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風の便り

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生涯学習通信

「風の便り」(第45号)

発行日:平成15年9月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. 「積極的傾聴」と「積極的請け負い契約」

2. 「積極的傾聴」と「積極的請け負い契約」(2)

3. 『業』と『原罪』 −人間性の未知と教育の限界−

4. 日常の感性ー日本人の「美楽」

5. 花のある風景―島根県瑞穂町県道7号線

6. お知らせ&編集後記

花のある風景―島根県瑞穂町県道7号線

   旅で泊った宿屋さんには必ず床の間がある。掛け軸があって花がいけてある。多くの生涯学習センターには生け花ボランティアが花を飾っている。高速道路のトイレにすら、ペットボトルを横にして竹の台座の上に置き、横腹に穴を開けて、見事な花活けにしているのに出会ったことがある。お掃除のおばさんの心配りであろう。

友人に書き送る便りには必ず季節の挨拶を述べ、海浜山地、花や樹木の風景を添える。俳句には何百万人もの同人がいて、新聞の短歌欄には全国から作品が寄せられる。俳句には基本的に季語があり、人々は常に季節の中に花鳥風月や日々の暮らしの美しさを探求している。短歌もまた人生の思いを日々の風物に託して歌う。公民館の水墨画も、油絵も、クラフトも、陶芸も常に満杯である。文字ですらも美しく書きたいと書を発明している。美を楽しむ実践は日本人の日常を満たしているのである。ここが音楽と違うところなのだろう。

学校教育を除けば、日本人は日々の「美楽」を楽しんでいる。こと「美楽」に関する限り、異常なのは学校教育のほうであって、日本人の日常ではない。自分の日常もまた普段の音楽にはかけるが、「美楽」は有る。筆者の森の散歩は季節の移りを楽しむ時間である。花鳥風月を愛でる思いは日本人の心にしみこんでいる。過日、西部生涯学習センターの寺本さんの熱意にほだされて、島根県民大学の開校式に伺った。ところは中国山脈に近い羽須美村である。中国自動車道を降りた後、地図を頼りに、瑞穂町から出羽(いずは)川に沿って県道7号線を辿って峠を越えた。台風一過の7号線の風景には目を見張った。沿道には季節の花が咲き乱れ、部落の方々が道を飾っている。路傍には塵一つない。旅人と一緒に、日常の“美楽“を楽しんでいることを実感した。道端の整理整頓、花の咲きぐあいに人々の丹精の程が偲ばれた。筆者は一度ならず車を止めて、森と川の息吹を楽しんだ。学校で行なわれる芸術教育とは関係ないが、日本の日常には『美楽』がある、と実感したのである。

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