリーンに上がってピンを持ち、ホールアウトしたらプレイヤーと言葉をかわすキャディの姿に目が止まる。それにプロトーナメントを行うゴルフ場は、丁寧に整備されており、ゴルフ場の支配人や運営スタッフもレベルの高い仕事をしていることが想像できる。スポーツにさほど興味のない私だが、ゴルフは子どもの頃に多少かじった経験があり、高校時代は田舎のゴルフ場でキャディのバイトもやった。なのでスポーツのアナロジーで考える時、プレイヤーとしての感覚で考えるにはゴルフが一番イメージしやすい。

物事をアナロジーで考える私の習性は、もはや職業病の域にあり、こうして週末のゴルフ番組をぼんやり見ていても、今の自分の仕事の文脈がこのゴルフの世界に浮かび上がってくる。今の私の仕事上の役割は、プロゴルファーとキャディやゴルフ場の他の仕事の関係として見ていくとどうなのか、そういう事を考えているうちにテレビの方は目で追っているだけになってくる。

プロプレイヤーは、トッププロであれば国際メジャー大会に出て勝ち星を上げ、スポンサー契約を取り、プロのプレイヤーとして成果が出ることにフォーカスして日々の活動を組み立てていく。トップでない普通のプロでも、国内試合で良い成績を上げるべく腕を磨き、来年のシード権を取り、所属クラブでレッスンプロとしてアマチュアの指導をしたりしながらも、プレイヤーとしての活動が中心の生活を送る。

それではそういう文脈における私はどういう立場か。大学の研究者として、研究や教育で業績を積み上げていくことが期待されており、それが評価の中心だという点において、プロスポーツ選手のように「プレイヤー」としての役割が期待されているはずなのだが、どうも違う状況にいる。

時間を作って練習ラウンドしていると、ゴルフ場のオーナーや支配人から「練習する暇があるなら運営の仕事を手伝ってくれ」とばかりに、運営スタッフの雇用やシフト管理のような仕事を任され、他のプロがラウンドするのに人手が足りないからとキャディの仕事も手伝い、支配人が不在がちで荒れたゴルフ場のメンテ作業をやり、自分のプレイヤーとしての活動は、日が暮れてみんなが帰ってからやることになる。がんばって海外遠征を増やそうにも、ゴルフ場の仕事が手薄になることに不満を持たれる。資金不足だからスポンサー契約をとってこいとオーナーが言うので、新規の契約を取ってきても、内部で煩雑な手続きを嫌がられて仕事が進まず、成果が出なくてかえってスポンサーに迷惑をかけるような、誰も報われない、さえない状況が続く。傍目から見れば、名門ゴルフクラブで仕事もらってるんだからまだマシでしょ、世の中もっと大変なんだよね、と内部の事情には微妙な同情くらいしか集めない。

プレイヤーとしての活動が後回しになり、9割方がキャディやら支配人やらの仕事で時間を取られていても、続けていれば要領を得て、それなりに効率よくこなせるようになる。そうすると、こっちもお願いとばかりに、さらに問題の多い仕事が回ってくる。やる人がいなくて組織が傾いても困るので、不承不承対応する。するとまたさらにやり手のいない仕事が回ってくる。かくして、プレイヤーとして自分の腕を磨く以前の状況が続き、たまに打ちっぱなしで玉を打つだけのアマチュアプレイヤーのような状態で、プロとして精彩を欠いた状態が定常化した。

言うまでもなく、プレイヤーの仕事以外にもゴルフ場には仕事があり、それらがプレイヤーの仕事に比べて価値が低いということではない。トッププロがしのぎを削る試合で勝てるパフォーマンスを発揮するには、優れたキャディがきちんと仕事を果たすことが不可欠となる。プレイヤー本人の実力や努力が必要でも、それだけで勝てるものではなく、キャディや裏方の仕事がきちんと果たされないと、プレイヤーは成果につながるパフォーマンスができない。キャディにはキャディとしての専門性があり、トップの世界のキャディが持つ価値はもっと評価されてよいが、それは別の問題である。

ここでの問題は、大学の研究者としての私の仕事はプレイヤーとして評価され、キャディや支配人の代わりにどれだけ仕事をしたかとか、組織を立て直すことに貢献したかで評価される立場ではないことだ。大学の研究者としての評価は、どれだけ良いスコアを出して、いくつ勝ち星をあげるか、賞金ランク上位に入ってシード権を取れるかという、プレイヤーとしての立場で評価される。たとえ組織のために働くことが求められても、試合に出る準備ができない、ゴルフ場が荒れていて練習にならない、プロ契約が結べない、道具が揃わないなどのさまざまな事情に翻弄されて、プレイヤーとして勝てない状況に陥っていても、最終的にはプレイヤー個人として評価される。

もちろん、レッスンプロとして評価されて生きる道もあり、プレイヤーの他にもゴルフ場には多くの仕事とさまざまな生き方がある。誰しもどこかのタイミングで、自分の生き方を選択しなければならない時が来る。私自身もそういう段階にいるのかもしれないが、未だプレイヤーとしてやりきっていない以上、とにかくプロとして練習時間も取れないこの拙い状況を立て直す必要がある。

ここしばらく、前向きなアイデアが出なくて枯渇した状態で、支配人業務が忙しくて回らないからと出場試合の数を減らすようなさえない状態だったが、このあり方が根本的にダメで、これを続けていたら私の選手生命はこのまま終わる。どこかのゴルフ場の支配人の仕事くらいはできるかもしれないが、そこを目指してプレイヤーになったわけではない。錆びついた腕はこれから磨き直す必要があるが、少なくともこういう危機的な状況に気づいて、前向きに捉え直せる程度には回復してきたのかと思う。

日本教育工学会全国大会@東北大学での発表予定

明日9月28日から東北大学で開催される日本教育工学会 第34回全国大会参加のために仙台へ向かっています。

今年は東大でMOOC開発を担当している荒さんの発表と、担当しているPAGEプロジェクト特任研究員の下山田さんの発表に連名で参加しています。

それと毎年恒例で第4号目の発行になった「SIGレポート2018」の会場配布を行いますので、大会参加される方はSIGブースへお立ち寄りください(PDF版も公開しました。こちらからダウンロードしてご覧ください> https://goo.gl/e1R75g )。私は「学習ゲームデザイン・導入支援ツールの開発」を執筆しました。現在開発中のゲーム学習導入支援ツールについての論文です。最終日の30日のSIG-05「ゲーム学習・オープンエデュケーション」のSIGセッションでゲーム要素を取り入れた授業デザイン体験ミニワークショップを行います。オープンエデュケーション、ゲーム学習それぞれ体験ワークを用意してお待ちしてますので、是非SIGセッションの方もお越しください。


日本教育工学会 会場:東北大学 川内キャンパス
第34回全国大会 2018年9月28日(金)~30日(日)

教育評価 (2) 9 月 30 日(日)9:00 ~ 11:00 会場:講義棟 B 棟 B204
3a-B204-01 複雑な構造の MOOC における学習軌跡の可視化手法の提案, 荒 優,藤本 徹,山内 祐平(東京大学) 789-790.

International Session(3) 9/28 (Fri.) 14:00 ~ 15:20 Place: Lecture Rooms A: A101
I1p-A101-04 Implementation and evaluation of blended workshops on EMI, SHIMOYAMADA, Sho.,KINOSHITA, Shin.,NAKAZAWA, Akiko. FUJIMOTO, Toru.(The University of Tokyo), 943-944.

教育評価 (2) 9 月 30 日(日)9:00 ~ 11:00 会場:講義棟 B 棟 B204
SIG-05: ゲーム学習・オープンエデュケーション
9月30日(日) 14:10〜16:10 会場:講義棟A棟 A102
コーディネーター:重田 勝介(北海道大学),池尻 良平(東京大学),福山 佑樹(明星大学),藤本 徹(東京大学),永嶋 知紘(カーネギーメロン大学),石井 雄隆(早稲田大学)

藤本徹(2018)学習ゲームデザイン・導入支援ツールの開発. 日本教育工学会 SIG-05レポート2018. 3-7.

SIG-05レポート2018
https://goo.gl/e1R75g

誕生日の近況など

今日で45歳になりました。メッセージくださった皆さま、ありがとうございました。

昨年の今頃からこれまでを振り返ってみると、組織の管理業務の割合がだいぶ増えていて、その分研究や対外的な活動が減った状態で推移しています。今年の前半は所属組織でいろいろと変化があり、調子の悪い部分の応急処置に、事業提案に、執行計画に、スタッフの雇用にと、研究者としての時間よりも、組織の中間管理職や、幕府の奉行のような立ち回りの時間の方が多い状況が続きます。補給の見通しもなく、手持ちのリソースで出城を守っているような状態で、周囲も余裕のない状況なので、これでは日本の大学の研究力が低下するのも無理はないなと思いやられます。

1年前に44歳の私が書いたことを見返してみると、考えていることはそんなに変わっておらず、その時考えていたことや今年の年初に見据えていたチャレンジングな状況の途中にいます。この1年で仕事上の面倒事はさらに増え、ややこしい話がさらにややこしくなり、自分の手に負えないような状況をいかに乗り切るか、悩みながら毎日が過ぎていきます。がんばったおかげで持ち直したことや片付いた問題もありますが、まだこの状況が落ち着くまでにはもう少しかかりそうです。

昨年の今頃も相当大変だと思って毎日を送っていましたが、今思えば、まだ全然余裕がありました。仕事量が増えてもどうにか対応できているのは、慣れて効率が上がって、スキルが上がったおかげもあると思います(提案書の作文やポンチ絵を描くのもだいぶ早くなりました)。昔やってきたことが今の自分を助けてくれているように、今やっていることがそのうち活きてくるだろうと、ある意味修行のように割り切って考えているところもあります。

こういう厳しい状況にあっても、幸いと言ってよいのか、自分の性分として、リソースの限られた状態で知恵を絞って難局を乗り切らないといけない状態で仕事をすることは嫌ではないので、何とかやれているかなというところです。むしろ自分の立てた策がどういう結果になるか試せる楽しさがあるおかげで、退屈せずに過ごせているのはありがたいです。

ほどほど健康を保っていられるのは、時間の自由が利くおかげもあって、力を抜くところで抜きながら活動できるのも大きいです。もしラッシュ時に毎日通勤する生活であればとうに体調を崩して寝込んでいたことと思います。もともとアクティブに活動する方ではないので、休みもあまり出掛けず静かに過ごす日が多いですが、同年代で体調を崩す方も増えているので、自分の状態を意識的にモニタリングして、無理な状況が続かないように過ごしています。

仕事のストレスの多い状況が続いても、ある種のプレイフルな感覚を保てるのは、ゲームで繰り返し負けながら、思いついた戦法やアイデアを試す経験をしてきたことも少なからず影響していると思います。たとえば最近、アニメの「三月のライオン」に影響されつつ、HEROEZ上場のニュースに影響されて、久しぶりに「将棋ウォーズ」をプレイしています。素人のヘボ将棋ですが、それでもしばらくプレイしていると、日々の仕事と詰将棋が重なって見えてきます。

これまでプレイしてきたリアルタイムストラテジーやアクションゲームやソーシャルゲームでもそうですが、ゲームで繰り返し試す感覚が日々の仕事と重なってくると、何となく前に進む手掛かりが見えてきたり、違うやり方に気が付いたりして、気持ちの粘りが戻ってくる感じがします。そういう感覚は昔はそれほど意識できなかったので、歳をとることでいろいろな経験がつながっていくなかでゲームの経験もつながっているのでしょう(ちなみに最近ほかにプレイしているのは「旅かえる」「ねこあつめ」「ほしの島のにゃんこ」「スプラトゥーン2」、それともうすぐ「ねこあつめVR」。ついでに本文とは関係ないけど、読んでるマンガは「週刊モーニング」、コミックで「キングダム」「センゴク権兵衛」「アルキメデスの大戦」「ダンジョン飯」「アンゴルモア」「進撃の巨人」「闇金ウシジマくん」「死役所」)。

最近は発信する活動が減っていますが、もう少し研究のことやゲームのことも書いて発信したいと思います(余計なことを書いているうちに、忘れていた書く楽しみを少し思い出しました)。これからもよろしくお願いいたします。

LudixLab公開研究会「教育のゲーミフィケーション、これまでとこれから」を開催しました

一昨日の2月13日、久々にLudix Labで公開研究会を開催しました。ご参加者の皆様ありがとうございました。

「教育のゲーミフィケーション、これまでとこれから」と題して、教育分野のゲーミフィケーションの概要と最近の事例やデザイン理論など「これまで」の状況について話題提供して、参加者の皆さんと「これから」についてディスカッションする構成でした。

私からは「教育のゲーミフィケーションとテクノロジー」について、特にデジタルバッジとVRやARの話題でお話ししました。今回あらためて思いましたが、この二つのテクノロジーを取り巻く最近の状況はとても面白くて追及する意義があります。この分野は米国が先導している状況が続いていますが、国内でも今後、開発のリソースや普及のプラットフォーム作りに向けた動きをどうとっていけるかというところです。

海外で研究事例も論文も増えているためなかなかフォローしきれないのですが、このような発表の機会があることで、少しずつ集めた情報や文献を整理してキャッチアップしています。整理しきれず盛り込めなかった話題もありますので、今後も継続的に発表の機会を持ちたいと思います。

気が付けば、LudixLabの結成は2013年1月ですので、もう5年が過ぎました。フェローたちがそれぞれに忙しくなっていて、以前ほど集まれなくなってますが、今後も程よいペースでイベントを企画したいと思います。


Ludix Lab 公開研究会「教育のゲーミフィケーション、これまでとこれから」

■趣旨
2010年に「ゲーミフィケーション」という用語が登場してから8年、教育分野でも様々なゲーミフィケーションの活用が展開され、研究分野ではそのデザイン理論も生まれてきました。

今回の公開研究会では、ゲーミフィケーションとは何か、どう教育へ導入されていったのかを解説しつつ、最新の事例や展開を紹介していきます。また、研究分野で構築されたデザイン理論についても紹介し、教育とゲーミフィケーションの「これまで」を俯瞰的に見ていきます。

フロアディスカッションではこれまでの展開を踏まえた上で、教育とゲーミフィケーションの「これから」を議論し、登壇者と共に今後の展開を考えていきます。

教育のゲーミフィケーションに興味がある方、教育にゲーミフィケーションを導入したいと考えている方、この分野の今後の展開に興味がある方はぜひご参加下さい。

<タイムテーブル>
(1)イントロ
(2)ゲーミフィケーションと教育への導入
(3)教育のゲーミフィケーションとテクノロジー:デジタルバッジとVR/AR
(4)教育のゲーミフィケーションのデザイン理論と評価理論
(5)フロアディスカッション「教育のゲーミフィケーションのこれからを考える」
(6)ラップアップ

■登壇者:
藤本徹(東京大学 大学総合教育研究センター 特任講師)
福山佑樹(東京大学 総合文化研究科 特任助教)
池尻良平(東京大学 大学院情報学環 特任講師)

■日時:2018年2月13日19:00-21:00

■会場: 東京大学本郷キャンパス福武ラーニングスタジオ1と2(B2F)
■参加費:一般:前売3000円、当日4000円(軽食、飲み物付き)
■定員:25名(定員に達し次第〆切)

■登壇者プロフィール
藤本 徹(ふじもと とおる): 慶應義塾大学環境情報学部卒。民間企業等を経てペンシルバニア州立大学大学院博士課程修了。博士(Ph.D. in Instructional Systems)。専門は教授システム学、ゲーム学習論。ゲームの教育利用やシリアスゲーム、ゲーミフィケーションに関する研究ユニット「Ludix Lab」代表。著書に「シリアスゲーム」(東京電機大学出版局)、訳書に「幸せな未来は「ゲーム」が創る」(早川書房)など。

福山 佑樹(ふくやま ゆうき): 早稲田大学人間科学部卒。東京大学大学院学際情報学府を経て、現在にいたる。首都大学東京での非常勤講師や研修用ゲームの開発などにも取り組んでいる。ゲームを利用した社会問題の学習手法など、ゲームと教育・学習の関係性について研究している。分担執筆に「職場学習の探究」、「対人援助のためのグループワーク2」など。

池尻 良平(いけじり りょうへい): 東京大学大学院学際情報学府で修士・博士課程を経て、2013年より現職。専門は教育工学、歴史学習、転移、ゲームデザイン。社会の問題解決に応用できる歴史のゲーム教材を開発している。共著に『ゲームと教育・学習(教育工学選書Ⅱ)』(ミネルヴァ書房)、『歴史を射つ』(御茶の水書房)、訳書に『学習科学ハンドブック[第二版]第2巻 効果的な学びを促進する実践/共に学ぶ』(北大路書房)、『21世紀型スキル: 学びと評価の新たなかたち』(北大路書房)など。

■主催: Ludix Lab(NPO法人Educe Technologies)

 

大規模公開オンライン講座(MOOC)におけるラーニング・アナリティクス研究の動向

日本教育工学会論文誌41巻3号に、査読付資料「大規模公開オンライン講座(MOOC)におけるラーニング・アナリティクス研究の動向」が掲載されました。

MOOCのコース開発と運営を続ける中で、少しずつ調べてきた論文などの知見を整理した論文です。J-Stage上で全文公開されていますので、このテーマにご関心のある方はどうぞご覧ください。

藤本徹, 荒優, 山内祐平(2017) 大規模公開オンライン講座(MOOC)におけるラーニング・アナリティクス研究の動向. 日本教育工学会誌. 41(3), 305-313.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjet/41/3/41_41037/_article/-char/ja

抄録
2012年以降,世界のトップ大学が一斉に大規模公開オンライン講座(MOOC)の提供に参入したことで,グローバルなオンライン教育プラットフォームとして急速に普及し,研究テーマとしての関心も急速に高まった.この動きの当初は,コース提供した大学による教育実践報告や,将来の可能性を展望する議論が中心だったが,近年では具体的な実証研究も進展しており,ラーニング・アナリティクスを取り入れた研究も見られるようになった.本稿では,MOOC に関するラーニング・アナリティクスの先行研究をレビューし,この分野の研究動向を概観したうえで,今後研究を進めていく上での論点や課題を検討する.