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風の便り

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生涯学習通信

「風の便り」(第72号)

発行日:平成17年12月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. 2007年問題への挑戦

2. 「豊津寺子屋」に見る「子どもの居場所」の総合評価

3. 「人生の時差」−16年前の教育論

4. 第62回フォーラムレポート

5. MESSAGE TO AND FROM

6. お知らせ&編集後記

★★★ お知らせ 第63回生涯学習フォーラム ★★★

◆ 日時: 平成17年1月21日(土)15時〜17時
      研究会終了後、センターレストラン「そよかぜ」にて夕食会を予定しています。どうぞご参加ください。
◆ 場所: 福岡県立社会教育総合センター
◆ 事例発表:1 「スローフード和(のどか)」(山口県 白木美和)              
         2  熟年の地域帰還    (交渉中)
◆ 論文発表:2007年問題1:熟年の危機と生涯学習(三浦清一郎)
   
会場その他準備の関係上、事前参加申込みをお願い致します。(担当:恵良)       
電話連絡先  092-947-3511まで。 


★★★ 編集後記 少年の弾力性 ★★★

「型」を知れば、子どもの「想像力・創造力」が動き出す                                

  少年の驚くべき吸収力、その学習範囲及び学習量の弾力性については「豊津寺子屋」の「子ども評価」の分析に示した通りである。寺子屋が教えたのはこの世に必要な「型」である。あいさつの仕方から言葉使いまで、掃除の仕方から直立の姿勢まで子どもの学ぶべき基本型は山積している。驚くべきことに、論語であろうと、手話であろうと、英語であろうと、歌であろうと、踊りであろうと、折り紙であろうと、裁縫であろうと子どもはあっという間に基本型を学んで、吸収する。そして「できるようになること」が嬉しいのである。それが「機能快」:「できるようになることの喜び」である。
  少年期は、教育の適時性、指導のレディネスに満ちている。特に低学年の児童は毎日がTeachable Moment(教えるべき瞬間)の連続である。この時期の子どもに「教えないこと」は明らかに「罪」である。この時期に大事なことを教えてもらえないことの悲劇を考えてみれば分るだろう。
  子ども達の驚くべき創造性は、発表会当日に中央公民館大ホールの壁に張り出された各種多様な作品がその証拠であった。折り紙や絵画の結果を文章で表すことは難しいが、筆者は子ども達の俳句に感歎した。彼らはすでに俳句いろはカルタも、父母や故郷についての古今の名句も諳んじている。それゆえ、元歌のモデルを「型どおり」になぞる「本歌取り」ならぬ、「本句取り」は当然予想できることだが、以下は決して「型通り」の真似ではない。ひとたび「型」を知れば、子どもの「想像力・創造力」が動き出すのである。
  季語がないとか、5−7−5の型を踏んでいないとか、色々意見はあるだろうが、自由律俳句だと思って読めば、ここには未来の尾崎放哉や種田山頭火がいるのである。寺子屋の教室で子どもの心が捉えた季節の名句である。

* おちばはく 学校のにわの 女の子  (豊津小1年 まつしま なおき)
* さざんかの ひとひらづつに まい落ちる (豊津小2年 中村 あかり)
* きくちりな、かみのけ長くなるんだね (豊津小1年 みぞぶち ゆめみ)
* えんぴつを たたいてはいくをかんがえる (豊津小1年 ながの みちと)
* やつでのは かさにするにはちょうどいい (祓郷小2年 竹本 み月)
* あきははっぱに魔法をかける (祓郷小3年石田 しおり) 
* いちょうのは ちってゆくほど さむくなる (祓郷小3年柴村 れい)
* あおぞらは ゆうがたになると オレンジだ (豊津小2年ふじい じゅん)
* せんせいが たとうとしたら むしのこえ (豊津小2年宮本 かい)
* はなびらを ぬいてうらなう すき、きらい (豊津小5年崎山 ひかり)


老年の硬直性  1週間サボれば筋肉も、関節も、頭脳ですらも硬直する

  少年の弾力性に比較して、老年の非弾力性はなんとしたことであろうか!!12月の下旬は引っ越しであった。家中にものが散らばり、引っ越し荷物の箱が積み上げられ足の踏み場もない。懸命に働く妻に申しわけがないので、日課のプールは10日間休んだ。少しずつ書きためる「風の便り」の原稿も中断した。森の散歩だけは小犬のカイザーがいるので、気兼しながら出かけるが、歩く距離を加減したり、ストレッチ体操の時間を遠慮して駈け戻るようにした。
  今朝、気がついてみると身体を前に倒す前屈がろくにできなくなっていた。両手がもはや地面につかない。後ろに倒す後屈は足元がふらついてもっとひどい。数カ月をかけて、うしろの風景が見えるまでに身体を柔軟にしてきた甲斐もなく、あっという間に全身が固くなってしまった。ラジオ体操の真似事だけでも身体が重く、ところによっては筋肉が痛くて悲鳴をあげる。毎日50メートル走の真似事をやっていたのだが、息が上がってとても丘を駈け登ることなどできはしない。わずか10日間の練習休止の結果である。引っ越しの整理と後かたづけで身体は目一杯働かせているが、筋肉や関節を部分的に使うだけでは年をとった身体の手入れにはならないのである。身体のあらゆる部分を満遍なく解きほぐして、筋肉も、関節も、足先も、指先も、首も、腰も、手入れを続けない限り、老年の肉体はあっという間に硬直してしまう。何でもあっという間に吸収して、疲れを知らない少年と比べてなんたる違いであろうか?
  身体がそうであれば、頭も、精神も同じであろう。それゆえ、筆者が想定している2007年問題の対策スローガンは「読み書き体操ボランティア」である。荷物の整理を終えたら、一刻も早くプールとカイザーの森の散歩に戻りたい。原稿も毎日机に向かって頭脳を使い続けたい。もちろん、英会話のボランティアは毎週継続する。
  来年は「2007年問題」に対する生涯学習の実践的処方論を出版したいのである。心身共に、老年期の硬直化は進行する。あらゆる機能の毎日の手入れが不可欠である。手入れは肉体から脳味噌と精神に及ぶ。熟年は「定年」と「老い」のダブルパンチを食らう。パンチを避け損なえば熟年は一気に老年期の衰弱と死に向かって降下するのである。だからこそ「読み書き体操ボランティア」なのである。引っ越しはたゆまない心身のストレッチの重要性を思い知らせてくれたのである。
 


『編集事務局連絡先』  
(代表) 三浦清一郎 E-mail:  kazenotayori@anotherway.jp

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