アマゾンのトップページに、Amazon Kindle(アマゾン・キンドル)が日本でも購入可能になったという告知が出て、あちこちのニュースメディアで取り上げられてます。Engadgetのようなところで紹介されるのは普通にしても(記事)、このニュースは一般の新聞系メディアのサイトにも即座に広まっているようです。
実は今年の3月末、帰国前にKindle2を買って日本に持ち帰って細々と使っていて、いつかネタにしようと思ってすっかり忘れてました。なのでこのタイミングに便乗して、実際の利用者としての感想を交えた参考情報を少しお届けしようと思います。
スペックの話とか利用レポート的なネタは、ガジェット系のライター諸氏、アルファブロガー諸氏に譲るとして、ここでは「要はワタシにとって買いなの?」という話を簡潔に。
というのも、現時点ではこのキンドル、まだ万人向けと言うよりはかなりユーザーを選ぶところがあるので、売り文句につられて買うと、ギャーしまったぁ、と激しく後悔することになるかもしれません。なので、思いつく範囲でどういう人にお勧めかを挙げてみました(注:あくまでUS版のKindle2を2009年4月~9月まで使っての個人的な印象です。後のバージョンやOSのアップデートがあった場合は様子が違ってるかもしれません)。
これは買いな人:
このバージョンを買っても損した気にならない人は多分下記のような人たち。
・とにかく新製品を真っ先に使ってみたい人、スネ夫
買って手にした時のインパクトはけっこう強烈なので、新しい物好きの気持ちを十分に満たせることができるというだけで買いかも。それとできればそのインパクトを味わうために2万円ちょっとはさほど惜しくない人の方がなお良いです。その後も使い続けるかは下記の属性もあるかどうか次第。
・英語の活字を読みたくて、かつ消費的な読書ニーズの人
英語の人気小説とかベストセラー本とかを日常的に読むのが好きで、日常の娯楽として楽しんで英語の活字に触れたい人。このタイプの人は、1500冊分保管できて新聞なども常時アップデートされたものが読めるというこのキンドルの売りの恩恵を最大限に受けられるので、不便なところも目をつぶることができるでしょう。
・満員電車で通勤など、モバイルニーズの高い英語読書好きな人
上記の属性を持ちながら、かつ毎朝新聞広げるのも苦労するような通勤をしている人はさらにキンドルの恩恵に預かれるでしょう。
・普段すでに他のモバイル端末で英語読んでるんだけど不満があって、充電するのを忘れがちな人
他のモバイル端末に比べて、充電はかなりもつし、とにかく軽いので、読書量の多い人は普段から二つ持ちでも十分いけるでしょう。
次のバージョンまで待つべき人:
興味はあるんだけど、今回は購入を見送った方がよい人は多分下記のような人たち。
・興味あるけど、Amazon.comのKindle紹介ページの英語を読むのも面倒くさい人
現在は英語コンテンツしかないので、日本語コンテンツが利用可能になるまで待った方がいいでしょう。このツールはその面倒くささを解消してはくれません。
・Amazon.comのKindle紹介ページを読んで、実用的な面にひかれた人
キンドル2になって、機能面がかなり充実して使いやすくなったようなことを書いてあるのだけども、まだβ版チックなところが結構あって、使い勝手的にはかなりモサッとしている印象で、実用性の面ではもう一歩と言うところ。反応速度の速い他の端末に慣れた人には、普段使いするには結構イライラするかも。自前の文書をキンドルで読める、という機能も、キンドル用のフォーマットにいちいち変換しないと利用できないなどの面倒くささもあったりして、実際のところは紙で持ってた方が楽、というところが解消できてません。音声での読み下し機能はちょっと使えましたが、最近はAcrobatにも読み下しは標準搭載されているので、これも外出時利用ニーズがないとさほどの強みではないかも。
・英語の情報を得たいけど、生産的な読書ニーズの人
バリバリ付箋貼って線ひいて、引用して、何か書いたり考えたりと生産活動のための読書をしたいという人には、そのための機能が付いているようで実はそれほど使えないのでがっかりするかも。Engadgetに「米大学が講義にKindleを導入してみるも、不満集中」という記事が出てますが、利用しての印象としてはこの学生たちの不満には納得です。分厚い教科書が劇的に軽くなるというのはありますが、授業の教科書を利用する端末としては、まだまだ今のキンドルは二歩も三歩も使い勝手が悪いです。
買わなくていい人:
多分興味すら持ってないと思うけども、まかり間違って何となく買ってしまうと一番後悔しそうな人。
・そもそも本を読まないけど、こういうのがあったら読むようになるかもという人
将来はわからないけども、今のキンドルはすでに確固たる読書習慣があって、本がかさばらなくなることだけでもありがたく感じる人向けの製品。なので、過度な期待はせずに少し待って、自分と同じくらい本読まない友達が買うくらいに一般層に普及してからゆっくり買うとよいでしょう。
・読書好きでも、他のモバイル端末の読書で間に合ってる人
ケータイとかスマートフォンのような小さい画面で読書ができる人。すでにケータイ小説読んでるデジタルネイティブな若い世代や、他のモバイル端末をゴリゴリ使っているヘビーユーザーの読書好きには、どんなに機能が充実したとしてもキンドルはおそらく必要ないです。キンドルのようなある程度のサイズの画面の端末で、普通に読書するのに近い感覚でペラペラとページをめくって読書したいニーズというのは、ちょっと年齢が上めのデジタル移民層なのではないかと思います。実際キンドルのメインユーザーは中高年の読書好きな人だそうです(記事)。
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まだいろいろ書ける気もしますが、今回はこんなところで。端的にいえば、キンドルはいったん身についた情報行動が変えられないデジタル移民な中高年層や、移動が多くてハードコアな活字中毒な人向けの製品だと捉えた方がよくて、iPhoneなどの若い層向けのデジタル機器と同列に捉えない方がさまざまな判断を誤らずに済むのではないかと思います。
アマゾンがキンドルで狙っている書籍流通のモデルを変えるという試みは、競合の端末も出てきていて将来的にはそちらへ向かっているようですが、今はその普及とサービス整備のサイクルをグルグル回し始めたところでしょう。アメリカでも「キンドルブーム」と言うほどものすごいブームになってる感じはしなかったので、その辺も話半分で割引いて考えた方が良いかと。