MESSAGE TO AND FROM
11月は体力、気力、忍耐力、そして愛嬌と勤勉のバランス実験となりました。北海道から沖縄まで日本を縦断しました。沢山の方々にお会いし、何種類もの講演や会議をこなしました。文字どおり「生きる力」が試されます。体力だけではダメ。気力だけでもダメ。勤勉が不可欠であり、愛嬌も不可欠で、なによりも「生きる力」を構成する各種要素を総動員して、バランスを取ることに努めました。気侭を抑制し、活動を選別して「体力」を温存できるか?疲労困憊の中で、気力を振り絞って、ニコニコ笑っていられるか?勤勉を積み重ねて次の準備、次の次の準備にすすめるか?熟年の「生きる力」も少年のそれに劣らず重要であることを痛感します。
先々月のアメリカに続いて「やったことのないこと」、「であったことのない方々」、「行ったことのないところ」へ出かけて、時に若い日々のような興奮を覚えました。新しい出会いを通して沢山の収穫を得ました。当方のお礼が間に合わない内に沢山のお便りをいただいて焦っております。いつの間にか、電子メールがなければ決して可能ではない仕事のやり方になりました。今回もまたいつものように編集者の思いが広がるままに、お便りの御紹介と御返事を兼ねた通信に致しました。みなさまの意に添わないところがございましたらどうぞ御寛容にお許し下さい。
★長崎県野母崎町 本村信幸様
不参加者をどうするのか?プログラムが優れていればいるほど、ご指摘の点は生涯学習の泣きどころだと思います。通学合宿も、野外体験も、生涯スポーツも、ボランティアも、選択肢の一つに過ぎません。「パンとサーカス」が圧倒的な威力を持っている現代において生涯学習の競争力は誠に危ういものがあります。それゆえ、参加しないものをどうするのか?、と言う質問は絶えず登場します。しかし、子どもにすらも、生涯学習を「強制」するわけには行かないでしょう。全員参加の野母崎町の樺島合宿は義務教育の延長なのであって、本来の生涯学習ではないのです。義務教育は子どもの問題の全体を抱え込みます。生涯学習は参加者の問題しか抱え込みません。おねしょの自立ができていない子どもの参加は義務教育の延長だからこそ起るのでしょう。したがって、義務教育こそが「通学合宿」を実施すべきなのです。しかし、現在の学校にその意志も、意欲も、時には実施の能力もないでしょう。
「選択原理」の必然
生涯学習は国民に学習を強制しないことから出発しています。そのためにわざわざ「生涯教育」を「生涯学習」に改名までしたのです。それは原理的に個人の自由に関わり、個性の尊重に関わります。選択原理は生涯学習の必然です。したがって、生涯学習を選択しない自由も必然です。結果的に、生涯学習格差もまた必然です。「参加しない子ども」は生涯学習の選択原理がもたらす格差の「結果」を甘受しなければなりません。子どもに限らず成人の場合も生涯学習に代わって、「パンとサーカス」を選択すれば格差は拡大します。自由とは「選択」や「格差」の別名、平等とは、機会の公平に限定しない限り、個性の否定、努力の軽視、一律・一斉主義に重なります。
ご指摘のとおり、サマースクールであろうと、土曜スクールであろうと、通学合宿であろうと、参加しない子どもにとっては体験の意味は関係ないのです。そしていつか文科省が学校の自由化に踏み切れば、筆者のような人間が「進学塾」も「学校」も兼ねた、保護者の要望に応え得る「体験学校」を作って行くのです。
★福岡県宗像市 古野ミワ子様
正論の妥当性
いただいた資料を興味深く拝見いたしました。再び、「政治的妥当性(Politically correct)」の問題を考えました。新聞に掲載された論説よりは、みなさんのグループの指摘が正しいことは明白です。だから、両論を分析するまでもありません。しかし、正論を言えば、結婚が壊れ、一つの家庭が崩壊する時でも、敢えて、正論を言うかどうかは別の問題です。結婚が壊れるかも知れない正論を妻が聞きたいかどうかも別の問題です。人間は正しくなくても生活しなければなりません。分かっていても正論が言えないのはそういう時だと思います。自分自身はもちろん、家族も、友人も満点ではあり得ないからです。研究者として、”政治的にこじれている”問題に近寄りたくないのはそのためです。研究の成果に自信があっても、正直に正論を言えば、抗議の電話が殺到して家族に迷惑がかかることを考慮せざるを得ません。世間は「ばか正直」といいますが、政治的妥当性を無視するのは「ばか」なのです。議論の分野によっては、「街宣車」も来れば、集団の抗議も来ます。「風の便り」が政治や宗教を論じないのはそのためです。
★福岡県苅田町 中園成人様
住民実態調査の件、できることがあれば喜んでお手伝いしましょう。調査の目的、内容をお知らせ下さい。既存の調査で応用できるものも沢山あります。生涯学習や男女共同参画の問題は、基本的に、未来のあり方を問うています。それゆえ、住民の実態から答が出るとは限りません。現状の延長上に未来の答があるとは限らないからです。現状の否定の上に答があるかも知れません。未来への意見を持たない時、調査会社や社会教育の多くの調査が意味のない重複を繰り返しているのはそのためです。暮らしのあらゆる要素が共通化している日本社会において隣の町とそれほど違った実態はないでしょう。未来の展望が語られる調査ができるか、否か?財政難時代の調査はそこが問われると思います。
★長崎県長崎市 藤本勝市様
長崎へ伺うことが多くなりました。応援をいただいた賜物です。草創期の生涯学習実践研究交流会以来の交流が復活して喜んでおります。すでに四半世紀が過ぎました。時には、定例のフォーラムにもお出かけ下さい。どんなに情報化が進んでも、人々の直接接触が基本であることは変わらないでしょう。お目にかかった人々の応援と評価に励まされて毎日を暮らしています。特に、肩書きを捨てて以来、「無印良品」の証明は友人知人の承認が基本です。手厳しい読者に支えられて、「風の便り」も5年目のサイクルに入ります。思いがけぬ郵送料の応援を有難うございました。
過分の郵送料をありがとうございました
千葉県印西市 鈴木和江様 福岡県苅田町 中園成人様 福岡県太宰府市 大石正人様
福岡県春日市 田中久記様 熊本県本渡市 富崎剛章様 長崎県野母崎町 本村信幸様
福岡県星野村 森松 稔様 福岡県立花町 中村富治様 福岡県大刀洗町 谷口由美子様
沖縄県西原町 井上講四様 福岡県庄内町 正平辰男様 東京都東村山市 小久井明京美様
福岡県八女市 杉山信行様 福岡県福岡市 松田 久様 福岡県福岡市 西島彦一郎様
島根県吉田村 松島俊枝様 長崎県長崎市 藤本勝市様 北海道札幌市 笹森千登世様
宮崎県宮崎市 飛田 洋様 大分県臼杵市 常賀博義様 佐賀県東背振村 最初三千夫様
福岡県宗像市 古野浩様 福岡県福岡市 山本智子様 山口県山口市 西山香代子様
福岡県飯塚市 稗田佳子様 福岡県宗像市 山口恒子様 福岡県筑紫野市 相戸晴子様
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