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生涯学習通信
「風の便り」(第94号)
発行日:平成19年10月
発行者:「風の便り」編集委員会
1. 「基本的生活習慣」と「コミュニケーション能力」をつければ「生きる力」がついたことになるか!?
2. 「基本的生活習慣」と「コミュニケーション能力」をつければ「生きる力」がついたことになるか!? (続き)
3. 別記 鳥取県大山町の挑戦
4. しつけの回復、教えることの復権 ―幼少年のしつけ原理-「他者」を前提としたしつけー
5. MESSAGE TO AND FROM
6. お知らせ&編集後記
● 別記 鳥取県大山町の挑戦 ● 1 教保一元化-「保教育」の創造 鳥取県大山町は小学校で頻発する「小1プロブレン」などの現実問題を考慮して、町立保育所を教育委員会管理下に吸収し、幼児教育課を新設しました。構想の眼目は「保育」と「教育」を総合化する『保教育』にあったと言っていいでしょう。大山町では統合の目的を「保育その他の子育て支援事業を、教育的側面を重視しながら総合的・系統的に進めることを主なねらいとした」と謳っています。 2 「幼児教育課」の所管と任務 新設された幼児教育課は保育所、放課後児童クラブ、要保護児童対策、家庭教育支援総合事業などを所管し、課題の「保教育」の振興については保育所経営の変革、保教育関係者の連携システムの創造、保護者・保育士の研修、子ども教育振興計画」、「子ども教育プログラム」の策定を開始しました。 3 子どもの実態と育児環境の診断 最大の課題は、保教育は「保育」と「教育」を統合して、具体的に何をやるのか?いつまでにやるのか?どのようにやるのか?ということになります。換言すれば、子どもの成長に即した発達課題ミニマムの提示にあります。 (1) 現状の診断 課題を明らかにするためには子どもの現状を具体的に診断する必要があります。当然、診断者は保育士、教職員など日々職業的に子どもの発達支援に関わっている人々になります。関係者は「子どもの実態」、「子どもを育てている保護者や家庭の実態」、自分たちの指導実態や指導システムの問題点をアンケート方式で抽出しました。 (2) 診断結果は共通 調査が氾濫している現在改めて地域ごとの調査は必要ないというのが筆者の考えですが,予想通り、大山町の診断結果も全国各地で指摘されている状況と共通でした。以下は大山町のまとめです。 @ 子どもの実態: 基本的な生活習慣は確立されていず,結果的に生活リズムもマナーも身に付いてはいませんでした。領域別の特性として注目されたのは,「話が聞けないこと」、「我慢ができないこと」、「わがままであること」,「自己中心的で他者の配慮ができないこと」、「コミュニケーション能力が乏しいこと」などでした。 A 保護者・家庭の実態: 家庭の子育て環境,育児状況は極めて危ういことも全国の状況と似たようなものでした。総括すれば,「教育力が不足していること」、「保護者の啓発・教育が必要であること」、「家庭環境から生じている各種格差の是正が必要であること」などです。 B 幼少年教育機関及び行政の実態: 保育所を教育委員会の管理下に置くに際して保教育の効果を上げるために何が必要かは以下の3点に集約されました。 ●人的充実 ●指導力の向上 ●関係者の連携・協力 4 「大山町子ども教育プログラム」と幼少年期の発達課題ミニマム 「発達課題ミニマム」は「成長の見通しと手だて」と名付けられました。作成は保教育現場の実務者と地域の指導主事及び専門家から構成する「プロジェクト会議」です。素案は保護者にも提示され,保護者の意見も反映されました。 (1) 作成の視点 「到達目標」は「小学校1年生のすがた」を基準にして設定されました。現行の学校教育が要求する小1児童の心気体の行動力を基準としたわけです。具体的には小1カリキュラムの要求水準が基準になります。もちろん、現行の小1のカリキュラムが小1児童の"正しい"発達課題を反映していると断言しているわけではありません。 (2) 1年生のすがた 想定されている1年生のすがたは、たとえば「自分で寝る、自分で起きる」、「食事のマナーが身についている」、「姿勢を正しく維持できる」など28項目が上げられています。 (3) 発達課題:成長の見通し―2つの領域と6本の柱 策定委員会の協議は2つの領域と6本の柱に集約されました。2つの領域は「基本的生活習慣・リズム」と「コミュニケーション能力」です。6本の柱はA「早寝早起き」、B「食事」、C「遊び」、D「忍耐力」、E「聞く・話す」、F「社会的ルール」です。 (4) 実現の手だては3領域、7項目 設定された発達課題に対して、3領域、7項目の実践処方が出されました。 第1領域: 『遊び・からだづくり・忍耐力』-処方の項目は『遊ぶ・身体づくり』です。 第2領域: 『コミュニケーション能力』-処方の項目は『聞く力を育てる』と『コミュニケーションの力を育てる』です。 第3領域: 『基本的な生活リズム・生活習慣』処方は『バランスのとれた生活リズムをつくる』、『メディアと上手に付き合う』、『家族と一緒に楽しく食事』の3項目です。 領域は相互に関連付けられ、並列に置かれています。
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