慶應SFCの上山信一教授の研究会にお招きいただいて、ゲストスピーカーとしてシリアスゲームの話をしてきた。
今回SFCに行ったのは何年ぶりだっただろうかと記憶をたどってみてもなかなか思い出せず、帰りながらようやく、留学前のMCC時代、池田靖史教授の研究室に当時担当していたプロジェクトの打ち合わせで伺って以来だと云うのを思い出した。なので約7年ぶりのSFCだった。
SFCは昔のイメージほど遠くなかった。品川から湘南台まで50分で行けるようになっていて、都心からの距離がずいぶん近くなった感がある。湘南台の街は開発が進み、キャンパスも以前よりもずっとキャンパスらしくなっていた。キャンパスの中は何と言うか、学生の生活感が根付いた感じというか、以前のキャンパスの無機質な生活感のない感じから、だいぶ学生の生活するキャンパスという感じになったという印象を受けた。特に研究棟の二階の通路の柵に所狭しとびっしり布団が干してあったのがやけにそういう雰囲気を醸し出していた(10数年前はせいぜい寝袋数枚だった)。
日本でシリアスゲームの話をするのは、しばらくブランクがあって、1年くらいやってなかったのだが、今回話してみて、ここ1年で話すネタがずいぶん増えたことを実感した。以前は一生懸命ネタを詰め込んでデモもやってようやく60分や90分の持ち時間が埋められる感じだったので、そういう準備の仕方のクセがついてしまっているのだが、もはやそれでは盛り込み過ぎで情報量が多過ぎになってしまうことに今回気付かされた。シリアスゲーム研究をしている学生チーム以外の受講者たちのために、もう少しペースを変えてもよかったなと後で気づいた。この辺のペース調整は、講演の場数が少ない上にブランクが長いと勘が鈍ってなかなかうまくいかない。概論的な話をする時は、ポイントを絞って、軽くデモを入れながら話すくらいの方が聞き手には優しいには違いないので、今後は少しスタイルを考え直そうと思った。
話の途中で、ゲームの話をしてもピンと来てない感じだったので、学生たちのゲーム経験を聞いてみたら、案の定ほとんどの学生がゲームで遊んでない。DSも持ってない。ケータイゲームもしない。今回の訪問のきっかけを作ってくれた、シリアスゲームのビジネスモデルを研究している学生たちはそこそこゲーマーらしいのだが、それ以外はほんとにゲーマーゼロという感じだった。
まあ僕も学部生時代は全くゲームをしてなかったし、SFC生でかつビジネス研究の研究会にいる学生たちなので一般的な日本の大学生とは違うところが多分にあるとは思うが、それにしてもほんとに今の学生は普通にゲームをしないのだなと思わされた。ゲーマーがマイノリティになっている風景というのはこういう感じなのだろう。
この辺りの感じは、アメリカの大学生とは全く状況が違う。普通の大学生の娯楽の選択肢としてゲームが含まれる。何人かと話せば、普通の女の子からWoWやってるとか、FF好きだとかいう反応が返ってくるし、男子学生たちは最新のゲーム情報を結構カバーしている。それに近所のおっさんたちと話しても、ゴルフやテニスをやる人たちと同じような感じで、趣味でゲームやってる人たちも多くはないがそんなに珍しくもない。そこら辺の職場に何人かはすぐに見つかる。
今回学生たちと接してみて、日米の学生のゲームに対する感覚のずれを自分の中で調整できてないことに気づいたのはよい経験だった。上山先生や学生たちとのやり取りの中で、今後の活動の示唆をいくつか得ることもできた。シリアスゲームが学生の研究テーマになるようになったというのはシリアスゲームの普及が進んできたことの一つの兆候だろう。シリアスゲームに関心を持つ学生たちの関心の芽を伸ばしていく活動は、今後も何かよい仕掛けを考えながら力を入れてやっていきたい。