ゲームの持つ強み

「ウルティマ・オンライン」などの人気MMORPGのゲームデザイナーとして知られるRaph Koster氏が、以前行ったGames for Changeのスピーチについてブログで言及していた。
Games for Change Closing Address (Raph’s Website)


 彼のウェブでは、このGames for Changeカンファレンスでの講演をPodcastで聞ける。英語も難しくないのでぜひ聞いてほしい。質の高いゲームタイトルを生み出すことのできるゲームデザイナーの立場から、ゲームズ・フォー・チェンジ、シリアスゲームの開発における重要なイシューを指摘している。たとえばこれ。
「ゲームが持つ潜在的な強みの一つは、複雑な問題を分析しやすい形で提示できること」(ラフ・コスター)
 おそらくいいゲームを作るゲームデザイナーからすればごく基本的なことなのだろうが、コスターが指摘しているように、実際に開発されるシリアスゲーム、エデュテインメントゲームの多くは、この点が抜け落ちている。簡単なものを簡単に提示するのは芸がないし、わざわざ手間をかけてゲームにするまでもないような程度の低いことを教えようとしているものだったりする。
 複雑なものをわかりやすく提示するには、作り手の方がその複雑さを紐解いてモデル化し、構成し直す作業が不可欠になる。作り手の力量が追い付いていなければこの部分が弱くなり、結果としてゲームがつまらなくなるか、学習要素が不十分なゲームになってしまう。エンターテインメントゲームのデザイナーでも、これを理解して実践できる人というのはごくわずかなのだろう。
 僕もずっと以前から講演などの機会には何度も指摘してきたが、ただゲーム化すればいいのではなく、いいゲームにしなければダメなのだ。そして、いいゲームを作るには根気と手間がかかる。これは映画でもアニメでもマンガでも何でも同じことだろう。そして手を抜いてよいところとそうでないところのバランスをとって、制約下で最大限よいものを作る必要があるのは、ゲーム開発に限らず、マネジメント全般に共通する課題だ。そう考えていけば、シリアスゲームだからと言って気負わなくてもよいところと、シリアスゲームだからこそ気を遣わないといけないところが見えてくる。まあ、そこまで考えてやっている人はまだそんなにいないのだが、だからこそ今やっている人にはチャンスだったりするわけだ。