早いものでもうひと月近く経ってしまいましたが、8月9~11日に愛媛大学で開催された、CIEC(コンピュータ利用教育協議会)の年次大会「PCカンファレンス2009」に参加してきました。学部時代の研究の発表をして以来だったので10年ぶりくらいの参加でした。今回はシンポジウムのパネリスト参加と、自分の研究発表のための参加でした。
飛行機も高い時期だということもあって、今回は前日夜から夜行バスで移動して、当日の午前に松山に入り。午前に行われた学会長の妹尾堅一郎先生の基調講演を目がけて到着する予定だったのですが、夜半からかなり雨が降っていたのと高速割引の影響もあってか、関西近辺のどこかで渋滞に巻き込まれてバスが遅れてしまい、残念ながら間に合わず聞き逃してしまいました。
午後一番で出番のシンポジウムでした。「デジタルネイティブが学ぶ情報」というテーマで、4人のパネリストそれぞれの立場からデジタルネイティブの学びや情報行動について話題提供がありました。僕の方からは、拙訳書「テレビゲーム教育論」と「デジタルゲーム学習」ででてくる「デジタルネイティブ」と「デジタル移民」の話を中心に、次のような要旨の話をしてきました。
・デジタルネイティブやネット世代と呼ばれる世代は、タプスコットの分類によると1977年以降生まれで、生まれた時からデジタルメディアが身の回りにある環境で育った人々のことを指している。デジタル移民はそれ以前の生まれで、後からデジタルメディアに触れた人々のことで、メディアに触れる過程で身に着いたアクセント(メールを印刷して読む、「チャンネルを回す」と言ってしまうなど)を持っている。
・デジタルネイティブ」は、成長過程において触れたメディアの影響が上の世代と異なっており、その影響の違いがスピードや思考プロセス、関係性やテクノロジーに対する態度など、情報活動のさまざまな特徴として捉えられている。
・デジタルネイティブは、上の世代のメディア史と異なるメディア史を経験しているのであって、単純な「今の若い者は・・」という議論とは切り分ける必要があるし、影響を与えたメディアの性質からくる質的な変化に着目する必要がある。
・すべての若者たちが同じメディア経験をしているわけではなく、同じ世代の中でも育った環境によって「ネイティブ度」に格差が存在するし、日米でもデジタルネイティブの持つ性質には差があることに留意する必要がある。
・映画やマンガ、アニメなど、デジタルネイティブを理解するための手段は豊富にあるので、うまく活用しながらネイティブたちとどう接していくかを考える機会を持つとよいのではないか。
このPCカンファレンスは大学教員だけでなく、小中高の教員、生協の職員の方たちも多く参加していることもあって、質疑応答で出てきた出席者の論点もさまざまで、それぞれの立場でこのテーマのとらえ方が変わるのだなと興味深いところでした。
翌日の研究発表の方は「探索型歴史学習プログラムにおける相互学習原理を用いた学習支援方法の研究」というタイトルで発表してきました。ここ数年、シリアスゲームの話をする機会はしょっちゅうありましたが、実は自分の研究を学会発表したのはかなり久しぶりでした。まだデータ分析が追いついてなくて、説明がもうひとつ消化不良な感じになってしまいましたが、聞いていただいた先生方からいくつかよい指摘をいただいたので、今月のJSETの方での発表の時には改善して臨もうと思います。