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風の便り

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生涯学習通信

「風の便り」(第78号)

発行日:平成18年6月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. 教育行政の刷新

2. 敵は「伝統」と「しきたり」と「おのれ自身」

3. "おれたちは1円ももらってない"−二本足の「ボランティアただ」論−

4. A小学校への提案ーその4 「食育」の死角

5. MESSAGE TO AND FROM

6. お知らせ&編集後記

敵は「伝統」と「しきたり」と「おのれ自身」

いつか担当してみたいと夢に見ていた研修が二つある。一つは過疎の町の「森林ボランティア」と「生涯学習」の結合事業、もう一つは結婚を可能にする独身男性のための準備講座である。この度、ある県のセミナーを担当する過程で参加の受講生から降って湧いたように締切り間際の補助事業の企画の募集が舞い込んで来た。筆者は研修の休み時間に思わず温めてきた構想を喋りまくった。受講生の何人かが興味をもってやってみたいと言う。筆者の熱が伝染したのか、セミナーを共同で担当した同僚もぜひ手伝いたいという。
  以下は筆者の企画のエッセンスである。会場、予算計画、広報、募集手続きなど具体的な計画立案の手法は今回のセミナーで受講生は実習済みである。
  企画は受講生のパイロット事業として任せていい。果して、実現するか。秋の楽しみがもう一つ増えたと喜んでいる。

 ● 発想の前提 ●                             
(1)  「変わりたくない男」は変われるか!?

  男性はいざ知らず、女性の晩婚化と非婚化は女性自身の「基準」に叶う男性が身近に現れないためである。この仮説が間違っていないとすれば、結婚を望む男性はもう少し耳傾けて女性の声を聞かなければならない。おそらく男と女の波長のギャップは「男女共同参画」を巡る感覚と思想の問題であろう。伝統としきたりを疑っていない多くの男たちは居心地のよい男性優位の現状から決して「変わりたくない」。日本文化の中で生きている以上若い男たちも例外ではない。「変わりたくない男」は果して変われるか!?
  講座はそのような男に自己変革を迫るところから始めなければならない。

(2)  「おのれ自身」を鍛えよ

  第25回生涯学習実践研究交流会のインタビューで福岡県立男女共同参画センター「あすばる」の中嶋玲子館長から男女の性別に由来する「得手/不得手」の分野を作るな、と提言があった。当の企画は高齢者問題を論じたのであるが、原則は若者の場合も変わらない。従来の性役割分業は不可避的に男女の「得手/不得手」を固定化して来た。女性にアピールしようというのであれば、男がおのれ自身を鍛えることは当然である。中でも男女共同参画時代においては、男がこれまでやったことのない分野は重要である。それゆえ、今回の提案には料理実習やファッションやダンスなどを加えてみた。もちろん、コミュニケーションの能力や前向きの姿勢や肉体のトレーニングは女性にアピールしようとする以上必須科目であることは言うまでもない。

(3)  出会いは「縁」、結婚は「私事」、成るか成らぬかは講座の預かり知らぬところ

  最初から言い訳をするつもりはないが、準備講座をやれば結婚が促進できるとは限らない。それは合同コンパをしても交流パーティーをしてもカップルが誕生するとは限らないということと同じである。出会いは「縁」、結婚は「私事」、成るか成らぬかは講座の預かり知らぬところである。まして講座のスタッフは生涯学習の仕掛人であって、仲人口はきかない。県の担当者はそれでもやらせてみる気になるか!?男たちは「男女共同参画宣言」を出せるか?講座は人の心まで支配することはできないが、人の世は「志縁」に賭けてやってみるしかない。

(4)  人の世は仕方がない

  最大の心配は補助事業を主催している県がプログラムの趣旨を理解しないことである。補助事業の企画例には若い男女が共に交流すれば、結婚に発展するかのような錯覚の上に提示されていた。それほど簡単なことであれば、誰も苦労はしない。発想が従来通りの「枠」を壊せないのは、受付窓口にも当然「変わりたくない男」がいるからである。中でも「くらいの高い」男たちが事業の趣旨を理解しない可能性が高い。その時はふたたび「女を知らずに田舎に朽ち果てて行く」多くの若者の悲劇が繰り返される。嫁不足で農業後継者は育たず、やがて農業も滅ぶ。日本にとって食糧の安全保障などはから文句になる。しかし、人が分らない以上、人の世は仕方がない。時が熟すまで待つしかないのである。

『若者の出会い応援事業』補助金1企画50万円!!
企画の名称: 『君は女の声に耳傾けることはできるか!?君は自分を変えることができるか!?』
−『男女共同参画時代の結婚準備講座』−
1  企画の背景と理念                                         

  晩婚化も非婚化も多くの農林漁業の後継者の結婚難も、その最大の原因は「変わりたくない男たち」にある。彼らはまだ居心地のいい男性優位の感情にどっぷりと浸かっているため「変わらなければならない」とは夢思っていない。彼らは自覚せぬままに、女性の声を聞こうとせず、日常における男女の共同参画の不可欠性を自覚していない。彼らは日本社会がその歴史と文化の中で作り上げた男支配の「伝統」と「しきたり」を鵜呑みにして、自分を取り巻く環境に無自覚・無意識に従っているのである。結果として、彼らは女性をどこかで一段下に見ている。女性の個性や能力を公平に認めず、女性を対等に処遇していない。
  もちろん、現代の女性は自らの誇りを捨て、己の能力を犠牲にして、自分の基準に合致しない男との結婚を望むはずはない。農山漁村にも多くの娘はいる。しかし、彼女たちはもとより、その母も、女性を対等と認めない従来の伝統文化に染まった男との結婚を断固拒否している。結婚難の真の原因は、男女の対等を認めず、男の優位を当然としてきた「しきたり」と「伝統」と不文律の「システム」である。
  したがって、少子化が止まらないのも、周り廻って、性別の役割分担を当然の事として、子育てや家事を女だけに背負わせてきた反「男女共同参画」の思想と感情である。それゆえ、男女の出会いをアレンジしても、結婚には繋がらず、少子化の防止にも繋がらない。男女の出会いを演出するのであれば、事前に為すべき事は「変わりたくない男達」の「自己変革」である。男達が女性の声に心から耳傾け、男女対等の思想を納得し、公平のエチケットを学び、男女共同参画の技術をマスターし、向上心豊かな女性に負けないくらいの生涯学習の姿勢を身につけた時、はじめて結婚の前提条件が成立する。女性をお招きするのはその後である。もとより、男女の出会いが実現したとしても、結婚が成立するか、否かはそのあとの男女自身の「私事」である。男たちよ、『君は女の声に耳傾けることはできるか!?君は自分を変えることができるか!?』
  本事業は出会いの前提を整えるための男の結婚準備講座である。プログラムの核心は男性の自己変革の学習と実習である。

2  募集人員 : 18才以上40才未満の独身男性、20〜30名(4回の合宿連続講座を継続して受講できる人。但し、現在の自分を「絶対に変えたくない」、と考えている人は参加をご遠慮下さい。)
 (臨時特別ゲスト第1回と最終回):18才以上40才未満の女性(原則として独身者、但し必要に応じて既婚者の意見も聞く。講座の必要に応じて出席)20〜30名

3  講座(プログラム)の概要                                    
(1)  第1回オリエンテーション合宿(金〜土または土〜日):「問題の核心を理解しよう」・・・
@ KJ法共同討議:結婚を巡る問題を探るー何が問題か?、なぜ問題か?どうすればいいのか?、どうしたいのか?
A 講義:
     *女性はどう考えているか??「晩婚化、非婚化、結婚難」の真の理由
     *「筋肉を優先した文化の中の女性」?敵は「伝統」と「しきたり」
     *アンケート調査:「君の日常行動を聞きたい!」
B 女性の「声」に耳傾けよう。「男達に言いたい!!!」
      (女性ゲストの意見を聞く会)
−反論の禁止、批判の禁止、意味をただす質問のみを許可/後日「女性の声に答える」のスピーチ大会を準備する。
C 宿題実習:
 自分が「自己変革」のためにやってみたいと思うことを申告・宣言して次回までに実行し、その結果      を・記録して報告する。(報告様式を作成)
 
(2)  第2回合宿:「表現力」を鍛える・・・
     @ 前回宿題の報告・発表「自己変革の宣言と実践」
     A 講義:表現したいものはあるか?表現の方法は身についているか?
     B スピーチ技法の基本(講義と演習)
     C スピーチ・トレーニング演習・実習/個人別実習・班別実習
       * スピーチ原稿の作成?ひとりKJ法(ワークショップ)
       * 音読練習
       * 2分間スピーチ実習と相互評価
     D  宿題研究:
       「パブリック・スピーキング;これを言いたい!」
       3分間スピーチの原稿作成と練習と発表

(3)  第3回合宿「肉体」を整える
     講義・実習: 「男の身だしなみ」・・・・・男性講師 
     実習: 「肉体改造」?時と場所を問わない:日々基本体力を育てよ・・空手または合気道の講師
     実習: 「Shall We Dance?」・・ジャズダンスやエアロビダンスの講師

(4)  第4回合宿「得意料理を2つ作れ」?公開スピーチ
    @  演習・実習:  「男の料理教室」・・・・(男性料理講師)
    A  女性ゲストをお招きして試食会
    B  公開スピーチ「女性の声に答える」
    C  懇親・ダンスパーティー

4  番外編:メディア・アピール「男たちの男女共同参画宣言」                       
   ローカルメディアの理解と協力を得て参加者のスピーチをアレンジした「男たちの男女共同参画宣言」を公表し、改めて男女の交流パーティーを企画する。

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