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生涯学習通信

「風の便り」(第52号)

発行日:平成16年4月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. 「学力」を巡る自問自答/学力の周辺

2. 地方政治の2大条件:「介護の社会化」による財政破綻と「養育の社会化」の欠如に伴う「少子化」の進行

3. 変化は「飛躍」する:「アンケート調査」の修正

4. 定年者の「地域帰還」歓迎オリエンテーション−新入生歓迎クラブ説明会のように!−

5. 第45回生涯学習フォーラム報告:「学力」とはなにか?「学力」向上の方法とはなにか?

6. お知らせ&編集後記

変化は「飛躍」する:「アンケート調査」の修正


  過去2年間にわたって中・四国・九州地区生涯学習実践研究交流会の参加者にお願いして、「未来予測調査」を実施しました。ご協力いただいたみなさんには厚く感謝申しあげます。しかし、参加者が予想された事と現実の変化を比較すると変化の実態が予想を遥かに越えていることがよく分りました。「介護の社会化」も、「養育の社会化」も予想外の速さで進行しました。あらゆる分野のアウトソーシングも予想外の広がりでした。経済のグローバリゼーションも、テロのグローバリゼーションも、外国人労働者が引き起こす問題も、日本人の海外進出も、生涯学習事業の民営化も、異分野統合の行政改革も、男女共同参画も、財政危機も、国立大学が独立行政法人になったことも、株式会社立の学校ができたことも、その他の「特区」構想の進展も、そして景気の回復も人々の予想を越えて変化は「飛躍」しています。
 


◆ 設問の失敗                                                   

  未来予想の失敗は設問の失敗に起因しています。アンケート調査の設問は現状の延長線上に作りました。しかし、変化は現状を何段階も飛び越して起っています。日本の社会システムが先延ばしにしてきた課題の「負」のエネルギーが噴出する時、段階的な修正では対応できないのです。変化のレベルが飛躍するのはそのためです。
  予想を越えたものが予想を越えたスピードで出て来る変化は、当然通常の調査のやり方では把握できません。現状の延長線上に未来の構造を理解することはできないということです。「風の便り」や「フォーラム論文」で筆者が主張したことも、結果的に、アンケート調査の回答とは大きなギャップがありました。


◆ 自治体の財政危機と生涯学習の構造改革                          

  自治体の財政危機は深刻である。生涯学習分野は危機のしわ寄せを大きく受ける。一例は、職員はいても事業費はないのというのが実態であろう。新規事業の予算もほとんど認められていないであろう。それゆえ、日経は自治体の「アウトソ?シング」に注目している。事業費のない部門の職員に人件費を払い続ける愚はないからである。
  「財政難を背景に、公共サービスの受託ビジネスが大きく育とうとしている」(日経2004年4月18日)。市場規模は6000億円になるだろうと想定している。「財政難」が「受託ビジネス」を育てるという背景には、役所でやると非効率だが、民間に任せれば管理が可能になるという意味が隠されている。「戦略的アウトソーシング」とはそういうことである。2003年度末の「民間委託度」ランキングの1位から4位までを福岡県の都市が占めた。春日市、小郡市、宗像市、筑紫野市の順である。その後に全国の都市が続く。福岡県は時代の先端を走っている。民間委託が最も進んでいる施設は、公園・児童遊園、コミュニティ・センター、市区民会館・公会堂、市区営病院・診療所と続く。庁舎の受付や学校給食の委託も始まっている。認可保育所の運営を受託した企業もある。従来の生涯学習には戦略的アウトソーシングの発想が皆無であった。生涯学習プログラムの充実は現状のシステムの範囲内でやろうとする発想しか出て来ないのはそのためである。したがって、関係者のアンケート調査では「公的サービスの外部委託」のような未来予測は決して登場しない。前号で生涯学習の構造改革「株」があるとすれば「買い」だと書いた。「生涯学習の構造改革」株とは公的サービス・プログラムを引き受ける企業の株である。


◆ 「特区」構想も予想外                                        

  「戦略的アウトソーシング」と同じく小泉特区構想も現状の延長線上には出て来ない。アンケート調査には自由記述欄も儲けたが、どなたも現行の制度を「否定」する発想はお書きになっていない。群馬県太田市の英語教育特区は小中一貫で英語で授業をする。49号で紹介した「英語監獄」の発想に近い。筆者が英語で仕事ができるのは「監獄」暮しが長かったからである。日本の学校で習った英語は全く役には立たなかった。中学3年、高校3年、そして多くの人は短大や大学で2年、使えもしない英語にエネルギーと時間と神経を消耗する。英語教育のシステムはすでに破綻しているのである。破綻の証明も明らかである。文科省もいい加減に地方の工夫に任せてはどうか?しかし、太田市の場合も、問題は日本人教員であり、免許状制度であろう。現行のシステムに安住してきた教員にとって突然の「英語で授業」は到底無理である。英語を母国語とする外国人教員に置き換えるとするならば、先生方の処遇はどうするのか?日本の教育行政に答は出せるか?
  岡山県御津町では株式会社が中学校を開設した。そういう学校の校長をやってみたい、と思うのは筆者ばかりではあるまい。しかし、現行法の下では、この種の学校は「私学助成」を受けられない。それが変化をきらい、既得権を守る行政の「意地悪」である。「特区」構想といえども、「特例」は認めないというのが「既得権論者」の論理であろう。「知恵の競争を妨げず、特区の成果を速やかに全国に広げよ」と日経の社説は強調する。大賛成である。教育行政の工夫はまだまだ足りず、改革の足を引っ張って遅らせていることが多い。そこで今年度から未来予測のアンケート調査は資料収集のアプローチを変えてみようということになった。並みいる「交流会」の発表の中で「優れた実践」とはどんな実践であったか?なぜそれが「優れた実践」と思ったのか?どうすればさらによくなるのか?参加のみなさんには実例に即したご意見をいただくことにした。その選択と選択理由の中から未来のヒントが出て来るのかも知れない。

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