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生涯学習通信

「風の便り」(第71号)

発行日:平成17年11月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. 「開かれた学校」の基本条件 −「学校支援会議」の背景−

2. 第61回生涯学習フォーラムレポート

3. アウトソーシングの株を買おう!!

4. 「型」の指導の成果を問う(ご案内) −「豊津寺子屋」合併前最終発表会−

5. MESSAGE TO AND FROM

6. お知らせ&編集後記

アウトソーシングの株を買おう!!


  「子育て支援の経済学」を論じてみると時代が「戦略的外部委託(アウトソーシング)」へ向かって動いていることがよくわかる。男女共同参画を社会の基本指針とし、少子化の防止を施策の優先課題とし、心身共にたくましい子どもの成長を願うのならば、これまでどおりの「家庭」で対処できるはずはない。家事の外部化、介護の外部化、育児の外部化は不可避であり、必然である。「株」は「買い時」と「売り時」のタイミングがあるので全部儲かるとは到底言えないが、「アウトソーシング」の関連会社は未来の日本を作って行くことだけは間違いない。

(1)  給食センターを廃止せよ!                                              

  「豊津寺子屋」は「学童保育」を教育事業に統合している。それゆえ「保教育」事業と呼んでいる。地方でも就労可能な女性人口の約70%が何らかの形で就労している。多くの家族は共稼ぎの労働形態である。給食センターが子育て支援に機能していれば、夏休みのプログラムでは、子どもにも指導者にも、昼食にできたての食事を準備することができる。保護者はどれほど助かることか。「実行委員会」も子どもが持参する弁当の腐食防止に気を揉む必要もなくなる。学校のランチルームもプログラム会場として活用できる。まして、学校だけに限定された現行の給食センターの稼動率は年間180日程度である。基本的に1年の半分しか仕事はない。給食センターの職員が公務員である限り、給食を出さない期間であっても給料は支払われている。給食を「アウトソーシング」の発想で民間に "戦略的に外部委託すれば"、サービス内容を低下させることなく、財源は大幅に削減できる。サービスの中身は外部委託契約書に詳細かつ具体的に謳って公開すべきである。委託によって浮いた削減分は別の教育活動に投入することも可能になる。給食代行会社の株を買おう!!

(2)  スポーツや英語や特別プログラムは外注すべきである                            

  学校は水泳指導や英語指導など、特別な知識や技能を必要とする分野の指導者はアウトソーシングすべきである。地域の総合型スポーツなども外注すべきである。その種の専門会社は増え続けている。コナミスポーツがそれであり、セントラルスポーツがそれであり、ルネッサンスも同じである。学校や社会教育を除く社会のあらゆる部門はアウトソーシングに向かって動いている。人材派遣会社はますます隆盛である。パソナがそれであり、仙台球場の名に関したフルキャストがそれであり、文字どおり「アウトソーシング」という会社もある。
  学校をスリム化して、寺子屋事業が教員と連携して学校と子育て支援の両方を担当できるようになれば、一気に「保教育」が実現する。「社会的に不利な条件に置かれた子ども」の為に特別に配置されている「加配教員」は学校と放課後の両方にまたがった指導を担当すべきである。そうなれば、子育て支援コストは一気に縮小する。
  厚生労働行政が所管する現行の学童保育の正式名称は「放課後児童健全育成事業」(児童福祉法第6条)である。「健全育成」が教育機能であることは言うまでもない。学童保育に学校が参加することは論理上全く不都合はないのである。かくして教育投資論に基づく分析は、学校管理論にも、教育組織論にも、教育システム論にも通じているのである。
  総合的学習を契機に始まった「ゲストティーチャー」の導入は、文字どおり「特別プログラムのアウトソーシング」である。その他にも、年間僅かな日数しか使われる事のないプール一つを取っても、巨大なコストがかかる建設を取りやめ、民間のスイミング・スクールに指導を委託すれば、水泳の上達はもとより、公金の節約と地域経済の活性化を同時に達成できる。機能不全に陥っている英語指導も同じである。実力がないのに高い給料をとっている英語教員を減らして市中の英語学校に「戦略的に外部委託」すべきである。この時の注意事項は給食の場合と同じである。民間事業者との「契約」に万全を記し、契約内容を公表し、市民の評価をいただき、契約基準に達しない場合には即刻別の業者に交替させ得る条件を整えることである。最後は「チャータースクール」構想の導入である。学校そのものを「指定管理者」制度によって第3者に運営を委託してみることである。市場に上場している多くの塾や予備校には沢山の優れた教員や管理者がいるのである。教育のアウトソーシングを導入すれば、校長や教員の意欲、士気が変わることは請け合いである。まずはもっとも結果の出易い英語教育あたりから始めては如何であろうか?
 

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