これはまさしく、「ゲームの教科書」

 「ゲームの教科書」(馬場 保仁、山本 貴光著 、ちくまプリマー新書)を読んだ。
 本書は、セガの「プロ野球チームをつくろう!」などの人気シリーズのディレクターとして知られる馬場保仁さんと、コーエーで「戦国無双」などを手がけたゲーム作家の山本貴光さんの二人によるゲーム開発の入門書。構成は次のようになっている。



第1章 ゲームってなに?
第2章 ゲーム開発ってどんな仕事?
ゲーム開発の手順
ゲーム開発にかかるコストとリスク
或るゲーム開発者の一日
第3章 ゲーム開発者になるには?
ゲーム開発者への道
なにを学んだらよいか
就職活動のためのヒント
第4章 一カ月でゲームを作ろう!

 ゲーム開発のプロセスや、ゲーム開発者の仕事の実際について、豊富な例や噛み砕いた表現を用いてわかりやすく解説している。開発の技術的な話に偏らず、単なる業界紹介にとどまらず、ゲーム開発の仕事をシンプルに説明していて、ゲーム業界で働く大変さも面白さも簡潔に説明している。ゲーム業界に入りたい人たちが、この仕事がどんな感じかをイメージできて、前向きにゲーム業界を進路として考えられるようにちょうど良いバランスで丁寧に書かれている。
 解説されているゲーム開発の進め方や考え方は、ゲーム業界だけでなく開発が伴う他の業界にも重なるところはあるし、この業界を目指す人でなくとも参考になるところがあると思う。著者の言い回しや説明の焦点の当て方には「ある程度の規模の開発プロジェクトで、全体を見る立場で、いいゲームを開発した経験のある現役開発者」だからこそ含まれている要素が多いところも本書の特長となっていると思う。
 また、有名ゲームの開発者だからといって、変に格好つけず、成功物語のような話にもせず、タイトル通りに教科書として読んでもらえるように書かれている点も非常に好感が持てる。類書に見られるような「こんなにひどい業界だけど、私は好きです」的なひねくれた愛情表現はせず、率直にゲーム業界の仕事としての面白さと大変さを表現することに努めている。著者たちのそういう姿勢から、ゲームの仕事や業界への愛情や、この業界をよりよくしたいという素直な気持ちがにじみ出ている。
 優れた同業者の人たちからすれば、本書の内容は当たり前だったり、物足りなかったりするのかもしれないが、ゲーム業界であれどの業界であれ、優れた開発者というのは一部であって、多くはプロとしてやっていても我流で仕事の標準化ができてなかったり、中途半端な知識でやっていたりする人は少なくない。優れた開発者になる知識や経験を積める環境にいなかったり、ゲーム業界でよい経験を積むための階段にうまくたどりつけない若者たちもいるだろう。本書はそういう若い開発者の卵たちに向けたもので、その役割として過不足ないちょうどよいバランスの著作に仕上がっている。この業界に関心のある人には間違いなくおススメしたい一冊だ。