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「風の便り」(第50号)

発行日:平成16年2月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. ゲリラの時代

2. 教育はOne Wordか? −「教えること」と「育むこと」−

3. 第42回生涯学習フォーラム報告 「幼児教育・保育における心身の鍛錬」

4. 「風の便り」第50号によせて

5. MESSAGE TO AND FROM

6. お知らせ&編集後記

「風の便り」第50号によせて
  九州女子短期大学  永渕美法
1.「理論」と「概念」の力を示した「風の便り」
  以前、「風の便り」編集者は、第22回生涯学習実践研究交流会総括「『継続』と『力』−『革新』と『伝統』」の中で、 継続が力になることの難しさを指摘している。要約すると "「継続」は多くの場合、「力」ではなく、停滞であり、堕落である。「継続して来た事」を「正しい事」と錯覚するがゆえに、「継続」事業や「伝統」が自らを革新しながら進化することが難しいからである。継続が力になるためには、「進化する継続」つまり、「継続」と同時に新しい「魅力」を産み続けることが重要な要素である。"というものであった。
  「風の便り」はこの第50号に至るまでに、「理論・概念」を武器に、大きな"新しい風"を生み出してきた。例えば、"少年の危機""熟年の危機""男女共同参画""ボランティア問題"等を論じる中で、これまでの原因の分析・診断の間違いを理論的に指摘するにとどまらず、より正確な原因分析・診断を提示、その上で、処方箋を提示してきた。このことは、混迷し、方向性を見失っている現場に、一つの道筋を与えたと考えている。同時に、"間違った原因診断・分析"の上に、"処方"を重ねることの危うさ、現象や原因を細分化しすぎて全体が見えなくなる恐ろしさ、これまでの定説を疑うことなく鵜呑みにすることの弊害の大きさについての、問題提起にも大きな意味があると考えている。
また、「学習」と「体得」、「訓練と教育」、「鍛錬と指導」、子どもの「自律」と「他律」の微妙な区分、「子宝風土」と「児童中心主義」、「有償ボランティア」と「費用弁償」等々、等々の概念の整理も現場に大きな力を与えたのではないだろうか。これらの整理された概念を使えば、複雑に見えた事象が実に明快に説明がつき、今後進むべき方向性が見えてくることがある。その事実に驚くばかりである。
  未熟ではあるが、一応研究者の端くれである筆者が「理論の力」、「概念の力」の本当の威力に気づかされたのは、「風の便り」によってである。論文、書物、報告書、新聞の読み方・見方の視点が多様になっており、以前よりは多面的な見方ができるようになっていることに驚いている。「風の便り」は、個人の「思考能力」を成長させる力も持っているようである。

2.「風の便り」第50号という節目に:
筆者の条件を活かした社会貢献 NPO"健康運動実践支援事業団"の設立
  この継続の力に育てられた筆者としては、新しい考え方、概念を、学習するに留まらせず、どう自分の生き方に反映させられるか、どう社会貢献につなげられるかをまとめることを課題としたいと考えてきた。
  そんな時、"こんな生き方がしたい"と思いながら、書き留めていた電通の吉田秀雄社長の鬼十捉を再び目にした。曰く、@仕事は自ら「創る」べきで、与えられるべきではない。A「難しい仕事」を狙え。そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。B周囲を「引きずり回せ」、引きずるのと引きずられるのとでは、長い間に天地の開きができる。E「摩擦を恐れるな」摩擦は進歩の母。積極の肥料だ、等々と続く。
  「風の便り」第50号記念を一つの転機にするためにも、仕事は自ら創るしかないと考えた結果が、NPO"健康運動実践支援事業団"の立ち上げである。既存の組織に頼らず、できる範囲で、小さな1歩を踏み出すことで、変化を生み出したいと考えた結果でもある。

3.NPO"健康運動実践支援事業団"の目指すもの
研究成果、学科特性を活かしたアウトソーサーとしての機能づくり

目的は二つある。一つめは、積極的地域貢献:アウトソーシング時代に向けたアウトソーサーの供給である。アウトソーサーの選択肢を広げ、地域に少しでも役立ち、大学の存在意義を生み出したい。
二つ目は、学生の指導力を向上させるためのインターンの場を得ることである。"学習"にとどまらず、"実践・体得"の場を持つことは、指導力養成の早道である。
筆者の所属する大学は、若くてエネルギーのあるマンパワーの宝庫である。特に筆者の所属する体育科の学生は、将来に備えて、健康運動実践指導者、エアロビック・ダンス・エクササイザー・インストラクター、福祉レクリエーション・ワーカー、幼児指導者、キャンプインストラクター、レクリエーション・インストラクター、社会教育主事等々、実に様々な資格取得のために日々学習をしている。彼女たちが、実践の場を持ちながら学習を続けられるとすれば、アウトソーシング時代のアウトソーサーになりえる要素を十分持っている。資源に不足はない。
現在、考えているNPOのメンバーは、短大体育科の在学生および卒業生のうち趣旨に賛同した者を対象とする予定である。基本的には、これまでやってきた実績を核にし、より積極的・能動的に取り組む予定である。

4.中心となる活動、まずは、学生指導者の派遣
大学や研究所でさまざまな研究成果が発表されているが、北九州周辺の市町村では、まだまだその恩恵を得ていない。そこで、まずは、学生を派遣し、継続的な支援を実現したい。
中高年向けのプログラムとしては、転倒予防プログラム、介護予防プログラム、生活習慣病予防プログラム等、これまでの研究成果を結集し、プログラムを企画立案し、継続的な実践指導の機会を作り出す。同時に、健康体力増進をする目的を明らかにする支援や、継続の難しい方々へのサポートも積極的に行うこととする。具体的には、公民館の講座の一つに連続的な運動実践のクラス開講、高齢者施設へ出前指導、会社・企業への出前指導を中心にすすめることとする。
子ども向けのプログラムとしては、通学合宿等の指導、キャンプ指導、幼稚園や保育園の運動遊び指導、子育て支援への援助等、貢献の場を見い出す予定である。運動遊びやキャンプ指導の知識を持った指導者として、また、子どもたちのお姉さん役として、モデルになりながら、体を動かすことの心地よさ、快適さを伝え、体力・運動能力の向上に寄与したい。
  また、各地で活躍している卒業生も多い。その卒業生に、"指導者養成プログラム"の企画・立案の段階から実施の支援までを含んだ企画を提供したり、"個人ブランドの起業支援セミナー""キャリアアップセミナー"等の開催や相談・支援業務等も視野にいれたいと考えている。そして、それぞれの地で、彼女たちが活躍し、地域の健康づくりに役立ち、彼女たちが自信をもって仕事ができるとすれば、これ以上の大学の地域貢献はないと考えている。
"学習の場"プラス"実践の場"を同時に持つという実験に成功すれば、ボランティア支援やさまざまな活動の進め方の一つの方向性が見えるのではないかと予感している。また、研究機関であることを利用して、実施した事業にどのような効果があったかについての「追試」も着実に行い、公表していきたい。
 

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