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風の便り

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生涯学習通信

「風の便り」(第50号)

発行日:平成16年2月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. ゲリラの時代

2. 教育はOne Wordか? −「教えること」と「育むこと」−

3. 第42回生涯学習フォーラム報告 「幼児教育・保育における心身の鍛錬」

4. 「風の便り」第50号によせて

5. MESSAGE TO AND FROM

6. お知らせ&編集後記

お知らせ

第44回生涯学習フォーラム
日時: 平成16年3月20日(土)15時〜17時、のち「センター食堂にて夕食会」
場所: 福岡県立社会教育総合センター
テーマ: 行政における子育て支援システム
事例発表者: 交渉中
参加論文: 養育の社会化ー子育て支援の複合的課題(仮題)(三浦清一郎)
フォーラム終了後センター食堂にて「夕食会」(会費約600円)を企画しています。準備の関係上、事前参加申込みをお願い致します。(担当:肘井)092ー947ー3511まで


編集後記   二つの転換
  「風の便り」も区切りの50号になりました。まる4年が過ぎました。この間、様々に、支えていただいたお陰です。みなさんの応援がなければ到底続けられるものではありませんでした。感謝の思いはお伝えし切れませんが、コンピューターの前で深々と頭をさげております。本当に有難うございました。「風の便り」は「月刊生涯学習通信」と銘打っているので、当該月内の執筆と発送を自らに課しました。編集-印刷-発送まで事務局を手伝ってくれた九州女子短大の永渕美法さんの協力なしには定例通信の期限を守ることは到底出来なかったと思います。今回は準備号から50号まで一度も休まずに付き合っていただいた彼女に感想と評価の一文を寄稿していただきました。
  生涯学習フォーラムの打ち合せを兼ねて、毎月行なわれる編集委員会では思い付いた執筆構想を報告し、みなさんからの提案やご意見をお聞きして参りました。「書くことがなくなること」が最大の恐怖でしたが、幸か、不幸か、生涯学習に関わる問題は頻発し、問題自身も複合化しました。現状では、文部科学省を初め、学校や社会教育関係団体も適切な対応を取れていないと感じることが多くありました。診断も、処方も誤りが多く、論ずべき視点に事欠きませんでした。おかげさまで研究者としてはいくつもの新しい概念を提案することができ、新しい分析の視点に辿り着きました。大学に勤めていた時代の何倍も勉強し、何倍もの発見をしております。定例の生涯学習フォーラムに提出した論文は東和大学の正平辰男教授の校正を経て、月刊「嘉麻の里」の大庭星樹編集長のご好意で毎月活字にしていただきました。近い内に公約したまとめの出版を果たすつもりでおります。

二つの転換
  この間、研究上の認識において、二つの大転換をしました。宗教でいえば「改宗」に近いほぼ180度の転換でした。
  転換の第一は「養育」の社会化論です。子育ては社会が責任をもつべきであるという考え方をするようになりました。これまでと全く反対の考えですから自分でも驚いています。
  これまで自分の中で「子育て」は常に「私事」でした。感情の原点は「われわれが産んだ子どもではないか」という一点にありました。民法でいう「親権」という発想を支える感情でしょう。当然、子育ての責任は親にあると考え、そのように自分の子どもを育て、そのように教育論に関する論理を組み立ててきました。子どもを学校に預けたのは、気持ちの上で教科専門に関してだけ部分委託をしたつもりだったでしょう。
  しかし、前号で論じたように、社会は教育を請け負い、介護を請け負い、やがて養育を請け負うようになると今は確信しています。誤解を恐れずに言えば、女性が男性と対等に社会に参画するためには、男性の「協働」が不可欠であるに留まらず、養育の基本条件を社会が引き受けるようになることが必要だからです。子どもを産むことは、女性の特権ですが、男性と同じように社会に参画するためには、「ハンディキャップ」でもあります。女性の「社会参画」の阻害条件を軽くするためには、「養育」の社会化が必要なのです。昨今、人びとの注意を引き付けている「子どもの居場所づくり」は、子どもの安全や活動の条件を整えることが当面の目標だと思いますが、最終的には「養育」を社会化するというところに辿り着くであろうと予見しています。


  転換の二つめは、50号までの執筆を通して、研究者の「枠」を再検討したことでした。これまで惰性で「生涯学習・社会教育」の研究者を名乗ってきました。名詞にもそのように書いてきました。その名詞を捨てることにしました。「専門は縄張り」などという一文を書きながら、自分自身も40年も前の大学の専攻に囚われた発想だったとようやく気付きました。大学との関係を断ち、学会との縁を切って、ようやく研究領域の限定は、自分には、有害であると思うようになりました。現代の問題は、「複合汚染」に代表される通り、複合的、総合的に分析しなければ到底診断も、処方も書けません。高齢社会の問題も、男女共同参画の問題も、少年問題ですらも、教育の枠を越えた、複合的な問題です。複合的な問題に総合的に取り組もうとすれば、研究分野の限定は捨てなければならなかったのです。実際に自分がやってきたこと、やりたかったことは「社会システム」の研究だったと自覚したのです。社会教育の研究者を名乗ったが故に、思考の範囲や視点を社会教育に限定しがちだった事に遅蒔きながら気がつきました。慶応大学に総合政策の学部ができたのも、東京大学に今年から公共政策の大学院ができるのも、組織横断的、分野横断的なアプローチが必要になったという事でしょう。自分の発想は必ずしも「総合政策」や「公共政策」の視点には立っていなかったことに気付いたということです。人びとは"なんじゃ、これ!"というかも知れませんが、今の名詞がなくなったら「社会システム」の研究者を名乗る事にしたいと思っています。僅か50号ではありますが、ささやかな「クリティカル・ポイント」になる予感があります。積み重ねてきた「量」が、自分の「質」を転換させ始めている気がします。


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