論文「サービスとしてのゲーム」が掲載されました

 情報科学技術協会の会誌 「情報の科学と技術」最新号の特集「サービスとしてのゲーム」に、依頼論文として「サービスとしてのゲーム」という論文を寄稿しました。刊行されたとの連絡が入りましたのでお知らせします。
 内容としては特集の総論的な位置づけで、「サービスとしてのゲーム」を切り口として、ゲームの要素やゲームの社会的利用における考え方として考慮しておきたい点を解説しています。近年のゲーム産業におけるゲームのサービス化と、ゲーミフィケーションの流れを対比して論じて、図書館サービスの文脈でサービスとしてのゲーム導入を3つのレベルに分けて簡単に検討しています。
 概要の一行目からいきなり校正もれで「論した」になっててがっくりきましたが、内容はしっかり書きました。ご関心のある方は、下記から抜刷のPDFファイルをダウンロードできますのでどうぞご覧ください。
藤本徹 (2012) サービスとしてのゲーム. 情報の科学と技術, 62(12), 502-507.
Download (PDF)

テレビを双方向なメディアと考える世代

 今週12月1日土曜日に、BEATセミナー「スマートテレビが変える家庭学習」を開催します。
 この告知も兼ねつつ、ついでにこのテーマに関連して最近感じていることを書いておきたいと思います。
 これまでテレビは、送り手が放送して視聴者は受信する一方向メディアの代表例で、教育メディア研究の分野では、双方向性が売りのマルチメディア教材と対比して扱われる古いメディアの象徴のような存在でした。部分的にはだいぶ以前から、デジタル衛星放送や地デジデータ放送などのサービス化の試みとともに双方向な要素がサービスに追加されていますが、基本的にテレビとは「受動的に情報を受信するメディアである」という認識が一般的でした。
 そのような認識がそろそろ本格的に変わろうとしているのかなという兆しがここ何年かの動きとして出てきています。たとえば、これまでに通信系、放送系それぞれにテレビのインタラクティブなサービス提供の新たな試みがおこなわれていることに加え、マイクロソフトTVやAppleTV、GoogleTVのように、従来の放送通信業界ではないテレビ向けのサービスプラットフォーム提供者がでてきています。
 興味深い例として、先月、ミシガン州立大学で開催されたゲームと学習に関する国際会議の「Meaningful Play 2012」で、「Researching Playful Learning in Two-Way TV」という研究発表がありました。米国のマイクロソフトリサーチで現在進められている、Kinectを利用した子どものインタラクティブな教育テレビ番組への反応に関する研究が紹介されていました。Kinect用に制作された「Kinect Sesame Street TV」や「Kinect Nat Geo TV 」を3~5歳の子どもと母親に視聴してもらい、その親子のテレビの前での振る舞いや対話の様子を調査するというものです。
 調査で収録されたビデオには、最初は母親に促されてこわごわ手足を動かしている子どもが、すぐに要領を得て、セサミのキャラクターと一緒に遊びながら視聴するという行動に変わっていく様子が記録されていました。この被験者の子どもたちは、テレビのキャラクターが自分に反応するという新たな経験を得ながら、上の世代には存在した「ゲームとテレビの境界」がなくなった世界を生きていくことになると思います。
 似たような話で、ついこの間まではパソコンのモニターは触っても操作できないのが常識だったので、コンピュータの苦手な中高年にパソコンの操作を教えていて「ここをクリックして」と画面を指差すと、そのまま画面を押そうとするという笑い話がリテラシーの低さを表すエピソードとして語られていました。しかし、iPadなどのタブレット端末やスマートフォンの普及で、画面を直接触って操作するのが当たり前の世界で育った子どもたちからすると、今や触って反応しないパソコンのモニターの方が変だという認識に変わりつつあるのを私たちは日々目にしています。
 こうした変化はこれまでも、その昔、観音開きの戸棚に有難く収まっているテレビを一家みんなでかしこまって視聴していた時代から、各部屋で一人一台、さらにパソコンでもモバイルでも視聴できる時代になり、もはや後戻りできないほどに人々の番組視聴行動の個人化が進んだことや、別の似たような話で、携帯電話を一人一台持つようになり、女の子の家に電話をかけると必ずその子の親が出るという障壁をどう乗り越えるかが課題だった時代の恐怖経験が、すでに過去のものとなったといった話も関連しています。
 今回のセミナーでも、登壇者の方々から各社の最新事例を交えてこれまでの取り組みについてご紹介いただきますが、これらの取り組みを見ていると、現在進行しているスマートテレビ、インタラクティブテレビの展開は、ようやく「放送と通信の融合」と言われながら実現しなかった世界がようやく到来しようとしているのかなという気がしてきます。双方向なテレビのサービスが家庭に普及した中で育った子どもたちは、一方向メディアの代表としてのテレビという私たちの世代のメディア認識とは異なる前提で生きていくことになるでしょう。
 今回のセミナーは、そのような「未来のテレビ像」を垣間見ながら、これからの子どもたちの家庭学習やインフォーマルな学びのあり方についてディスカッションする機会となればと思います。皆様のお越しをお待ちしてます。

国際会議のE-LearnとMeaningful Play で発表してきます

 週明けから2週間、北米出張に行ってきます。
 まず一つ目は、カナダモントリオールで10月9~12日に開催される E-Learn2012で、東京大学BEATで進めているソーシャルラーニングプログラム「Socla」の昨年度の成果をプロジェクトチームを代表して、以下の論文を発表してきます。カナダ初入国なので楽しみ半分、プレゼンが気を抜けない状況にあって、かなりプレッシャー増量気味といったところです。
Yamauchi, Y., Fujimoto, T., Takahashi, K., Araki, J., Otuji, Y., and Suzuki, H. (2012) Impact of Using Facebook as a Social Learning Platform to Connect High School Students with Working Adults. Proceedings of E-Learn 2012. .Montreal, Canada.
 そのあと、次の会議の合間にニューヨークに視察で行ってきます。学校全体がゲームのクエストのようにデザインされたカリキュラムを導入した公立チャータースクールのQuest to Learnや、ニューヨーク大学のGames for Learning Instituteの研究についてなど調査してきます。
 せっかくニューヨークに行くので、ペンステート大での留学時代に博論副査でお世話になり、現在はニューヨーク大にいるDr. Chris Hoadlayに連絡したところ、せっかくだからなんか話してよ、という話になり、日本のシリアスゲームやゲームと学習についての話題で、90分のトークセッションをやるということに。何の準備もできてないのでなるようになれという感じですが、普通にヒヤリングに行くよりはいろんな人と知り合えて楽しいかなということで受けてしまいました。拙訳書の「テレビゲーム教育論」、「デジタルゲーム学習」の著者でニューヨーク在住のマーク・プレンスキー氏にも会って、先日出版された新作「Brain Gain: Technology and the Quest for Digital Wisdom」への反響など伺ってくる予定です。
 そして二つ目に、再来週はミシガン州のイーストランシングに移動して、ゲーム研究に関する国際会議、Meaningful Play 2012(10/18-20)で、昨年度BEATのプロジェクトで試作したゲーム型数学学習アプリの研究について発表してきます。
Fujimoto, T., Misono, T., Takahashi, K., Otuji, Y., Suzuki, H., and Yamauchi, Y. (2012) Designing a Game-based Social Application for Mathematics Education. Proceedings of Meaningful Play 2012. East Lansing, MI, USA.
 このカンファレンスは、隔年でミシガン州立大学で開催されていますが、毎回規模が大きくなっており、今年は基調講演6セッション、招待講演12セッション、パネル・ラウンドテーブル12セッション、ワークショップ4セッション、94件の論文発表、20件のポスター発表、48件のゲームデモセッション、などと相当なボリュームです。このミシガン州立大学は、大学院でシリアスゲームデザイン認定プログラムを提供しており、シリアスゲーム研究者が集まった研究拠点を形成しています。初めて行くのでこちらも楽しみです。
 丸2週間の北米出張で、行く前にいろいろと下調べしていきたいと思いつつも他の仕事が詰め詰めになってしまって大した準備もできずに突入せざるを得ないのが苦しい状況であります。途中で少し合間にゆっくりできるかなぁという願望空しく、あっさりそういう状況でもなくなってきたので、まずは何とか無事に役目を果たしてきたいと思います。
E-Learn 2012
http://www.aace.org/conf/elearn/
Meaningful Play 2012
http://meaningfulplay.msu.edu/

日本教育工学会全国大会での発表予定など

 8月末~9月にかけて講演や研究発表をいくつか予定していますのでお知らせします。
まず、次の二つについては、シリアスゲームジャパンの方に詳細お知らせしてますのでご参照ください。
http://seriousgames.jp/
8月30日:wellbeing研究会「ゲームを実生活で活かす~シリアスゲームの健康福祉分野での応用~」セミナー@仙台フィンランド健康福祉センター
9月21日:TGSフォーラム2012ゲーミフィケーションセッション@幕張メッセ
9月はもう一つ大きなイベントとして、9月15~17日に長崎大学で開催される日本教育工学会(JSET)全国大会で、研究発表とワークショップを行います。
 一つ目は、大会最終日の9月17日(月)13:15-15:45「課題研究9:ゲーム・シミュレーションを利用した教育・学習支援」のセッションで、昨年に引き続いてゲームの教育利用研究に関する調査結果の報告です。今回は効果測定や評価方法について焦点を当てて調査しました。
K9-教21-01 ゲームを利用した学習の効果とその評価方法に関する検討
◎藤本 徹 [東京大学], 山田 政寛 [金沢大学]
詳細:
http://www.jset.gr.jp/taikai28/program/program_session.php?tp=K

 二つ目は、発表時間は前後しますが、大会二日目の9月16日(日)12:30~14:00 のワークショップ枠で、「 次世代専門人材養成プログラムのデザイン」と題したワークショップを行います。こちらは直接ゲームの話ではないのですが、ゲームデザイン的な要素を盛り込んだ内容です。タイトルが硬すぎなのですが、頭に(楽しい)とか(お笑い)を付けるとちょうどよい具合のリラックスして参加できるセッションを企画しています。お昼の時間帯ですので、力を抜いて気軽にご参加ください。
WS5 次世代専門人材養成プログラムのデザイン
9月16日(日)12:30~14:00 会場:教育32
主催者:藤本徹(東京大学)
企画概要:この10年ほどの間に、知識社会における高度専門職業人の養成への期待の高まりに応えるべく、さまざまな領域の専門職大学院が設立された。しかし、当初の期待に十分応えられずに縮小、廃止されるなど、停滞や混乱に直面しているところも少なくない。 そこでは教育プログラム開発に必要な理論枠組や、デザインの知識が十分に活かされていないという問題も影響していると思われる。本ワークショップでは、SchankのStory-Centered Curriculumや、PerkinsのLearning by Wholeのデザイン枠組を用いて、専門職大学院等で提供される専門人材養成プログラムの機能や意味を検討し、 これからの専門人材養成プログラムのデザインやプログラムの提供価値を議論するセッションを行う。
詳細:
http://www.jset.gr.jp/taikai28/program/program_w.php#five

 もう一つ、大会初日9月15日(土)15:30-18:10の「ソーシャルメディア」セッションで、東京大学BEATで実施したSoclaプロジェクトの研究発表もあります。こちらは昨年度の活動についての報告です。
1p-全203-05 Facebookを利用したキャリア学習環境
○山内 祐平 [東京大学], 高橋 薫 [東京大学], 藤本 徹 [東京大学], 荒木 淳子 [産業能率大学], 大辻 雄介 [ベネッセコーポレーション], 鈴木 久 [ベネッセコーポレーション]
詳細:
http://www.jset.gr.jp/taikai28/program/program_session.php?tp=1a

それと最後に広報協力でお知らせですが、16日には毎年恒例のワカモノ飲み会が開催されます。
JSETに参加されるワカモノの方、ぜひご参加ください。
==========================
今年もやってきた
Learning of Tomorrowな自称ワカモノタチの大宴会2012!!
日時:9月16日(日) 開場(受付開始)20:30 開始21:00(23:00終了)
場所:いざけ屋 昭和町通店
  長崎県長崎市花丘町1-24 2F(TEL:095-849-0427)
申し込み締め切り:8月31日(水)
申し込みサイト:http://labs.m-mode.net/wakamono/
==========================
今年もこの季節がやってまいりました!!
例年100名以上の自称ワカモノがお集まり頂き、
大盛況の例のヤツを今年も企画しました!!
「Learning of Tomorrowな自称ワカモノの大宴会2012」
知り合いも増えれば学会もますます楽しくなるものです。
より楽しい、実りある学会にしましょう!!遠慮なくドシドシご参加ください!!
なお、このメールを皆さんのお近くの興味・関心のある方に
ご転送いただければ幸いです。
皆様にお会いできるのを楽しみにしております!
どうかよろしくお願い致します。
本企画についてのお問い合わせは,
(jsetwakamono gmail.com)までお願い致します.

■日時
9月16日(日) 開場(受付開始)20:30 開始21:00(23:00終了)
■場所
場所
いざけ屋 昭和町通店 長崎県長崎市花丘町1-24 2F(TEL:095-849-0427)
地図(http://www.hotpepper.jp/strJ000577002/map/
■会費
社会人 4000円 学生 2500円
■ウェブサイト
http://labs.m-mode.net/wakamono/
■申し込み方法
ウェブサイト下「ENTER お申し込みフォームはこちら」からお申し込みください
■参加資格
自称ワカモノ!であればOKです。
教育工学会がはじめてで知り合いがいない、という方もご参加下さいませ。
知り合いがぐんと増えますよ!
なお、ワカモノの大宴会は有志のボランティアによって運営されています。
不手際などあるかと思いますが、ご理解いただければ幸いです。
■情報発信中!!
Facebook
https://www.facebook.com/JSETwakamono
Mixi Learning of Tomorrow コミュニティー
http://mixi.jp/view_community.pl?id=2668705
■幹事団(以下、敬称略/順不同)
代表
池尻良平(東京大)
副代表
大山牧子(京都大)
会計・総務・当日受付
遠海友紀(関西大),伏木田稚子(東京大),瀬戸崎典夫(早稲田大)
会場・誘導
井ノ上憲司(熊本大),渡邊文枝(早稲田大)木村充(東京大),森裕生(早稲田大),重田勝介(東京大)
Web管理
渡辺雄貴(首都大),福山佑樹(早稲田大)
広報
堀田龍也(玉川大),山本雅之(ジャストシステム),森田裕介(早稲田大),岩崎千晶(関西大),藤原康宏(兵庫医科大学),山口悦司(神戸大),西森年寿(大阪大),今井亜湖(岐阜大),中原淳(東京大),村上正行(京都外大),望月俊男(専修大),根本淳子(熊本大),舟生日出男(創価大学),林敏浩(香川大),谷塚光典(信州大),亀井美穂子(椙山女学園大),尾澤重知(早稲田大),寺嶋浩介(長崎大),稲垣忠(東北学院大),光原弘幸(徳島大),松浦健二(徳島大),深見俊崇(島根大),小尻智子(関西大),八重樫文(立命館大),中澤明子(東京大),歌代崇史(北海学園大),林一雅(東京大),高木正則(岩手県立大),御園真史(島根大),藤本徹(東京大),椿本弥生(公立はこだて未来大),益川弘如(静岡大),松河秀哉(大阪大),山田政寛(金沢大),藤川大祐(千葉大),上
西秀和(獨協医科大)

PCカンファレンス2012参加予定

 プロジェクトや研究発表の準備が立てこんでいない時期がない感じで推移していますが、気が付いたら前回の更新からもう2か月余りが過ぎていました。お知らせしたいことがたまっていますが、ひとまずは明日から開催の、PCカンファレンス2012での藤本出没予定をお知らせしたいと思います。
 まず、8月4日~6日に京都大学で開催されるコンピュータ利用教育学会(CIEC)のPCカンファレンス2012で大会初日(8/4)のシンポジウム「教育イノベーションとしてのゲーム:新しい教育哲学から実践までを考える」にパネリストとして登壇します。学会長の妹尾堅一郎先生をモデレータに、慶應義塾大学の武山政直先生、立命館大学のサイトウアキヒロ先生、バンダイナムコゲームスの一木裕佳さんとともに最近の教育分野におけるゲームやゲーミフィケーションの話題でディスカッションします。
 続いて、シンポジウムの後に開催される自主企画ワークショップの枠で、「モバイルゲーム型学習ソフトを利用した授業体験と利用方法検討ワークショップ」と題したセッションを行います。こちらは、ベネッセコーポレーションさんのご協力で、実際に中学英語の授業で実践されている先生にベネッセの「得点力学習DS」を用いた模擬授業を行っていただいて、参加者の皆さんとともに自身の教育現場での利用方法や利用の際に課題になる点を議論するという内容です。
 最後に、大会3日目の午前の分科会発表枠で、熊本大学の北村史朗先生の共同発表者として、「知財人財育成のための講師養成手法の開発と実践」と題した発表を行います。こちらは昨年度からサブで入らせていただいている、日本弁理士会アカデミーの「授業法」講座のこれまでの実践事例についての発表です。
以下、各セッションの概要です。これから京都に向けて出発します。
では、PCカンファレンスに参加される皆さま、現地でお会いしましょう。

続きを読む

近々の登壇・出演予定

 目の前の仕事を片付けていると一週間が過ぎていく日々を送っていて、日頃の行動ルーチンから外れることへのパフォーマンスの著しい低下を感じる昨今であります。お知らせしたいことがたまってきていたのですが、他の方がFBやツイッターで告知していただいているのをシェアするだけになってしまっているという拙い状況になってますので、近々参加する下記のイベント3件についてご紹介します。
 いずれのセッションも、お声掛けいただけるのは光栄で、参加できるのをとても楽しみにしています。すでにシリアスゲームもゲーミフィケーションも、海外での事例を一人では追い切れないくらいに拡大しているため、このような機会を活かしてキャッチアップするということも必要です。なにより、自分が選んだ分野のことを吸収できる機会というのは楽しいものです。
 それと楽しみな反面、マーケティング系セミナーなどのように、自分の専門ではない分野でもお鉢が回ってくる状況はあまりよくないなと常々思うところがあって、そろそろ僕が出張らずに済むようになってほしいなと思いつつ、なかなかそういう流れになっていない感があります。「私はゲームは専門ではないんですが、、」という枕を付けつつ、ゲームについて語れる研究者の方はそれなりにいらっしゃいますが、「私の専門はゲーム研究です」と正面切って言える研究者は相変わらず国内ではどの分野にも希少です。海外で起きているように、ゲーム研究で学位をとったり、いい研究をして社会で評価される若手研究者が次々に出てきて、この辺の仕事を請けてもらえるような状況に早くなればよいなと思いつつ、今はひたすら自分の立場でやるべき仕事に励む毎日です。
 ということで、下記のようなところで登場しますので、ご関心のある方はどうぞご参加ください。
—-
1. シリアスゲームに関するUstream報告会(5月29日)
 日程順でまず、5月29日の18時30分より、IGDA日本の小野代表とともに、Ustreamでシリアスゲームの欧州事情に関するトークライブを行います。
フランス・リール地方におけるゲーム関連企業・CGプロダクション・教育機関などの視察ツアーについてのご報告を小野さんから話題提供していただき、欧州のシリアスゲーム・ゲーミフィケーション最新事情についてディスカッションする予定です。
シリアスゲームの国際カンファレンス「e-virtuoses」
http://www.e-virtuoses.net/uk/home.html
に参加されるとのことで、カンファレンスの模様などを伺って、日米欧のこの分野の違いのようなところなどお話ししたいと思います。
開催概要:
「シリアスゲームの国際カンファレンス「e-virtuoses」Ustream報告会」
日時:
2012年5月29日(火) 18:30-20:00(予定)
Ustreamアドレス:
http://www.ustream.tv/channel/igda-test-1110
(予定)
出演:
小野憲史(IGDA日本) 藤本徹(東京大学)
主催:
国際ゲーム開発者協会(IGDA)日本
CLG(Community for Learning and Games)研究会
—-
2. 日経BP社主催「ゼロから学ぶゲーミフィケーション最新活用セミナー」(5月30日)
上記のセッションの翌日の5月30日は、日経BP社主催の「マーケティング最前線 ゼロから学ぶゲーミフィケーション最新活用セミナー」で、「概論・ゲーミフィケーションの姿をこうつかめ」と題して講演します。ゲーミフィケーションの国内事例などの面白そうなセッションが続いてますので、その前座でタイトルの通りに概論めいた話をしてきます。

セミナー開催概要:
「最前線 ゼロから学ぶゲーミフィケーション最新活用セミナー」
日時:2012年5月30日(水) 13:00~17:20
会場:JA共済ビル カンファレンスホール (東京・永田町)
主催:日経BP社
協力:IGDA日本(SIG-ARG)
受講料:19800円(税込)
セミナーの詳細・参加申込は、下記セミナー案内サイトをご参照ください。
http://expo.nikkeibp.co.jp/gamifi/

近況と「シリアスゲーム論」開講に向けたお知らせ

 新年度に入り、研究プロジェクトや授業の仕込みなどを進めています。ようやく昨年度の成果報告をしたと思ったら、息つく間もなく次の仕込みをしないといけない状況で、慌ただしく現職2年目に突入しました。
 今年の担当授業は、慶應SFCの非常勤から外れたので、前期の授業は東京工芸大ゲーム学科「シリアスゲーム論」のひとコマです。それともう一つ昨年の状況と大きく違うのは、翻訳案件を抱えていない分ずいぶん気が楽です(翻訳の仕事は本当にしんどいです)。
 これで少しは余裕をもって研究の時間に使えるかなと思いきや、本務のBEATのプロジェクト以外に、どれか通ればよいやと思って出していた3本応募していた外部資金の研究計画が3本とも採択をいただいてしまい、新規の研究プロジェクトとして実施することとなりました(うち2本は2年計画なのでまだ何とかなりますが、ちょうど適量の仕事が来ることはなかなかありません)。
 これだけでも授業が減った分の空きの分はとっくにあふれているわけですが、昨今のゲーミフィケーションへの関心の高まりとともに、セミナー講師のご依頼や個別のご相談などをいただくことが増えていて、ありがたくも悩ましい状況になっています(お断りせざるを得ないことが多いので胃が痛みます)。
 というところが近況で、ここから少し今年度の東京工芸大「シリアスゲーム論」に関するお知らせです。
今年度の「シリアスゲーム論」は月曜5限(16:40-18:10)で、来週4月16日より開講です。今年も聴講を(こっそり)オープンに受け入れてますので、ご希望の方はご一報ください(厚木キャンパスなので都心からはちょっと遠いです。ちなみに今年度までは厚木キャンパスで来年度からは中野キャンパスでの開講科目になるとのこと。)。
 授業内容の詳細はまたお知らせしたいと思いますが、ただいま昨年度より導入した「クエスト型授業」のバージョンアップの仕込みを進めています。この授業のねらいとして、次のように設定しています。
・ 従来のエンターテインメントにとどまらない社会的目的で開発・利用されるデジタルゲーム「シリアスゲーム」に関心を持ち、関連する知識をより深く学ぶ
・ シリアスゲームに自らの見識を持ち、将来クリエイターとしての自身の仕事に役に立つ知識を身につける
・ ゲームと社会のつながりへの関心を高め、社会のためになるゲームの開発を実際に経験する
 これらの学習機会をより楽しく、より密度の濃い形で提供するために、授業全体をゲームデザインの手法を取り入れた「クエスト型授業」として構成しているわけですが、その「クエスト」の工夫がこの授業の肝になっています。単にゲームっぽい世界観で呼び方を変えるだけでは学生はシラケるだけですし、見た目のゲームっぽさよりも、いかに意味あるチャレンジを提供できるかの方が重要だろうと考えています。
 昨年は、「意味あるチャレンジ」として実際に世の中で提供されているシリアスゲームやゲーム型の学習コンテンツの事例をターゲットにして、勝手に改善案を考えて提案するという課題を設定しました。対象の一つは、「自衛隊」のウェブサイトのキッズコーナーのゲームコンテンツで、学生たちからはなかなか鋭い指摘があったり、学生に対して関係者の方に丁寧なフィードバックをいただいたりして、とてもよい学習機会が生まれました。
 今年もさらにこうした実際に稼働しているゲームコンテンツや現実の社会問題を題材にしたゲーム企画を行っていきます。勝手にやるよりも、実際に想定できるクライアントがいる方がチャレンジも興奮度が増しますので、もし「うちのサイトで提供しているウェブサイトのゲームコンテンツを料理してほしい」とか「このテーマでシリアスゲームの企画を学生たちに考えてほしい」といった具体的なニーズをお持ちの方がいらっしゃっいましたら、可能な限りご協力できる形でクエスト化したいと考えております。(すでにとある電子書籍化予定タイトルや教材のゲーム化など、いくつか大ボス級のお題をいただいており、クエストとして仕立てているところです。)
 ご興味ある方は、tfuji (at) anotherway.jp まで気軽にお問い合わせください。
 以上、近況とお知らせでした。

本日のゲーミフィケーションUstイベントのお知らせなど

 ぼやぼやしていたら当日になってしまいましたが、本日1月25日19時より「ゲーミフィケーションパーティナイ」(ナイで止めてるのはワザとだそうですが)というUstイベントに出演します。

ゲーミフィケーションに関わる本の著者が一同に会す夜
ゲーミフィケーション・パーティナイ(Gamification Party Night)
http://www.s-dogs.jp/dgame/Event/radio01.html
主宰:Gamification Party Night実行委員会
日時:1月25日(水) 19:00~21:30
放送内容:
19:00~ オープニング・トーク
19:30~ プレゼンテーション「ゲーミフィケーションとは何か?」(井上明人)
20:00~ ディスカッション「ゲーミフィケーションを語りつくす!!」(藤本徹/井上明人/松井悠)
20:45~ ディベート「ゲスト vs Ustream視聴者」
21:20~ クロージング・トーク
ハッシュタグ:
#ゲーミフィケーション
Ustream中継:
http://p.tl/OcHT

 なお、時を同じくして、明日のクローズアップ現代でゲーミフィケーションが取り上げられるそうです。メディア批評家の濱野智史さんがコメンテーターとして出演されるそうです。
NHK「クローズアップ現代」(19時30分~19時56分):ゲームが未来を救う!?~広がるゲーミフィケーション~
http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/yotei/index.cgi
 なお、濱野さんは先日朝日新聞で拙訳書の「幸せな未来は「ゲーム」が創る」の書評を書いていただいて、マクゴニガルの提示しているゲームを用いた社会変革のアプローチの意味をとても的確に論じていただいてます。出演後そのままこちらのUstの方に駆けつけてくれるそうなので楽しみです。
 先週のNHK「爆問学問」のシリアスゲームの回もありましたし、ゲーミフィケーションが業界向けだけでなく、一般メディアで取り上げられることが増えてきました。そんな中で「ゲーミフィケーション」という直球タイトルの著作を上梓される井上明人さんが語り、クローズアップ現代の放送も話題にしつつ、ゲーミフィケーションのあり方を語ろうというイベントに呼んでいただいたので、井上さんの応援ついでに参加してきます。
 ・・・と、そんなわけで、先週よりイベントの告知を始めていただいているのですが、思わぬ方からコメントをいただきました。
きょうの蜘蛛の糸メソッド(やまもといちろうBLOG)
http://kirik.tea-nifty.com/diary/2012/01/post-dca5.html
 山本一郎さんのブログの長年のファンとして、拙著を誉めていただいたのはとても嬉しい限りなのですが、芥川の「蜘蛛の糸」の話になぞらえて苦言を呈されたところは、せっかく気に留めていただいたのにそういう印象を持たれてしまったのが残念でありました。
 このタイミングでこのイベントを入れるのは、井上さんの新著の出版プロモという位置づけ的には、やらない方が失策でしょうし、商業ベースに乗る際には多少売り文句的に出過ぎるところは避けられないでしょう。なので、今回は気になるところはあれ、こちらからの告知内容への注文は最低限にしました。でも、今回のような形で商業ベースに近いところでなんとなく露出すると、誤解を受けたくない人にまで誤解を招くんだなということを痛感します。
 なので大多数の人々にはどうでもよいことですが、おそらくこういうことを言及する機会もあまりないと思うので、ここでひっそり自分の立ち位置を説明しておきたいと思います。
 まず、そもそもなぜ僕がこういう場に駆り出されて話をするかというと、10年ほど前から米国を起点に広まった「シリアスゲーム」というゲーム産業を取り巻く新たな流れを日本に伝え、日本での状況を海外に伝えるという、つなぎ的な役回りをしばらく続けてきたことが、それなりに評価されているのだろうという理解をしています。
 拙著「シリアスゲーム」で、シリアスゲームという呼び方は過渡的なものであり、シリアスゲームの考え方や事例が普及すれば、わざわざシリアスゲームと呼ぶ必要はなくなるだろう、と述べました。その考えは今も変わっていなくて、シリアスゲームという呼び方自体が普及するかどうかは、基本的にはどうでもいいことで、ゲーミフィケーションの流れの中でシリアスゲーム的な「社会のためのゲーム」が息づいていくのであれば、それはそれでよいと思っています。
 海外で動いているシリアスゲームの流れと国内の状況はだいぶ異なるわけですが、ゲーミフィケーションがうまく流れに乗って広がってきたことで、ようやくここから新たな展開が見られそうだという期待が持てるようになってきました。
 セカンドライフブームの時は、何やら儲かりそうだとツバだけつけに来た人たちや、儲けたい人たちからうまく儲けようとする人たちですっかり埋め尽くされてしまい、実のある議論ができる人がいないうちに萎んでいってしまった感がありましたが、今回のゲーミフィケーションは語っている人たちの様子を見るとだいぶ印象が違います。
 ゲーミフィケーションがこれだけ注目を集めるようになると、あちこちでいろんな人がゲーミフィケーションについて語るようになります。僕も立場上、ゲーミフィケーションのあり方について論じてきましたが、シリアスゲームよりもゲーミフィケーションの方が概念的には広いので、教育研究者の立場では上手く語れない、語る興味のない領域もあります。深田さんが書かれた「ソーシャルゲームはなぜハマるのか」のようにマーケター向けのゲーミフィケーションの話は僕が書けるものでもないですし、書くべきものでもないと思います。国内でゲーミフィケーションがここまで注目されるに至ったのは、深田さんの功績によるところも大きいと思います。それに、ゲーミフィケーションを新しい社会システム構築の方法論というような位置づけで語るとすれば、鈴木謙介さんや濱野智史さんのような社会学系の論者の方たちに語ってもらう方が格段によい議論ができると思います。
 そして今回は、国内には数少ない生粋のゲーム研究者である井上明人さんが正面から「ゲーミフィケーション」を論じる著作を出して、学の立場でこの分野の専門家として前に踏み出すことになったわけで、とても喜ばしいことです。
 これからさらにこの分野でやっていこうという人が増えていけばと思いますが、僕自身は引き続き、ゲームの教育利用研究や社会的応用研究の領域からシリアスゲームの研究を続けていくつもりです。今までこの分野に本気で入ってくる研究者の層が超薄だったために、専門外の分野のことまでコメントを求められたり、わけのわからない依頼とかもまわってくることが多かったのですが、優秀な若手の人たちがそういうことを引き受けてうまくやってくれて、僕は自分の研究に集中できて、結果としてこの分野がさらに盛り上がっていけばよいなと願いつつ日々を送っています。
 やや取りとめない感じになりましたが、そんなところでしょうか。まあ、蜘蛛の糸にはみんなで仲良く、上手いことやってのぼってください、という感じです。
 そんなわけで、どんな風になるかわかりませんが、ご関心のある方はクローズアップ現代とともに、こちらのUstイベントもご覧いただければ幸いです。