「ゲームフルな教育をデザインする」ワークショップを開催します

 12月のイベントのお知らせ二つ目です。
 教育分野でゲームに関心のある院生や学部生たちと小規模な勉強会をたまに開催してきたのですが、そろそろ少し関心のある方々が参加できる場をご提供できればと思い、公開研究会として下記のようなワークショップを企画しました。
 年末押し迫っての週末夜開催なので、忘年会と競合して負けてしまいそうな気もしていて、どれくらいの方が参加してくださるのか心もとない限りですが(笑)、万難を排してご参加くださる皆さんにはしっかり成果を持ち帰っていただけるような楽しい学びの場をご用意したいと思いますので、どうぞご参加ください。

「ゲームフルな教育をデザインする」ワークショップ
趣旨:
昨年来の急速な「ゲーミフィケーション」への関心の高まりは、教育分野へも波及しています。既存のゲーム的な要素を含んだ活動をゲーミフィケーションの枠組みで捉えて評価し直す動きとともに、ゲームデザインの手法を用いた新たな教育カリキュラムや学習環境を生み出そうとする試みも、欧米を中心に進められています。
今回の研究会では、「教育のゲーミフィケーション」をテーマとしたワークショップを開催します。ゲームデザイナーと教育専門家が協力してカリキュラムを開発した米国ニューヨーク市の公立チャータースクール「Quest to Learn」やニューヨーク公共図書館で行われたイベント「Find the Future」などの事例を紹介し、ゲーム要素を取り入れた学びの場のデザインするためのアイデアや工夫の仕方を議論します。
主な対象者:
教育・人材育成関連企業の方、学校や教育機関教職員の方で、新しい学習活動デザインアプローチを模索している方
内容:
1.イントロダクション、趣旨説明
2.事例紹介
・Quest to Learn:学校カリキュラム全体のゲーミフィケーション事例発表者:藤本徹(東京大学大学院 情報学環)
・Find the Future(ニューヨーク公共図書館で行われたゲーミフィケーションイベント):学習活動のゲーミフィケーション事例
発表者:池尻良平(東京大学大学院 学際情報学府 博士課程)
・Games for Learning : ゲームを用いた学習の事例
発表者:福山佑樹(早稲田大学大学院 人間科学研究科 博士課程)
3.グループワーク&ディスカッション
日時:
12月16日(金)18時30分~21時
(18時15分開場・18時30分開演)
会場:東京大学本郷キャンパス 福武ホール地下2階・ラーニングスタジオ1
http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/access/
(本郷キャンパスの赤門入ってすぐ左の建物です。)
定員:20名
参加費:
社会人:1500円、学生:1000円
※軽食・飲物代と資料代に使用します。当日受付でお支払いください。
参加申込方法:下記申込フォームよりお申込ください。
http://bit.ly/sFAF1z
※定員に達しましたので、募集を締め切りました。ありがとうございました。
主催:CLG(Community for Learning and Games)研究会
共催:東京大学ベネッセ先端教育技術学講座(BEAT)

九州大学のシリアスゲームセミナーで講演します

 もう今年もあと残すところ、ひと月ちょっととなってしまいました。ブログも最近はお知らせばかりになってしまっていて申し訳ないです。仕事で文章を書く以外、前ほど落ち着いて何かを書くことが減っているのがやや残念なので、少し物を書く時間を増やしたいなと感じています。
 といいつつ、例によってまたお知らせになってしまうのですが(笑)、12月にいくつか講演など出番があるのでお知らせします。
 まず一つ目、ツイッター等ですでに告知しましたように、東京ミッドタウンで行われる、九州大学シリアスゲームプロジェクトのシリアスゲームセミナーで講演します。昨年に引き続いてのお招きに感謝しています。同プロジェクトの今年度の活動成果報告とパネルディスカッションが楽しみです。
 セミナーのプログラム詳細は、九州大学シリアスゲームプロジェクトウェブサイトの案内ページをご覧ください。
http://macma-lab.heteml.jp/sgp_official_website/main/news/#77
―――以下、主催者からの案内より転載
◆◇◇◆◇◇◆◆◇◇◆◇◇◆◆◇◇◆◇◇◆◆◇◇◆◇◇◆
シリアスゲームセミナー
「シリアスゲーム産業化の推進に向けて」開催のご案内
◆◇◇◆◇◇◆◆◇◇◆◇◇◆◆◇◇◆◇◇◆◆◇◇◆◇◇◆
この度、九州大学が中心となって進めております福岡市委託事業“シリアスゲームプロジェクト”におきまして、シリアスゲームセミナーを開催いたします。
今回のセミナーでは、昨今ゲーミフィケーションの分野でカリスマ的な存在となっている、ゲームデザイナーのジェイン・マクゴニガルの著書『幸せな未来は「ゲーム」が創る』の翻訳も手掛けられ、日本のシリアスゲーム分野研究の第一人者である東京大学 藤本徹先生による講演、また当プロジェクトの本年の成果であるリハビリ用ゲームと観光ARGの実例を報告します。
後半は「シリアスゲーム産業化の推進に向けて」として、現在シリアスゲームを産業として実践されている方々をお招きしたパネル形式によるディスカッションを予定しており、国内におけるシリアスゲーム産業をより盛り上げるための具体的なアイディアをそれぞれの立場から出し合い、会場一体となって活発に議論を深めたいと思います。
皆さまのご参加をお待ちしております。
日時:  12月7日(水) 開場13:00 開演13:30
場所:  東京ミッドタウン・デザインハブ リエゾンセンター
      東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー5F
      http://www.liaison-center.net/?page_id=725
定員:  90名 (事前申込制 ・ 定員になり次第締切)
会費:  無 料
主催:  九州大学芸術工学研究院 福岡市
窓口:  シリアスゲームプロジェクト事務局
      Tel: 092-553-4499 (担当:馬場)
セミナーのプログラム詳細については、下記案内ページをご覧ください。
http://macma-lab.heteml.jp/sgp_official_website/main/news/#77
*申込方法*
参加ご希望の方は下記ご記入の上、「12/7セミナー参加申込」としてメールにてお申し込み下さい。
1. ご所属 2. お名前 3. TEL 4. Email 5. 懇親会に参加する ・ 参加しない
メール返信先: sa-baba <at> design.kyushu-u.ac.jp
(ご記入頂きました情報は事務局にて厳重に管理し、当イベントの運営利用のみに利用させて頂きます。)

翻訳書「幸せな未来は「ゲーム」が創る」を上梓しました

 すでにTwitterやFacebookの方ではお知らせしてますが、ジェイン・マクゴニガル著「幸せな未来は「ゲーム」が創る」を上梓しましたのでご報告いたします。先週から店頭に並んでいます。
シリアスゲームジャパンの方でご紹介していますのでこちらもご覧ください。 
ジェイン・マクゴニガル「幸せな未来は「ゲーム」が創る」出版のお知らせ
http://seriousgames.jp/2011/10/post-114.html

 今回は翻訳者の藤井清美さんと共訳で翻訳を担当しました。プロの翻訳者の方の仕事を見ながらアドバイスをいただきながらの翻訳作業で、とてもいい経験ができました。校了からわずか2週間での出版となり、出版社の編集担当の皆さんの仕事ぶりには頭が下がる思いです。監修の妹尾先生にはご多忙な中、本書の出版が実現するために奔走していただきました。解説の武山先生には日本のARG事例も踏まえて、本書の理解が深まる解説を書いていただきました。
 この半年ほどずっと続けて取り組んできたプロジェクトがようやく形になって、今はただただホッとしています。一息つく暇もなく他のプロジェクトが展開していますが、空き時間をすべてこの翻訳作業に注ぐことを余儀なくされていた日々から解放されたことで生き易さを感じる毎日です。
 でも何より、ワクワクしてきて元気の出る良い本で、訳していて楽しかったです。本書はマーティン・セリグマンをはじめとする「ポジティブ心理学」の研究成果を引用しながらゲームの可能性を語っています。訳していてポジティブな気持ちになれて得した気分になりました(笑)。
 本書の翻訳に携われたことをとても光栄に思います。皆さんが本書から少しでも何か前進するための示唆や元気を得られたら何より嬉しいです。それだけでこの仕事をやった甲斐があります。ゲームのことが分からなくても楽しめる内容ですし、ゲームに詳しい方はなお楽しめる本です。ぜひご一読ください。

【送料無料】幸せな未来は「...

【送料無料】幸せな未来は「…
価格:2,940円(税込、送料別)

日本教育工学会全国大会の若手飲み会のお知らせ

 当ブログいただいている方で、JSETの大会に参加する方も結構いらっしゃると思いますので、念のためお知らせしておきます。大会二日目夜恒例の若手中心の飲み会が今年も開催されます。
 開始が遅めですので首都圏近郊から参加の方は、帰りが心配ということで遠慮されている方もいらっしゃるかもしれませんが、最後までいないにしても結構交流できる時間はありますから、ちょっとでも顔を出していただくと良い出会いがあるやもしれません。
 拡散だけして自分が申し込み忘れてた、というような人(私)もいると思いますので、参加するつもりの人は、まず速攻申込して幹事さんに安心してもらいましょう。
==========================
今年もやってきた
Learning of Tomorrowな自称ワカモノタチの大宴会2011!!
日時:9月18日(日) 開場(受付開始) 20:30 開始 21:00 (23:00終了)
場所:庄や 南大沢店 (南大沢駅前)
    東京都八王子市南大沢2-3 ファブ南大沢2F(TEL 042-678-4161)
申し込み締め切り:8月31日(水)
申し込みサイト:http://labs.m-mode.net/wakamono/
==========================
今年もこの季節がやってまいりました!!
例年100名以上の自称ワカモノがお集まり頂き、
大盛況の例のヤツを今年も企画しました!!
「Learning of Tomorrowな自称ワカモノの大宴会2011」
知り合いも増えれば,学会もますます楽しくなるものです.
より楽しい,実りある学会にしましょう!!遠慮なくドシドシご参加ください!!
なお,このメールを皆さんのお近くの興味・関心のある方に
ご転送いただければ幸いです.
皆様にお会いできるのを楽しみにしております.
どうかよろしくお願い致します.
本企画についてのお問い合わせは,
(jset-wakamono2011@list.waseda.jp)までお願い致します.

■日時
9月18日(日) 開場(受付開始) 20:30 開始 21:00 (23:00終了)
■場所
庄や 南大沢店 (南大沢駅前)
東京都八王子市南大沢2-3 ファブ南大沢2F(TEL 042-678-4161)
http://r.gnavi.co.jp/e515322/
■会費
社会人4000円 学生2000円
■ウェブサイト 
http://labs.m-mode.net/wakamono/
■申し込み方法
ウェブサイト下「ENTER お申し込みフォームはこちら」からお申し込みください
■参加資格
自称ワカモノ!であればOKです.
教育工学会がはじめてでお友達がいない、という方も,ご参加下さいませ。
きっと知り合いがぐんと増えますよ!
なお、ワカモノの大宴会は有志のボランティアに
よって運営されています。不手際などあるかと思い
ますが、ご理解いただければ幸いです。
●情報発信中!!
Mixi Learning of Tomorrow コミュニティー
http://mixi.jp/view_community.pl?id=2668705
(以下、敬称略/順不同)
■代表
瀬戸崎典夫(早稲田大)
■副代表
池尻良平(東京大)
■会計・総務・当日受付
大山牧子(京都大),遠海友紀(関西大学),荒優(東京工業大)
■会場・誘導
上西秀和(東京工業大),木村充(東京大),井ノ上憲司(熊本大),渡辺雄貴(首都大),松河秀哉(大阪大)
■Web管理
重田勝介(東京大),福山佑樹(早稲田大)
■広報
堀田龍也(玉川大) ,山本雅之(ジャストシステム),森田裕介(早稲田大),岩崎千晶(関西大学),藤原康宏(岩手県立大),山口悦司(神戸大),西森年寿(大阪大),今井亜湖(岐阜大),中原淳(東京大),村上正行(京都外大),望月俊男(専修大),根本淳子(熊本大),林敏浩(香川大),谷塚光典(信州大),亀井美穂子(椙山女学園大),尾澤重知(早稲田大),寺嶋浩介(長崎大),稲垣忠(東北学院大),光原弘幸(徳島大),松浦健二(徳島大),深見俊崇(島根大),小尻智子(関西大),八重樫文(立命館大),中澤明子(東京大),歌代崇史(北海学園大),林一雅(東京大),高木正則(岩手県立大),御園真史(島根大),藤本徹(東京大),椿本弥生(公立はこだて未来大),益川弘如(静岡大)

PCカンファレンス 2011(8/6-8)での登壇予定

 近々二つの学会の大会で登壇予定がありますのでお知らせしておきます。
 一つ目は、8月6日~8日に熊本大学で開催される、コンピュータ利用教育学会(CIEC)のPCカンファレンス2011です。
http://gakkai.univcoop.or.jp/pcc/2011/
 まず、初日(8月6日)の「メディア環境と学び」についてのシンポジウムでパネリスト登壇します。

(以下、大会ウェブサイトから転載)
【シンポジウム1】「メディア環境と学び その変容と多様化—教育イノベーションの隠れたイシューを俯瞰するー」
 本シンポジウムでは,全体会基調講演「教育イノベーション第3期に向けて〜メディア環境の変容と多様化の中の学びに関するイシューを整理する〜」を受けた形で開催いたします。
 すなわち,急速に進展するメディア環境の変容と多様化を俯瞰的に見つつ,そのマクロなイノベーションの流れが教育に及ぼす影響を「教育イノベーション」の動きととらえ,そこに潜む多様なイシューについて多様な角度から議論し,多様な意味を抽出しようとする試みです。
特に,以下のイシューについて焦点を合わせたパネルセッションを予定します。
電子書籍
オープンエデュケーション
ソーシャルメディア(とマスメデイア)
 これらの進展に伴う,多様化する「知のあり方」について,メディア活用能力の育成から情報リテラシーや情報倫理といった「教育・人財育成」について,さらには「産業政策や文教政策」について等々,その変容から多様化まで考察を行う予定です。
パネリスト
 熊坂 賢次(CIEC理事:慶應義塾大学 環境情報学部教授)
 高田  仁(九州大学 経済学研究院産業マネジメント部門准教授)
 花島 誠人(財団法人 地域開発研究所 主任研究員)
 藤本  徹(東京大学 情報学環 特任助教)
モデレータ
 妹尾 堅一郎(CIEC会長:東京大学 知的資産経営総括寄附講座特任教授)
—-
次が最終日(8月8日)に「マイケル・サンデル教授「白熱教室」のスタイルを検討する」というテーマのセミナーでパネリスト登壇します。

【セミナー3】「マイケル・サンデル教授「白熱教室」のスタイルを検討する-講義形式の限界と可能性の再確認-」
 ハーバード大学のマイケル・サンデル教授が行う「正義論」の授業は,NHK教育TVでの放映を切掛けに,日本に「白熱教室」の一大ブームを起こしました。書籍は70万部を超える売り上げを記録し,さらに関連・類似番組や書籍の発刊を促しています。
 本セミナーは,その授業内容(政治哲学)そのものに踏み込むのではなく,その授業スタイル(インタラクティブな講義形式)について,授業形態論・モデル論の立場から検討・考察を加えるものです。
 この「白熱授業」の背後には,実は,TA(ティーチングアシスタント)の存在や,リーディングス(論文集)といった教材・教育支援環境が潜んでいます。それらを含め,この授業を多様な角度から評価し,それを起点に講義形式の限界と可能性について考察を進めたいと考えています。
 授業法のあり方を考えたい方々に多くご参加をしていただきたく思います。
パネリスト
 伊藤 洋典(2011PCカンファレンス実行委員長:熊本大学 法学部教授)
 北村 士朗(CIEC理事:熊本大学 教授システム学専攻准教授)
 長岡 健(CIEC理事:法政大学 経営学部教授)
 藤本 徹(東京大学 情報学環特任助教)
モデレータ
 妹尾 堅一郎(CIEC会長:東京大学 知的資産経営総括寄附講座特任教授)
—-
 このサンデル教授の話については、7日午後の分科会発表の妹尾堅一郎先生の発表の共著論文を書きました。こちらは登壇しませんが、会場にベンチ入りしてます。
—-
マイケル・サンデル教授「白熱教室」の授業法 ~講義形式の可能性と限界等を考察する~
米国ハーバード大学のマイケル・サンデル教授が行う授業は、多くの人にとって、退屈な授業の代名詞のように嫌われがちな「教員からの一方的・知識伝授型・大教室講義」のイメージを変えさせた。一般視聴者を惹きつけたこと、難解とされる政治哲学に親しみをもたせたこと、教授の書籍がベストセラーになると共に関連・類似の書籍・番組が追随したこと等、いわゆる「白熱教室」現象を多くの国々に巻き起こした。この授業は、一般的な知識伝授型あるいは情報伝達型の講義とは異なり、学習者を議論に引き込み、気づき・学び・考えさせるインタラクティブなものである。また、事前/事後に学生が関連知識を得るための教材提供やティーチングアシスタントを活用した運営体制が背後にある。本報告では、大教室でこのような「講義」を可能にする授業法全体の構成や運営を俯瞰すると共に、その可能性と限界等、授業法における意味を考察する。
登壇者:妹尾 堅一郎(東京大学)
共著者:藤本 徹(東京大学)

高校2年生の頃のこと

 ここしばらく、高校2年生向けにFacebook上で実施するオンラインサマーキャンププログラム「Socla」の仕込みに追われています。
http://www.facebook.com/BEAT.Socla
 そのせいもあって、高校時代に自分はどういう感じで過ごしていただろうか、とふと仕事帰りに考えながら歩いていることが最近よくあります。というのも、仕事帰りに聴くiPodのプレイリストに90年代前半の作品を多くいれているせいで、音楽とともによく当時のことを良く思い出すのです。
 高校生だった当時は、ちょうどバンドブーム真っ最中でしたが、その頃好きだったのは、Mr.Big、Winger、Extreme、FireHouse、Steelheart・・などのアメリカンなハードロック勢と、あとは北欧やドイツの・・・と濃いところをあげていけばきりがない感じです。
 その頃は、将来どうなるかなど訳も分からず、大学もイメージで選んで、あとはとにかく東京に出てこれればいいやくらいに考えていたように思います。田舎の高校ではどういう選択肢があるかもよくわからず、実際、進学した慶應SFCも浪人で東京に出てきてから初めて知ったような状況でした。将来を考える手がかりもなく、ロールモデルにできる大人にもうまく出会えず、どこか空回りして過ごしていたような感覚が残っています。
 そんなことを思い出しつつ当時の音楽を聴きながら、今準備しているプログラムのような機会を、当時の自分が得られたらどうだったろうと考えました。どんなテーマで将来を考えたかわかりませんが、普段は考えないようなことを考えるきっかけにできたのかな、という気がします。
 今の高校生はもっと情報にアクセスしやすく、当時の自分とは状況も違うところがありますが、心のどこかで、あの当時の自分のような高校生が、もっとポジティブに将来のことを考える手がかりや一緒に考えてくれる存在を得てほしいという思いがありますし、そういうプログラムをお届けしたいと思っています。
 今回のプログラムに参加する高校生の学びを支えてくださるボランティアサポーターをFacebook上で募集したところ、すぐに予定数を超える応募をいただきました。皆さんの参加に向けた抱負を拝見すると、皆さんそれぞれに、今の高校生に何か手を差し伸べられる存在となることの意味を大切に考えてくださっている様子が伝わってきます。
 関わる人それぞれに、将来を考える高校生の助けになることへの思いがあり、その思いをつなぐ役割としてFacebookのようなソーシャルメディアが機能することになるのでしょう。学校という組織は、社会に対して子どもたちを守るために保守的になりがちで、こうしたソーシャルメディアを率先して利用しにくいところがあります。そのため必ずしもその生徒が在籍する学校自体が主体とならずとも、その周辺で学校の教員や親が安心できるようなソーシャルメディア利用の形を確立することが重要であり、これからの情報社会を生きていく子どもたちのために必要なことだと思います。このプログラムの試みが、その糸口になるようにがんばって取り組みたいと思います。

5年間のキャッチアップ

 新しい職場に勤め始めて2週間余りが過ぎました。今日ようやく新しい名刺が届いたり、IDカードの発行待ちだったり、仕事の仕込みに追われて机周りの整理が全然追い付いてないままの状態だったりと、落ち着く間もなく端から仕事を片付けるうちに一日が過ぎていきます。忙しいと言っても苦痛ではなくて、良い環境で力いっぱい研究ができるということがとてもありがたく、どこをとっても充実した楽しい仕事の時間を過ごしています。
 今日は同じ東京大学所属の同僚となった中原先生のお誘いでランチをご一緒してきました。中原さんに初めてお会いしたのは彼が東大に完全に移る前で、たしか2005年に一時帰国した時だったと思いますが幕張のNIMEでお会いしました。そして、僕の現所属のBEATが主催するBEATセミナーに呼んでいただいたのが2006年夏なので、ほぼ5年前のことです。呼んでいただいた当時、そういえばこんなことを書いていました。
http://www.anotherway.jp/archives/000726.html
 彼はもう、僕が当時予想した以上のペースで着実に自分の研究分野を切り拓いて、オンリーワンな研究者キャリアを歩んでいて素晴らしいことです。BEATセミナーの時以降も、何度か学会の会場でお会いすることはあったのですが、二言三言話す程度でなかなかゆっくり話す機会もないままだったので、今回久々にゆっくり話せる機会でした。
 いつも中原さんと話す時に面白いなと思うのは、普通は誰かとしばらくぶりに話をする時は、会ってすぐの話し始めはエンジンがかかるまで、かみ合わせを整える時間を経て調子が上がってくるわけですが、中原さんと話す時はなぜかすぐにトップギアに入って、しょっちゅう会って話す相手と話すような感じがすることです。これは僕側の感じなので、中原さんからは違った感じを持たれていると思いますが、そういう感じで話せる人は少ないので、つい話し込んでしまいます。
 今回は5年分のキャッチアップなので、話したいことがたくさんあってあれもこれも話したかったんですが、昼飯の間だけではとても足りずに、そのまま研究室まで押しかけてしまいました。結局、ごく近況の話や職場環境の話を一通り話したら時間切れという感じで、研究の話でいろいろお聞きしたかったことは聞けず仕舞いでした。それで、オフィスに戻ってツイッター見てみたら、中原さんは昨日の僕の授業の話を読んで、落ち合う直前にリツイートしていただいてたようで、リツイートがすごいことになってましたが、出がけにチェックしそびれてたせいでその話題もできず仕舞いだったのも残念でした。
 この5年間でお互いの研究の見え方が変わっているところとか、もっと議論してみたいのですが、そういうことを語り尽くすにはもう少し時間が必要そうです。同じ大学でも別部局で仕事に追われているとなかなか話す機会を作るのも気を遣ってしまいます。用事を作ったとしても、たいがい用事を済ますくらいの時間しかないわけで、歳を取るにつれて学生の頃のようにとことん話す機会というのはなかなか作りづらくなってくるのかなと思います。でもまた次回、また中原さんとお話しする機会を作れるのを楽しみにしています。

コンテンツ開発のための非営利資金確保の話(2)

 引き続き、非営利資金確保の話題で、今度は少し視点を変えて教育機関関連の話。
 まず、米国のチャータースクールの資金調達は、不景気な中でも落ち込まずに順調に推移しているというニュース。米国のチャータースクールの運営には、寄付や助成が運費の重要な資金源になっているが、景気悪化で落ち込んだ2009年度にも、チャータースクールへの寄付は増加傾向を続けていたことが調査結果で明らかになった。オバマ政権の教育予算や非営利財団の支援を受けてチャータースクールの設置数は全米で軒並み伸び続けている。
Despite Tough Funding Environment, Charter Schools Gain Momentum
http://foundationcenter.org/pnd/news/story.jhtml?id=323200011
 次も同じような話で、2010年度(09年7月~10年6月)の米国の高等教育機関への寄付が11.9%伸びて回復傾向にあるという調査結果が公表された。National Association of College and University Business OfficersとCommonfund Instituteによる調査で対象となった850大学からの回答で、09年度に落ち込んだ寄付が戻ってきたことが示された。09年には予算不足で学部の閉鎖に追い込まれるなどの不景気なニュースが続いたものの、一番厳しい状況は脱した様子。11年度前半もよい状況は続いているようで、さらなる回復に期待しているというコメントも出ている。たしかに教育工学系の大学教員公募のアナウンスも一時期ぱったり途絶えていたのが、最近求人情報が流れているのを目にするようになったし、そういうところからも状況改善の様子は伺える。
Educational Endowments Grew 11.9 Percent in 2010, Study Finds
http://foundationcenter.org/pnd/news/story.jhtml?id=324000006
 最後におまけで、大学スポーツと寄付集めの話。僕の留学先だったペンシルバニア州立大学(ペンステート)のスポーツビジネスの稼ぎ頭であるアメフトチームの寄付獲得のニュース。
 ペンステートのアメフトチームを率いて45年、大学アメフト界の「生ける伝説」として知られるジョー・パターノ監督が昨シーズンで通産400勝を達成した記念として、ナイキが同大学図書館に40万ドル寄付を贈った。
http://live.psu.edu/story/51057
 パターノ監督は、大学図書館の支援に積極的で、寄付キャンペーンを行って図書館の拡充に長年貢献してきた。個人でもすでに大学に累計400万ドルも寄付しており、大学図書館への寄付集めに貢献したことを称えて、拡張した図書館は「Paterno Library」と命名されるなど、パターノ監督が活躍すれば大学の寄付につながる流れが確立されている。
 ペンステートの放送局PBSが開催したチャリティオークションで、パターノ監督が400勝目を挙げた試合で着用していたネクタイの直筆サイン入りが約1万ドルで落札され、この他にもパターノ監督のフォトフレームやアメフトチーム関連グッズが高額で落札されたというニュースもあった。ペンステートのアメフトは大学スポーツ興行として成功していて、毎試合10万人以上の観客を集め、卒業生向けサービスにもしっかり組み込まれていて、大学スポーツ興業に絡めた寄付集めのキャンペーンが定常的に行われている。
 ・・・と、いくつか米国の非営利財団の支援活動や教育機関への資金の流れのニュースを見てきた。単にバラマキ予算を確保する話ではなくて、みんな苦労して付加価値をアピールして、必要な活動資金を集める活動がその背景にある。営利的には採算が合わなくても、大事だと思う活動を支援するための資金を確保するために、賛同したくなるような事業の企画を練って、資金のある主体へ働きかけをしていることが伺える。
 こういう話を聞いても、アメリカは非営利の資金規模が大きいからいいよね、とか、日本の大学でもそんなのとっくにやってるよ、とか、日本の大学スポーツなんて貧弱だからね、などと片付けられがちなのだが、残念ながらそういうレベルの話で納得していてはいつまでたっても状況は改善しない。派手さに目を奪われて、背景や状況を考えずに表面的に枠組だけ真似てもうまくいかない。
 米国にもそういう状況がはじめからあったわけではないし、資金が回っているところでは、みんな激しく資金獲得競争をしている。ロビイストは山ほどうごめいているし、金持ちのところには寄付の要請ラッシュが押し寄せるので、一度資金をおさえたからと言って、その先ずっと安泰ではない。価値を打ち出せないところは厳しくなればバッサリ予算カットされるし、知恵を出さないで金出せと言っている人のところには金は回らないので、決して楽ではない。
 金融危機の影響で、当たり前に流れていた資金が詰まるという状況があちこちで起きたが、そのこと自体は必ずしも悪いことばかりではなかったと思う。当たり前に同じルートからお金が入ってくると、そのルートからしかお金を確保できないと思ってしまいがちだし、気が緩みがちなのが人の性分だ。米国にももちろん「人は低きに流れる」状況は普通にあるし、放っておけば腐敗も起きるから、それを前提にした評価システムが組まれている。
 経済が悪くなって研究や活動のための資金が足りないと嘆く向きはあるわけだが、それは既存のルートが細っていてパイが小さくなっているから仕方がない。外に目を向けて、知恵を絞って付加価値を示していけば、まだまだやりようはあるわけで、その努力をやり尽してはいないと思う。少なくとも自分自身への戒めとしては、どんな立場になっても不遇をあれこれ言い訳をする前に、他にやれることはないか、もう一歩可能性を探るだけの真剣さは持ち続けたい。

コンテンツ開発のための非営利資金確保の話(1)

 後で書こうと思っているうちに少しネタが古くなってしまったけど、先日たまたま非営利財団の助成公募や寄付で興味を引くニュースがいくつか目に触れたので、興味を持って少し読み進めてみた。
 まず、フォード財団が次世代のドキュメンタリー映画振興に5年間で5000万ドル助成というニュース。年間1000万ドル(約8億2000万円)を助成し、人権や権利保護など社会問題を題材としたドキュメンタリー映画制作者の発掘と支援を行うとのこと。
 この規模でどれだけのことができるのかイメージがわかないし、この助成事業単体では波及効果は弱いかもしれない。しかしこれが食えずにいる腕のよい制作者がヒット作を出すきっかけになるかもしれないし、ドキュメンタリー映画制作が地域振興や他の社会活動事業によい効果をもたらすことも期待できそうだ。
 こういう取り組みは、予算を使い切るまでやったらバイナラ、という意識の人が動かしていてはダメで、継続して行うための仕組みづくりを合わせて進めるためのシード資金であることを理解している人とやれるかどうかにかかっているだろう。
Ford Foundation Announces $50 Million for Documentary Film Initiative
http://foundationcenter.org/pnd/news/story.jhtml?id=322100022
 次は、ナイト財団がフィラデルフィアのアート振興に3年間で900万ドルの助成を行う一環で行われている企画コンテストの話題。フィラデルフィア地域のシアターやミュージアムが特別展示やイベントの企画を出して、63件が最終選考残ったというアナウンスが出ていた。地域の文化芸術振興の取り組みに大手の財団が結構な規模の支援をしている。
Knight Foundation Announces Finalists for 2011 Knight Arts Challenge Philadelphia
http://foundationcenter.org/pnd/news/story.jhtml?id=322900018
 同じく地域の文化振興事業で、ドライハウス財団がシカゴのシアターやダンスカンパニーへの助成公募のアナウンス。シカゴ地域で活動する年間予算15万ドル以下の規模の小劇団やダンスカンパニーを対象にしており、最低1回はシカゴ市内で公演すること以外は用途に制約なしで、最大1万ドルが助成される。教育活動やアマチュア劇団の支援ではなく、プロの商業劇団への支援に焦点を当てている。
 こちらはマッカーサー財団の助成公募で確保した資金を活用している、とあるので、フィラデルフィアの方と同じく、全米規模の大手非営利財団の支援を受けて個別課題に取り組む財団が地域ニーズに合った支援枠組を提供するという構成になっているのだろう。自分のところの基金だけでは賄えない規模の事業でも、賛同してくれる外部の組織から集めてくるという形で実施していることが伺える。
Richard H. Driehaus Foundation Invites Applications From Chicago Small Theater and Dance Companies
http://foundationcenter.org/pnd/rfp/rfp_item.jhtml?id=324200016
 次は、小規模な個別の企画普及の取り組みで、多額の予算がその後どういう事業企画に配分されているかという話。クーリッジ・コーナー・シアターとスローン財団が科学技術啓発のための映画観賞会企画を展開する劇場への助成を行うというニュース。マサチューセッツ州の非営利劇場「Coolidge Corner Theatre」が開催している「Science On Screen」を各地の非営利劇場で実施するための企画に7000ドル×8件の公募を行っている。
 Science On Screenは、科学技術を扱った映画の上映と専門家によるレクチャーをセットにしたイベント。科学技術と行っても「ファイトクラブ」を生物学者と見る、「ハッカー」をゲーム研究者と見るというものもあるので結構幅広い感じ。構成的にはテレビでよく採られている手法で、たとえばヒストリーチャンネルでも、古い戦争映画を放映する時に戦史家が解説入れたりしているので珍しくないが、トークライブイベントとして、専門家と一緒に映画を見て、語り合える場がセットになった上映会、というところに価値がありそうな話。
Coolidge Corner Theatre and Alfred P. Sloan Foundation Announce National Science on Screen Initiative
http://foundationcenter.org/pnd/rfp/rfp_item.jhtml?id=324200014
Science On Screen
http://www.coolidge.org/science/
 ネタがもう少しあるので、いったんここまでにして、次回に続く。。

2011年の抱負など

 だいぶ遅くなってしまいましたが、今年もよろしくお願いいたします。
 今年は、博論に苦しみながら先行き不透明な状態で過ごしていた昨年の冒頭よりもはるかに希望に満ちた新年を過ごしています。これまで以上にどんな1年になるかとても楽しみです。4月からは自分の活動の幅が広がる多くのチャレンジができそうです。今までやってきたことがどれだけ通用するか、どんな貢献ができるか試しつつ、さらに腕を磨いていきたいと思います。
 具体的なタスクは新年度からの状況を見て優先順位を決めていく必要がありますが、今年の方針としては次のようなことを考えています。
「場数を踏む」
 とにかく新ネタを書くためにインプットを続けること。既存のネタのブラッシュアップを図ること。そして、小規模なライブ活動で腕を磨き続けること。質を語るにはまず数をこなして経験値を積み上げていくことが不可欠なので、教育と研究の両面で活動のペースを上げていきます。具体的には、昨年担当した東京工芸大と慶應SFCの授業のバージョンアップ、新たなワークショップやデザイン活動に着手すること、学会発表機会を増やすことです。たとえば、昨年試しにやってみた「シリアスゲームデザインワークショップ」が面白くなってきたので、もっと磨いていって次のレベルに高めたいと思います。
「急がば回れ」
 自分の生き方の基本姿勢として「善き手抜き主義」というのがあって、義務的なタスクはなるべく効率よく、自分がやらなくてよいことをいかにやらずに済ませるか、というようなことを信条にしてきたところがあります。これはこれで処世術としてはいろんな局面を切り抜けるために地味に機能してきましたが、その反面じっくり腰を据えてやるべきことが疎かになったままになった部分も結構あって、それが弱みとなっている部分も認識しています。一つには、基礎文献の読み込みや考察の徹底ができてないところが足を引っ張っているので、そこをリカバーしていくことが今年の課題です。ただ読むだけだと続かないので、アウトプットと関連付けて読み進めていくことを自らに課したいと思います。
 この点、新年早々に一つテーマが見つかりました。正月休みに90年代中盤のマルチメディア学習やエデュテインメントの開発事例や文献をいくつかあたっていたのですが、ゲームデザイン的にも研究の論点的にも、今シリアスゲームの文脈で議論されていることは当時盛り上がった時にかなり議論されていることに改めて気づきました。前に読んだ時は理解が浅かったのだなと思い知ったのと同時に、読み直すことで得るものが大きそうだと感じました。
 教育工学分野では新しい技術が出てくるたびに同じような無駄な研究が繰り返されているという批判がありますが、実際、技術の目新しさだけ追っていると見えてこないことがあります。また、研究分野の違いや関わる人の入れ替わりのせいで、以前の研究のせっかくの知見が活かされずに埋もれてしまっているものもあります。新しい技術を基点に、古い文献に立ち戻って捉え直すことで、以前は越えられなかった壁を越えることのできる研究ができるのではないかと思います。こういうことは前からやりたいと思いつつも自分の手に負えなそうで二の足を踏んでいましたが、ようやく着手する意志が持てるくらいには自分のベースができてきたというところでしょうか。今年一年かけて、何か世に問えるようなものを準備していきたいと思います。
「海外に出続ける」
 博論執筆に入ってから2年あまり、海外での活動が不活発になっている状況を打開したいと思います。当面は、海外の学会へ論文投稿と発表各一本を目標にします。まずはウォーミングアップとして、今年は久々にシリアスゲームサミットに参加してきます。他にもチャンスがあれば出てきたいと思います。留学先だったこともあってこれまで主戦場はアメリカだったのですが、今後はアジア向けの活動が増えてくるのかなと予想します。アメリカで活動していたことが呼び水になってアジアでお声がかかることが何度かあったので、良いサイクルができるように海外を見据えた活動を続けたいところです。
 他にも考えるうちにやりたいことはいくらでも出てくるのだけど、あれもこれもはできないので、地道に成果につながることをやってくかなという感じです。何も成果と関係ないこともたくさんあって、たとえばいつかヒストリーチャンネルとディスカバリーチャンネルの好きな番組を見て丸一日過ごしたいのですが、そういうことは病気した時かリタイアしてからの話になりそうです。
 それと、今のままではゲーム研究者の名折れになるので、ゲームはもう少しプレイ時間を増やしたいです。Red Dead Redemption とか、StarCraft IIとか研究に関係なくやってみたいゲームもいっぱいあるんですが、Civilization Vに手を出せれば上出来でしょう。まずは研究につなげやすそうなKinectを必須課題にして、Restaurant Empire IIとかいくつかSim系を中心に試してみたいタイトルに手を出せるようにがんばります。
 当ブログも徐々に更新頻度が減ってきてますが、その時々で考えたことや近況など書きながら地道に続けていきたいと思います。今年も当ブログをどうぞよろしくお願いいたします。