JSET参加記: Day 2

 JSET全国大会2日目です。2日目午前の一般研究発表は、サイバー大学の教務や運営部門の皆さんの発表、ワークショップセッションの発表数本、それと専修大学の望月先生の発表を聞いてきました。午後は中原先生プロデュースのシンポジウム、夕方から懇親会とその後に催されたワカモノ飲み会という日程でした。


 サイバー大学の活動については、文科省からの設置基準に関する指摘や株式会社立大学の経営の難しさなど、風向きの厳しい話の方が一般報道では目立つ感じがありますが、今回の発表からは教務や運営に携わるスタッフの方々の熱意あふれる取り組みの様子が伺えました。講座設計や教務管理面は、アドバイザーとして熊本大学の鈴木先生が監修されており、インストラクショナルデザインの知識をベースにした取り組みが進められています。講座設計書の改訂や質改善、制作コスト管理の取り組みなど、日々の授業運営を研究的な知見として発表されていました。大学の実験的なところをうまく研究として扱っていくとこれからもいい研究と実践の循環が生まれそうです。
 ワークショップセッションでも良い発表が行われていて、いずれもあとで少し詳しく見てみたい内容でした。午前最後に聴きに行ったのは、専修大学の望月先生の発表で、批判的読解を支援するツール「eJournal Plus」の話でした。テキストファイルから引用や図式化が手軽にでき、読んで考えたことを視覚化することで、批判的な読解の支援を行うという考え方で開発されたツールとのことです。東京大学のマイクロソフト先進教育環境寄付研究部門 (MEET) のプロジェクトで開発されていて、ソフトウェアは無償公開されてます。公開されたときに耳にしてましたがなかなか触れる機会がなかったので今回は良い機会になりました。ぜひ使ってみたいと思います。
eJournalPlus ソフトウェア紹介とダウンロード
タブレットPCを使って「文献を批判的に読む訓練」,東大が授業を公開 – ニュース:ITpro
ITpro SPECIAL – Visual Studio 2008,本格始動!Vol.2 [Partner Interview]「“読解力ビジュアル化”アプリケーション!?」開発秘話に迫る

 午後はシンポジウム、「変革をささえる教育工学:サスティナビリティとスケーラビリティ」というテーマで、安田講堂を会場にした2時間45分のセッションでした。司会進行は東京大学の中原先生で、よく構成が練られていて、議論方向付けや論点整理の行き届いた形での進行でした。コメンテーターの神戸大学の松尾先生、産能大学の長岡先生のコメントは、松尾先生が個々の事例について組織学習の枠組みで整理された内容で、長岡先生は教育工学という学問分野の存在意義を考えさせられる迫力あるメッセージのこめられたコメントでした。事例提供の先生方も、長年実践研究やFDに取り組んできて積み上げてきた知見にあふれていて、それぞれに考えさせられるものでした。
 シンポジウムやパネルディスカッションのような形式は、登壇者も聴衆もストレスがたまる内容になってしまうことが多いのが普通ですが、企画された中原先生はそういう問題点を改善しようとする配慮が随所に見られました。イシューセッティングから議論の進行まで、結構念入りに準備していたのではないかなという印象で、このような構成を良いなと思っても準備にある程度気合を持って臨まないと、手軽に真似できないところもありそうです。テーマに込められたメッセージにも、この場で生まれる即興的な知を尊重した進行にも、シンポジウムの組み方としてお手本となる要素が豊富なとてもよいセッションでした。
 その後は地下の学食に移動しての懇親会。久しぶりにお会いする先生方と歓談でき、帰国して程ない身としてはよいキャッチアップの機会でした。その後のワカモノ飲み会は、今回初参加でしたが、JSETの恒例行事となっているようで、たいへん賑やかな若手コミュニティがすでに形成されているようでした。ビタハピを駆使して新しい人と知り合いになれるように設定されていたのがうまく機能している様子で、新たな知り合いがたくさんできて、初参加の身でも楽しく盛り上がることができました。
 終日多くの方と話をしてだいぶ疲れてきたところで2日目も終了。最終日の3日目へ。