藤本研究室説明会(11/1)のお知らせ

藤本研究室が所属する東京大学 大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース(文人コース)の冬季入試説明会が10月30日(土)13時からオンラインで開催されます。

この説明会に連動して、藤本研究室を希望する方を対象とした説明会を以下の通りオンラインで開催します。

日時:
2021年11月1日(月)17:00-19:00

17時00分〜17時30分:藤本研究室の説明、Q&A(全体)
17時30分〜19時00分:(希望者のみ)藤本准教授との個別面談   
(希望者のみ)研究室所属の大学院生や特任研究員との面談

どのような活動をしているか、どのような研究で指導を受けられるかを説明します。 
参加希望の方は、事前に下記の参加申込フォームに必要事項を記入してお申し込みください。折り返し、Zoom会議室のURLをメールでお送りします。
https://forms.gle/yn1QcfhfJih2TbUs9

大学院に入学して藤本研究室で活動したい方は、どうぞご参加ください。
これまでの研究室の活動の様子については、下記の研究室ブログを参照してください。

https://ludixlab.net/?p=617

香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例」のパブリック・コメントに意見提出しました

 先日来,香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例」の問題が話題になっています。依存対策の必要性自体を否定するものではありませんが,目的に合致しない内容になっています。地方の条例だと見過ごしてこのような内容で制定されてしまうと,停滞した社会をさらなる停滞に向かわせる矛盾したルールが増えることになります。

 県議会はこの4月に急いで条例を通そうとしているため,何もせずにいるとそのまま通ってしまいかねません。このまま制定されてしまうと,香川県だけの問題ではなく,国民全体にとって他人事ではない重大な問題だと認識しています。このような規制を推進する人たちにはどのような意見を出しても伝わらないのでないかと無力感を覚えるところもありますが,この条例を止めようと活動している方たちのサポートとして,少しでも足しになるように論点を整理しました。

 パブリックコメントを募集しているので見てみると,「意見提出できる方」の「第11条に規定する事業者」というのは,ネットで何らかの事業活動に従事していれば誰もが事業者として意見できる定義になっています。ネット上でオンライン講座や学習アプリを提供している私も遠慮せず,非営利の個人事業者として以下のような内容で意見提出しました。


香川県議会事務局政務調査課 御中

「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)素案についてパブリック・コメント」への意見提出

 この度の条例案に関するパブリック・コメント募集について,教育分野でデジタルゲーム研究を専門とする大学の研究者として,本条例案には以下に示すような重大な欠陥があり,深刻な悪影響をもたらす内容であると指摘します。依存対策自体の必要性を否定するつもりはありませんが,現状の条例案が向かっている規制の内容は,わかりやすく例えれば,危険薬物を問題視するがあまり,医薬品全般の使用を規制するような誤った方向に向かっています。この内容での条例制定は期待される効果よりも悪影響の方が大きく,香川県にとどまらず,日本全体の家庭教育やネット産業全般に望ましくない影響を与えることが懸念されるため,大幅な見直しをお願いする次第です。

問題点1:定義の不適切さ

 まず,第2条(定義)に記載される下記の定義は不適切であり,対象範囲が無制限に拡大解釈されて,本条例が問題視している範囲外で規制する必要のない事業者まで規制の対象とされる内容となっています。

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 
(1)ネット・ゲーム依存症 ネット・ゲームにのめり込むことにより、日常生活又は社会生活に支障が生じている状態をいう。 
(2)ネット・ゲーム インターネット及びコンピュータゲームをいう。 
(3)オンラインゲーム インターネットなどの通信ネットワークを介して行われるコンピュ ータゲーム

 「ネット・ゲーム」,「オンラインゲーム」という曖昧な記述の仕方では,あたかもゲームと名の付くものであればすべて依存を招くような誤解が生じます。医療従事者がゲームのどのようなところに問題があるか特定できていない段階で一律にゲームとネットの利用時間全体を制限する規制は,国民の日常活動の無用な自粛の助長や,過度な行政の介入を意図したものと受け止められます。
 また,ゲームと一括りに言っても,さまざまなジャンルや用途のゲームがあります。学校や地域で普及している囲碁や将棋などのゲームもネットで提供されています。私たちが研究開発をしている学習ゲームアプリや,ゲームを利用した学習活動についてもこの定義では範囲に含まれてしまいます。これらがどのような観点から規制される必要があるのか理解できません。

問題点2:問題とする事業活動と適用範囲の曖昧さ

第 11 条 インターネットを利用して情報を閲覧(視聴を含む。)に供する事業又はコンピュータゲームのソフトウエアの開発、製造、提供等の事業を行う者は、その事業活動を行うに当たっては、県民のネット・ゲーム依存症の予防等に配慮するとともに、県又は市町が実施する県民のネット・ゲーム依存症対策に協力するものとする。
2 前項の事業者は、その事業活動を行うに当たって、著しく性的感情を刺激し、甚だしく粗暴性を助長し、又は射幸性が高いオンラインゲームの課金システム等により依存症を進行させる等子どもの福祉を阻害するおそれがあるものについて自主的な規制に努めること等により、県民がネット・ゲーム依存症に陥らないために必要な対策を実施するものとする。

 「~等」という表現が無制限に繰り返されているため,この条例を根拠に,無用な規制が広がる根拠となることが懸念されます。実効性がなさそうな表現の裏に,規制の必要のない事業活動までも「自主的な規制」や「必要な対策」の実施のための行政指導が入ろうとする意図が疑われる表現になっています。何が依存症を進行させる原因なのかわからないままにこのような過剰な規制を行うことは,国民生活への過度な介入であり,この条例が目的とする範囲を大きく超えて,通常のネットを利用した健全な活動を阻害する内容になっています。

問題点3:県民の家庭への過度な干渉

第 18 条 保護者は、子どもにスマートフォン等を使用させるに当たっては、子どもの年齢、 各家庭の実情等を考慮の上、その使用に伴う危険性及び過度の使用による弊害等につい て、子どもと話し合い、使用に関するルールづくり及びその見直しを行うものとする。 
2 保護者は、前項の場合においては、子どもが睡眠時間を確保し、規則正しい生活習慣を 身に付けられるよう、子どものネット・ゲーム依存症につながるようなコンピュータゲー ムの利用に当たっては、1日当たりの利用時間が 60 分まで(学校等の休業日にあっては、 90 分まで)の時間を上限とすること及びスマートフォン等の使用に当たっては、義務教育 修了前の子どもについては午後9時までに、それ以外の子どもについては午後 10 時までに 使用をやめることを基準とするとともに、前項のルールを遵守させるよう努めなければな らない。 
3 保護者は、子どもがネット・ゲーム依存症に陥る危険性があると感じた場合には、速やか に、学校等及びネット・ゲーム依存症対策に関連する業務に従事する者等に相談し、子ども がネット・ゲーム依存症にならないよう努めなければならない。

 この第18条の2について,ここに具体的な時間制限を盛り込む必要性が理解できません。適切な利用時間は1の家庭でのルール作りの範囲で決めればよい話であり,条例によって一概に60分や90分で制限することの必要性を認めません。ルールを決めるための目安のような数値を条例で定めるのは,家庭教育への過度な干渉にあたります。このような不適切な基準の条例化は,行政による家庭教育への過干渉を県として容認するものと受け取れます。本来は家庭で決めるべきことを行政に決めてもらおうとする姿勢が横行して,他の家庭問題にも条例制定を求める事態や,家庭への無用な行政介入の助長につながりかねません。

 現代社会において,インターネットは基本的な社会インフラであり,子どもたちの日常の生活行動全般に関わっています。広範な教育コンテンツがネットで提供されており,利便性の高い学習アプリや健全な娯楽活動もすべてネットで提供される形で普及しています。子どもたちは日々ネットを使って学習しており,この規制により,午後9時以降や10時以降の学習時間まで制限することになり,かえって学力低下を招きやすくなります。

問題点4:規制を行う根拠が不十分

 このような社会的影響の大きい条例を制定するうえで,この条例に利害関係のある医療事業者が実施したアンケート調査のみを根拠とするのは不十分です。これまでの学術研究では,このような条例の根拠となる研究結果は出ていません。WHOの障害認定においても世界中の研究者から多くの疑問が提示されています(下記参照)。この条例の定義などの記載内容からも,具体的に依存の要因となるゲームを特定できていないことが明らかであり,検討が不十分なままに特定の関係者の主張に基づいて制定されようとしていることを伺わせる内容になっています。

参考:ゲーム研究者の国際団体「Higher Education Video Game Alliance(HEVGA)」によるWHOのゲーミング障害指定への反論抄訳:https://anotherway.jp/archives/hevga-who-translation-jp.html

 以上のような問題点により,次のような社会への悪影響につながることが想定されます。

  • 悪影響1:関連産業の成長阻害
  • 悪影響2:拡大解釈により悪法化する
  • 悪影響3:先例として意図せぬ形で悪用される
  • 悪影響4:香川県のイメージ低下と差別の発生
  • 悪影響5:過剰な不安を煽って,問題ない家庭まで問題を広げる

悪影響1:関連産業の成長阻害

 ネット利用時間の制限は,電子書籍を利用した読書や学習アプリの利用も含め,子どものネットを利用した日常活動を制限し,子ども向けに有用なコンテンツを提供する事業者の経済活動の停滞につながります。60分や90分の利用時間では,将来のデジタル社会に生きる子どもたちが必要とするデジタル活動のための能力開発機会の喪失となります。ゲーム事業者の役割として,子どもの成長につながる遊びを提供している側面があり,ゲーム事業者の社会に有益な側面も否定しようとしています。

悪影響2:拡大解釈により悪法化する

 このように適用範囲が不明確な規制や自主的な協力要請を行うことで,この条例を拡大解釈して,不当な要請や必要のない自粛を促すことにつながります。たとえ県の行政がそのような意向を持っていないとしても,この条例からはそれが読み取れません。定義の曖昧さを逆手にとって,悪意を持った主体が果てしなく行政の介入を働きかけて県民の自由を制限できるため,この内容で条例を通してしまうことで,香川県は逆に将来の地域振興を阻害する問題の種を抱えることになります。

悪影響3:先例として意図せぬ形で悪用される

 上記と同様に,この条例が先例化してしまうことで,他の自治体や国でも同様の働きかけをし易くなり,国民の自由な活動に無用な制限を加えることにつながります。現在ゲーム依存対策を推進されている医療従事者の意図とは関係なく,ゲーム障害を利権化させようとする悪意を持った主体が入り込んで悪用されやすい内容になっているため,そうした悪用を防ぐためにも適切な範囲での条例化を目指して慎重に検討すべきです。

悪影響4:香川県のイメージ低下と差別の発生

 このような条例で誤った形で子どものネット利用を制限することで,香川県の情報産業推進のイメージは低下し,これまでの産業振興策への投資に負の影響をもたらすでしょう。さらに,香川県で育つ子どもたちが情報化後進県出身者のような差別を受けやすくなることが懸念されます。以前,文科省のゆとり教育の失策によって,特定の世代が「ゆとり世代」と不当に揶揄され,長年にわたり偏見や差別を受けているような状況がありますが,この条例によって香川県民に対する偏見や差別を助長するような状況が生じやすくなります。

悪影響5:過剰な不安を煽って,問題ない家庭まで問題を広げる

 この条例の内容では,ゲーム全般を不安視する風潮を助長し,問題のない家庭の保護者の不安を煽ることで,かえって子どもへの親の過干渉による家庭環境の悪化を引き起こし,ゲームにのめりこむ子どもを増やすことも想定されます。ゲーム依存に対処する医療従事者の主張は,ゲーム依存者の周囲で生じている問題の要因をすべてゲームに押し付けているところが散見され,問題点を整理が不十分なままでゲーム規制を推進しているところがあります。 また,たとえ条例制定推進者が善意で取り組んでいるとしても,この条例案は,悪意を持ってゲーム依存の不安を煽り利得を得ようとする事業者の参入を後押しする内容になっています。現状では,依存者の社会環境や家庭環境にある他の要因以上にゲームが問題であるとは断定できない段階であり,より詳細な調査を行ったうえで条例の検討を行うべきです。

 以上のような問題を含んだまま,誤った方向で規制をかけても,条例が目指す問題の解決にはつながらず,むしろ関連産業の停滞や無用な行政介入への社会的批判,人材流出,不必要な社会保障費の増大を招き,困窮する地方経済をさらに厳しい状況に追い込む方向に作用することが懸念されます。

 ここで指摘したような問題点を残した条例案は大幅に見直すべきであり,このまま議会で採択されれば,香川県の停滞を招く失策であったと批判される事態を招くでしょう。そのようなことは誰も望んでいないと思います。このような条例案は県民のためにはならず,条例制定を推進する方々が意図しない形で日本国全体に深刻な悪影響を及ぼすことになることを危惧しますので,このような形でご意見申し上げる次第です。

香川県行政担当者,議員各位におかれましては,本条例案についての慎重な検討を,重ねてお願い申し上げます。

2020年1月29日
藤本 徹

IGDA日本オンラインセミナーに出演予定(9/11)

 大学の業務やプロジェクトなど、あれこれと集中していてブログに手が回らない日々は続いていますが、隙を見て少しずつ近況などお知らせしたいと思います。
 まず、先々週になりますが8月20~22日に、ワシントン州シアトル近郊のレドモンドで開催されたSerious Play Conference 2013に参加してきました。200名程度の規模でこじんまりとした感じのカンファレンスでしたが、スピーカーはなかなか豪華で、中でも特に「フロー体験」の研究で著名なチクセントミハイ教授の講演を生で聴けましたし、シリアスゲームの事例も豊富で実りの多い機会となりました。
 この他にも先週、シンガポールで「Serious Games & Social Connect」というカンファレンスが開催されました。僕はこちらには参加できなかったのですが、日本からは九州大学シリアスゲームプロジェクトの松隈先生とIGDA日本代表の小野さんが参加されたそうで、こちらもなかなか盛り上がったそうです。
 それで、これら2つのカンファレンスで得た情報を国内でシリアスゲームに関心のある皆さんと共有しようという趣旨のもと、IGDA日本の主催で「アメリカ&シンガポール 世界に広がるシリアスゲームの今」と題したオンラインセミナーを来週9月11日(水)20時から開催します。藤本からはSerious Play Conference 、小野さんからSerious Games & Social Connectの模様を報告します。Ustreamとニコニコ動画で配信されます。無料でどなたでも視聴できます。開催概要はIGDA日本からの告知を転載しますので、下記をご参照ください。
#以下、IGDA日本の告知ページより転載
http://www.igda.jp/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=1081
————
IGDA日本オンラインセミナー #03
アメリカ&シンガポール 世界に広がるシリアスゲームの今
ゲーム産業の拡大やゲーム文化の浸透と共に、ゲームやゲーム開発の技術を実用領域に応用する「シリアスゲーム」や「ゲーミフィケーション」などの取り組みが、世界各国で進んでいます。アメリカ・ヨーロッパ・日本に続いて、昨今では韓国などアジア地域でも、シリアスゲームのカンファレンスが開催されるようになりました。その応用範囲も広告・教育・医療・公共政策など多岐にわたっています。
そこでオンラインセミナーの第3回目では、米シアトルとシンガポールで連続して開催された「シリアスプレイカンファレンス」「シリアスゲーム&ソーシャルコネクト」という、二つのカンファレンスについて参加報告会を行います。シリアスプレイカンファレンスは日本のシリアスゲーム研究で第一人者として活躍中の藤本徹氏(東京大学)、シリアスゲーム&ソーシャルコネクトはIGDA日本の小野憲史が報告いたします。
シリアスプレイカンファレンス  【8月19日-22日】
アメリカ・シアトル(デジペン工科大学)
シリアスゲーム&ソーシャルコネクト 【8月26日-28日】
シンガポール(シンガポールマネジメント大学)
<配信予定日時>
2013年9月11日(水)20:00-21:30(予定)
<配信アドレス>
Ustream 
http://www.ustream.tv/channel/igda-jp-ustream
ニコニコ動画 
http://ch.nicovideo.jp/channel/ch2525379
<司会進行> 松井悠 (株式会社グルーブシンク取締役 / NPO法人IGDA日本理事)
<出演> 小野憲史(NPO法人IGDA日本代表)/ 藤本徹(東京大学)
*本会は過去「シリアスゲームUst報告会」として開催された番組配信の出張版です。過去の番組はこちらでご覧いただけます。
http://www.ustream.tv/channel/igda-test-1110

慶應MCCてらこやに寄稿

慶應丸の内シティキャンパスが発行しているメールマガジン「てらこや」に寄稿したものが掲載されましたのでご紹介します。以下てらこやより引用。
┌─┐━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
│4│ Learners’ 交歓広場 ―学びとキャリアを考える読者コラム―
└─┘………………………………………………………………………………
第16回「「学びについて学ぶ」留学とキャリア」
藤本 徹(ペンシルバニア州立大学大学院博士課程)
─────────────────────────────────
私は、ペンシルバニア州立大学の大学院で教授システム学(Instructional
Systems)を学んでいます。ペンシルバニア州は米国の北東部にあり、桑
田投手が在籍したパイレーツのあるピッツバーグ市と、井口選手が在籍
するフィリーズのあるフィラデルフィア市のちょうど中間辺りに位置す
る、ステートカレッジという(とても田舎の)大学街に大学のキャンパ
スがあります。2002年夏にこの街に移り住んで、早くも5年が経ちました。
教授システム学というのは、教育講座の設計や教材の開発などの「学ぶ
仕組みづくり」を体系的に行うための専門分野です。インストラクショ
ナルデザイナーを養成する大学院プログラムだと言った方がわかりやす
いかもしれません。当時インストラクショナルデザインという呼び方も
教育分野では少しずつ広まっていましたが、一般にはほとんど普及して
ない分野(今も普及してませんが)でした。
▼ 続き(全文)はこちらから
http://www.keiomcc.net/terakoya/2007/10/hiroba56.html

帰宅しました

 数時間前にステートカレッジの自宅に無事帰宅しました。今回の日本ツアーも、いろいろな形で多くの方々にお世話になりました。どうもありがとうございました。今回初めてお会いした皆さま、これからもよろしくお願いします。

 出発の朝、朝いちで荷物をごろごろ転がして、東大の中原さんを訪問。最近のプロジェクトの話や日本の大学周りの状況などを伺った。自分と同世代で近い目線で仕事をしている日本の研究者をあまり知らず、話ができる機会などほとんどないので、中原さんと話をすると、どこから切っても参考になることばかりで、興味は尽きない。
 その後、auのショップに足を運んで、ケータイの契約を一時休止手続きをしたあと空港へ。チェックインは長蛇の列でどうしようかと思ったが、安いノースウェストばかり使っているおかげでメンバーランクが上がっていて、空いている方の列でさっさと手続きできた。しかし今回ショックだったのは、ノースウェスト航空はエコノミークラスの酒類が無料ではなく、一本5ドルになっていたことだ。なので時差調整に酒を飲んでさっさと寝るという手法が使いにくくなった。それに液体類の持ち込みもできないため、仕方なく事前に飲めるだけ飲んで飛行機に乗り込んだ。
 飛ぶ前からさっさと寝て、飯で起こされた後は、テレビを見ながら英語に耳を慣らしつつ、ブログ書いたり、書き物をしたりして暇をつぶした。飛行機の中は退屈で不自由なのだが、逆にそのおかげでゆっくりと何にも邪魔されずに考える時間がある。今回のツアーを振り返り、明日以降に待ち受けている山のような(楽しい)仕事の段取りを考えながら過ごした。
 今回、約3週間の日本滞在、うち六日間の盆のオフ日を除き、二週間足らずでかなりの仕事をこなした。講演2回、勉強会やビジネスミーティングの類も10回以上を数えた。そうした現場でのやり取りを通して、いろんなことがかなり鍛えられた。スキルはブラッシュアップされ、整理仕切れてなかった知識もかなり整理できた。
 私には、エライ先生のように得意技もなく、気を抜く余裕もないので、会議の場はいつも全力で臨むことになる。毎回、頭をフル回転させて参加していれば、その場で思いつくこともあるし、やり取りの中で、それまで考えていなかった切り口から考えさせられることもある。教え、アドバイスする立場で招かれていても、こちらの方が学んでいることが多いし、その場で知識が生産されている面も大いにある。打席に立って実戦経験を重ねることが重要で、しかもしっかりモチベーションを高めて打席に立つかどうかで伸び方はまるで変わるのだなということがよくわかった。
 帰途に着いて、あと少しでうちに帰り着くと考えると、ホッとする。自分の感覚の中で、「日本に帰って、アメリカに行く」というよりも「日本に行って、アメリカに帰る」という感じが年々強くなっている。4年も住んでいればそんなものだろう。
 帰ると休む暇はあまりなく、大きなプロジェクトが待っている。まず博士論文。9月中には三章まで書いて、プロポーザルにOKをもらわないといけない。そして今年中にデータ収集を終える必要がある。次に出版。書き下ろし一冊と翻訳書二冊の出版が決まった。来年早々に一冊出すためには、冬に入る前に一冊仕上げないといけない。その他にもカンファレンスでの発表や生活費確保のための仕事など、尋常でないボリュームの仕事が待っている。インターンの仕事を辞めたことで安定収入はなくなり、以前にも増して貧しく不安定な日々がしばらく続く。
 「視界に陸が見えない長い長い時間を経る覚悟無しには、新しい大陸を見つけることなどできない」などと強がってみても、リスクに身をさらすのは、それだけでストレスが大きい。楽しい仲間や同志がいて、仕事の楽しさや将来のビジョンがあるおかげで、どうにかやっていけるというものである。
 今回はいろんな意味で、ずいぶんパワーアップできた。ツアー前とは、自分の力も、自分を取り巻く状況も大きく変わっており、一年後にはどんなことになっているか、さらに楽しみな状況になってきている。

3/5(金) スイートポテトケーキ

 今日は春休み前の週末で、大学全体が気楽な雰囲気に包まれている(自分がそういう気分なので世の中がそう見えたのだが)。図書館も閑散としている。休みはどこに行くかと聞かれ、「フロリダへドライブ旅行」と答えると、みんなうらやましそうにしている。日本で言えば、沖縄旅行に行くといっているのと似たようなものだ。大学院生は半分は休みなしだ。宿題を鬼のように出す授業を取っている人は、休みどころではない。自分も独りで来ていたら休みなしで文献の山に立ち向かっていたことだと思うが、妻が人生を楽しむことを奨励する人なので、この環境を尊重すると自然と出かける機会が増える。
 仕事を終えて、うちに帰ると近所の韓国人の奥さんSuk-Heeが、うれしそうにたずねてきて、何だろうと思ったら、手作りケーキのおすそ分けだった。スイートポテトのケーキで、韓国で人気だが高いのだそうだ。食べてみると、これが美味い。今までのSuk-Heeの手製ケーキの中でも最高傑作、いくら食べても効用が落ちない美味さだ。すぐまた作ってもらおう。

11/1(土) 刺身ディナー

今朝は12時起床。夫婦とも疲れがたまっていたようだ。
朝食は軽くシリアルで済ませて、午後はWeblogの更新中にシステムの不具合に引っかかり、その手直しに時間をとられた。夕方、ダウンタウンにある日本料理&韓国料理レストランのSay Sushiへ出かけていって、刺身定食と焼き鳥を食べた。ちょっと高かったし、魚がもう一つだったのだが、たまに食う刺身は美味い。最近すっかり刺身欠乏症になっている。
夜は、プロジェクトの作業と、調査報告の仕事の資料整理。夜更けまでかかったが、資料整理は終了。これでさらに一区切りついて、余力が増してきた。運動不足で身体はなまっているが、仕事のペースは悪くないので、この調子で来週のプロジェクトの山場も乗り越えたいものだ。

10/31(金) ハロウィンパーティ

今朝は起きると9時前。統計の授業は少し遅れて出席。前回のテストの結果をもらったら満点だった。統計クラスの講師のJonnaと少しだけ話をする時間が持てた。
11時過ぎにINSYS521プロジェクトメンバーのYihuaiと打ち合わせ。彼女は仕事ができるので話が早い。20分程度段取りについて話をして解散。
午後はプロジェクトのドキュメント作成。来週調査実施なので今やっておかないといけないものが多い。ちょっと昼寝して疲れを取ってさらに仕事を進めた。
夜はDr. Peck邸のハロウィンパーティに参加。キムチチャーハンを山盛り作ってもって行った。パーティは仮装した人であふれていた。教授も学生もみんな変な格好やら楽しげな格好で盛り上がっている。Dr. Peckはスターウォーズに出てくる金持ち宇宙人のような格好で、マスクしているので誰だかわからなかった。INSYSの教授や卒業生で作ったバンド演奏もやっていた。こういうところでさらっと楽器ができるとなかなかかっちょよい。屋外では、スクリーンとプロジェクタが設置され、編集した古いホラー映画が流されている。キムチチャーハンは予想以上の大好評。みんなうまいうまいと食べて、あっという間に売り切れ。レシピをくれと言われたり、賛辞の声を多数受けた。本場韓国人からも賞賛された。仮装はしなかったが、違った形でパーティを盛り立てることができたようだ。ほどほど社交したところで、10時ごろには失礼した。

10/30(木) 体調回復

今朝は10時起床。空き時間はひたすらプロジェクトの文書作成。ここ数日、夏以降のオーバーワークと旅の疲れが重なって、体調不良気味だったのだが、少しペースダウンしたおかげで、今日は完全回復した。おかげで仕事がはかどる。無理はよくない。昼過ぎに調査報告の仕事関連で電話でヒアリングを受ける。日本から米国大学の調査に来ているそうだ。
午後は教育測定の授業に出席。だいぶ難しくなってきた。わからないところが増えてきた。
帰宅後ちょっと仮眠を取って、また夜中までプロジェクトの文書作成。

10/26(日) 夏時間終了

朝起きたら6時だった。6時10分に迎えのシャトルが来ることになっている。やばいと思って大慌てでロビーに下りると、同じプログラムのBradがシャトルを待っていた。時間を聞くと5時15分だという。おかしいなと思って聞いてみると、サマータイムの終了で、1時間時間が戻っていた。おかげで送れずにすんで助かった。
無事にシャトルで、オレンジカウンティ空港へ到着。軽くパンと紅茶で朝ごはんを済ませて、出発。後で聞いたところ、もう少し遅いフライトだったら、山火事で欠航になっていたかもしれなかった。デンバー経由で、3時間の時差を経て、夜6時にボルチモア空港へ到着。Greyhoundに乗り換えて、さらに4時間、11時ちょうどに帰宅した。遅い夕飯に、りんが用意してくれたすき焼き丼をほおばりながら、ここ数日のお互いの出来事などを話した。