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風の便り

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生涯学習通信

「風の便り」(第93号)

発行日:平成19年9月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. 試論 人間とは何か?-教育論の背景

2. 試論 人間とは何か?-教育論の背景 (続き)

3. 小学校教育の変革

4. 団塊の世代よ、あつまれ!!

5. MESSAGE TO AND FROM

6. お知らせ&編集後記

団塊の世代よ、あつまれ!!
(下関市社会福祉協議会事業)
『お元気だから活動する』のではありません。
『活動するからお元気なのです』

  高齢社会の参考書を開くと定年者に対する助言が並んでいます。助言の主流は、『無理をしてはならない』、『目標に拘ってはならない』、『マイペースで暮らしなさい』、『いい加減でいいのです』、『出来る範囲でいいのです』、『楽しいことを見つけなさい』というようなものです。冗談ではありません!!!
  これらの助言は過剰な「負荷」をかけてはいけない、という趣旨なのでしょうが、上記の表現では「負荷」そのものを否定することになります。「負荷のない生活」を始めれば、熟年者は一気に老いぼれます。
  定年後の無為は人間の心身の機能を必然的に低下させるからです。生理学者ルーの指摘にある通り、使わない機能は一気に衰退することが生物のメカニズムだからです。   
  また、生涯学習や高齢者福祉が唱導する定年後の「安楽」を求めるプログラムは、「安楽」を求めるが故に、「負荷」が少なく、世間の承認や評価も得難いことは明らかです。ストレス・フリー、「負荷ゼロ」の生活は確実に人間をダメにします。 「負荷」が少なければ、がんばる必要はなく、がんばることを止めれば心身の機能は低下の一途を辿ることでしょう。それでなくとも「老い」とは「衰弱と死に向って降下すること」なのです。
  生き甲斐ややり甲斐についても、世間は、世間を賑わし、世間に貢献することのない人々に拍手は送りません。社会的承認が得られなければ、孤独と孤立はやがて不可避になります。趣味や楽しみを追ってもその日暮らしは出来るでしょうが、社会に扶養されて、「安楽」を追い求めるその日暮らしを続けていれば、周りの「厄介者」になるのは時間の問題でしょう。作家藤沢周平が隠居人を『世の無用人』と言ったのはまさに至言だったのです。
  あたらしい活動を始めなければ定年鬱病の発生は当然であり、生き甲斐を喪失することも必然です。
  下関市の「高齢社会を良くする女性の会」の田中隆子会長はこのことを実に良く理解し、社会福祉協議会の関係者を説得して来年の1月19日(土)に標記の研修会を開催するところにまで漕ぎ着けました。事業そのものは昨年の続きですが、今年の眼目はお集まりになった熟年世代のみなさんを下関の諸団体が、あたかも大学の新入生歓迎・クラブオリエンテーションのように"いっしょにやりませんか?"、"どうぞ我がクラブにご参加ください"との勧誘活動と組み合わせたことです。いわば、定年後の『活動お見合いの会』を同時開催することになったのです。
  これから田中さんと関係者はプログラムのチラシをもって地区内の企業を廻るという意気込みです。果たして、企業の人事部や総務部は退職後の職員の健康や生き甲斐まで心配してくれるでしょうか?興味津々で見守っています。
  学校支援ボランティアの候補生として、小学校の中で自身を鍛え始めた飯塚市の「熟年学び塾」が如何に画期的なことであるかについてはすでに報告いたしました。「学び塾」のみなさんと並んで、下関にお集りの熟年世代がどのような活動を始め、どのような効果を上げるか、高齢社会の活力を維持する試行錯誤が始まります。
  熟年が活力を失えば、高齢社会の活力は必然的に低下するでしょう。処方は簡単です。子どもにがんばりなさい、と言って励ますように、熟年者にもがんばりなさいと言わなければなりません。子どもに努力が必要なように、熟年者も努力が必要です。子どもが目標を持って学ぶように、熟年者も目標を持って行き続けることが活力の秘訣です。老若男女「生きる力」の構成要因も、「生きる力」を鍛えるトレーニングの順序も同じです。「体力」から始まって、「耐性」、「学力」、「社会性」、最後に「やさしさ」や「おもいやり」のようなEQ(人間関係能力)に至る修養のシークエンスは変わりません。来年1月19日(土)、下関市社会福祉協議会が主催する『団塊の世代よ、あつまれ!』にご注目ください。

註  期日:2008.1.19(土)、場所:下関市社会福祉会館、担当:竹本篤史Tel.0832-32-2003Fax.0832-32-1522


   

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