HOME

風の便り

フォーラム論文

編集長略歴

問い合わせ


生涯学習通信

「風の便り」(第71号)

発行日:平成17年11月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. 「開かれた学校」の基本条件 −「学校支援会議」の背景−

2. 第61回生涯学習フォーラムレポート

3. アウトソーシングの株を買おう!!

4. 「型」の指導の成果を問う(ご案内) −「豊津寺子屋」合併前最終発表会−

5. MESSAGE TO AND FROM

6. お知らせ&編集後記

★★★ お知らせ 第62回生涯学習フォーラム ★★★

日時: 平成17年12月17日(土)15時−17時、
    研究会終了後、センター恒例の「柚子湯の会」に便乗し、和室をお借りして忘年の語らう会を企画しております。会費3、000円、特産物持ち寄り歓迎。宿泊も可能です。
場所: 福岡県立社会教育総合センター
事例発表: 1 「子育て支援ボランティア くるるんるん」 岡部美貴
        2 「(熊本県阿蘇群)産山村子どもヘルパー事業」 大島まな
論文発表: 教育の戦略的外部委託(仮) 三浦清一郎
      
   会場その他準備の関係上、事前参加申込みをお願い致します。
(担当:恵良)092ー947ー3511まで。


編集後記: 事務局が転居します。連絡にご注意!


Simple Life-老後のライフスタイルの転換

  人生は連続している。それゆえ「慣性」の法則が働く。考え方も暮らし方もいざ転換しようとすると簡単ではない。過去の慣性が働き、「経験の干渉」も発生する。昔やったようにしかやれないのはそのためであり、かつて考えたようにしか考えられないのもそのためである。老後の区切りの判断が遅かった点では、わが父も、妻の母も同じであった。二人とも自分の専門分野で自営の仕事をしていたので死の直前まで「生涯現役」を通した。「生涯現役」の多くはライフスタイルの連続性と同義であり、年を取り、自分の能力が衰えてきてもなかなかそれまでの生き方を転換できない。「まだまだやれる」という過信が客観的判断を妨げるのであろう。父も義母も心身の衰えが進んでから、転居や暮らしの転換を図った。それはそれなりに立派に為し遂げたが、その後は新しい暮らしを長く楽しむこともなくそれぞれがおよそ現代の平均寿命でこの世を去った。

  妻はこの二人の死に立ち会い、若い時以来の生活を引きずることの無理を自覚し、老後の暮らしの転換を急ぐことを学んだのであろう。かくてDiane's Projectがスタートした。筆者にはこれまで慣れ親しんだ生活にも、環境にも、一つ一つの家財にも思い出があり、愛着があり、特に不便も感じていなかったので彼女の思い立ちには大いにためらいと戸惑いがあった。しかし、妻の決意は断固として堅く、一歩も譲らないので、一切を任せて服従することにした。

  妻の結論はわが父と自分の母の轍を踏むことなく、一刻も早く「Simple Life」に日々の暮らしを転換することであった。僅か半年の間に、猛スピードで転居を決め、物を捨て、これまでの暮らしと訣別する準備を始めた。久々の出版準備のかたわら私もできる限りの協力をした。沢山の書物を捨てた。子ども達と旅をした自転車も捨てた。もったいないからととっておいた家財も捨てた。子ども達の思い出の品々も捨てた。まだまだ着ることのできる古い背広も捨てた。何よりも東京以来初めての定住生活で育てた庭の樹木とも別れることにした。柿の木から熟した柿の実をもいで食べる贅沢も捨てた。

  要するに思いきってこれまでの自らの過去と縁を切ったのである。人生を賭けた大学改革に失敗し、世間の冷酷さを知り、マスコミの嘘に傷つき、教員の身勝手や保身と戦った後は過去を捨てることにさほどの抵抗はなかった。すでに、大学と縁を切り、学会と縁を切り、市井の付き合いであったロータリークラブや数々の役職と縁を切ってきた自分には引っ越しが面倒なだけであった。しかし、妻の意志通りに協力し始めた後はその決意するところも、Simple Lifeへの転換の意味もよく理解出来た。

  これから筆者自身の総肺活量は落ちる。新陳代謝率も落ちる。反応速度はすべての点で遅くなる。筋肉からは「速筋繊維」が消滅する。脳細胞も死滅の速度を速める。何よりも世間の付き合いが減る。付き合いの意味も減る。今までのようには暮らせないのである。わが父も、義母もその判断が遅きに失したのである。妻のダイアンは人生の四季の中で生きることから人生の四季を眺めて生きることに転換しようとしている。私もそれに倣う。先月は「風の便り」の中断もあるであろうことを予想して購読更新のお願いを書いた。自分が倒れた時、最終号に掲載すべき「遺書のあいさつ」も書き始めた。今回の転居は予想もしなかった新しい出発であるが、妻の決断は恐らく間違ってはいないだろう。
 


『編集事務局連絡先』  
(代表) 三浦清一郎 E-mail:  kazenotayori@anotherway.jp

*尚、誠に恐縮ですが、インターネット上にお寄せいただいたご感想、ご意見にはご返事を差し上げませんので御寛容にお許し下さい。  

←前ページ    次ページ→

Copyright (c) 2002-, Seiichirou Miura ( kazenotayori@anotherway.jp )

本サイトへのリンクはご自由にどうぞ。論文等の転載についてはこちらからお問い合わせください。