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生涯学習通信

「風の便り」(第108号)

発行日:平成20年12月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. 「実践」の3類型

2. 「実践」の3類型(続き)

3. MESSAGE TO AND FROM

4. MESSAGE TO AND FROM(続き)

5. MESSAGE TO AND FROM(続き)

6. お知らせ&編集後記

3 不作為-前例主義-現状維持-帳面消し

「新しいこと」は何もしない―工夫も、研究も、挑戦も、使命感も欠如しがちで、現状維持が教育界の大勢です

 「現在の仕事で手一杯」、「仕事が増えるのは嫌」、「前例がない」、「なんで俺たちがやるのか」、「給料分だけは働いている」、「研究授業や補助事業は受けないで下さい」等々、等々。

 上記は、「新しいこと」は何もしないときの関係者の主張と言い訳です。
筆者の体験の範囲で言えば、教育界の大勢は「改善」も「革新」も、新しい仕事はごめんだという人々が大勢を占めています。一言で言えば、現状維持が大勢です。理由は単純です。職業上の使命感の欠如、熱意の欠如、エネルギーの貧困が重なっているからです。前例踏襲の帳面消しが精一杯です。それでも「やっている」と主張します。

4 「やっています」、「一生懸命色々やっています」

教育界にも、職業上の使命感があり、熱意があり、エネルギーもある方々は、確かに存在します。しかし、残念ながら、明らかに少数です。彼らは前向きで仕事熱心です。日々の業務も、それぞれに工夫して主観的に頑張っておられることは疑いありません。世間の批判的な問いに対して彼らは胸を張って「やっています」、「一生懸命色々やっています」と答えます。時に、筆者の批判的追求には「怒り」をもって反論します。
しかし、「やっている」だけではだめなのです。社会が当面する課題の中身を分析し、優先順位を決定して「やるべきこと」をやらなければ、資金も、時間も、エネルギーも浪費することになります。的外れの事業は、何よりも無駄が多く、使命を果たしたことにはならないのです。公民館も、学校も優先順位を勘違いした何と的外れの事業に多くの職員の努力を集中している事でしょう!
 それゆえ、問われるべきは実践の前提です。前提を明らかにするためには以下のような問いに一つ一つ答えられなければなりません。

 なぜやっているのか、誰のためにやっているのか?何をやっているのか、どんな風にやっているのか?何が変わったのか?役立っているのか?効果は上がっているのか?等々です。
 実践の前提は5W1Hの一つ一つについて現状の診断をし、診断に基づく処方を作ることです。学校の先生方から公民館職員まで日々の業務の前提のチェックが甘いのです。
 子どもはなぜかくも「へなへな」なのか?地域はなぜばらばらなのか?保育と教育はなぜ恊働してやれないのか?少子化はなぜ止まらないのか?学校はなぜ公金で作った施設を開放しないのか?なぜ学校との連携ができないのか?なぜ放課後子どもプランはとも働きの親の役に立たないのか?なぜ年寄りには勉強しろと言わないのか。なぜ年寄りは遊んでばかりで社会の役に立とうとはしないのか?
 教育に関わる現代の問いは無数に近いのに、適切な問いが発せられず、適切な答も、診断も行われていないのです。当然、処方は「的外れ」になるでしょう。それゆえ、「やっています」、「一生懸命色々やっています」だけではだめなのです。

5  「やるべきこと」をやっています
 
実践の前提を厳しく診断していれば、「やるべきこと」は明らかになります。資源配分の優先順位も自ずから決まって来ます。実践は前向きで、 職業上の使命感も、熱意も、エネルギーも申し分ない筈です。
しかし、診断が正しくても、目標が適正でも、結果が出なければ実践は失敗です。教育事業はさまざまな要因が絡んでいます。酷な言い方になりますが、目標が達成できなければやったことにはならないのです。実践の最大の問題は答が出ないことです。診断が正しくても、実践の中身と方法が間違っていれば結果は出ません。子育て支援でも、学力の向上でも、地域の連帯でも結果が出ないのに、「やるべきこと」を「やった」と言っただけでは、世間の評価は得られないのです。世間がわからずやだからではありません。結果が出ていないからです。あらゆる専門職業は素人のやる事とただ1点で異なっています。それは結果を出す事です

6  「結果が出ています」

 あらゆる実践は結果を出して「なんぼ」です。発想から計画まで、プロセスから関係者の熱意に至るまで、すべてが大事であることは言うまでもありません。しかし、結果が出なければ、あらゆる実践は「9割引」で売らなければなりません。診断も、処方も、内容も、方法も、関係者の努力もすべてが相俟って「結果」に結びつきます。この時初めて実践の有効性が証明されるのです。

 


 

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