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風の便り

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生涯学習通信

「風の便り」(第54号)

発行日:平成16年6月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. 「現代の寺子屋」−民間活力の活用と総合的「子育て支援」−

2. 失った口上、忘れた舞台

3. 子どもの復讐―なぜ人間の中の「悪」を教えないのか?

4. 教育行政の面従腹背

5. 分野横断型生涯学習プログラムの創造、MESSAGE TO AND FROM

6. お知らせ&編集後記

第46回生涯学習フォーラム報告

分野横断型生涯学習プログラムの創造


 第46回フォーラムは総合的プロジェクトの問題を取り上げた。総合化は生涯学習の行政改革に繋がる。今回は福岡県春日市の行政改革、宇美町の生涯学習本部からご報告を頂いた。春日市は官業の民間委託率日本一の自治体である。宇美町は生涯学習を首長部局の下で統括しようとしている数少ない自治体である。春日市からは行政管理課の企画を担当する神田芳樹さんにおいでいただいた。報告は、これまでの行政改革の経過と仕事を通して今後の改革がどのような方向に進むべきかを中心にお話しいただいた。他方、宇美町からは企画調整課で生涯学習推進本部の事務局長を勤める廣畑伸暁さんに、生涯学習推進本部の設置の経緯とその後の庁内の分野横断型事業の実態についてご報告頂いた。論文参加は「生涯学習の複合課題とプロジェクト・マネジメントーなぜ、総合的なアプローチが必要か?ー」(三浦清一郎)である。

1 春日市における行政改革の挑戦
春日市は「住みやすさ」総合評価福岡県内1位である(1997.6.10西日本新聞)。「住民1人当たりの人件費の少なさ」は全国1位である(2003.11.25日経)。また、「全国自治体民間委託度ランキング」も全国1位である(2004.4.18日経)。2003年度末の「民間委託度」ランキングの民間委託については福岡県は時代の先端を走っている。1位から4位までを福岡県の都市が占めた。春日市、小郡市、宗像市、筑紫野市の順である。その後に全国の都市が続く。民間委託が最も進んでいる施設は、公園・児童遊園、コミュニティ・センター、市区民会館・公会堂、市区営病院・診療所と続く。庁舎の受付や学校給食の委託も始まっている。認可保育所の運営を受託した企業もある。従来の生涯学習には戦略的アウトソーシングの発想が皆無であった。
  「財政難を背景に、公共サービスの受託ビジネスが大きく育とうとしている」と日本経済新聞が指摘した(日経2004年4月18日)。市場規模は6,000億円になるだろうと想定している。「財政難」が「受託ビジネス」を育てるという背景には、役所でやると非効率だが、民間に任せれば管理が可能になるという意味が隠されている。「戦略的アウトソーシング」とはそういうことである。春日市が今後生涯学習分野においてどのようなアウトソ?シングを実行して行くのか、福祉と教育を融合した「介護予防」プログラムは創出できるのか、総合的「子育て支援」は実行できるのか、注目して見守りたい。当面、筆者としては、自らの時代分析に賭けて、官業を受託する民間企業の「株」を買っておきたい。


2  宇美町生涯学習推進本部の実験      
宇美町は生涯学習機能を首長部局に移した数少ない事例である。それゆえ、生涯学習推進本部は企画調整課に置かれている。本部の事務局長を勤める廣畑さんの資料では、町内行政を統括する組織図は見事に整備されている。問題は機構が思惑通り機能するか、否かである。ここでも伝統的な縦割り行政は分野横断型の総合行政を成功させた経験はほとんどない。然るに、抵抗は既存の行政組織自身から起ってくる。"生涯学習は社会教育でやればいい"という論理である。議会や町の執行部の強力なリーダーシップがなければ、行政の「プロジェクト・マネジメント」は不可能である。筆者の提案はたった一つ。象徴としての「プロジェクト・マネジメント」の実践である。その具体例は、最も緊急にして、最も総合的な「子育て支援」事業を作り出すことである。学童保育と青少年の健全育成をドッキングして全保護者に開放する。結果的に、男女共同参画の推進にも資する。そのためには生涯学習施設として「学校」を「拠点施設」とする。指導者には町内から熟年者のボランティアに加勢して頂く。それが出来れば、文字通りの「幼老共生」が実現する。廣畑さんはすでに「健康づくり」の散歩と「子どもの見守り・声かけ」運動をドッキングした『みるみるウオーク』事業を作り上げている。福祉と教育の協働の領域に踏み込んでいるのである。こちらも期待して見守りたい。筆者の論文は巻頭の小論にまとめている。論文が素材とした『豊津寺子屋』の夏休みプログラムは、時代の実験である。ウィークデーの子育て支援は男女共同参画の最終目標であり、多様な活動メニューを揃えた保育は、総合的子育て支援のパイロット事業である。町内「有志」の指導者は、ボランティアの実験であり、拠点を学校にしたのは、生涯学習施設としての学校開放の試行であり、町民主体の実行委員会は官民協働の挑戦である。それゆえ、論理的な作戦上は、行政組織横断型の「プロジェクト・マネジメント」の壮大な実験となる可能性の「芽」を含んでいる。
 


MESSAGE TO AND FROM
   メッセージをありがとうございました。今回もまたいつものように編集者の思いが広がるままに、お便りの御紹介と御返事を兼ねた通信に致しました。みなさまの意に添わないところがございましたらどうぞ御寛容にお許し下さい。

★ 埼玉県八潮市 松澤利行 様             
 八潮市の出前講座はその後どのような展開になっているのでしょうか。生涯学習の必須事業は大きく様変わりし、子育て支援と男女共同参画推進の統合、介護予防と生涯学習の統合など行政のシステム改革が不可欠になってきたのではないでしょうか。中央の縦割りが変わらないとすれば、地方はプロジェクト・マネジメントを導入して分野横断型の事業実施方法を工夫しなければならない時代になったと思います。巻頭小論「現代の寺子屋」は筆者が関わっているささやかな実践を土台にしています。この度は、二重に郵送料を頂戴致しましてありがとうございました。有り難く使わせていただきます。
★ 島根県  吉山 治 様                       
 西日本各地の不様な合併騒動の報道に接する時、いかに雲南が先行して教育課題を分析し、関係の方々が努力なさったかよく分りました。合併を前に生涯学習は停滞し、投げやりになり、すでにどうしようもない様相を呈しています。現在の努力が合併によって振り出しに戻るのなら余計なことはやらない方がましだ、という雰囲気が漂っています。利権、金権が渦巻く地方議会の質がここまで低い中で地方分権などできるはずはないでないか、と実感しています。
★ 沖縄県那覇市 大城節子 様            
 「風の便り」送付名簿の記載もれはなんとも申しわけございませんでした。外にも同様の失礼があるのではないか、と大いに心配しております。『豊津寺子屋』のサマープログラムの資料一式をお送り致しました。昨年の中・四国・九州地区の生涯学習実践研究交流会に宮崎県の木の花婦人会の子育て支援事業の発表がありました。その方向性、その思想が大いに参考になりました。沖縄県婦人会でのご奮闘を期待しております。
 

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