自主制作した教材をニンテンドーDSへ配信して授業やイベントなどで利用できる仕組みが提供されるそうだ。同じく、少し前に施設ガイドサービスの記事も出ていた。
任天堂、「DS」の用途拡大 学校で自作教材を配信 (Nikkei net)
東京ディズニーリゾート内の商業施設、DSが「ガイド」 (Nikkei net)
使ってみたわけではないので、どう評価するかは使い勝手や何かを加味した上で考える必要があるのだけれども、この仕組みについてどう考えるかは、教育メディア研究のテーマとして面白いと思う。ケータイでも同様のことはできるだろうし、普及の度合いから見ればケータイの方がまだやりやすいところはあるかもしれない。この手の話は、使いやすいツールがパッケージとして提供されるかというところと、現場で利用する際の使い勝手にかなりのところ影響される。
用途として、これで何ができるかを考えるのも面白い。授業の確認クイズだけやってもあまり面白くない。従来型の教室授業をやる中で補助的に取り入れるやり方は、実際には思うようにはうまくいかないと思う。授業中に質問を送るとかいったことはケータイでもやっている事例はあるものの、このスタイルが普及しないのは入力端末としての使いにくさや教育する側がうまく使いきれてないところにある。目新しさとデータの処理のしやすさ以上の付加価値を出すには、学習活動のデザイン自体にかなり手を入れる必要が出てくる。授業の時に配布して、授業の後に回収するというやり方だと制限が大きく、そういう形であればミュージアム見学やフィールドワークのような教室外活動での利用の方がまだやりやすい。
教育メディアの普及の観点からみると、もともと教育の場で利用するモバイルメディアが「DSでないといけない理由」はない。むしろこういうサービス提供やそのニュースを通じたパブリシティによって「DSを使う理由」が積み上がっていって、気がつくといつの間にかDSが教育メディアとしてご指名を受ける状態になるのかもしれない。もともと敵視されていたゲーム機が教育の場に入り込んできて、逆により実用的な携帯電話が学校で必要な学習メディアとして認識されるチャンスを逸しつつあり、最近では持ち込み禁止などと敵視されるようになってきているのは対照的だ。
こういうものについて「面白いことができそうだなぁ」とは誰でも考えるし、一つ二つアイデアを思いつくことはできるかもしれない。しかし実際にそれを実行して成功するのはものすごい労力が要る。それにたとえ一つの事例がうまくいったとしても次になかなかつながらない。今までそうやって「面白いこと」が出てこないままに消えて行ったメディアやサービスも数知れない。用途開発にも普及にもいろいろと障壁があるわけで、それらを乗り越えるには研究開発の努力が必要になる。この事実は教育の世界で軽視されがちだと思う。