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風の便り

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「風の便り」(第108号)

発行日:平成20年12月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. 「実践」の3類型

2. 「実践」の3類型(続き)

3. MESSAGE TO AND FROM

4. MESSAGE TO AND FROM(続き)

5. MESSAGE TO AND FROM(続き)

6. お知らせ&編集後記

MESSAGE TO AND FROM

 お便りありがとうございました。2009年で「風の便り」は10年目に入ります。一生懸命書いたつもりでも所詮は「大河の一滴」。時々、心細さと無力感に襲われます。そんな思いもあって、区切りの108号はみなさまからのメッセージ特集にしたいと思いつきました。今回もまたいつものように編集者の思いが広がるままに、お便りの御紹介と御返事を兼ねた通信に致しました。独断で編集をしたり、省略させていただいたところもありますが、みなさまの意に添わないところがございましたらどうぞ御寛容にお許し下さい。


熊本県植木町 吉里 力 様

 ご病気にも関わらず、お仕事を続け、お便りを頂戴し、その気迫と気力の前に綴るべき言葉も無く立ち尽くす思いです。当方の僅かの煩悶など贅沢の限りと感得いたしました。購読を続けていただくこと何よりの名誉で、励みでございます。くれぐれもお体を労り、ご自愛ください。あらためてがんばらなくては、と覚悟を決め直したところです。

長崎県長崎市 藤本勝市 様

 過日は、時津町での再会嬉しいことでした。お便りも拝見いたしました。仕事からお引きになって、組織のお世話役だけでは心身がなまりますよ。お孫さんの送りの延長で、同級生の私塾をお開きになってはいかがでしょうか?
 我々が生きて来た軌跡を振り返ると「手応え」の無い人生には耐えられないでしょう。子どもの成長は最も具体的で、明快な手応えです。私塾は私の憧れです。できることなら今からでも開きたいのですが、妻が言うには、私が教え始めた途端、ご近所の苦情と非難が絶えないことは火を見るより明らか、ということで「ゆるし」が出ない状況です。温厚な先生なら子どもも保護者も殺到することでしょう。請け合いますよ。

島根県西ノ島町 玉木和利 様

 今年から小学校勤務となり、「便り」で指摘された「体力・耐性」を基盤にして、「やったことのないことは出来ない」、「教わっていないことは分からない」、「練習しなければ上手にはならない」の3原則を守らなければならないことを痛感しています。職員はもとより保護者や地域の方々にも分かっていただけるよう懸命に説得しながら、実践を重ねております。今後とも読みます。くれぐれもご自愛下さい。

 「10歳までの子育て」実践に立ちはだかるのは、「子どもの主体性」論です。「主体性」を重んじ「自主性」を重んじれば、子どもの言うことを受け入れなければなりません。「受容」論の根拠は「主体性論」です。ご指摘の、「やったことのないことは出来ない」、「教わっていないことは分からない」、「練習しなければ上手にはならない」が間違っていないとすれば、子どもには「させること」、「教えること」、「反復練習」が不可欠です。この時、子どもが「いや」と言い、「きつい」と言い、「面白くない」と言えば、子どもの「主体性」を重んじる限り、子どもの「拒否権」も尊重しなければなりません。多くの先生方が、論理の前段は「分かっていても」、指導現場において、後段の指導実践ができないのは、戦後教育の「子ども主体性」論を「教師主体論」に転換できないからです。「子どもの人権」だけを語る法律論議の呪縛から解放されていないからです。「子」が「宝」である以上、日本の風土は子どもの「主体性」も「人権」も有り余るほどに尊重して来たのです。

熊本県人吉市 桑原広治 様

 「風の便り」は楽しく読んでおります。自分がマンネリに陥りそうなときは、「便り」の指摘で「学び直し、読み直し」を繰り返します。心から感謝申し上げ、更なるご指導をお願い申し上げます。

 過分のお言葉、何よりの励みになります。願わくば、我が実践の「現場」が人々とのご縁でこの先も続くことを祈っております。研究者は「現場」さえあれば、己が依拠する論理の検証ができます。論理や方法が間違っていれば教育の結果は出ません。この一点を忘れないで今年も実践と研究をがんばります。「風の便り」も、進むべきか、引くべきか迷った年の暮れでした。人々の励ましのお陰で前に進むことができそうです。

福岡県宗像市 赤岩喜代子さま

 (前略)107号の「なぜ家事はそんなに辛いのか」を読んで考えました。長く専業主婦をして来た我が身にとってまさにご指摘の通り!の感慨でした。如何にすれば、家事を「よろこび」とし、自分の時間との折り合いを付けて行くかは、体力と知恵と工夫が不可欠でした。もちろん家族の協力と理解も不可欠でした。すでに後記高齢者となった今、自分たちの介護を先に延ばすことが大事な課題になりました。「気力」も、「体力」も、「便り」を読み続ける「頭脳の回転力」も維持しなければと思うこの頃です。

 長年にわたってあなたが支えて下さった「市民学習ネットワーク」事業の場を借りて、先日「自分らしく人生を終るための特別講座」をやりました。細々とした講座でしたが、色々分かり、思うところも多々ありました。春にふたたび挑戦するつもりです。英会話も指導を続けて10年を越えました。年齢差別(?)のある日本では、私の生年月日を見ただけでやがて一本の講演依頼もなくなる日が来ると思います。その時、自分と社会とを繋ぎ続けてくれる「橋」がネットワーク事業だと思っています。2009年は25周年です。「市民による市民のための生涯学習支援システム」を世に問いたいと準備を始めたところです。人間は霊長類ヒト科の動物であると同時に精神の生き物でもあります。体力にせよ、気力にせよ、意志と回転力を失えば、一気に下降することでしょう。子どもには「学べ、鍛えよ」と言いながら、高齢者には安楽や娯楽を追って気ままに暮らせと言う我が国の政策は、気が触れています。老いて安楽に埋没すれば、ますます「よれよれ」と「認知症予備軍」を増やす以外の何ものでもないことが、行政も政治も若い現役世代には分かっていないのです。

福岡県桂川町 城谷登志江 さま

 大河も最初の一滴があればこそですよ。多くの課題を抱える学校ではむなしさに襲われることもしばしばです。でも立ち止まれば何もできないことも分かっているので、攻め続けて行くことにしています。「やればできる」と子ども達に言い聞かせていますが、それは同時に我々教師に対する「負荷」でもあります。また、「やればできる子」に育てるためには、その「やり方」を教え込まなければならないということに先生方が気付き始めた今、その手を緩めることはできません。こうして、また、自分を追い込む1年の始まりになりそうです。本校校歌3番の閉めの歌詞は「鍛え、桂川」です。「鍛え、桂川」実践あるのみです。

 校長先生ががんばって下さっているので大いに勇気づけられております。「学校発家庭教育支援」のプログラムにも、「学校発地域教育力の向上」作戦にも、効果の確信が持てました。最近、頼まれて各地の学校支援本部事業の総括研修に参りますが、具体的に何を支援するのか、どう支援するのか、学校は歓迎しているのか、成果は出ているのか、が分からないままに「やった、やった」の大合唱で終っているところが多いのは予想どおりでした。「やること」と「結果を出すこと」は全く違うということをますます強調しなければならない時代が来ています。子育て支援から学校支援本部まで、会計検査院監査の「不適切支出」にはならないまでも、公金を費やす教育投資のアカウンタビリティは低いと言わなければならないでしょう。
 


 

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