2010年の振り返り

 2010年も幕を閉じようとしていますが、皆さんどんな1年だったでしょうか。
 留学中から何となくブログで年末に振り返りの記録を残すようになって何年も経ちますが、良い習慣なのでこのまま続けていこうと思います。ブログを書き始めた頃は独り言のように気ままに書いていましたが、いつからかだんだんと読み手に語りかける感じで、です・ます調で書くようになってからは、内省的な文章を書くのが何となく唐突な感じがして、書きづらさを感じることがあります。書き手の表現技術的な問題もあるのでしょうけど、何か気持ちよく書けるようにできないかなと思います。

 この1年を振り返ってみて、年初は博士論文の追い込みで死にそうな毎日が続いていたのをまず思い出す。かなり論文提出がずれこんでしまい、この頃には終わってるだろうとたかをくくって入れていたシンガポール出張の最中にアドバイザーから修正連絡が入って、夜中にホテルでひぃひぃ言いながらようやく論文を提出する羽目になった。
 論文提出でひと段落したものの、ディフェンスが終わるまでヒヤヒヤしながら神経衰弱な日々が続いた。人生崖っぷちもいいところで、我ながらよく乗り切れたなと思う。もう一回同じ目にあっても乗り切れるかどうかは自信はないけど、もう一回やるとしたら、そういう窮地に陥らないように、もう少しうまくやれるんじゃないかという気はしている。
 もともと大した力量もないのに、人の縁と運に恵まれて留学できたというのに、何か自分の力を過信していたところがあって、そのせいで留学生活全般にいろいろとダメなところが多かった。自分への過信に足を引っ張られた留学生活だったと言ってもいいくらいだ。博論も変なところで独自色を出そうとして、結果として大事なことがおろそかになって無駄なことが多くて、最後まで苦しむ羽目になってすごく反省させられた。とにかく終わってよかった。
 ディフェンスを終えて帰国してすぐ、今の職場での仕事が始まったので忙しなかったけれど、”Life after dissertation”を満喫してきた。博士論文を抱えていない人生はこんなにも平穏で幸せなのかと、肩の荷が下りるとはまさにこのことか、というくらいに生きるのが楽になった。仕事でかなり厳しい局面もあったはずなのだけど、それもあの苦難の日々に比べれば大したことではない気がする。きっと以前は苦難に感じていたであろうことも、たいした苦難には思えなくなった。
 今年の後半は、自分の研究アジェンダを前進させるための試行錯誤の日々だった。給料の出ている仕事を優先しつつ、給料の対象外の自分の研究時間を確保すべく模索する毎日が続いた。今の仕事は面白く、それ自体は何も不満はない。しかし、たとえ研究者として駆け出しであっても、自分の掲げた研究を前進させる使命を置き去りにした生活を送ることは苦痛だし、使命を放置した毎日を送ることを余儀なくされるのであれば、研究者の看板を下ろして普通に組織人として生きた方がよほどよい人生を送れるだろう。
 かといって、時間がなくても工夫次第で何とかなることもあるし、逆に無制限に時間があっても無駄遣いしてしまうだろう。とにかく何とか前に進もうと、無理やりに学会発表にエントリーしたり、講演を引き受けたりして、やらざるを得ない状況を作ってきた。本気で求めれば何とかなってくるもので、だんだんとよいペースができてきた。むしろ限られた時間だからこそ大事に時間を使うようになったし、そういうなかでやってきたことで得るところも大きかった。非常勤で大学で教えている経験や、業務で担当した研修運営の経験がうまくつながってきて、よい具合に学ぶことができたのもありがたかった。
 そんなこんなで1年が過ぎて行った。あまりに変化が大きくて今年一年のこととは思えないほどだ。昨年も一昨年も、1年前や半年前の自分がわからなかったことを分かるようになった感じがしていたけど、今年はさらにそういう感じが強い。つい最近までそんなこともわからなかったのかという気にさせられることもあるけど、そういうわかるようになったことの一つ一つが成長なのだろう。前の年よりも自分が成長した気がするのはずっと続くのだろうか、それともある時点で成長の終わりを感じるのだろうか。研究者という仕事は、探究し続ける意志が仕事に直結しているところがあるので、自分のような性分の人間には向いているのだと思う。

 などと、今年を振り返ってこんなことをつらつらと考えながら、年の瀬を迎えております。
 今年も多くの方にお世話になりました。お世話になりっぱなしの方も、ご期待にこたえきれない方もいて、心苦しい限りです。来年はさらに精進して、これまで積み重ねてきた取り組みの成果をアウトプットにつなげていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。