シリアスゲームフォーラムと授業のこぼれ話

 今週は水曜にスリーロックさんのところで開催しているシリアスゲームフォーラムの2回目と、木曜に工芸大で担当している「シリアスゲーム論」の2回目の授業があった。シリアスゲームフォーラムについてはシリアスゲームジャパンの方に記事を掲載した。
 今回のフォーラムは、僕は司会進行で、ゲストスピーカーのコーエンさんが話す内容にその場で訳と注釈を入れるという役回りで参加した。こういう形でセッションをやったのは初めてだったのだけども、これはなかなか忙しかった。自分が理解していないものはその場では訳せないし、聞いている人に馴染みのない話題にどこまで注釈を入れればよいかというさじ加減も推し量りながら話す必要があって、いろいろと気を遣う。職業で通訳やっている人というのは大変だなとつくづく思った。よかった点としては、ゲストを呼んで話してもらって自分は進行役として参加するスタイルだと、自分が内容を用意して話すのと違って自分独りではカバーしきれないことを学習できるし、その分野の知識を持った人の考えによい形で触れることができる。今回はその良さを存分に味わった。
 フォーラムの翌日は工芸大で「シリアスゲーム論」第2回。厚木キャンパスまで通勤に2時間近くかかるのが厄介なのだが、週1回だし夕方の授業なのでそんなに電車もバスも混んでないのがありがたい。今回はゲームと学習についての授業。教育方法にあれこれ工夫を盛り込もうとしているのだが、まだ慣れてないこともあって工夫すればするほど手間がかかる状況でイメージしているところまでは準備が追い付かない。やりたいことをザクザクとリストラしながら授業に臨む。
 こんな風にある程度の人数を教える教師の立場になってみると、ラーニングマネジメントシステム(LMS)のありがたみを感じる。LMS自体は直接教育の質を高めなくても、作業を効率化して質を高めるための活動に時間が使えることで、結果的に提供する教育内容の質は上がる。LMSを使う意味の第一歩はそういうことなのだろうと思う。当然その前提として、教育の質をよくしたいという意欲とビジョンがないとダメなのだけども。今は全部紙で書かせて運営するスタイルなので手元の紙が増えて困るし、その管理に時間をとられるために提供できる教育内容に影響しているような状態だ。
 いろいろと知恵の絞りどころがあって、授業は準備も実践もとても楽しく担当させてもらっている。今までは学習活動の青写真を描いたり教材を開発したりという活動が中心で、自分が直接教える場にいる機会は少なかったために味わえなかった楽しさがここにある。講義しているだけだと学生の反応は見えにくいのだけども、ワークショップで議論するスタイルにすると様子はずいぶん変わる。ワークシートで自分の考えを書かせて見ると、学生たちは意外とよく物事を考えていてモチベーションもあるし、みんな結構見どころがある。教えるこちら側にすれば、反応がいちいち新鮮なので、どこをとっても楽しさがある感じ。
 レクチャーが少し長くなると寝てしまう学生もいることはいるのだけども、自分の学部生時代を思い起こせば文句を言う気にもならない。自分自身、どんなに話のうまい先生の講義でも聞くだけの状態では持たずに寝てしまう学生だったので、気持ちはよくわかる。それにデジタルネイティブの話にも出てくるように、楽しいインタラクションは今の学生にはさらに重要な要素なのだろう。
 授業はこれから、シリアスゲームの企画やデザインの話に入って行きながら、並行してグループプロジェクトの活動やゲストセッションが続いていく。ただハードなだけではお互い苦痛だし、だからと言って手を抜くととたんにつまらなくなってしまうので、教える側にも学ぶ側にもハードファンな授業の場にしていこうと思う。